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ABWとは? わかりやすく10分で解説

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ABW(Activity Based Working)とは

ABWとは「Activity Based Working」の頭文字をとった言葉で、社員がその日の業務内容や目的に応じて適切な場所・時間を自由に選ぶという新たな働き方のスタイルです。

この方式は社員の効率化や生産性の向上につながる可能性があり、さらに抜本的なオフィス運用によるコスト削減など企業にとってのメリットも考えられます。

一方で、この方式を採用するにあたり、従業員のマネージメントや適切なコミュニケーションの確保などの課題も存在します。

ABWの概念はオランダ出身のVeldhoen + Companyという企業が提唱しました。そのアイディアは業績や効率化を高めるための革新的な働き方として認識され、次第に全世界に広まりました。

これが企業の運用マネージメントやワークスペースの運用に大きな変革をもたらし、今後もさらなる進化や改良が待たれています。

ただし、このABWの導入には十分な理解と社員全員の協力が必要となります。

ABWが求める仕事スタイル

ABWの働き方は場所を選ばず時間を選ばない自由型のスタイルで、重要なのは「どこで」働くかではなく、「どのように」働くかです。

ABWの概念では、各社員が自分の働き方を自由に選び、仕事の効率や質を高めることを目指しています。それにより、従来の働き方を打破し、ワークライフバランスの向上や生産性の向上を目指すものです。

モバイル工具やITツールの導入などにより、自宅やカフェ、図書館など、オフィス以外の場所でも効率的な作業が可能となり、このような働き方が自由度を高め、企業のパフォーマンスを向上させていると言えます。

フリーアドレスとの比較

ABWとフリーアドレスの主な違いは、「求められる自由度」にあります。フリーアドレスでは日本独自のオフィススタイルながら、社員が自由にデスクを選べるという点でABWと共通しています。

しかしながら、フリーアドレスがオフィス内に限定されているのに対し、ABWではどこでも適宜場所を選べるという大きな自由さが特徴です。

その結果、ABWはより高い自由度と効率性を求められ、その結果を労働生産性の向上につなげていると言えます。

ABWを導入するメリット

生産性の向上

まず、ABW導入の最大のメリットとして挙げられるのが生産性の向上です。これは社員が最善と考える場所や時間で働けることによるものです。自由な環境では自己のパフォーマンスを最大限に発揮することが可能になり、それは組織全体のパフォーマンスにも直結します。

たとえば、一部の社員にとっては、カフェや自宅等、オフィス外の静まった環境で集中力を維持するほうが生産性が高まるかもしれません。他にも、夜型の社員が早朝に勤務を強いられるのでなく、自身の生産性が最大限に高まる時間帯を選んで働くことが可能となります。

オフィスのコスト削減

次に、オフィスのコスト削減が期待できます。社員全員がオフィスにいる必要がなくなるため、一人当たりのデスクスペースや資産の必要性が下がります。これにより、オフィスにかかるコストを下げ、その分を他の優先的な投資に回すことができます。

さらに大規模なビルの場合、その維持管理費や設備投資費も相当な額になります。しかし、ABW導入によりオフィスの規模そのものを縮小できれば、そのようなコストも大幅に削減することが可能となります。

ワークライフバランスの向上

また、ABW導入によりワークライフバランスの向上も実現します。これは自身の生活パターンやライフイベントに合わせた働き方が可能となるからです。例えば、家庭の事情で定時まで働けない社員でも、働く場所や時間を調整し生産性を維持することが可能になります。

また、育児を行いながらでも仕事を続けられる環境を提供することで、長期的なキャリア形成をサポートします。これにより職場のダイバーシティも向上し、組織全体の活力を豊かにします。

優秀な人材の確保

最後に、ABW導入は優秀な人材の確保にも役立ちます。現代の優秀な人材は、仕事だけでなくプライベートも充実させたいと考える人が多いです。そのため、働く時間や場所に自由度を持つことを求め、その条件を提供できる企業が求められます。

このようなポイントを踏まえ、企業が人材確保のためにABW導入を検討することは、賢明な選択と言えるでしょう。また、導入すればするほど企業のブランド力や魅力も向上し、さらなる人材獲得に繋がります。

ABWを導入するデメリットとその対策

部下の管理の難しさ

ABWを導入し、社員が時間や場所を選べる自由を手に入れた一方で、その管理が難しくなるという問題が挙げられます。各個人が自身の働きやすい環境で仕事を行う結果、それぞれの場所や時間が異なるため、統一された管理体制を敷くのは困難なのです。

スタッフ間の公平性を保つためにも、同じ基準で管理することが重要です。しかし、各個人が異なる状況で働いているABWでは、これが難しくなります。

また、管理者からすれば、部下の働き方が直接把握しにくくなるため、評価やフィードバックの難易度も増します。

直接のコミュニケーションの難しさ

ABWの導入により面と向かってのコミュニケーションが難しくなるという問題もあります。社員同士がオフィスで一堂に会する機会が減るため、即座に意見を交わしたり、気軽に質問したりすることが難しくなるのです。

また、電子メールやチャット等の非対面コミュニケーションは、情報の伝達に非言語的な要素が欠けるため、誤解を招きやすいとも言われています。

これらの問題は、特にチームでのプロジェクトや重要な意思決定の場面で大きな影響を及ぼす可能性があります。

ITツールの導入

ABWを導入するためには、ITツールの導入が欠かせません。これには時間とコストがかかります。 さらに、社員がそれらのツールを使いこなす能力も求められます。

具体的には、リモートでの業務をスムーズに行うためのコミュニケーションツール、ファイル共有ツール、デジタルスケジュール管理ツールなどが必要になります。

これらのツールを導入しなければ、ABWの利点である働き方の自由度を最大限に活用することは難しくなります。

デメリットへの対策

これらのデメリットを克服するためには、各企業が独自の解決策を見つける必要があります。部下の管理が難しい問題については、結果主義の評価体系を取り入れるなどが一つの方法です。

直接のコミュニケーションが難しい問題については、定期的なオンラインミーティングの設定や、オフィスでの交流の時間を設けるなどが考えられます。

ITツール導入については、適切な教育とサポート体制の整備が重要です。新しいツールを使いこなすための研修やワークショップを開催するなど、社員のスキルアップを図ることが必要となります。

ABW導入を考える際のポイント

ABW(Activity Based Working)の導入は、企業の生産性や効率性向上に寄与する画期的な仕組みですが、その実施は単純な物理的な変化以上のものを意味します。企業文化、スタッフの反応、企業の特性、そして適切な導入ロードマップなど、さまざまな要素が重要な役割を果たします。

企業文化とABW

企業文化は、一人ひとりが仕事をどのように認識し、行動するかという概念です。そしてこれは、ABWの導入とその成功における重要な要素です。

ABWは自由度と柔軟性を高め、個々の社員に責任と選択肢を提供しますので、企業の信頼と尊重の文化が不可欠です。

また、ABWはチーム内のコミュニケーション方法を変える可能性がありますので、企業文化はこれらの変化を受け入れて進化する柔軟性が必要です。

スタッフの反応と対応

スタッフの反応もまた、ABW導入を成功に導く重要な要素です。全体の受け入れ度と適応能力は、実装の効果と結果に大きく影響を与えます。

たとえば、しっかりとした説明とサポートがない場合、スタッフは新しい働き方を抵抗感を持って受け入れるかもしれません。従って、導入前の教育と承認が必要です。

また、ABWを最大限に活用するためには、各スタッフが新しい働き方を理解し、その使用方を学ぶ必要があります。したがって、適切なトレーニングとサポート体制の確立も重要です。

ABWに適した企業の特徴

すべての企業がABWに適しているわけではありません。
例えば、企業の規模、業界、働く人々のタイプなどが、ABW導入の適切さと成功度を大きく左右します。

ITやデジタル業界、クリエイティブ業界などの業界はABWに適しています。また、機敏さとイノベーションが重視される企業は、ABWを導入しやすい場合が一般的です。

ABW導入のロードマップ

効果的なABWの導入には、適切なロードマップが必須です。これには、企業の目標やABWの導入計画を明確に定め、タイムラインを設定することが含まれます。

ABWの導入は段階的に行うべきで、各ステージで調査、評価、改善を繰り返すべきです。これにより、導入プロセスは継続的に最適化され、組織に最大限の利益をもたらすようになります。

また、各ステージでのフィードバックや学びを取り入れ、必要に応じて計画を調整することも重要です。これにより、ABWのプロジェクトは持続可能で、進行するための改革が可能となります。

ABWのこれから

このセクションでは、現代の社会風潮やテクノロジーの進化、そして新型コロナウィルスの影響等々が、ABWの未来にどのように影響を及ぼすかについて考察します。

ワークスタイルの進化とABW

ABWは革新的な働き方の一つで、個々の仕事の性質によって場所や時間を自由に選べるという特徴を持っています。労働に対する新しい視点を提供し、働き方改革に大きな役割を果たしています。

デジタルでのコミュニケーションやデータ共有が浸透し、テクノロジーの進歩が進むほど、ABWの有効性は高まります。新たな働き方に適応するための適切な支援や設備を提供することで、企業は社員の生産性と働き方の満足度を向上させることが可能となります。

そのため、未来のワークスタイルの進化に対応するためには、ABWの導入とその実践は重要な要素となるでしょう。

コロナ禍とABWの関係

新型コロナウィルスの影響で、テレワークやリモートワークが加速しました。働く場所がオフィスだけでなく、自宅やカフェなどでも可能になった今、ABWはより一層重要性を増しています。

ABWは、社員の健康と安全を確保しながら、さまざまな環境で働く人々に対して柔軟性と自由を提供します。コロナ禍を経験した企業は、これまでの固定的な働き方から離れ、ABWによってさまざまな働き方を支援する必要に迫られています。

たとえば、企業は新たな作業環境に適応するためのツールをさまざまな形で提供し、ABWを可能にしています。それらは、社員が自宅や他の場所で効率的に働けるようにするための重要な手段です。

ABWのグローバルな普及

ABWはオランダ発祥のコンセプトではありますが、その考え方はグローバルに広がっています。テクノロジーの進化とともに仕事の在り方が変わる中、その恩恵は多岐にわたる国や地域で受けられています。

この普及には、テクノロジーの進化やデジタル化の進行、そして新型コロナウィルスの影響等が大きな推進力となっています。特に、リモートワークの増加はABWの普及に大いに寄与しています。

しかしながら、コミュニケーションの難しさや管理の課題など、未だ解決されていない問題も存在します。これらの課題を解決し、全ての労働者がABWを最大限に活用できるよう、引き続き改善と普及が求められています。

今後のワークスタイルとABW

ワークスタイルの未来において、ABWの考え方はますます中心的な役割を果たすと考えられます。個々の仕事の性質に合わせた働き方を可能にし、働く人たちにとって、効率と生産性のバランスを追求する上で有効な支援となり得ます。

また、ワークライフバランスの重要性が高まる中、ABWの導入は企業と働く人たち両方にとって大きなメリットをもたらします。仕事とプライベートの調和を保ち、より良い仕事の品質と働きがいを得られることが期待できます。

ABWの考え方と導入は、今後の働き方のイノベーションを牽引していくと言えるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム