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CASBとは? わかりやすく10分で解説

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目次

CASBの定義と基本概念

CASBとは何か

CASBとは、Cloud Access Security Brokerの略で、クラウドサービスの利活用に対する情報セキュリティの新しいコンセプトを表現します。すなわち、企業とクラウドサービスプロバイダー間に存在する単一のコントロールポイントで、クラウドサービスの利用状況を可視化・制御し、統一的なセキュリティポリシーを適用できるツールです。

これを通じてクラウドサービスの監視や管理を一元化し、セキュリティを強化することが可能となります。

実際には、CASBはネットワークトラフィックをリアルタイムで監視し、スキャンや分析を行い、セキュリティポリシーに基づいた応答を行うことができます。

CASBの重要性

多くの企業がクラウドサービスを活用している現代において、CASBはますます重要な存在となっています。その理由は主に以下の二つです。

第一に、CASBにより、シャドーITと呼ばれる非公式のクラウドサービス利用が可視化可能となる点が挙げられます。これにより、不適切なデータの管理や情報漏れにつながるリスクを大きく軽減することが可能となります。

第二に、CASBは企業の社員がクラウドサービスを利用する際の正式なガイドラインを強制することができ、これによりセキュリティ強化と業務効率向上に貢献します。

CASBの基本構造

CASBの基本構造は、特定のクラウドサービスへのアクセスをブローカーが統一的に制御するというものです。

具体的には、CASBからクラウドサービスへのすべての要求とレスポンスを監視・分析し、これらの交信にセキュリティポリシーを適用します。

さらに、CASBはリアルタイムに通信を分析し、異常が検出されると直ちにその通信を遮断し、安全な状態を保つための対策を講じます。

CASBの主な用途

CASBの主な用途を説明します。その一つは、クラウドサービス上でのデータ保護とプライバシー管理です。

CASBは通信の内容を検査してリスクの評価を行い、機密性や完全性を維持するための制御策を施します。これにより、企業のデータはクラウド上でも適切に保護されます。

また、CASBは外部からの攻撃をリアルタイムに検出し、遮断する機能も持っています。これにより、情報漏えい※やマルウェア感染のリスクを大幅に軽減することができます。

CASBの機能とその効果

CASBは、多くのクラウドサービスの利用を一元管理し、業務の効率化とセキュリティ強化を実現するツールです。以下に具体的な機能とその効果について詳しく見ていきましょう。

可視化と分析の意義

CASBの最も重要な機能の一つは、クラウドサービスの利用状況を可視化することです。これにより、企業はどのクラウドサービスがどれだけ利用されているのか、またその利用がビジネスにどのような影響を及ぼしているのかを把握することができます。 また、CASBは利用状況の分析を行うこともでき、無駄なリソースの使用を防ぎ、効率的なビジネス運営を実現します。リスク評価も実施するため、セキュリティ問題を未然に防止するための対策を立てることも可能になります。

コンプライアンスとコントロールについて

CASBは、あらゆるクラウドサービス宛の通信に対して、単一のセキュリティポリシーによる一元的な制御を実現します。これにより、企業はコンプライアンスを確保しつつ、各クラウドへのアクセスを適切にコントロールすることが可能になります。 これは、クラウドサービスを一貫したルールで利用することを可能にし、その結果、情報漏れや無意味なデータの蓄積などのリスクを軽減するのに役立ちます。

データセキュリティの重要性

CASBは、企業が保有する機密情報のセキュリティを確保するための重要なツールです。企業はCASBを使用して自社の機密情報を定義または学習させ、情報漏れのリスクを減らすことができます。 また、接続元のロケーションやウイルス対策状況、接続対象のファイル情報などからデータの持ち出し制御も可能になるため、データの安全性を一層強化することが可能です。

脅威の検出/防御機能

CASBは高度な脅威検出機能を持っており、クラウドサービスへの不正なアクセスや攻撃をリアルタイムで検出し、迅速に対処することができます。マルウェアは即時に隔離され、その影響を最小限に抑えることが可能です。 さらに、大量のデータダウンロードなど異常な挙動も検知します。これにより、脅威が実害を及ぼす前に対応することが可能となり、結果的に企業のビジネスを保護します。

CASBの導入メリット

近年、多くの企業がクラウドサービスを利用する中で、その情報セキュリティ対策として注目されるのがCASB(Cloud Access Security Broker)です。これは、企業と複数のクラウドサービスプロバイダーとの間に設けられるコントロールポイントで、クラウドサービス利用状況の可視化や制御を可能にします。では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

シャドーITの可視化

CASBの導入による最初のメリットはシャドーITの可視化です。未認可、未登録のITシステムやアプリケーション(シャドーIT)は情報漏れのリスクがあります。しかし、CASBを導入することにより、これらのシャドーITを可視化し、その利用状況を把握することができます。

企業内の誰が、何を、どのように利用しているのかを明確にすることで、情報管理の透明性が大幅に向上します。これにより、脅威を早期に察知し、対処することが可能になります。

利用制限の体系的実現

次に、CASBの有効性を示すメリットは利用制限の体系的実現です。クラウドサービスは便利さから多用されがちですが、無制限の利用はセキュリティリスクを高める要因となります。

CASBを導入することで、企業の情報セキュリティポリシーに基づき、アクセス制限やデータの使用制限など、システム的に制御することができます。これにより、情報の流出リスクを低減しながら、適切なクラウド利用を実現します。

効率と利便性の向上

さらに、CASBの導入は効率と利便性の向上ももたらします。コントロールポイントを一元化することで、管理担当者は一つのダッシュボードから全クラウドサービスの状態を確認できます。これにより管理作業の効率が向上します。

また、ユーザー視点では、セキュリティミスを防ぐための指導や警告が得られるため、安全なクラウド利用を実現できます。これにより、ユーザーの利便性も向上すると言えます。

一貫したセキュリティの提供

最後に、とても重要なメリットとして、CASBが一貫したセキュリティを提供することが挙げられます。クラウドサービスの種類が増えると、その都度セキュリティ設定をするのが難しくなります。

しかし、CASBを導入すれば、統一的なセキュリティポリシーを適用して、いずれのクラウドサービスでも一貫したセキュリティ管理を提供することが可能になります。これにより、企業の情報資産を効率よく、安全に管理することが可能となります。

CASBの導入チャレンジと解決策

では、CASB(Coud Access Security Broker)導入にあたってのチャレンジとそれぞれの解決策を見ていきましょう。

多くの企業がクラウド化に踏み切るにあたって、一般的に見られる課題はコスト、システム互換性、セキュリティの標準化・規制、そして実際の導入プラクティスにおけるベンダー選択です。

では、それぞれの問題について具体的に見ていきましょう。

導入コストとROIの考慮

CASBの導入は、当然ながら初期投資が必要となります。企業は導入コストを総合的に評価し、予算を効率よく活用するよう計画を立てることが重要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。組織は、CASBの導入によりもたらされるセキュリティリスクの軽減や利便性向上といったROI(投資回収期間)も考慮に入れなければなりません。

これらを考慮することで、適切な導入コストを見積もることが可能となります。

システム互換性の問題

CASB導入時のもう一つの課題は、既存のIT環境との互換性です。

企業が利用するクラウドサービスやネットワーク環境は多種多様で、システム間の互換性がなければ、セキュリティ監視や分析、ポリシー適用といったCASBの基本的な機能が正常に作動しない可能性があります。

したがって、対応可能なクラウドサービスの種類やシステムの互換性をしっかりと評価し、選択することが重要となります。

クラウドセキュリティの標準化と規制問題

セキュリティの初期段階では、標準化や規制が固まっていないため、適切なセキュリティポリシーを形成することが難しくなります。

CASBの導入は、そのような状況下でセキュリティ標準を定義し、規制に準拠するためのフレームワークを提供します。

しかし、未だ形成途上の標準化・規制にどう適応し、どのようにクラウドセキュリティ対策を施すかは、CASB導入時に深く考慮するべき事項の一つではあります。

ベンダー選択のエッセンシャルガイド

CASBのベンダーは数多く存在し、その中から最適な選択をすることは導入の成功を左右する重要な要素となります。

ベンダーの選択には、深い技術的理解だけでなく、ベンダーの信頼性やサポート体制、長期的なビジョンやシステムの拡張性といった要素を考慮に入れることが必要となります。

こういった全体的な視点を持つことで、真にビジネスに適したCASBベンダーを選択することができると言えるでしょう。

CASBの未来展望

クラウドサービスの全面的な利用化に伴い、CASB(Cloud Access Security Broker)の具体的な役割及び責任も一層拡大しています。このセクションではCASBの未来展望について説明していきます。具体的には、AIと機械学習の適応、リモートワーク時代の対策、クラウド環境の多様化とその対策強化、そしてクラウドセキュリティの新規課題と解決策についてふれます。

CASBの存在は、クラウドサービスの利活用と情報セキュリティ管理の舵取り役として、急速に進化し続けるIT環境に対応するための必要不可欠なインフラとなっています。

これからどのような展開を見せるのか、それぞれの観点から詳しく見ていきましょう。

AIと機械学習への適応

AIと機械学習の進化は、CASBの構築と運用を大きく助けています。特に、CASBはAIと機械学習を活用して、あらゆるクラウドサービスへの通信パターンを分析し、異常活動を自動で検知します。

これにより情報漏えいリスクを自動で未然に防いだり、迅速な対応を可能にします。

また、高度なAI技術は、企業のビジネスニーズに適応する新たなセキュリティポリシーの導入とその適用も助けています。

リモートワーク時代の対策

新しいワークスタイル改革の一環として、リモートワークの導入は企業にとって新たなセキュリティ課題を生み出しています。

CASBはリモートワーク環境における情報保護、アクセス制御、データ損失の防止などに対する即座の解決策を提供し、企業の運用リスクを最小限に抑えられるよう支援します。

特に、CASBは場所独立のセキュリティポリシーの適用と不正侵入の検出を実現し、リモートワークのセキュリティを保証します。

クラウド環境の多様化と対策強化

クラウドサービスの多様化と普及に伴い、個々の企業で導入するクラウドサービスの組み合わせはさらに複雑化しています。

このような状況下でCASBは多様なクラウドサービスに対する一元的なアクセスポイントとなり、セキュリティ施策の一貫性を保つ役割を果たします。

これにより、企業は複雑化するクラウド環境においても安心して業務を遂行できるようになります。

クラウドセキュリティの新規課題と解決策

クラウド利用に伴う新たなセキュリティ課題が日々発生し続けています。

CASBはこれらの課題に対して、既存のセキュリティ対策をブラッシュアップするだけでなく、新規の解決策も模索し、適用していくことが求められます。

業務効率化と情報安全保障のバランスを適切に取るためにも、CASBのダイナミックな進化と改善が絶えず必要とされるのです.

CASB導入で期待されるビジネスインパクト

CASBの導入は、企業の情報セキュリティを強化し、ビジネス運営全体を改善する大きなインパクトをもたらすと言われています。その中でも特に大きな影響を及ぼす4つの要素について説明します。

それらは、データ漏えいリスクの削減、ビジネス継続性の強化、コンプライアンスの確実性、IT運用の省力化と効率化です。

CASBを活用することで、これらの要素が効率的に改善すると期待されています。

データ漏えいリスクの削減

CASBを導入することにより、企業はデータ漏えいリスクを大幅に削減できます。CASBはクラウドサービスにアクセスする全てのデータを監視・管理し、不正アクセスや情報漏れのリスクを早期に検知することができます。

これにより、企業は情報資産を保護し、ビジネスの信頼性とブランド価値を維持することができます。

特に、機密情報を取り扱う企業では、データ漏えいリスクの削減は重要な課題となっています。

ビジネス継続性の強化

また、CASBはビジネス継続性を強化します。クラウドサービスを利用する企業にとって、サービス停止は大きな損失をもたらします。しかし、CASBでは、クラウドサービス内の通信を透明化し、異常な状態を早期に発見することができます。

それにより、問題が発生しても迅速に対応し、サービス停止を最小限に抑えることが可能です。

これは、企業の信頼性向上だけでなく、長期的なビジネス継続性の強化にも寄与します。

コンプライアンスの確実性

CASBの利用は、企業のコンプライアンス遵守を支援します。多くの企業では、コンプライアンス遵守が重要な課題となっています。CASBを援用することで、企業のプライバシーポリシー、情報保護規定に対する準拠を確実にすることが可能です。

これは、コンプライアンスの遵守が求められる現代社会において、企業にとって重要な要素となります。

コンプライアンスの確実性を達成することで、企業の社会的信頼性を確保することも可能です。

IT運用の省力化と効率化

最後に、CASBはIT運用の省力化と効率化に寄与します。CASB導入により、セキュリティ管理が一元化されるため、必要なリソースを大幅に削減することが可能となります。

また、自動的な検出や制御機能を利用することで、人手不足やスキル不足といった課題を解決することも可能になります。

これらの要素は、IT運用のよりスムーズで効率的な運営に向けた重要なステップとなります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム