クリプトジャッキングとは? 10分でわかりやすく解説
UnsplashのShubham Dhageが撮影した写真
最近あなたのパソコンの動作が重く、ファンの音がいつもより大きくなっていませんか?その原因は、クリプトジャッキングと呼ばれるサイバー攻撃かもしれません。この記事では、クリプトジャッキングの仕組みや被害状況、そして効果的な対策方法について詳しく解説します。
クリプトジャッキングとは
クリプトジャッキングの定義
クリプトジャッキングとは、ウェブサイトやアプリケーションに不正に埋め込まれたスクリプトによって、ユーザーのデバイスのリソースを利用して、暗号通貨をマイニング(採掘)する行為を指します。攻撃者は、ユーザーに無断で、その計算リソースを利用して暗号通貨を獲得します。
クリプトジャッキングの仕組み
クリプトジャッキングは以下のような手順で行われます。
- 攻撃者が、暗号通貨をマイニングするためのスクリプトを作成します。
- 攻撃者は、そのスクリプトを、脆弱性のあるウェブサイトやアプリケーションに埋め込みます。
- ユーザーがそのウェブサイトやアプリケーションにアクセスすると、スクリプトが実行され、ユーザーのデバイスのCPUやGPUが利用されて、暗号通貨のマイニングが行われます。
- マイニングによって得られた暗号通貨は、攻撃者のウォレットに送信されます。
このように、ユーザーは気づかないうちに、自分のデバイスのリソースを消費させられ、攻撃者に暗号通貨を獲得させてしまうのです。
クリプトジャッキングの目的
クリプトジャッキングの主な目的は、攻撃者が金銭的利益を得ることです。暗号通貨のマイニングには多大な計算リソースが必要であり、攻撃者はその費用を負担したくありません。そこで、多数のユーザーのデバイスを利用することで、自らコストをかけずに暗号通貨を獲得しようとするのです。
また、一部の攻撃者は、クリプトジャッキングを、サービス妨害攻撃(DoS攻撃)の一種として利用することもあります。大量のデバイスでマイニングを行わせることで、対象のウェブサイトやサービスのパフォーマンスを低下させ、利用不能な状態に陥らせることができるのです。
クリプトジャッキングの歴史
クリプトジャッキングは、2017年頃から急増しました。この時期は、暗号通貨の価値が急騰し、多くの人々が暗号通貨に注目し始めた時期でもあります。攻撃者は、この暗号通貨ブームに乗じて、クリプトジャッキングを行うようになったのです。
初期のクリプトジャッキングでは、主にモネロ(Monero)という暗号通貨がマイニングの対象とされていました。モネロは、トランザクションの匿名性が高く、CPUでもマイニングが可能であるという特徴があったためです。
その後、クリプトジャッキングの手法は徐々に洗練され、より検出されにくい形で行われるようになっています。また、モネロ以外の暗号通貨もマイニングの対象とされるようになりました。
現在では、クリプトジャッキングは、サイバー犯罪の一形態として広く認知されるようになっています。ウェブサイト運営者や企業は、クリプトジャッキング対策を講じることが重要な課題となっているのです。
クリプトジャッキングによる被害
クリプトジャッキングは、企業や個人に様々な被害をもたらします。ここでは、クリプトジャッキングによる主な被害について解説いたします。
クリプトジャッキングによるシステムへの影響
クリプトジャッキングは、企業のシステムに大きな負荷をかけ、パフォーマンスを低下させる可能性があります。ユーザーのデバイスのリソースを無断で利用するため、サーバーやネットワークに過剰な負荷がかかり、レスポンスの遅延やシステムの不安定化を引き起こすことがあります。これによって、業務の効率が低下したり、サービスの提供に支障をきたしたりするおそれがあるのです。
また、クリプトジャッキングによって、システムのセキュリティが脅かされる危険性もあります。攻撃者がマイニングのためのスクリプトを埋め込むために、システムの脆弱性を悪用する可能性があるからです。これによって、他の種類のサイバー攻撃の踏み台にされたり、データの漏洩や改ざんが発生したりするリスクが高まります。
クリプトジャッキングによるユーザーへの影響
クリプトジャッキングは、ユーザーにも大きな迷惑をかけます。ユーザーのデバイスのCPUやGPUが無断で利用されるため、バッテリーの消耗が早まったり、デバイスの動作が遅くなったりします。また、ユーザーのデータ通信量が増大し、通信料金の増加を招く可能性もあります。
さらに、ユーザーのプライバシーが侵害される危険性もあります。クリプトジャッキングに利用されるスクリプトによって、ユーザーの個人情報が収集されたり、ユーザーの行動が追跡されたりする可能性があるのです。
クリプトジャッキングによる電力消費の増大
クリプトジャッキングは、大量の電力を消費します。暗号通貨のマイニングには多大な計算リソースが必要であり、そのために多くの電力が消費されるからです。この電力消費は、企業のエネルギーコストを増大させ、環境負荷を高める要因にもなります。
特に、サーバーやデータセンターでクリプトジャッキングが行われた場合、電力消費の増大は深刻な問題となります。多数のサーバーが24時間365日稼働しているため、クリプトジャッキングによる電力消費の増大は、企業の経済的負担を大きくするのです。
クリプトジャッキングによる企業イメージの悪化
クリプトジャッキングは、企業のイメージを大きく損ねる可能性があります。自社のウェブサイトやアプリケーションがクリプトジャッキングに利用されていたことが発覚すれば、企業の信頼性は大きく揺らぎます。ユーザーからは、セキュリティ対策が不十分であると見なされ、サービスの利用を控えられるおそれがあります。
また、クリプトジャッキングは、企業の社会的責任にも関わる問題です。ユーザーのリソースを無断で利用し、環境負荷を高めるクリプトジャッキングは、企業倫理に反する行為といえます。こうした行為を防げなかった企業は、社会からの信頼を失う危険性があるのです。
以上のように、クリプトジャッキングは、企業や個人に多大な被害をもたらします。システムの安定性やセキュリティ、ユーザーの利便性やプライバシー、企業の経済性やイメージなど、様々な側面に悪影響を及ぼすのです。こうした被害を防ぐためには、クリプトジャッキング対策を講じることが不可欠です。企業は、自社のシステムの脆弱性を点検し、適切なセキュリティ対策を施すとともに、ユーザーに対して注意喚起を行うことが求められます。
クリプトジャッキングへの対策
クリプトジャッキング対策の必要性
クリプトジャッキングは、企業や個人に多大な被害をもたらす可能性があるため、適切な対策を講じることが不可欠です。システムのパフォーマンス低下やセキュリティ脅威、ユーザーの利便性やプライバシーの侵害、電力消費の増大、企業イメージの悪化など、様々なリスクが存在するからです。これらのリスクを軽減し、安全で安定したシステム運用を実現するためには、クリプトジャッキング対策に取り組むことが重要となります。
特に企業においては、自社のウェブサイトやアプリケーションがクリプトジャッキングに利用されることを防ぐことが、事業継続や信頼性の維持に直結する課題といえます。ユーザーのリソースを無断で利用するクリプトジャッキングは、企業倫理に反する行為であり、社会的責任を問われる可能性があるのです。こうしたリスクを回避し、ユーザーに安心してサービスを利用してもらうためには、クリプトジャッキング対策を積極的に推進することが求められます。
ウェブサイト管理者ができるクリプトジャッキング対策
ウェブサイト管理者は、自社のウェブサイトがクリプトジャッキングに利用されることを防ぐために、以下のような対策をとることが推奨されます。
- 定期的なセキュリティ診断の実施
ウェブサイトの脆弱性を定期的にチェックし、速やかに修正することが重要です。診断ツールを活用したり、専門家に依頼したりすることで、網羅的にリスクを把握できます。 - サードパーティ製のスクリプトの管理
外部から提供されるスクリプトについては、信頼できるソースからのものであることを確認し、必要に応じて独自にホストすることが望ましいです。 - コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の設定
CSPを適切に設定することで、許可されていないスクリプトの実行を制限できます。スクリプトの読み込み元を限定することで、クリプトジャッキングのリスクを軽減できるのです。 - ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)の導入
WAFを導入することで、既知のクリプトジャッキングスクリプトをブロックしたり、不審な通信を検知したりすることができます。
これらの対策を組み合わせることで、ウェブサイト管理者は、クリプトジャッキングのリスクを大幅に軽減することができるのです。
ユーザーができるクリプトジャッキング対策
ユーザーも、クリプトジャッキングから自身を守るために、以下のような対策をとることが推奨されます。
- ウェブブラウザの拡張機能の活用
クリプトジャッキングをブロックする拡張機能を導入することで、不正なスクリプトの実行を防ぐことができます。信頼できる拡張機能を選ぶことが重要です。 - ソフトウェアの更新
オペレーティングシステムやウェブブラウザ、プラグインなどを常に最新の状態に保つことで、既知の脆弱性を突かれるリスクを軽減できます。 - 不審なウェブサイトへのアクセス制限
信頼できないウェブサイトへのアクセスを控えることで、クリプトジャッキングに利用されるリスクを下げることができます。
ユーザーが自ら対策をとることで、クリプトジャッキングの被害を最小限に抑えることができるのです。
セキュリティソフトウェアによるクリプトジャッキング対策
セキュリティソフトウェアを活用することで、より高度なクリプトジャッキング対策を実現できます。具体的には、以下のような機能を備えたソフトウェアの導入が推奨されます。
機能 | 説明 |
---|---|
不正スクリプトのブロック | 既知のクリプトジャッキングスクリプトをデータベース化し、そのスクリプトの実行をブロックする機能です。新しいスクリプトにも対応できるよう、定期的なデータベースの更新が必要です。 |
CPU使用率のモニタリング | システムのCPU使用率を監視し、異常な高負荷が発生した場合に警告を発する機能です。クリプトジャッキングによるCPU使用率の急増を検知できます。 |
不審なトラフィックの検知 | 暗号通貨のマイニングプールとの通信など、不審なネットワークトラフィックを検知する機能です。未知のクリプトジャッキングにも対応できる可能性があります。 |
これらの機能を備えたセキュリティソフトウェアを導入することで、企業は包括的なクリプトジャッキング対策を実施できます。ただし、セキュリティソフトウェアは万能ではないため、前述のような他の対策と組み合わせることが望ましいです。多層的な防御を行うことで、クリプトジャッキングのリスクをより効果的に軽減できるのです。
クリプトジャッキングは、急速に進化する脅威であり、完全に防ぐことは容易ではありません。しかし、適切な対策を講じることで、そのリスクを大幅に軽減することは可能です。ウェブサイト管理者は自社システムのセキュリティ強化に努め、ユーザーは自衛策をとり、セキュリティベンダーは高度な防御ソリューションを提供します。こうした多面的な取り組みを通じて、クリプトジャッキングという脅威に立ち向かっていくことが求められているのです。
クリプトジャッキングの動向と今後
クリプトジャッキングの最新動向
クリプトジャッキングは、近年急速に拡大している脅威です。攻撃者は、より巧妙な手法を用いて、ウェブサイトやアプリケーションにマイニングスクリプトを埋め込むようになっています。特に、正規のウェブサイトが改ざんされ、知らないうちにクリプトジャッキングに利用されるケースが増加しています。また、モバイルデバイスを標的としたクリプトジャッキングも確認されるようになりました。
クリプトジャッキングの対象となる暗号通貨も、モネロだけでなく、ビットコインやイーサリアムなど、様々なものに広がっています。攻撃者は、マイニングの効率を高めるために、複数の暗号通貨を同時にマイニングするなどの工夫も凝らしています。
クリプトジャッキングの検知技術の進歩
クリプトジャッキングが高度化する一方で、それを検知するための技術も進歩しています。セキュリティベンダーは、クリプトジャッキングに特化した防御ソリューションを開発し、提供するようになりました。これらのソリューションでは、既知のマイニングスクリプトのデータベースを活用したり、CPU使用率の異常な高まりを検知したりすることで、クリプトジャッキングを見つけ出すことができます。
また、ブラウザベンダーも、クリプトジャッキング対策に乗り出しています。一部のブラウザでは、マイニングスクリプトをブロックする機能が標準で搭載されるようになりました。こうした動きは、今後さらに広がっていくものと予想されます。
クリプトジャッキング対策の重要性
クリプトジャッキングは、企業や個人に多大な被害をもたらす可能性があります。システムのパフォーマンス低下やセキュリティ脅威、ユーザーの利便性やプライバシーの侵害、電力消費の増大、企業イメージの悪化など、様々なリスクが存在するのです。これらのリスクを軽減するためには、適切なクリプトジャッキング対策を講じることが不可欠です。
ウェブサイト管理者は、定期的なセキュリティ診断の実施、サードパーティ製スクリプトの管理、CSPの設定、WAFの導入などの対策をとることが推奨されます。ユーザーも、ブラウザ拡張機能の活用、ソフトウェアの更新、不審なサイトへのアクセス制限などの自衛策をとることが望ましいです。
企業におけるクリプトジャッキング対策の必要性
特に企業においては、クリプトジャッキング対策を積極的に推進することが求められます。自社のウェブサイトやアプリケーションがクリプトジャッキングに利用されることは、事業継続や信頼性の維持に直結する課題だからです。ユーザーのリソースを無断で利用するクリプトジャッキングは、企業倫理に反する行為であり、社会的責任を問われる可能性があります。
企業は、セキュリティベンダーと連携し、高度なクリプトジャッキング対策ソリューションを導入することが推奨されます。不正スクリプトのブロック、CPU使用率のモニタリング、不審なトラフィックの検知など、多層的な防御を行うことで、クリプトジャッキングのリスクを効果的に軽減できるのです。
クリプトジャッキングは、今後も進化を続けると予想されます。企業は、この脅威に対して常に警戒を怠らず、適切な対策を講じ続けることが肝要です。セキュリティ対策の強化は、企業の持続的な発展のために不可欠な取り組みなのです。
まとめ
クリプトジャッキングは、ユーザーのデバイスを乗っ取り、暗号通貨マイニングに利用する悪質な攻撃手法です。知らないうちにCPUやGPUのリソースを消費させられ、システムのパフォーマンス低下やセキュリティ上の脅威にさらされるリスクがあります。企業は自社サイトの脆弱性診断や不正スクリプトのブロック、ユーザーはブラウザ拡張機能の活用やソフトウェア更新など、多層的な対策で防御することが求められます。今後、巧妙化するクリプトジャッキングに備え、セキュリティ強化を継続的に進めていくことが肝要です。
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