トレンド解説

ゼロクリック攻撃とは? 10分でわかりやすく解説

アイキャッチ
目次

UnsplashMarvin Meyerが撮影した写真      

ゼロクリック攻撃は、ユーザーの何気ない操作により、気づかないうちにマルウェアに感染してしまう恐ろしい攻撃手法です。この記事では、ゼロクリック攻撃の仕組みや種類、具体的な対策方法について10分でわかりやすく解説します。ゼロクリック攻撃の脅威を正しく理解し、適切なセキュリティ対策を講じることで、大切な情報資産を守ることができるでしょう。

ゼロクリック攻撃とは?

近年、サイバー攻撃の手法は高度化しており、中でも注目されているのが「ゼロクリック攻撃」です。

ゼロクリック攻撃とは、ユーザーが何もアクションを起こさなくても、自動的に悪意のあるコードが実行されてしまう攻撃手法のことを指します。従来のサイバー攻撃では、ユーザーがメールの添付ファイルを開いたり、不正なリンクをクリックしたりといった操作が必要でしたが、ゼロクリック攻撃ではそのような行為が一切不要です。

なぜゼロクリック攻撃は危険なのか

ゼロクリック攻撃が特に危険視されている理由は以下の通りです。

  1. ユーザーが気づかないうちに攻撃を受ける可能性がある
  2. 従来のセキュリティ対策では防げない場合がある
  3. 攻撃の早期発見が難しい

ユーザーの意図しない操作で攻撃が行われるため、被害に気づくのが遅れがちです。また、ゼロクリック攻撃に用いられる手法は日々進化しており、既存のセキュリティ製品では対応できないケースも増えています。

ゼロクリック攻撃の仕組み

ゼロクリック攻撃の具体的な手口としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 脆弱性を突いたドライブバイダウンロード攻撃
  • メールクライアントやWebブラウザの脆弱性を利用した攻撃
  • SNSやチャットアプリ経由での攻撃

これらの攻撃では、ソフトウェアの脆弱性を突くことで、ユーザーの操作なしでマルウェアに感染させたり、不正なコードを実行させたりします。攻撃者は脆弱性を発見すると、修正パッチがリリースされる前に素早く攻撃を仕掛けてきます。

このように、ゼロクリック攻撃は身近なアプリケーションを対象に行われることが多く、個人だけでなく組織も標的になり得ます。今後ますます巧妙化するゼロクリック攻撃に備え、セキュリティ対策の強化が求められています。

ゼロクリック攻撃の種類と特徴

ゼロクリック攻撃には様々な種類がありますが、代表的なものを以下で解説いたします。

スピアフィッシングメールによるゼロクリック攻撃

スピアフィッシングとは、特定の個人や組織を狙ったなりすましメールのことです。攻撃者は標的の関心を引くようなメールを送付し、添付ファイルやリンクを開かせることで、ゼロクリック攻撃を仕掛けます。メールを閲覧するだけで、ユーザーが気づかないうちにマルウェアに感染してしまう危険性があります。

脆弱性を悪用したゼロクリック攻撃

ソフトウェアやアプリケーションの脆弱性を突いたゼロクリック攻撃も増えています。特に、メールクライアントやWebブラウザ、OSなどの脆弱性を狙ったものが多く見られます。修正パッチが提供される前に攻撃が行われるため、従来のセキュリティ対策では防ぎきれない場合があります。

ドライブバイダウンロード攻撃

ドライブバイダウンロードとは、ユーザーの意図しないダウンロードが自動的に行われる攻撃手法です。Webサイトの脆弱性を突くことで、閲覧しただけでマルウェアを仕込まれてしまうといったケースが報告されています。安全だと思われるサイトでも、このような攻撃に遭う可能性は十分にあります。

ウォーターホール攻撃

ウォーターホール攻撃は、標的とする組織がよく利用するWebサイトに、マルウェアを埋め込む手法です。サイトを閲覧するだけで、ユーザーのPCがマルウェアに感染してしまいます。攻撃者は、標的組織の動向をあらかじめ調査し、入念に準備を行うため、非常に巧妙で検知が難しいのが特徴です。

ゼロクリック攻撃の手口は日々進化しており、上記以外にも様々な種類が存在します。いずれも、ユーザーが気づかないうちに攻撃を受けてしまうため、早期発見と対処が非常に困難です。組織は自社システムの脆弱性の把握に努め、OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つことが重要です。加えて、セキュリティ教育の徹底やゼロトラスト戦略の導入など、多層的なセキュリティ対策を検討していくことが望ましいでしょう。

ゼロクリック攻撃への対策

メールセキュリティ対策

ゼロクリック攻撃の主要な経路の一つがメールであるため、メールセキュリティ対策は非常に重要です。メールゲートウェイセキュリティ製品の導入により、悪意のある添付ファイルやリンクを検知し、ブロックすることが可能です。また、メールクライアントの脆弱性に対するパッチ適用も欠かせません。ユーザー教育も重要な要素で、怪しいメールを開かないよう注意喚起を行うことが求められます。

ソフトウェアの脆弱性管理

ゼロクリック攻撃では、ソフトウェアやアプリケーションの脆弱性が悪用されるケースが多くあります。定期的な脆弱性診断の実施と、発見された脆弱性への迅速なパッチ適用が重要です。OSやミドルウェア、業務アプリケーションなど、組織内で使用されるすべてのソフトウェアを対象に、脆弱性管理を徹底することが望ましいでしょう。効率的に運用するためには、脆弱性管理ツールの活用も検討に値します。

セキュリティ教育・意識向上

ゼロクリック攻撃への対策には、技術的なアプローチだけでなく、ユーザーのセキュリティ意識向上も不可欠です。サイバー攻撃の手口や注意点について、定期的な教育・啓発活動を行うことを推奨します。例えば、怪しいメールの見分け方、ソフトウェアを常に最新の状態に保つ重要性、不審な通信を検知した際の対処方法などを周知徹底することで、組織全体のセキュリティレベルを高めることができるでしょう。

多層防御の採用

ゼロクリック攻撃は非常に巧妙であるため、単一の対策では防ぎきれない場合があります。メールセキュリティ、エンドポイントセキュリティ、ネットワークセキュリティなど、複数の防御層を組み合わせた多層防御の採用が推奨されます。例えば、未知のマルウェアの検知・防御に優れたEDR(Endpoint Detection and Response)ソリューションと、不正通信を検知・遮断するUEBA(User and Entity Behavior Analytics)を組み合わせることで、より強固なセキュリティ基盤を構築することができるでしょう。

ゼロクリック攻撃への対策は組織の規模や業種によって異なりますが、基本的にはメールセキュリティ対策、脆弱性管理、セキュリティ教育、多層防御の4つの観点から施策を検討することが望ましいでしょう。サイバー攻撃の脅威は日々進化しているため、定期的にセキュリティ対策の見直しを図り、PDCAサイクルを回していくことが肝要です。外部の専門家の知見を取り入れることも有効な手段の一つと言えます。

セキュリティはコストではなく投資と捉え、組織の重要な経営課題の一つとして取り組んでいくことが、今後ますます重要になるでしょう。

ゼロクリック攻撃の検知と防止

ゼロクリック攻撃は、ユーザーの操作を必要とせずに不正なコードを実行する巧妙な手法であるため、従来のセキュリティ対策では十分に防ぐことができない場合があります。組織がゼロクリック攻撃から自社のシステムを守るためには、以下のような対策を講じることが推奨されます。

ゼロクリック攻撃の検知技術

ゼロクリック攻撃を早期に発見するためには、高度な検知技術の導入が不可欠です。具体的には、未知のマルウェアや不正なスクリプトを検出するためのサンドボックス技術、機械学習を用いた異常検知、振る舞い分析による脅威の可視化などが挙げられます。これらの技術を組み合わせることで、ゼロクリック攻撃の兆候をいち早く捉え、被害を最小限に抑えることが可能となります。

AIを活用した異常検知

近年、サイバーセキュリティ分野におけるAIの活用が加速しています。AIを用いた異常検知システムは、ユーザーやデバイスの通常とは異なる行動パターンを自動的に学習し、ゼロクリック攻撃の予兆を発見することができます。例えば、未知の脆弱性を突く通信や、不自然なプロセスの起動などを検知し、セキュリティ担当者に即座にアラートを送信します。AIによる自動化された監視は、人的リソースが限られる中で、効率的にゼロクリック攻撃対策を行うための有効な手段と言えるでしょう。

ゼロトラストセキュリティモデルの導入

ゼロトラストとは、「全てを信用しない」という考え方に基づくセキュリティモデルです。ネットワーク内部からの通信であっても、常に認証と検証を行うことで、ゼロクリック攻撃によるリスクを大幅に低減することができます。具体的には、アプリケーションごとのマイクロセグメンテーション、多要素認証の導入、最小権限の原則に基づくアクセス制御などが含まれます。ゼロトラストセキュリティモデルは、従来の境界型セキュリティでは防ぎきれない脅威に対して、より効果的なアプローチを提供します。

セキュリティ監視の強化

ゼロクリック攻撃を検知するためには、組織内のネットワークやエンドポイントを常に監視し、異常な動きを迅速に特定する必要があります。SIEM(Security Information and Event Management)やEDR(Endpoint Detection and Response)などのセキュリティ監視ツールを活用することで、ログデータの収集・分析・可視化を自動化し、ゼロクリック攻撃の痕跡を見逃さないための体制を整備することが可能です。さらに、専門知識を持つセキュリティアナリストを配置し、24時間365日の監視を行うことも検討に値するでしょう。

まとめ

ゼロクリック攻撃は、ユーザーが何も操作せずに自動的に不正コードが実行される非常に危険な手法です。メールや脆弱性を悪用した攻撃など、様々な種類が存在し、従来の対策では防ぎきれない場合があります。組織はメールセキュリティ強化、脆弱性管理、セキュリティ教育、多層防御を組み合わせ、AIを活用した異常検知やゼロトラストモデルの導入、監視体制の整備などの対策を講じることが重要です。巧妙化するゼロクリック攻撃から大切な情報資産を守るため、セキュリティ対策の継続的な改善が求められています。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム