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カーボンフットプリントとは? 10分でわかりやすく解説

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地球温暖化対策の重要性が高まる中、製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの総量を示す指標である「カーボンフットプリント(Carbon Footprint)」が注目を集めています。

カーボンフットプリントを把握すると、どの工程で排出が多いのか(=削減の当たりどころ)が見えるようになります。この記事では、カーボンフットプリントの基本概念から算定の流れ、削減の進め方まで、実務で迷いやすいポイントを補いながら解説します。

カーボンフットプリントとは何か

カーボンフットプリントの定義

カーボンフットプリントは、製品やサービスの原材料調達から生産、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体で、直接または間接的に排出される温室効果ガスの総量を指します。温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)だけでなく、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)なども含まれ、通常はCO2換算(CO2e)でまとめて表現します。

なお、カーボンフットプリントの算定・コミュニケーションには国際的な考え方があり、代表例としてISOの製品カーボンフットプリント規格(ISO 14067)や、GHG Protocolのプロダクト基準が参照されます。

「組織の排出量」と「製品の排出量」は別物

実務で混同しやすいのが、企業全体(組織)としての排出量と、製品・サービス単位の排出量です。

  • 組織の排出量:企業活動全体の排出(例:Scope1/2/3)を把握し、全社の削減計画につなげます。
  • 製品・サービスのカーボンフットプリント:特定の製品1個、またはサービス1回あたりなど、機能(提供価値)を単位として算定します。

カーボンフットプリントは、後者の「製品・サービス単位」での意思決定(設計変更、調達先の見直し、物流の最適化など)に強みがあります。

カーボンフットプリントが注目される背景

カーボンフットプリントが注目される理由は、単に環境配慮の「姿勢」を示すためだけではありません。実務では、次のような動機が重なって導入が進みます。

  1. 温室効果ガス削減の実行計画を、工程別に具体化しやすい
  2. サプライチェーン全体(調達~使用・廃棄)を視野に入れた改善につながる
  3. 取引先からの開示要請(部品単位・製品単位の排出量提示)に対応しやすい
  4. 輸出入や国際取引の文脈で、排出量データの提出が求められるケースがある

たとえばEUでは、炭素国境調整メカニズム(CBAM)が段階的に運用されており、移行期間では報告義務、将来的には金銭的負担が発生する設計です。対象や詳細は品目・制度更新に依存しますが、「製品に紐づく排出量情報」を求められやすい潮流は押さえておく価値があります。

カーボンフットプリントの単位と表示の考え方

カーボンフットプリントは、一般的に「kg-CO2e」で表示します。ここで重要なのは、何を1単位として算定したのか(機能単位)を明確にすることです。たとえば「製品1個あたり」「1kgあたり」「1回のサービス提供あたり」など、比較可能性に直結します。

表示例(イメージ):

製品・サービス機能単位カーボンフットプリント(kg-CO2e)
製品A1個12.3
サービスB1回提供4.8

数値だけを示すと誤解を招きやすいため、可能であれば「対象範囲(どこからどこまで含めたか)」や「前提(電力係数、輸送条件など)」も、開示レベルに応じて補足すると運用が安定します。

カーボンフットプリントの重要性

地球温暖化対策としての意味

カーボンフットプリントは、製品・サービスの排出量を「工程別の合計」として見える化するため、削減策を、実行可能な施策に落とし込みやすい点が大きな価値です。抽象的に「脱炭素を進める」ではなく、「どの工程を、どう変えるか」を議論できます。

企業の環境対策における役割(CSRに留まらない)

カーボンフットプリントはCSRの一環として語られがちですが、実務では経営上の意思決定にも直結します。たとえば次のような用途があります。

  1. 設計・調達・生産・物流の改善テーマを、排出寄与で優先順位づけできる
  2. 取引先からの排出量データ要請に、根拠を持って対応できる
  3. 製品ポートフォリオの見直し(低炭素設計の拡大、重点投資領域の選定)に使える

一方で、算定範囲や前提が揃っていない数値は比較に不向きです。「どの意思決定のために算定するのか」を先に決めておくと、必要な精度と工数のバランスが取りやすくなります。

消費者・顧客の判断材料としての重要性

消費者向けの表示に限らず、BtoB取引でも「調達先の選定」「仕様の比較」「入札要件」などで排出量が判断材料になる場面があります。重要なのは、単なる数値の提示ではなく、比較可能な条件(機能単位、範囲、データの粒度)を意識して情報を整えることです。

カーボンフットプリント算定の流れ

カーボンフットプリントの算定は、ざっくり言えば「範囲を決め、データを集め、係数を掛け、合算する」作業です。ただし実務では、範囲設定とデータの扱いで結果が大きく変わるため、手順を丁寧に押さえる必要があります。

1. 算定対象と範囲(システム境界)の決定

最初に、算定対象(製品・サービス)と、どこからどこまで含めるかを決めます。よく使われる考え方として次があります。

  • Cradle to Gate:原材料調達~工場出荷まで
  • Cradle to Grave:原材料調達~使用~廃棄まで
  • Gate to Gate:特定工程(例:自社工場内)に限定

目的が「設計・調達の見直し」なのか、「顧客への開示」なのかで、適切な範囲は変わります。範囲を広げるほど網羅性は上がりますが、データ収集の難易度も上がるため、目的に合わせて設計します。

2. 活動量データの収集(一次データ/二次データ)

次に、活動量データ(エネルギー使用量、原材料使用量、輸送距離、廃棄量など)を集めます。ここでの要点は「どのデータを一次(実測・実績)で持ち、どこを二次(データベース・業界平均)で補うか」です。

  • 一次データ:自社の実測値、サプライヤーの実績値など(精度が高いが収集コストが高い)
  • 二次データ:公開DBや文献値など(入手しやすいが前提が合わないと誤差が出る)

すべてを一次データで集めるのは難しいため、排出寄与が大きい工程(ホットスポット)から一次化していく運用が現実的です。

3. 排出係数(原単位)の選択と計算

活動量データに排出係数(原単位)を掛けて、工程別の排出量を算出します。ここでは次を意識すると品質が安定します。

  • 係数の出典を記録し、更新時に追跡できるようにする
  • 地域差・電力の係数差など、前提が結果に与える影響を把握する
  • 同じ工程でも、係数の選び方で差が出るため、社内ルールを作る

4. 配分(アロケーション)と集計

製造工程で複数製品を同じ設備で作っている場合、電力や燃料をどの製品にどれだけ配分するか(アロケーション)が必要です。配分方法(重量、数量、売上、工程時間など)によって結果が変わるため、「なぜその方法を採用したか」を説明できる状態にしておくことが重要です。

5. 評価・検証(必要に応じて第三者検証)

算定後は、結果の妥当性を確認します。典型的には「どの工程が最も大きいか」「前提を変えると結果がどれくらい動くか」を見ます。外部開示や取引要件に関わる場合は、第三者検証を検討すると信頼性が高まります。

カーボンフットプリント削減のための取り組み

削減策は、算定の結果「排出が大きい工程」に集中させるのが基本です。ここではライフサイクルの段階ごとに、実務で取り得る施策を整理します。

原材料調達段階での取り組み

  • 排出の少ない原材料への切り替え(素材変更、リサイクル材の活用など)
  • サプライヤーと共同で、工程改善やエネルギー転換を進める
  • 過剰品質・過剰仕様を見直し、使用量そのものを減らす

実務では「自社だけで完結しない」領域になりやすいため、調達要件や共同改善の枠組みが鍵になります。

生産プロセスの効率化

  • 省エネ設備への更新、稼働条件の最適化
  • 歩留まり改善(不良率低減)による、原材料・エネルギーの無駄削減
  • 再生可能エネルギーの導入や切り替え(契約・自家発電を含む)
  • 熱回収や工程統合による、エネルギー効率の向上

「工程が増えるほど排出が増える」とは限らず、品質不良や再加工が多い場合は、改善余地が大きくなります。

物流の最適化とモーダルシフト

  • 輸送ルートの最適化、拠点配置の見直し
  • 積載率向上(梱包設計・出荷単位の見直し)
  • 鉄道・船舶などへの切り替え(モーダルシフト)

物流は「距離」だけでなく、「積載効率」や「往復での空車率」が効くことが多いため、数値で把握して改善テーマに落とし込みます。

使用段階の省エネ化と長寿命化

  • 使用時のエネルギー消費を下げる(省エネ設計、待機電力低減など)
  • 修理しやすい設計、部品交換のしやすさによる長寿命化
  • ユーザーの使い方によって排出が変わる場合は、運用ガイドを整備する

製品カテゴリによっては、ライフサイクルで最も大きいのが「使用段階」になるケースがあります。算定によって、ここがホットスポットかどうかを見極めることが重要です。

廃棄・回収・リサイクル段階の取り組み

  • 回収スキームの構築(回収率向上、回収コストの最適化)
  • リサイクルしやすい素材・構造への変更
  • 再利用(リユース)や再製造(リマニュファクチャリング)の検討

廃棄段階は制度・地域差が大きいため、前提条件(廃棄方法、回収率など)を明確にし、比較可能性を確保します。

まとめ

カーボンフットプリントは、製品・サービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの総量を、CO2換算(CO2e)で示す指標です。算定の目的と範囲を明確にし、一次データと二次データを適切に使い分けることで、削減の当たりどころ(ホットスポット)を特定できます。

削減は、原材料調達、生産、物流、使用、廃棄の各段階で打てる手が異なります。まずは算定結果をもとに優先順位をつけ、実行可能な施策から着実に進めていくことが、継続的な削減と事業価値の向上につながります。

Q.カーボンフットプリントは「CO2だけ」を指しますか?

CO2に限らず、メタンなど複数の温室効果ガスをCO2換算(CO2e)で合算した値を指します。

Q.「組織の排出量(Scope1/2/3)」と何が違いますか?

組織は企業活動全体、カーボンフットプリントは製品・サービス単位のライフサイクル排出量を扱います。

Q.算定範囲はどう決めればよいですか?

比較や開示、設計改善など目的を先に決め、Cradle to Gate/Cradle to Graveなど必要な範囲を設定します。

Q.「カーボンニュートラル」とカーボンフットプリントは同じですか?

同じではありません。カーボンフットプリントは排出量の算定、カーボンニュートラルは削減や相殺を含む達成状態を指します。

Q.算定で一番つまずきやすい点は何ですか?

範囲設定とデータ収集です。特に一次データの入手可否と、配分(アロケーション)の決め方で結果が変わります。

Q.一次データと二次データはどう使い分けますか?

排出寄与が大きい工程は一次データを優先し、その他は二次データで補うなど、ホットスポットから精度を上げるのが現実的です。

Q.第三者検証は必須ですか?

必須ではありませんが、外部開示や取引要件に関わる場合は信頼性確保のために検討する価値があります。

Q.算定結果はそのまま他社製品と比較できますか?

範囲、機能単位、係数の前提が揃っていないと比較は危険です。条件をそろえたうえで解釈します。

Q.削減はどこから着手するのが効果的ですか?

算定で排出が大きい工程(ホットスポット)からです。調達・使用段階が支配的なケースもあるため先に見える化します。

Q.国際取引でカーボンフットプリントが求められることはありますか?

あります。制度や取引先要件により、製品に紐づく排出量データの提出が求められる場面があります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム