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管理策タイプ(予防,検知,是正)とは? 10分でわかりやすく解説

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目次

情報セキュリティリスクを効果的に管理するためには、リスクの発生を未然に防ぐ「予防」、リスクの発生を早期に発見する「検知」、発生したリスクによる影響を最小限に抑える「是正」の3つの管理策タイプを適切に組み合わせることが重要です。本記事では、管理策タイプの概要や各タイプの詳細について解説し、自社のシステムをより安全で信頼性の高いものにするためのヒントをお伝えします。

管理策タイプ(予防・検知・是正)の概要

管理策タイプとは何か

管理策タイプとは、情報セキュリティマネジメントにおいて、リスクに対処するための管理策を分類したものです。管理策は、リスクの発生を未然に防ぐ「予防」、リスクの発生を早期に発見する「検知」、発生したリスクによる影響を最小限に抑える「是正」の3つのタイプに分けられます。

予防・検知・是正の定義

各管理策タイプの定義は以下の通りです。

  1. 予防:リスクの発生そのものを防ぐための管理策。アクセス制御、暗号化、従業員教育などが含まれます。
  2. 検知:リスクの発生を早期に発見するための管理策。ログ監視、脆弱性スキャン、侵入検知システムなどが含まれます。
  3. 是正:発生したリスクによる影響を最小限に抑えるための管理策。インシデント対応、バックアップ、災害復旧計画などが含まれます。

管理策タイプの重要性

管理策タイプを適切に組み合わせることで、情報セキュリティリスクを効果的に管理することができます。予防策により、リスクの発生自体を防ぐことができ、検知策により、万が一リスクが発生した場合でも早期に発見し、是正策により、その影響を最小限に抑えることができます。

リスクマネジメントにおける管理策タイプの位置づけ

管理策タイプは、リスクマネジメントプロセスの中で重要な役割を果たします。以下の表は、リスクマネジメントプロセスと管理策タイプの関係を示しています。

リスクマネジメントプロセス 管理策タイプ
リスクの特定 -
リスクの分析・評価 -
リスク対応策の決定 予防・検知・是正
リスク対応策の実施 予防・検知・是正
モニタリングとレビュー 検知

リスクの特定、分析・評価の後、リスク対応策の決定と実施の段階で、予防・検知・是正の管理策が選択され、実施されます。また、モニタリングとレビューの段階では、主に検知策が活用されます。

このように、管理策タイプはリスクマネジメントプロセスと密接に関連しており、各段階で適切な管理策を選択・実施することが重要です。

予防型管理策の詳細解説

予防型管理策の目的

予防型管理策は、情報セキュリティリスクの発生そのものを未然に防ぐことを目的としています。潜在的な脅威や脆弱性を事前に特定し、それらに対処することで、インシデントの発生を防ぎ、情報資産を保護します。予防型管理策は、情報セキュリティ対策の基盤となる重要な役割を担っています。

具体的な予防型管理策の例

予防型管理策には、以下のような具体的な対策が含まれます。

  1. アクセス制御:情報資産へのアクセスを適切に管理し、不正アクセスを防止する。
  2. 暗号化:機密情報を暗号化し、不正な閲覧や漏洩を防ぐ。
  3. 従業員教育:情報セキュリティに関する従業員の意識向上と適切な行動を促す。
  4. 脆弱性管理:システムやソフトウェアの脆弱性を定期的に診断し、修正する。
  5. 物理的セキュリティ:施設への不正な立ち入りや機器の盗難を防止する。

これらの管理策を適切に組み合わせることで、多層的な予防型管理策を構築し、情報セキュリティリスクを効果的に低減することができます。

予防型管理策の導入手順

予防型管理策を導入する際は、以下のような手順が推奨されます。

  1. リスク評価:自社の情報資産とそれに対する脅威や脆弱性を特定し、リスクを評価する。
  2. 管理策の選定:リスク評価の結果に基づき、適切な予防型管理策を選定する。
  3. 導入計画の策定:選定した管理策の導入計画を策定し、必要なリソースを確保する。
  4. 管理策の実装:計画に従って、管理策を実装し、運用を開始する。
  5. 評価と改善:管理策の有効性を定期的に評価し、必要に応じて改善を行う。

これらの手順を着実に実行することで、自社の情報セキュリティ状況に適した予防型管理策を効果的に導入することができます。

予防型管理策の効果と限界

予防型管理策は、情報セキュリティリスクの低減に大きく貢献しますが、いくつかの限界もあります。

予防型管理策の効果:

  • リスクの発生を未然に防ぐことができる。
  • 情報資産の保護レベルを向上させる。
  • 従業員のセキュリティ意識を高める。

予防型管理策の限界:

  • すべてのリスクを完全に排除することはできない。
  • 新たな脅威や脆弱性への対応に時間がかかる場合がある。
  • 人的要因によるエラーやミスを完全に防ぐことは難しい。

これらの限界を認識した上で、予防型管理策を他の管理策タイプ(検知型、是正型)と適切に組み合わせることが重要です。複数の管理策タイプを組み合わせることで、情報セキュリティリスクに対するより包括的な対策を講じることができます。

検知型管理策の詳細解説

検知型管理策の目的

検知型管理策は、情報セキュリティリスクの発生を早期に発見することを目的としています。予防型管理策で防ぎきれなかったリスクや、新たに発生したリスクを迅速に特定し、対処するために不可欠な役割を果たします。検知型管理策により、インシデントによる被害を最小限に抑えることができます。

具体的な検知型管理策の例

検知型管理策には、以下のような具体的な対策が含まれます。

  1. ログ監視:システムやアプリケーションのログを継続的に監視し、異常な動作を検知する。
  2. 脆弱性スキャン:定期的にシステムやネットワークの脆弱性をスキャンし、新たな脆弱性を発見する。
  3. 侵入検知システム(IDS):ネットワークトラフィックを分析し、不正なアクセスや攻撃を検知する。
  4. セキュリティ監査:セキュリティ対策の有効性を定期的に評価し、改善点を特定する。
  5. 従業員からの報告:セキュリティインシデントや懸念事項を従業員が報告できる体制を整える。

これらの管理策を組み合わせることで、多角的な視点からリスクを検知し、迅速な対応を可能にします。

検知型管理策の導入手順

検知型管理策を導入する際は、以下のような手順が推奨されます。

  1. 検知対象の特定:検知すべきリスクや異常事象を明確にする。
  2. 検知方法の選定:リスクに応じた適切な検知方法を選択する。
  3. 検知基準の設定:異常事象を判断するための基準を設定する。
  4. 検知体制の構築:検知結果を分析・報告する体制を整備する。
  5. 検知精度の向上:誤検知を減らし、検知精度を継続的に改善する。

これらの手順を踏まえることで、自社の情報セキュリティ状況に適した検知型管理策を効果的に導入・運用することができます。

検知型管理策の効果と限界

検知型管理策は、情報セキュリティリスクの早期発見に大きく貢献しますが、いくつかの限界もあります。

検知型管理策の効果:

  • リスクの発生を早期に検知し、迅速な対応を可能にする。
  • 予防型管理策では防ぎきれないリスクを特定できる。
  • セキュリティインシデントによる被害を最小限に抑えられる。

検知型管理策の限界:

  • すべてのリスクを検知できるわけではない。
  • 誤検知や見逃しが発生する可能性がある。
  • 検知後の対応が適切でない場合、被害が拡大する可能性がある。

これらの限界を理解した上で、検知型管理策を予防型・是正型管理策と適切に組み合わせ、多層的なセキュリティ対策を講じることが重要です。また、検知型管理策の運用には、専門知識を持つ人材の確保と継続的な改善が不可欠です。

是正型管理策の詳細解説

是正型管理策の目的

是正型管理策は、情報セキュリティインシデントが発生した際に、その影響を最小限に抑え、迅速に通常の状態に復旧することを目的としています。予防型管理策や検知型管理策では完全に防ぐことができなかった事態に対して、是正型管理策が重要な役割を果たします。是正型管理策により、インシデントによる事業への影響を最小化し、信頼性や評判の低下を防ぐことができます。

具体的な是正型管理策の例

是正型管理策には、以下のような具体的な対策が含まれます。

  1. インシデント対応計画:インシデント発生時の対応手順や役割分担を定めた計画を策定する。
  2. バックアップと復旧:重要なデータや設定情報を定期的にバックアップし、迅速な復旧を可能にする。
  3. フォレンジック調査:インシデントの原因や影響範囲を特定するための調査を行う。
  4. コミュニケーション:ステークホルダーに適切な情報を提供し、風評被害を最小限に抑える。
  5. 再発防止策の実施:インシデントの原因を分析し、再発を防ぐための対策を講じる。

これらの管理策を適切に組み合わせることで、インシデントによる影響を最小限に抑え、迅速な復旧と再発防止を実現することができます。

是正型管理策の実施手順

是正型管理策を実施する際は、以下のような手順が推奨されます。

  1. インシデントの検知:インシデントの発生を迅速に検知する。
  2. 初期対応:インシデントの影響を最小限に抑えるための初期対応を行う。
  3. 調査と分析:インシデントの原因や影響範囲を特定するための調査・分析を行う。
  4. 復旧:影響を受けたシステムやデータの復旧作業を実施する。
  5. 再発防止:インシデントの原因を踏まえ、再発防止策を策定・実施する。

これらの手順を着実に実行することで、インシデントによる影響を最小限に抑え、迅速な復旧と再発防止を達成することができます。

是正型管理策の効果的な活用方法

是正型管理策を効果的に活用するためには、以下のような点に留意することが重要です。

  • インシデント対応計画の定期的な見直しと改善を行う。
  • バックアップの有効性を定期的にテストし、確実に復旧できることを確認する。
  • フォレンジック調査の専門性を高め、迅速かつ正確な原因特定を可能にする。
  • ステークホルダーとの適切なコミュニケーションを維持し、信頼関係を構築する。
  • 再発防止策の実施状況を監視し、継続的な改善を図る。

これらの活動を通じて、是正型管理策の有効性を高め、情報セキュリティインシデントに対する組織のレジリエンスを強化することができます。是正型管理策は、予防型・検知型管理策と併せて、情報セキュリティ管理の重要な一角を担っています。

まとめ

管理策タイプ(予防、検知、是正)は、情報セキュリティリスクを効果的に管理するための重要な概念です。予防策でリスクの発生を未然に防ぎ、検知策で早期発見し、是正策で影響を最小限に抑えることで、多層的なセキュリティ対策を実現できます。自社のリスク状況に応じて適切な管理策を選択・実施し、継続的な改善を図ることが、システムの安全性と信頼性向上のカギとなります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム