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Fortranとは? 10分でわかりやすく解説

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Fortranは、1957年にIBMによって開発された世界初の高水準プログラミング言語の一つです。長年にわたり科学技術計算や数値シミュレーションの分野で広く使われてきましたが、その高速性と信頼性から現在でも多くの研究機関や企業で利用されています。本記事では、Fortranの概要と特徴、基本文法、プログラミング手法、そして実際の活用事例について、初心者にもわかりやすく解説します。

Fortranとは何か?

Fortranとは、主に科学技術計算や数値シミュレーションに用いられるプログラミング言語です。長い歴史を持ち、今なお多くの分野で活用されています。ここでは、Fortranの概要と特徴、そして現在の利用状況などについて、わかりやすく解説していきます。

Fortranの概要と歴史

Fortranは、1957年にIBMによって開発された、世界初の高水準プログラミング言語の一つです。当初は、FORmula TRANslationの略称として名付けられました。開発当時、主に科学技術計算の分野で使用されていましたが、その後も長きにわたって進化を続けています。

Fortranは、以下のようなバージョンの変遷を経てきました。

  1. FORTRAN I(1957年)
  2. FORTRAN II(1958年)
  3. FORTRAN IV(1962年)
  4. FORTRAN 77(1978年)
  5. Fortran 90(1991年)
  6. Fortran 95(1997年)
  7. Fortran 2003(2004年)
  8. Fortran 2008(2010年)
  9. Fortran 2018(2018年)

各バージョンにおいて、新たな機能が追加され、言語仕様が拡張されてきました。現在も、Fortranは actively maintainedな言語の一つとして、定期的に更新が行われています。

Fortranの特徴と用途

Fortranは、以下のような特徴を持っています。

  • 数値計算に特化したプログラミング言語
  • 強力な配列処理機能を持つ
  • 高速な実行速度を実現
  • 科学技術計算分野で広く使用されている
  • 豊富なライブラリが利用可能

これらの特徴から、Fortranは主に以下のような用途に適しています。

  • 科学技術計算
  • 数値シミュレーション
  • 気象予測
  • 構造解析
  • 流体力学

Fortranは、数値計算に特化したプログラミング言語であるため、高速かつ効率的に計算を行うことができます。また、長年の蓄積により、様々な数値計算ライブラリが提供されており、開発者は手軽にこれらのライブラリを利用することができます。

Fortranが使われる分野

Fortranは、主に以下のような分野で使用されています。

分野具体例
科学技術計算数値シミュレーション、物理モデリング、気象予測など
工学構造解析、流体力学、熱伝導解析など
金融工学リスク管理、デリバティブ評価、ポートフォリオ最適化など
天文学宇宙物理学、天体力学、銀河形成シミュレーションなど

これらの分野では、大規模な数値計算が必要とされるため、Fortranの高速性と信頼性が重要視されています。また、Fortranには長年の実績があり、多くのレガシーコードが存在するため、現在でも継続的に使用されています。

Fortranと他のプログラミング言語の比較

Fortranと他のプログラミング言語を比較すると、以下のような特徴があります。

言語特徴
C/C++汎用性が高く、システムプログラミングに適している。実行速度はFortranと同等。
Python簡潔で読みやすいコードを書くことができる。数値計算ライブラリNumPyを使用することで、高速な計算が可能。
MATLAB数値計算に特化した言語。行列計算や可視化が得意。ただし、大規模計算には向かない。
JuliaPythonのような読みやすさとFortranのような高速性を兼ね備えた新しい言語。数値計算分野での利用が広がっている。

Fortranは、数値計算に特化した言語であるため、他の汎用言語と比べると用途が限定的です。しかし、その分野においては非常に高い性能を発揮し、現在でも多くの研究機関や企業で利用されています。また、C/C++やPythonなどの言語と組み合わせて使用することで、より柔軟な開発が可能になります。

以上、Fortranの概要と特徴、利用状況などについて解説しました。Fortranは、数値計算分野において長年にわたって重要な役割を果たしてきた言語であり、今後もその地位は揺るぎないものと考えられます。

Fortranの基本文法

Fortranは、数値計算に特化したプログラミング言語であり、独自の基本文法を持っています。ここでは、Fortranの基本的なデータ型、変数宣言、制御構文、入出力処理について解説します。

Fortranのデータ型

Fortranには、以下のような基本的なデータ型があります。

データ型説明
INTEGER整数型。整数値を格納するために使用します。
REAL実数型。浮動小数点数を格納するために使用します。
DOUBLE PRECISION倍精度実数型。高精度の浮動小数点数を格納するために使用します。
COMPLEX複素数型。実数部と虚数部を持つ複素数を格納するために使用します。
CHARACTER文字型。文字列を格納するために使用します。
LOGICAL論理型。真偽値(.TRUE.または.FALSE.)を格納するために使用します。

これらのデータ型を適切に選択することで、効率的なメモリ使用と高速な計算が可能になります。

Fortranの変数宣言

Fortranでは、変数を使用する前に宣言する必要があります。変数宣言は、以下のような形式で行います。

データ型 :: 変数名1, 変数名2, ...

例えば、整数型の変数iを宣言する場合は、以下のように記述します。

INTEGER :: i

配列変数を宣言する場合は、変数名の後に配列の次元を指定します。

REAL, DIMENSION(100) :: array

この例では、実数型の配列arrayを100要素分宣言しています。

Fortranの制御構文(if文、do文など)

Fortranには、他のプログラミング言語と同様に、条件分岐や繰り返し処理を行うための制御構文があります。

1. if文

if文は、条件に応じて処理を分岐させるための構文です。

IF (条件式) THEN
! 条件が真の場合の処理
ELSE
! 条件が偽の場合の処理
END IF

2. do文

do文は、指定した回数だけ処理を繰り返すための構文です。

DO i = 1, 100
! 繰り返す処理
END DO

この例では、変数iが1から100まで1ずつ増加しながら、do文内の処理が100回繰り返されます。

Fortranの入出力処理

Fortranでは、以下のような入出力文を使用して、データの読み込みと書き出しを行います。

1. READ文

READ文は、ファイルやキーボードからデータを読み込むために使用します。

READ(*, *) x, y

この例では、キーボードから2つの値を読み込み、変数xとyに格納します。

2. WRITE文

WRITE文は、データをファイルやコンソールに出力するために使用します。

WRITE(*, *) "Result: ", result

この例では、文字列"Result: "と変数resultの値をコンソールに出力します。

Fortranの入出力処理は、数値計算の結果を保存したり、パラメータを読み込んだりする際に重要な役割を果たします。適切な入出力処理を行うことで、シミュレーションの自動化や結果の可視化が容易になります。

以上が、Fortranの基本文法の概要です。Fortranは、数値計算に特化した言語であるため、これらの文法を理解することで、効率的かつ高速なプログラムを開発することができます。

Fortranを使ったプログラミング

Fortranの開発環境

Fortranを使ったプログラミングを始めるには、まず適切な開発環境を整える必要があります。主要なFortranコンパイラとして、以下のようなものがあります。

  • Intel Fortran Compiler
  • GNU Fortran (gfortran)
  • Oracle Solaris Studio (旧名: Sun Studio)
  • IBM XL Fortran

これらのコンパイラは、Windows、macOS、Linuxなど、様々なプラットフォームに対応しています。開発環境の選択に際しては、使用するプラットフォームと目的に合わせて、最適なコンパイラを選ぶことが重要です。

Fortranプログラムの作成手順

Fortranプログラムの作成は、以下の手順で行います。

  1. テキストエディタを使って、Fortranのソースコードを記述します。
  2. ファイル名に".f90"や".f"などの拡張子を付けて保存します。
  3. コマンドラインまたはIDEを使って、ソースコードをコンパイルします。
  4. コンパイルが成功すれば、実行可能ファイルが生成されます。

Fortranのソースコードは、モジュール化や関数化を行うことで、保守性や再利用性を高めることができます。また、適切なコメントを記述することで、コードの可読性が向上します。

Fortranプログラムのコンパイルと実行

Fortranプログラムをコンパイルするには、コマンドラインで以下のようなコマンドを実行します。

gfortran -o output_file source_file.f90

この例では、GNU Fortran (gfortran) を使用しています。"source_file.f90"がソースコードのファイル名、"output_file"が生成される実行可能ファイルの名前です。

コンパイルが成功すれば、以下のようにして実行可能ファイルを実行します。

./output_file

実行時に、コマンドライン引数やファイルからの入力が必要な場合は、それらを適切に指定します。

Fortranプログラムのデバッグ方法

Fortranプログラムのデバッグは、以下のような方法で行います。

  • print文やwrite文を使って、変数の値を出力する。
  • デバッガを使って、プログラムの実行を停止し、変数の値を確認する。
  • アサーションを使って、特定の条件が満たされていることを確認する。

デバッグの際は、エラーメッセージを注意深く読み、問題の箇所を特定することが大切です。また、単体テストを行うことで、個々の関数やモジュールの動作を確認することができます。

Fortranを使ったプログラミングにおいては、適切な開発環境の選択、体系的なプログラムの作成、効率的なコンパイルと実行、そして丁寧なデバッグが重要です。

Fortranの活用事例

Fortranは、その高速性と信頼性から、様々な分野で活用されています。ここでは、Fortranの活用事例について紹介します。

科学技術計算でのFortranの活用

科学技術計算の分野では、Fortranが広く使用されています。例えば、物理シミュレーションや化学反応解析、構造解析などの分野では、大規模な数値計算が必要とされます。Fortranは、高速な実行速度と豊富な数値計算ライブラリを備えているため、これらの分野に適しています。多くの研究機関や企業では、Fortranを用いて独自のシミュレーションソフトウェアを開発し、研究や製品開発に活用しています。

気象シミュレーションへのFortranの適用

気象予測や気候変動の研究では、大気や海洋の流れを計算するための複雑なモデルが使用されます。これらのモデルは、膨大な計算量を必要とするため、高速なプログラミング言語が求められます。Fortranは、気象シミュレーションの分野でも長年にわたって使用されてきました。例えば、米国の国立大気研究センター(NCAR)では、Fortranを用いて開発された気象モデルが、世界中の研究機関で利用されています。

宇宙開発におけるFortranの利用

宇宙開発の分野では、ロケットの設計や軌道計算、宇宙機の制御などに数値シミュレーションが欠かせません。NASAをはじめとする宇宙開発機関では、Fortranが重要な役割を果たしています。例えば、スペースシャトルの設計には、Fortranで開発された構造解析プログラムが使用されました。また、惑星探査機の軌道計算や着陸シミュレーションにも、Fortranが活用されています。宇宙開発におけるFortranの利用は、その信頼性の高さを示す好例と言えるでしょう。

金融工学分野でのFortranの応用

金融工学の分野では、金融商品の価格評価やリスク管理、ポートフォリオ最適化などに数値計算が用いられます。これらの計算では、高速かつ正確な結果が求められるため、Fortranが適しています。例えば、オプション価格の評価では、ブラック・ショールズ方程式を解く必要がありますが、Fortranを用いることで効率的に計算を行うことができます。また、モンテカルロ・シミュレーションを用いたリスク評価にも、Fortranが活用されています。

以上、科学技術計算、気象シミュレーション、宇宙開発、金融工学といった分野におけるFortranの活用事例を紹介しました。Fortranは、その高速性と信頼性から、数値計算を必要とする様々な分野で重要な役割を果たしています。今後も、Fortranは数値計算分野における主要なプログラミング言語の一つであり続けるでしょう。

まとめ

Fortranは、1957年にIBMによって開発された世界初の高水準プログラミング言語の一つです。長年にわたり科学技術計算や数値シミュレーションの分野で広く使われてきましたが、その高速性と信頼性から現在でも多くの研究機関や企業で利用されています。Fortranは数値計算に特化したプログラミング言語であるため、高速かつ効率的に計算を行うことができます。また、科学技術計算、気象シミュレーション、宇宙開発、金融工学など、数値計算を必要とする様々な分野で今もなお重要な役割を果たし続けています。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム