アクセシビリティとは? 10分でわかりやすく解説
UnsplashのElizabeth Woolnerが撮影した写真
ウェブサイトやアプリケーションが、障がいを持つ人を含むすべてのユーザーにとって利用しやすくなっていないと感じたことはありませんか?この記事では、アクセシビリティの基本概念から具体的な改善方法、企業にとってのメリットまでを10分で分かりやすく解説します。アクセシビリティへの理解を深めることで、多様なユーザーが快適にデジタルサービスを利用できるようになり、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
アクセシビリティとは?
アクセシビリティ とは、すべての人が等しくデジタル製品やサービスを利用できるようにすることを目指す概念です。年齢、障がいの有無、使用する機器などに関わらず、誰もが情報にアクセスし、コンテンツを理解し、機能を活用できるようにすることが重要とされています。
アクセシビリティの定義
アクセシビリティは、ウェブサイトやアプリケーションなどのデジタルコンテンツが、障がいを持つ人を含むすべてのユーザーに対して利用可能であり、操作可能であることを意味します。具体的には、視覚障がい者がスクリーンリーダーを使ってコンテンツを読み上げられるようにしたり、聴覚障がい者に文字起こしを提供したりすることなどが含まれます。
アクセシビリティが重要な理由
アクセシビリティへの取り組みは、以下のような理由から重要視されています。
- 法的義務:多くの国や地域で、アクセシビリティに関する法律や規制が定められています。これらを遵守することは企業の責任です。
- 社会的責任:すべての人に平等にデジタルサービスを提供することは、社会的に求められている企業の役割です。
- ビジネスチャンス:アクセシビリティを確保することで、ユーザー層が拡大し、顧客満足度の向上や売上増加につながる可能性があります。
- イノベーションの促進:アクセシビリティへの対応は、新たな技術やアイデアを生み出すきっかけともなります。
アクセシビリティの対象となるユーザー
アクセシビリティは、以下のようなさまざまなユーザーを対象としています。
ユーザー種別 | 具体例 |
---|---|
視覚障がい者 | 全盲、弱視、色覚異常など |
聴覚障がい者 | ろう、難聴など |
肢体不自由者 | 上肢障がい、筋力低下など |
認知・知的障がい者 | 発達障がい、認知症など |
一時的な制約を受けている人 | 怪我、病気、妊娠中など |
高齢者 | 加齢に伴う視力や聴力の低下など |
これらのユーザーがデジタルコンテンツを快適に利用できるよう、適切な対応を行うことが求められます。
アクセシビリティとユーザビリティの違い
アクセシビリティとユーザビリティは、どちらもユーザー中心設計の概念ですが、次のような違いがあります。
- ユーザビリティ:特定のユーザーが目的を達成するための使いやすさや効率性に焦点を当てる。
- アクセシビリティ:障がいを持つ人を含む、より幅広いユーザーを対象とし、誰もがコンテンツにアクセスできるようにすることに重点を置く。
ただし、両者は密接に関連しており、アクセシビリティの向上はユーザビリティの向上にもつながります。すべてのユーザーにとって使いやすいデザインを目指すことが大切です。
以上のように、アクセシビリティは多様なユーザーを包括し、デジタル製品やサービスの利用機会を平等に提供するための重要な概念です。企業がアクセシビリティに積極的に取り組むことは、社会的責任を果たし、ビジネスの可能性を広げることにつながるでしょう。
アクセシビリティの基準と法規制
アクセシビリティを確保するためには、国際的なガイドラインや各国の法規制に準拠することが求められます。ここでは、代表的なアクセシビリティ基準と法規制について解説します。
WCAG(ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)とは
WCAG は、ウェブコンテンツのアクセシビリティに関する国際的なガイドラインです。World Wide Web Consortium(W3C)が策定・維持しており、 現在の最新版は WCAG 2.1 です。WCAG は、以下の4つの原則に基づいています。
- 知覚可能(Perceivable):情報とユーザーインターフェースコンポーネントは、ユーザーが知覚できる方法で提示されなければならない。
- 操作可能(Operable):ユーザーインターフェースコンポーネントとナビゲーションは操作可能でなければならない。
- 理解可能(Understandable):情報とユーザーインターフェースの操作は理解可能でなければならない。
- 堅牢(Robust):コンテンツは、支援技術を含む幅広いユーザーエージェントによって解釈できるように十分に堅牢でなければならない。
WCAG に準拠することで、ウェブサイトやアプリケーションのアクセシビリティを向上させることが可能になります。
日本におけるアクセシビリティ関連の法律と指針
日本では、以下のような法律や指針がアクセシビリティに関連しています。
- 障害者差別解消法:障がいを理由とする差別の解消を推進するための法律。合理的配慮の提供を求めている。
- JIS X 8341-3 :高齢者・障害者等配慮設計指針(ウェブコンテンツ)。WCAG 2.0 をベースに、日本の実情に合わせて策定された規格。
- みんなの公共サイト運用モデル :地方自治体のウェブサイトを対象としたアクセシビリティ確保のためのガイドライン。
これらの法律や指針に準拠することは、日本国内でビジネスを展開する上で重要な要素となります。
米国のADA法とアクセシビリティ
米国では、ADA法(Americans with Disabilities Act)がアクセシビリティに大きな影響を与えています。ADA法は、障がいを理由とする差別を禁止する包括的な市民権法です。ウェブアクセシビリティに関しては、ADA法の適用範囲についての議論が続いていますが、多くの企業がWCAGに準拠することで対応しています。
国際標準化機構(ISO)のアクセシビリティ規格
ISO(国際標準化機構)では、アクセシビリティに関連する以下のような規格を定めています。
- ISO/IEC 40500:2012 :WCAGの内容をISOの規格として採用したもの。
- ISO 9241-171 :ソフトウェアのアクセシビリティに関するガイダンス。
- ISO 14289-1(PDF/UA-1):アクセシブルなPDFに関する国際標準。
グローバルに事業を展開する企業は、これらの国際規格を参考にしてアクセシビリティ対応を進めることが推奨されます。
以上のように、アクセシビリティの基準と法規制は国や地域によって異なりますが、共通しているのはすべてのユーザーに等しくデジタルサービスを提供するという理念です。各社の状況に合わせて、適切な基準に準拠し、アクセシビリティの向上に努めることが求められます。
アクセシビリティを向上させる具体的な方法
アクセシビリティを向上させるためには、以下のような具体的な方法を実践することが推奨されます。
コントラストと色使いの最適化
コンテンツの文字と背景のコントラスト比を十分に確保することで、視覚障がいを持つユーザーや低照度環境で閲覧するユーザーにとって読みやすくなります。WCAG 2.1では、通常のテキストに対して4.5:1以上、大きなテキストに対して3:1以上のコントラスト比を満たすことが求められています。また、色だけでなく形状や位置などでも情報を伝えるようにすることで、色覚異常のあるユーザーにも配慮することができるでしょう。
キーボードによる操作性の確保
マウスやタッチデバイスを使用できないユーザーのために、キーボードのみでウェブサイトやアプリケーションのすべての機能を利用できるようにすることが重要です。適切なタブ順序を設定し、フォーカスを視覚的に表示することで、キーボード操作をサポートできます。また、十分な時間をかけてフォームを入力できるようにするなど、ユーザーの多様なニーズに対応することが求められます。
適切な代替テキストの提供
画像や動画などの非テキストコンテンツには、代替テキストを提供することが不可欠です。スクリーンリーダーを使用する視覚障がい者にとって、代替テキストは画像の内容を理解するための重要な手がかりとなります。単に画像の表面的な説明だけでなく、コンテンツの文脈に沿った的確な代替テキストを記述するようにしましょう。装飾的な画像には空の代替テキストを設定するなど、適切に使い分けることも大切です。
シンプルで直感的なナビゲーション
ウェブサイトやアプリケーションのナビゲーションは、シンプルで一貫性があり、直感的に理解できるものでなければなりません。ユーザーが目的のコンテンツにたどり着きやすいよう、明確なラベル付けやカテゴリー分けを行い、階層構造を浅くするように心がけましょう。また、現在位置を示すパンくずリストや検索機能の提供など、ナビゲーションを補助する要素を取り入れることも有効です。
これらの方法を実践することで、多様なユーザーがストレスなくデジタルサービスを利用できるようになります。ただし、アクセシビリティの向上は一朝一夕で実現できるものではありません。継続的な取り組みとユーザーフィードバックに基づく改善が必要不可欠です。自社のシステムをより良くしていくために、アクセシビリティを重要な評価軸の1つとして位置付け、積極的に対応していくことが求められます。
アクセシビリティ対応のメリット
アクセシビリティ対応に積極的に取り組むことで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、主要なメリットについて解説いたします。
ユーザー満足度の向上
アクセシビリティに配慮したシステムやサービスを提供することで、障がいを持つユーザーを含む幅広い層のユーザーが快適に利用できるようになります。これにより、ユーザー満足度の向上が期待できます。満足度の高いユーザーは、リピーターとなりやすく、ポジティブな口コミを生み出す可能性も高まります。
企業イメージの向上とブランド価値の向上
アクセシビリティへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たす上で重要な要素の1つです。多様なユーザーに配慮したサービスを提供することで、企業イメージの向上につながります。また、アクセシビリティに優れたブランドとして認知されることで、ブランド価値の向上も期待できます。
法的リスクの回避
国内外の法規制において、アクセシビリティに関する要件が定められている場合があります。これらの法規制に準拠することで、法的なリスクを回避し、安定的なビジネス運営が可能となります。また、訴訟のリスクを減らすことにもつながります。
SEO対策への好影響
アクセシビリティに配慮したウェブサイトは、検索エンジン最適化(SEO)の観点からもメリットがあります。適切な見出しの使用、代替テキストの提供、シンプルなナビゲーションなどのアクセシビリティ対策は、検索エンジンのクローラーにとってもコンテンツを理解しやすくなります。その結果、検索結果での上位表示につながる可能性があります。
以上のように、アクセシビリティ対応には多くのメリットがあります。自社のシステムやサービスをより良いものにしていくためには、アクセシビリティを重要な評価軸の1つとして位置付け、継続的な改善に取り組むことが推奨されます。
まとめ
アクセシビリティとは、多様なユーザーが、デジタルサービスを快適に利用できるようにする試みです。国際的なガイドラインや各国の法規制に準拠し、コントラストの確保、キーボード操作への対応、適切な代替テキストの提供、シンプルなナビゲーションなどを実践することで、アクセシビリティの向上が図れます。企業にとってアクセシビリティ対応は、ユーザー満足度や企業イメージの向上、法的リスクの回避、SEO対策の改善など、多くのメリットをもたらします。自社のシステムをより良くするために、アクセシビリティを重要な評価軸として継続的に取り組むことが推奨されます。
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