トレンド解説

REST APIとは? 役割・仕組み・機能をわかりやすく解説

アイキャッチ
目次

本記事のテーマは、Web開発の現場で用いられる「REST API」についてです。この技術は、情報システムの開発や運用において便利なツールですが「何となく使っている」「詳細まで理解していない」という方も少なくないかと思います。そこで今回は、REST APIの基本概念からその活用方法、利点と欠点、そして類似技術との比較に至るまで、包括的に解説します。

これを機にREST APIの理解を深め、ビジネスや開発の現場で活用する一助となれば幸いです。

分かりやすく解説

RESTは英語で「Representational State Transfer」の略称です。読み方は「レスト」となります。分散システムで複数のソフトウェアを連携させるための仕組みです。

RESTは、Webを構成する基本的な原則に基づいて設計されたアーキテクチャで、この設計原則に基づいたAPIを特に「RESTful API」と呼びます。APIは「Application Programming Interface」の略で、アプリケーション間で情報をやりとりするための接点、または窓口の役目をします。

REST APIの設計原則には、ステートレス、クライアント・サーバー構造、キャッシュ可能性、統一インターフェース、階層化システム、コードオンデマンドといった特徴がありますが、特にステートレスと統一インターフェースがREST APIの中心的な考え方といえます。

ステートレスとは、各リクエストがそれ自体で完結しており、それぞれのリクエストが他のリクエストから独立していることを言います。この性質により、サーバーは過去のリクエストについて記憶する必要がなく、リクエストごとに必要な情報が全て含まれているため、スケーラビリティと信頼性が高まるのです。

次に「統一インターフェース」についてです。これはREST APIがHTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を利用して、リソースの取得、作成、更新、削除といった操作を指定することです。これにより、開発者はAPIの利用方法を直感的に理解でき、またAPIの設計者はシンプルで一貫性のあるAPI設計が可能となります。

これらが組み合わさることで、REST APIはウェブ上で簡潔かつ効率的な情報のやり取りを可能にしています。

注目されている背景

REST APIがなぜこれほどまでに注目され、そして多くの開発者に支持されてきたのでしょうか。背景には、社会やIT環境の変化、そしてウェブ開発の進化があります。

社会環境の変化として挙げられるのが、インターネットの普及とその影響力の増大です。近年では情報の取得、コミュニケーション、ビジネスの進行など、生活の様々な面でウェブ技術が使われるようになりました。これに伴い、ウェブ上で動作するアプリケーションやサービスが増加し、それらが互いに連携してデータをやり取りするニーズが急速に高まりました。その結果、データを効率的にやり取りできる仕組みが求められ、REST APIが注目されるようになったのです。

IT環境の変化も無視できません。クラウドコンピューティングの台頭により、従来のモノリシックなアプリケーション設計からマイクロサービス設計への移行が進行しています。システムの構造が複雑化し、多くのサービスが連携して動作する状況が増えてきました。こうした状況で、システム間のやり取りをスムーズにするための標準的なインターフェースが求められるようになり、REST APIがその期待に応える形で広く利用されるようになりました。

ウェブ開発の進化もREST APIの普及に寄与しています。従来、APIの設計にはSOAP(Simple Object Access Protocol)などが用いられてきましたが、XMLベースのこのプロトコルは、設定が複雑であったり、冗長だったりと、一部で避けられていました。対して、REST APIはHTTPメソッドを利用し、シンプルながらも効率的なデータのやり取りを可能にするため、開発者にとって魅力的な選択肢になったのです。

これらの背景から、REST APIは現代のウェブ開発において欠かせない技術となり、また、その重要性は今後も増していくでしょう。

標準化規格

REST APIにおける標準化規格としては、特にHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)が重要な役割を果たしています。HTTPはインターネットにおけるデータ通信の基礎となるプロトコルで、ウェブブラウザとウェブサーバー間で情報をやり取りするための標準的な手段となっています。

HTTPのバージョンは大きく分けて2つ、HTTP/1.1とHTTP/2が存在しますが、REST APIの設計には特にHTTP/1.1の仕様が用いられています。HTTP/1.1は1997年に初めて発表され、ウェブ通信の基本的な枠組みを提供しています。このバージョンでは、GET、POST、PUT、DELETEといった基本的なHTTPメソッドが定義されており、これらを用いてREST APIはリソースの取得、作成、更新、削除といった操作を表現します。

なお、REST APIには「標準」という形の明確な規格やバージョンは存在せず、RESTの原則に基づくAPI設計が行われています。REST自体は2000年に、コンピュータ学者のロイ・フィールディング氏により提唱されたアーキテクチャスタイルで、その基本原則に従った設計が行われることが求められています。しかし、具体的な設計は開発者やプロジェクトの要件により大きく異なるため、その自由度の高さもREST APIの魅力の一つといえます。

主な利用シーン(想定事例)

REST APIは、Webサービスの提供やアプリケーションの連携、異なるシステム間のデータ交換など、多岐にわたる場面で活用されています。しかし、その仕組みが十分に理解・活用されない場合、手間のかかる作業や混乱が生じるなど、さまざまな問題が発生することもあります。ここでは、それらの具体的な事例を通して、REST APIの利用シーンを探っていきましょう。

一つ目の事例は、A社の営業部でのケースです。A社の営業部では、社内のCRMシステムと、外部のマーケティングツールのデータ交換を手動で行っていました。しかし、この作業は非常に時間がかかり、誤りが発生しやすいという問題がありました。

そこでA社では、REST APIを用いてこれらのシステムを連携させることにしました。HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETE)を用いて一元的に管理することで、データ交換の作業を自動化し、時間を大幅に節約するとともに、誤りの発生を防ぐことができました。

二つ目の事例として、B社の製造部門でのケースを考えてみましょう。B社では、異なる製造ラインの機械間でデータのやり取りを行うために、旧来のAPIが使われていました。しかし、APIの仕様が統一されておらず、各機械ごとにデータの形式や接続方法が異なるため、新しい機械を追加する度に新たな対応が必要となり、非効率的であるという問題がありました。

この問題を解決するために、B社ではREST APIに統一。これにより、データの形式や接続方法を統一し、新たな機械の追加もスムーズに行えるようになりました。

以上の事例からも見て取れる通り、REST APIは、複数のシステム間のデータのやり取りを効率化し、エラーの可能性を減らすための強力なツールとなり得ます。しかし、その有効性を発揮するためには、RESTの原則に従った設計と適切な利用が重要であると言えるでしょう。

通信シーケンス

データ交換を円滑に進めるためには、REST APIの通信シーケンスを理解/しておくと良いでしょう。APIの通信は、クライアント(APIを利用する側)とサーバー(APIを提供する側)の間で行われます。ここではその通信シーケンスの基本的な流れとその構成要素について解説します。

  1. リクエストの開始
    まず最初に、クライアントはHTTPメソッド(GET, POST, PUT, DELETEなど)を使用して、特定のリソースに対するリクエストを開始します。この時、URL(Uniform Resource Locator)を通じてリソースを特定し、必要に応じてリクエストボディにデータを添付します。
  2. リクエストの送信
    クライアントからのリクエストは、HTTPプロトコルを通じてサーバーに送信されます。この段階では、リクエストの内容がサーバーによって受け取られ、処理の準備が行われます。
  3. リクエストの処理
    サーバー側では受け取ったリクエストを解析し、要求された操作(リソースの取得、更新、削除など)を実行します。この操作が成功したかどうか、あるいはエラーが発生したかどうかにより、レスポンスの内容が決まります。
  4. レスポンスの生成
    サーバーは操作の結果をもとにHTTPレスポンスを生成します。このレスポンスにはステータスコード(200, 404, 500など)と、必要に応じてレスポンスボディに含まれるデータが含まれます。
  5. レスポンスの送信
    最後に、サーバーは生成したレスポンスをクライアントに送信します。クライアントはこのレスポンスを受け取り、その内容を解析して次のアクションを決定します。

これらの一連の流れが、REST APIの通信シーケンスの基本的な構成要素となります。これら各ステップで使用されるHTTPの要素の理解は、REST APIの理解に必須です。

技術的な優位点(メリット)

REST APIの利用は、企業が取り組むDXを推進し、さまざまな面で良い効果をもたらしてくれます。以下に、その主な優位点をいくつか挙げてみましょう。

情報システムとの効率的な連携

REST APIを利用すると、異なるシステム間でデータを効率的にやり取りすることが可能になります。これにより、システム間の連携や統合が容易になり、システム全体の運用効率が向上する可能性があります。

セキュリティの確保

HTTPやHTTPS上で運用されるREST APIは、既存のセキュリティインフラストラクチャを利用することができます。これにより、データの保護とプライバシーの確保を両立できるでしょう。

ユーザーエクスペリエンスの向上

REST APIは、ウェブブラウザやモバイルアプリなど、様々なクライアントからのアクセスを可能にします。これにより、ユーザーが必要とする情報に迅速にアクセスでき、ユーザーエクスペリエンスの向上に寄与します。

コスト削減

REST APIを利用すると、新たな機能の開発や既存システムの改修にかかる時間と労力を削減することができます。これは、REST APIが提供する標準化されたインターフェースを利用することで、開発者が複雑な内部構造を理解する必要がないためです。

経営戦略の実現

REST APIを活用すれば、新たなビジネスモデルやサービスを迅速に展開することが可能となります。例えば、企業が保有するデータを公開し、外部の開発者が新しいアプリケーションを開発するなど、API経済の創出に貢献します。



これらの優位点により、REST APIは現代のビジネス環境において、技術的な観点からも、経営戦略の観点からも、非常に重要な役割を担っています。

利用時の注意点(デメリット)

REST APIの利用には、多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットや注意点も存在します。以下に、例を挙げてみましょう。

ステートレスな特性

REST APIはステートレスな設計になっていますが、これは同時に、過去の情報を保持していないということでもあります。したがって、状態を持つ必要がある複雑なトランザクションを扱う場合には、別途設計が必要になる可能性があります。

セキュリティへの配慮

APIはデータを公開する門戸であり、不適切に管理されると情報漏洩のリスクが生じる可能性があります。十分なセキュリティ対策を施さなければ、重大な事態に繋がる恐れがあります。

バージョン管理の課題

APIのバージョンが上がった場合、古いバージョンを利用しているシステムは互換性の問題に直面する場合があります。これは、システム全体の運用に影響を及ぼす可能性があり、適切なバージョン管理が求められます。

開発者のスキル

REST APIの設計や実装には、一定の技術力が必要です。開発者がRESTfulな設計に慣れていない場合、不適切なAPI設計につながる恐れがあります。

データ形式の制約

REST APIでは一般的に、JSONやXMLといった特定のデータ形式を使用しますが、これが全ての用途に適しているわけではありません。特に大量のデータを扱う場合、パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。



以上のようなデメリットや注意点を踏まえ、REST APIを利用する際には、十分な計画と設計が重要となります。最適な技術選定を行うことで、ビジネス上の課題を効果的に解決することが可能です。

セキュリティ上の配慮

REST APIを利用する際にセキュリティ上の配慮は不可欠です。特にデータの保護は、ビジネスの成功と直結する重要な要素です。以下に、REST APIの利用をより安全にするための4つのポイントを紹介します。

HTTPSの採用

API通信において平文のHTTPを利用すると、通信内容が第三者に盗み見られる可能性があります。これを防ぐために、通信内容を暗号化するHTTPSの採用が必要です。これにより、データの盗み見を防ぐことができます。

アクセストークンの管理

アクセストークンの管理が不適切だと不正アクセスを招く恐れがあります。アクセストークンの有効期限を短く設定し、定期的な再発行を行うなど、適切な管理体制を設けることで、不正アクセスを防止します。

入力値の検証

APIが受け取る入力値は、適切に検証されるべきです。入力値の検証が不十分だと、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などのセキュリティ脆弱性を引き起こす可能性があります。こうした攻撃を防ぐためには、入力値を適切に検証し、適用する前にエスケープ処理を施すことが重要です。

レートリミットの設定

APIに対する過剰なリクエストは、サービスを不安定化させるだけでなく、一部のユーザーがAPIを不適切に利用する可能性もあります。レートリミットを設定することで、APIへの過剰なアクセスを制御し、サービスの安定性と安全性を維持します。



これらのポイントを意識することで、REST APIの安全性は大きく向上します。ビジネスを進める上で、APIの安全性は非常に重要な要素です。これらのポイントをぜひ日々の業務に生かしていただければと思います。

類似の技術

REST APIと同じように、ウェブ上のデータ交換を行うための技術として、SOAP(Simple Object Access Protocol)やGraphQLなどが存在します。

SOAP

SOAPはWebサービス間の通信を可能にするプロトコルで、XMLを基盤にした設計になっています。主に企業内のシステム間での通信によく利用されます。REST APIと比較すると、SOAPはステートフルな操作が可能であり、複雑なトランザクションを扱うのに適しています。しかし、その反面、設計が複雑で、メッセージのサイズが大きくなりがちな点が課題となる場合があります。

GraphQL

GraphQLはFacebookによって開発されたデータクエリと操作の言語です。クライアント側が必要なデータの形状と内容を指定できる点が特徴で、これにより無駄なデータ転送を避けることができます。REST APIと比較すると、データの取得効率が高いのがGraphQLの強みです。しかし、設計や実装の複雑さ、成熟したツールやライブラリの少なさなど、初期投資が必要な面もあるため、その採用には慎重な検討が必要となるでしょう。



これらの技術はそれぞれに特性と利点がありますので、具体的な要件や課題に基づいて最適なものを選択することが重要です。また、これらの技術は排他的なものではなく、一部のシステムでREST APIを、他のシステムでSOAPやGraphQLを使用するという、混在した利用も可能です。

まとめ

本記事では、ウェブサービスの一部として広く採用されているREST APIについて、その定義から利用シーン、技術的な優位点や注意点、類似の技術との比較まで詳しく解説しました。

REST APIは、ウェブ上の情報をやりとりするためのシンプルで強力なアプローチであり、そのステートレス性とキャッシュ可能性により、システム間の通信を効率的に実現します。その結果、サービスの拡張性とスケーラビリティが向上し、システムの耐障害性も強化されるというメリットが得られます。

しかし、REST APIの利用には注意が必要で、例えば設計の統一性やエラーハンドリングの複雑性など、設計や実装の段階で慎重な検討と調整が求められます。また、安全性やパフォーマンスにも配慮が必要となります。

一方、REST APIと同様にウェブ上のデータ交換を行う他の技術としては、SOAPやGraphQLが存在します。これらはREST APIとは異なる特性と利点を持つため、具体的な要件や課題に基づいて適切な技術を選択することが重要です。

REST APIは、その柔軟性とシンプルさから多くのウェブサービスで広く採用されており、これからもさまざまな場面でその活躍が期待されます。しかし、その活用には適切な理解と技術的な配慮が必要となります。本記事がその一助となれば幸いです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・プロダクトチーム