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CVSSとは? わかりやすく10分で解説

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CVSS(Common Vulnerability Scoring System)とは

CVSS(Common Vulnerability Scoring System)は、ソフトウェアまたはシステムの脆弱性の深刻度を評価するための国際標準化されたスコアリングシステムです。このシステムを使用することで、さまざまな種類の脆弱性を測定し、一致した基準で評価することが可能となります。

10点満点のスコアで評価され、その範囲は「低い」から「高い」までの5段階に分けられています。これにより、組織はセキュリティ対策の優先順位を決定・実施しやすくなります。

このスコアリングシステムは、情報セキュリティの3大要素である機密性、完全性、可用性の影響を量ることで、脆弱性の実質的なリスクを評価します。

CVSSの歴史と目的

以前、脆弱性の評価手法はベンダーからベンダーへ非常にバラバラで、一貫性と客観性が大きく欠けていました。そこで登場したのが、ベンダー非依存で同一基準を採用したCVSSです。

CVSSは、信頼性と一貫性のある評価メカニズムを提供し、その結果により組織が理解しやすい形で脆弱性の解析や基準の設定を行うことを目指しています。

その他の重要な目的としては、脆弱性を評価する際の執行時間と難易度を大幅に軽減し、セキュリティのリスク管理をより効果的に行うことを可能にすることも含まれます。

CVSSが必要な理由

一貫性と信頼性の高い脆弱性の評価が必要な理由は何でしょうか。まず、脆弱性はソフトウェアやシステムに存在する害を及ぼす可能性のある欠陥であり、それらを放置すると企業に深刻な損害をもたらす可能性があります。

そのため、組織は早急にこれらの脆弱性へ対応し、それによるリスクを最小限に抑える必要があります。しかし、脆弱性対策の優先順位をどのように決定すればよいかは一筋縄ではいきません。

そのため、CVSSスコアが必要となります。それにより、脆弱性の重大度を定量的に判断し、組織全体のセキュリティ対策やリソースの割り当て方をより効果的に行うことが可能になるからです。

CVSSの新しいバージョンと更新履歴

CVSSは、その歴史上数回の改訂を経ています。この改訂は、組織が脆弱性の影響度とリスクをより効果的に理解し、評価することを可能にするように行われました。

新しいバージョンは、より詳細なバージョンを提供するために改訂され、ユーザーに対して脆弱性の詳細な分析を提供しています。

これらの改訂により、CVSSは脆弱性評価の「ゴールドスタンダード」を提供し続け、組織がセキュリティ上の課題を適切に優先順位づけし、対応するための道しるべを提供します。

CVSSの評価基準の詳細

CVSSスコアの算出には、基本評価基準(Base Metrics)、現状評価基準(Temporal Metrics)、環境評価基準(Environmental Metrics)の3つの評価基準が重要です。これらの基準を順に紹介します。

それぞれの基準は、脆弱性の深刻度を評価するために使用されます。これで、対応の優先度や対策を適切に計画することが可能となります。

それでは、各基準の詳細について見ていきましょう。

基本評価基準(Base Metrics)

基本評価基準では、脆弱性に対する攻撃のデフォルト状態を評価します。この評価は、脆弱性それ自体の特性に基づいています。すなわち、攻撃ベクトル攻撃の複雑度認証要件などが考慮されます。

更に、脆弱性がシステムやアプリケーションに与える影響を評価するために、情報セキュリティの3要素(機密性完全性可用性)が使用されます。

基本評価基準は、脆弱性の深刻度を把握するための基盤となり、他の評価基準から独立しています。

現状評価基準(Temporal Metrics)

現状評価基準では、脆弱性に関連する時間的な要素を考慮に入れます。この基準には、報告および対応の有無攻撃コードの存在脆弱性の信頼性が含まれます。

これを評価することで、脆弱性に対する対応の優先度やダメージの予測が可能となるため、非常に重要な基準とされています。

ただし、この基準は時間と状況により変化するため、適宜見直し、再評価が必要となります。

環境評価基準(Environmental Metrics)

環境評価基準は、脆弱性が特定環境への影響度合いを評価します。脆弱性が与える影響は、システムの構成や使用方法、保護水準により異なるため、その点を反映してスコアリングします。

この評価基準により、各環境でのリスク管理や脆弱性をどの程度重視すべきかの判断が可能となります。

したがって、システム管理者やセキュリティ担当者は、この評価から得られる情報をもとに迅速な対策を実施することが求められます。

CVSSの3要素(機密性、完全性、可用性)について

CVSSでは、情報セキュリティの3要素として認識されている機密性、完全性、可用性(CIA)が重要な役割を果たしています。これらは脆弱性が影響を及ぼす可能性がある資源の性質を表します。

機密性は、情報が誤った人に知られることなく安全に維持できる能力を示し、完全性は、情報が不正や意図しない変更から保護される能力を示します。

可用性は、必要な時に情報が利用可能である能力を指します。これらの3要素が脅かされたとき、その脆弱性は事業や機密情報に対するリスクとなり、CVSS評価に反映されます。

CVSSスコアの読み解き方

CVSS (Common Vulnerability Scoring System) とは、ソフトウェアやシステム上の脆弱性の深刻度を診断、評価するための国際的な評価システムです。脆弱性の深刻度は0から10.0までのスコアで表され、このスコアが高いほど脆弱性の深刻度が高いとされます。それでは、CVSSスコアの詳しい読み解き方について見ていきましょう。

CVSSスコアの範囲とその意味

CVSSスコアは、0から10.0までの範囲で表されます。スコアが0であれば脆弱性の影響はなく、10.0であれば最も深刻な脆弱性を示します。具体的なレベルは以下の通りです。

  1. 0.0:脆弱性の影響なし
  2. 0.1 ~ 3.9:軽度の脆弱性
  3. 4.0 ~ 6.9:中程度の脆弱性
  4. 7.0 ~ 8.9:重度の脆弱性
  5. 9.0 ~ 10.0:極めて重度の脆弱性

スコアの計算方法

CVSSスコアは、基本評価基準、現状評価基準、環境評価基準の3つの観点から算出されます。これら各項目は、脆弱性が如何に影響を及ぼすか、攻撃者がどれだけ容易に利用可能か、現実の環境においてどれだけ影響を与えるか、といった脆弱性の特性を評価します。

これらの評価基準を用いて、具体的な数値を算出し、それらを組み合わせて最終的なCVSSスコアが導出されます。このスコアが組織の脆弱性管理の一助となります。

スコアに基づく対応の優先度判断

CVSSスコアは、各脆弱性の迅速な対応が必要かどうかを判断するための基準となります。一般的に、スコアが高いほど対応の優先度も高くなります。

また、過去の実績や組織の情報資産の重要度など、他の要素と組み合わせて考慮することで、より精密なリスク管理が可能です。

CVSSスコアの具体的な活用例

CVSSスコアを活用することで、脆弱性管理やパッチ管理の方針決定、対応優先度の決定などが円滑に行えます。たとえば、定期的にCVSSスコアの高い脆弱性へのパッチ適用を行うなど、プロアクティブなセキュリティ対策に生かすことが可能です。

CVSSは、情報セキュリティの数値化により、組織の脆弱性対策を客観的に可視化し、重要な判断材料を提供します。活用により、組織のセキュリティ対策が改善され、情報資産の保護が強化されることでしょう。

情報セキュリティとCVSS

脆弱性管理は情報セキュリティの重要な一部ですが、これを統一的かつバイアスのない基準で評価するCVSS(Common Vulnerability Scoring System)は、その中心的な役割を果たします。本セクションでは、情報セキュリティにおけるCVSSの位置づけや、その使用例、情報セキュリティの3要素との関連性、なぜ情報セキュリティ管理者がCVSSを利用すべきかを詳しく解説します。

情報セキュリティにおけるCVSSの位置づけ

情報セキュリティにおけるCVSSの主な役割は、脆弱性の深刻度を表示し、それに基づいた対応を判断することです。

複数のシステムやソフトウェアに存在する脆弱性を比較し評価する場合、各々が異なる評価基準を持っていると認識は難しくなります。そこでCVSSは共通の評価基準となることで、事業者や管理者が脆弱性の対応策を策定する際の有用な指標を提供します。

各評価のスコアは0から10の範囲で示され、その細かな数値が一方で脆弱性の具体的な影響度合いや潜在的なリスクを示す一方で、他方ではその脆弱性の対応優先度を示します。

CVSSを利用した情報セキュリティ対策

CVSSにより脆弱性の深刻度が評価されると、それに対する対応策が計画されます。これは修正パッチの適用やシステムの改善など具体的な行動として現れます。

ただし、スコアが高い脆弱性ほど深刻であるとはいえ、すべての脆弱性がすぐに修正可能なわけではありません。したがって、どの脆弱性から対処していくべきかを判断するためにもCVSSのスコアは重要な意味を持ちます。

また、新たに開発されるシステムやソフトウェアにもCVSSの概念が応用され、その設計段階から脆弱性を発防することが可能です。

CVSSが求める情報セキュリティの3要素

CVSSの評価には、情報セキュリティの3大要素である機密性、完全性、可用性が重要な位置を占めます。

機密性は情報に無許可のアクセスがないこと、完全性は情報の正確さと一貫性が維持されていること、そして可用性は許可されたユーザーが情報にアクセスできることを意味し、これらが崩れると脆弱性のスコアが上昇します。

したがって、情報セキュリティの3要素を維持しつつ脆弱性に対処することが推奨され、それを補助するためにCVSSが使われます。

情報セキュリティ管理者がCVSSを使う理由

CVSSを利用することで、情報セキュリティ管理者は脆弱性の評価、それに対する対応策の策定、更には新たな脆弱性の予防という情報セキュリティの核心的な流れを効率的に進めることが可能です。

また、すべての脆弱性が同一の評価基準で評価されるため、取り扱う脆弱性のオブジェクトが異なっていたとしてもその評価や対応が一貫性を持つことが保証されます。

さらに何よりもCVSSが公開されている情報は多岐に渡るため、学びたい場合や具体的な情報を得たい場合には自由に利用することができます。

CVSSの活用方法とそのメリット

CVSS(Common Vulnerability Scoring System)は、ソフトウェアやITシステムが抱える脆弱性の深刻度を評価するための国際的な基準です。これを活用することで、システム保護の優先度を客観的に決定し、情報セキュリティの確保を効果的に進めることが可能となります。

この章では、CVSSの活用方法とそのメリットについて詳しく解説します。

CVSSは情報セキュリティマネジメントの主要なツールとして、全世界で活用されています。では具体的にCVSSはどのように活用するのか、詳しく見ていきましょう。

CVSS活用方法の基本

まず、CVSS活用の基本となるのが脆弱性のスコアリングです。このスコアリングは、攻撃の可能性や攻撃が成功した場合の影響など、脆弱性の深刻度を数値化するものです。

この数値は0から10までの範囲で付けられ、値が大きいほど脆弱性の深刻度が高いことを示します。

このスコアには基本評価、現状評価、環境評価の3つの観点が含まれており、それぞれより詳細な脆弱性情報を持っています。

CVSSの活用を通じたリスク評価の効率化

CVSSを活用することで、手作業で時間をかけてリスク分析を行う代わりに、脆弱性のスコアリングを自動化できます。これにより、企業はリソースを他の重要な保護策に集中させることが可能となります。

また、CVSSスコアは脆弱性管理プロセス全体を効率化します。システムに存在する脆弱性の深刻度を理解すればすぐに、それに適した対策を立て、施行できます。

これは、セキュリティチームが脆弱性を優先順位付けし、最も警戒すべき脆弱性から対応可能にします。

CVSSを活用した脆弱性マネジメント

脆弱性マネジメントは、組織が情報セキュリティを確保するための重要な要素です。この範囲内でCVSSは脆弱性の識別、分類、優先順位付けのための実用的なフレームワークを提供します。

CVSSスコアを適用することにより、セキュリティチームは脆弱性の重要性を客観的に理解し、それに応じて対策を立てることが可能になります。

結果的に、これは組織のリスク公開を最小限に抑えつつ、セキュリティ対策の効果を最大限に高めることが可能です。

CVSS活用による情報共有とそのメリット

CVSSはベンダー間での脆弱性情報の共有を容易にします。これは、各ベンダーが脆弱性を異なる方法で評価していた場合、その深刻度の比較や共有が難しくなるという問題を解決しています。

標準化された評価基準を持つことで、企業は他の組織やベンダーに脆弱性情報を効率的に報告し、必要な対策を迅速に施行できます。

また、CVSSのようなオープンな基準を使うことは、セキュリティコミュニティ全体での情報共有を促進し、全体としての情報セキュリティ向上に寄与します。

CVSSへの批判と改善提案

CVSSが広く用いられている一方で、全ての利点だけが語られるわけではありません。多くの利用者と運用者からは、一部の組織や環境ではCVSSが脆弱性の深刻度を適切に評価するのに不十分であるとの声が上がっています。ここでは、その主な批判点や課題を掘り下げ、改善の提案についても考察していきましょう。

CVSSへの主な批判点

一つの批判点として指摘されるのは、CVSSのスコアリングシステムが提供する絶対的な評価が、実際のビジネス上のリスクや具体的な状況といった要素を考慮に入れていない点です。この事実は、理解されずに一部の組織で適切な対策が取られず、結果として組織への影響が大きくなる可能性があります。

また、脆弱性の影響を計算するためのパラメータが十分にカスタマイズできない点も指摘されています。これにより、CVSSスコアはある種の脆弱性、特に企業が特定の脆弱性に対して最も関心を持つであろう脆弱性を適切に評価することができない場合があります。

CVSSの限界と課題

しかし、CVSSには限界や課題も存在します。まず、CVSSスコアは、攻撃者が脆弱性を悪用する具体的な方法や意図を考慮に入れていません。実際には、攻撃者の意図や方法は深刻度評価に重要な要素であり、これらが無視されると誤った評価につながる恐れがあります。

加えて、CVSSは一つの脆弱性だけを評価するシステムであるため、脆弱性同士の相互作用を評価する能力を持ち合わせていません。また、脆弱性が複数あるシステムの全体的なリスクを評価することも難しいです。

CVSSの改善提案とその効果

これらの限界と課題を克服するための提案の一つに、独自のリスク評価モデルや脆弱性管理ソリューションを組み込む方法があります。これはCVSSの柔軟性を高め、組織の独自のビジネスニーズや脆弱性管理の目標をより適切に反映する評価を可能にするでしょう。

また、脆弱性の複雑さや脆弱性同士の関係性をより大きく評価することも提案されています。これにより、より精密で詳細なリスク評価が可能となり、組織の対応計画の決定に重要な情報を提供するでしょう。

次世代CVSSへの期待

次世代のCVSSには、より独自化した評価を可能にするようなアップデートが期待されます。また、脆弱性同士の関係性や複合的なリスク評価を反映する能力を持ったシステムも重要となるでしょう。

こうした改善によりCVSSの限界と課題が解消し、それぞれの組織がリスクをより適切に評価し、効果的な対策を立てることが可能となるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム