コネクテッドインダストリーズとは? わかりやすく10分で解説
はじめに
コネクテッドインダストリーズとは
コネクテッドインダストリーズは、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)の進化により、物理的な製造現場とデジタルな情報空間を深く結びつけ、課題解決や新たな価値創造を推進する考え方です。経済産業省から発表されたこのコンセプトは、第4次産業革命(インダストリー4.0)の日本版として位置づけられています。
その主な目指すところは、企業間や産業間、国家間のデータ連携や利活用を重視し、それを通じて競争力を強化することです。そして、その達成の鍵となるのが人と機械・システムの協調、協力と協働を通じた課題解決、そして人間中心の考えを貫く人材育成の3つの柱です。
また、コネクテッドインダストリーズは、我が国の製造業の強みを生かして国際競争力を強化することを視野に入れています。その製造現場では正確なデータが豊富に蓄積されており、これらを活用することで、より高度な製造技術や新たなビジネスモデルを生み出すことが可能です。
コネクテッドインダストリーズの背景
コネクテッドインダストリーズの背景としては、IoT、AI、ビッグデータなどの進化が進行中であることや、その中でも製造業のデジタル化・コンピューター化が加速していることが挙げられます。
特に、2011年にドイツが発表した「インダストリー4.0」では、産業のデジタル化・コンピューター化を推進しています。これは現実世界の情報をIoTやセンサー技術で収集し、データ化してサイバー空間に送信、AIで分析し、その結果を現実世界にフィードバックするという、サイバーフィジカルシステム(CPS)を活用する考え方です。
日本のコネクテッドインダストリーズは、このインダストリー4.0の考え方をベースにしつつも、日本独自の産業構造や社会課題を考慮に入れたものになっています。元となる「モノづくり大国」日本の実情を反映したもので、独特な方向性を持っています。
デジタル化・コンピューター化の進展
近年、産業界全般におけるデジタル化・コンピューター化の進展は劇的で、これは各国でのインダストリー4.0への取組みを背景にしています。近い将来、物理世界とデジタル世界が融合することで生じ、産業全体が大幅に変革する可能性を秘めています。
製造業では工場内の各装置やプロセスが情報ネットワークに接続され、データがリアルタイムに集約・解析されることで、革新的な経営管理や価値創造が可能になります。その結果、製品の設計から生産、販売に至るまでの一連のプロセスが最適化され、より安価かつ高品質な製品を提供することが可能となります。
コネクテッドインダストリーズは、このデジタル化・コンピューター化の進展を最大限に活用し、企業間や産業間の境界を超えた協業や共創による新たな価値創造につなげる動きです。
インダストリー4.0とコネクテッドインダストリーズ
インダストリー4.0は、IoT、AI、ビッグデータなどの技術進化が牽引する現象で、その中で製造業のデジタル化・コンピューター化が進んでいます。
このような背景から生まれたコネクテッドインダストリーズは、日本が長年蓄積してきた現場力を活かし、製造現場のデータをデジタル化し、それを活用して新たな価値を創造する考え方です。これは、製造業がデジタル技術を活用して変革を遂げ、新たな競争力を築くための指針とも言えます。
コネクテッドインダストリーズの進展により、インダストリー4.0の時代においても、経済成長を牽引する新たな競争力の源泉が生まれ、社会全体の持続的な発展に寄与するものと期待されています。
コネクテッドインダストリーズの特徴
コネクテッド・インダストリーズとは、企業間や産業間、さらには国家間の連携を重視し、データ利活用を通じて価値創造を目指す概念です。特に日本版のコネクテッド・インダストリーズは製造現場に蓄積された豊富なデータを活用することを重視しています。しかしながら、このデータ活用に伴う課題やIoTとAIの導入状況については一部未解決の点も存在します。
また、コネクテッド・インダストリーズの推進には人と機械・システムの協調、協力と協働を通じた課題解決、そして人材育成が必要とされています。これらの観点からも、コネクテッド・インダストリーズの特徴とその課題を詳細に解説していきます。
コネクテッドインダストリーズの3つの柱
コネクテッド・インダストリーズの推進には、まず<人と機械・システムの協調>が必要となります。これは、製造現場での人間と機械の連携を通じて生産効率を高めるためのものです。
次に、<協力と協働を通じた課題解決>も重視されています。異なる企業や産業間で課題を共有し、互いの知識や技術を活かすことで新たな価値を創造します。
最後に、<人間中心の考えを貫く人材育成>を掲げています。テクノロジーの発達は便利さを提供しますが、それを適切に活用するための人材育成が必要とされています。
企業間、産業間、国家間の連携
それぞれ異なる専門性や視点を持つ企業、産業、国間の連携がコネクテッド・インダストリーズの特徴とも言えます。この連携によって、データの利活用が可能となり、新たなビジネスチャンスが生まれます。
また、この連携により多様な視点から課題を捉えることが可能となります。これにより、より効果的な解決策の提案や新たなイノベーションの創出が期待されます。
しかし、企業間での情報共有にはセキュリティの問題も存在します。情報の安全管理が重要となるため、セキュリティ強化への投資や取り組みも不可欠となります。
データ利活用
コネクテッド・インダストリーズでは、蓄積された各種データの利活用が重視されます。例えば生産データ、製品データ、需要データ等をAIで分析し、これを製造現場やビジネス戦略にフィードバックすることが可能になります。
しかし、データ活用にはセキュリティが課題となります。また、データ分析には専門のスキルが必要となり、その人材確保もまた大きな課題となります。
また、確かなデータを得ることは容易ではありません。データの取得、保存、管理の仕組みを整えることも重要な課題となります。
IoTとAIの導入
IoTとAIの導入は、コネクテッド・インダストリーズを推進するための重要な要素となります。これらを活用することで、生産効率向上や品質管理の向上、そして新たなビジネスモデルの創出などが可能となります。
しかし、IoTとAIの導入には大きな費用や時間、そして専門知識が必要となります。これらを確保するのは容易なことではありません。
また、IoTやAIを導入したシステムのセキュリティ対策も重要な課題となります。情報が漏えいし、企業の経営に大きなダメージを与える可能性もあります。これらの課題にどう対応していくかが、コネクテッド・インダストリーズの今後の展開に大きく影響します。
コネクテッドインダストリーズと製造業
コネクテッドインダストリーズが製造業に与える影響は深刻です。ここでは、その具体的な影響を分野別に解説します。
コネクテッドインダストリーズの影響と製造業
第4次産業革命とも称されるコネクテッドインダストリーズは、製造業に多大な影響を与えています。IoTとAIの進化は、製造現場でもデータの収集や分析、活用が進み、効率化や品質向上に貢献しています。
しかし、他国に比べてIoTやAIの導入が遅れている日本の製造業においては、経済産業省が提唱するコネクテッドインダストリーズがより一層の重要性を持ってきています。
コネクテッドインダストリーズは、企業間、産業間、国家間の連携を重視し、データの活用を推進します。
製造現場のデータ蓄積
製造業の強みの1つは、製造現場に詳細なデータが豊富に蓄積されていることです。しかし、それぞれの企業が独自に蓄積したデータを活用するには限界がありました。
コネクテッドインダストリーズはこの問題を解決します。企業間のデータ共有や連携により、これまでにない新たな解析や洞察、さらには製品開発やサービス改善などに活用できます。
経済産業省は、セキュリティ確保を条件にデータ活用を行う事業者を認定・支援する制度も設けています。
人と機械・システムの協調
コネクテッドインダストリーズが掲げる理念の1つに「人と機械・システムの協調」があります。これは、人間と機械が共に働き、相互に学び合うという考え方です。
製造業においても、機械との協調により作業効率を上げるだけでなく、人間の安全を確保したり、作業の質を向上させるなど、様々な改善が期待できます。
この思想は、IoTやAIの導入だけでなく、人間中心の職場作りや人材育成にも反映されており、経済産業省もその重要性を認識し、人材育成の柱として位置づけています。
製造業の分野別活用例
重点分野として、経産省が掲げている「ものづくり・ロボティクス」も見逃せません。ここでは、具体的な分野別の活用例とその効果について解説します。
例えば、製造現場でのIoTとロボット技術の活用により、時間や労力のかかる作業を自動化することが可能になります。さらに、ロボットが人間と協調して働くコラボレーティブロボットは、複雑な作業や人間の肉体的負担を軽減します。
また、AIと製造データを組み合わせることで、製造過程の最適化や品質予測が可能になり、より高品質な製品を安定的に生産することが可能になります。
コネクテッドインダストリーズの推進
経済産業省はコネクテッド・インダストリーズの推進方針を明らかにしています。以下にその主要な内容を詳しく見ていきましょう。
重点分野と政策資源の投入
日本政府はコネクテッド・インダストリーズを推進するためには特定の重点分野に力を入れるべきと考えています。それらの分野は「自動運転・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ・素材」「プラント・インフラ保守」「スマートライフ」の5つです。
これら5つの分野への取り組みは、全体の進展を促進するための基盤となります。これらの分野に対しては、政府は政策資源を集中投入し、取り組みを加速する方針を示しています。
これらの分野がデジタル化と共に次世代の成長を牽引する存在となることが期待されています。
企業間のデータ活用とセキュリティ確保
コネクテッド・インダストリーズの推進におけるもう一つの重要な戦略の柱はデータの活用です。企業間でデータを共有し、それを利用することによって、新たなサービスが生まれたり、効率化が進んだりすることが期待されています。
しかし、その一方で、データを活用するにはセキュリティ確保が必要不可欠です。そのため、セキュリティを確保した上でデータを活用する事業者を認定し、支援を行う制度を創設する方針も示されています。
企業間でのデータの取引や活用が盛んになることで、ビジネスの可能性は大いに広がるでしょう。
「コネクテッド・インダストリーズ税制」の検討
さらに、政府はコネクテッド・インダストリーズの推進を後押しするために、「コネクテッド・インダストリーズ税制」の導入も検討しています。
この税制は、新たな取り組みを推進する企業に対して税金上の優遇措置を与えることを目指しています。これにより、企業が新技術への投資を行いやすくなることが期待されています。
さらに、この税制により企業間の競争が促進され、新たなイノベーションが生まれる可能性もあります。
人間中心の考えを貫く人材育成とその取り組み
コネクテッド・インダストリーズの推進には、人材の育成が欠かせません。人と機械・システムの協調を掲げるコネクテッド・インダストリーズでは、それを支える人材の存在が不可欠です。
そこで、経済産業省は人材育成にも力を入れています。「人間中心」の考えを貫くためには、必要なスキルを持った人材の育成が不可欠であり、そのための取り組みが行われています。
未来の産業を牽引する次世代の人材を育成することが、コネクテッド・インダストリーズを成功に導く一つの鍵となるでしょう。
コネクテッドインダストリーズと国際標準化
第4次産業革命の舞台では、各国の得意分野や取り組みが異なるため、その仕組みを最大限活用し、一体化させるために国際標準化が求められています。ここでは、日本のコネクテッドインダストリーズがどのように国際標準化と関わり、その位置付けを築いているのかについて見ていきましょう。
国際標準化とその重要性
国際標準化は産業の国際競争力を保つために重要な要素です。各国が有効にそれぞれの特性や技術を活用するためには、共通のルールや規格が必要となります。この一貫した規格が存在することで、技術の交流がスムーズに行われ、連携が可能となり、新たな価値を生み出すことができます。
また、国際標準化は産業の安定性と信頼性を確保する一方で、テクノロジーの誤用や不適切な利用を防ぎます。これにより、技術の適切な普及や成長、イノベーションの促進にもつながるのです。
今後のコネクテッドインダストリーズの発展には、国際標準化が不可欠であり、それが日本の産業競争力を高める要因となります。
ドイツとの連携とインダストリー4.0
国際標準化を進めるうえで、注目すべきはドイツとの連携です。ドイツは「インダストリー4.0」を提唱した先進国であり、産業のデジタル化・コンピューター化を推進しています。これはサイバーフィジカルシステム(CPS)の活用により、産業全体の効率性と競争力を向上させるイニシアチブです。
日本のコネクテッドインダストリーズとドイツのインダストリー4.0は、互いに補完し合う関係にあると言えます。この連携により、国際標準化の推進や産業全体の効率性の向上が期待できます。
これらの取り組みは日本の産業の国際競争力を強化することに寄与し、コネクテッド・インダストリーズの発展を促進します。
サイバーフィジカルシステム(CPS)と国際標準化
サイバーフィジカルシステム(CPS)はインダストリー4.0の中心的な要素であり、ICT(情報通信技術)と物理システムを統合するという、新たな形の産業システムです。このCPSは現実世界とサイバー空間とをつなげ、データの取得から解析、そして実世界へのフィードバックまでを行います。
このCPSにおいても、各国での仕様や取り扱いが異なるため、その活用を最大化するには国際標準化が重要となります。特に日本とドイツとの間でのCPSの規格や利用方法の標準化は、産業の発展と競争力向上に寄与します。
CPSの国際標準化は多大な労力と時間を要しますが、その成功はコネクテッド・インダストリーズ全体の効果を最大化します。
コネクテッドインダストリーズと国際競争力
最終的に、コネクテッドインダストリーズと国際標準化の取り組みは、日本の産業の国際競争力を強化します。新たな価値の創出とイノベーションの促進を通じて、産業の持続的な成長と発展を実現します。
さらに、上述したような国際標準化の推進や他国との連携は、日本を戦略的な産業リーダーとして位置づけます。これにより、日本の産業は国際的な評価を受け、より多くの投資やパートナーシップの機会を得ることが可能となります。
これらが、コネクテッドインダストリーズと国際標準化の関係を示す重要な概念です。これらの理解は、産業の新たな成長と可能性を見据える上で必要不可欠となるでしょう。
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