データレイクとは? わかりやすく10分で解説
はじめに
データレイクとは?
データレイクは、様々なデータを元の形のまま一元管理することができるリポジトリのことです。非構造化データや構造化データ、そして半構造化データを含む、あらゆる種類のデータが収集及び保存するこの概念は、ビジネス上での情報分析に役立つとされています。
データレイクの特徴
データレイクの最大の特徴は、そのデータの保管形態の自由さです。データベースと比べ、データレイクはどのような形式のデータであっても保存することが可能というのが大きな強みとなっています。またデータをそのままの状態で保存しておくことが可能であるため、データが生成された状態での分析が可能となります。
また、データが時間の経過とともに増大する現代企業の問題を解決する手段としてインターネットオブシングス(IoT)などの製品が出てきてから特に注目されています。
さらに、コスト面でも優れています。大量のデータを保存でき、かつ、構造化する前のデータを保存するため、データウェアハウスと比較して格段にコストが削減できます。
データレイクという名前の由来
データレイクという名前の由来は、その保存されるデータの種類の多様性とその規模からきています。データが「湖」のように一元化されて「保管」されるイメージから、このように呼ばれています。
また、データを原形のまま保存するため、湖のようにデータの層が底まで深く達しているというイメージからも、データレイクという名前がつけられました。これはそのままデータの「湖」という意味です。
IT用語としてのデータレイク
IT分野においてデータレイクはビッグデータの利活用を可能とする重要な概念となっています。その理由は、ビッグデータによって生み出される膨大な量と多様性を持つデータを、標準的なデータベースではなく、柔軟性とスケーラビリティを持つデータレイクに一元管理し、保存することで、事前にデータの内容を知ることなくデータ分析が可能となるからです。
さらに、データウェアハウスやデータマートなどといった他のIT用語と比べ、データレイクはこれらよりも前のステージに位置します。つまり、その後のデータ分析に使用されるデータを選定、清浄化する前の、データが最も原始的な形態を保持している状態を指します。
データレイクの価値
データレイクとは、情報の海やデータの貯蔵庫とも称される、多種多様なデータを一元管理できるリポジトリのことを指します。ローデータ、非構造化データ、あるいは構造化データといった形式を問わず、データの大元の形態そのままで保存しておくことが可能です。これらの特質により、データレイクは現代ビジネスにおける重要な要素となっています。
その一方で、データレイクの活用には知識やスキルが必要であり、データの整理や抽出に時間やコストがかかるという問題があります。これらの問題を解決するためには、専任のデータサイエンティストやデータエンジニアの導入が効果的です。
本節では、ビッグデータ時代におけるデータレイクの役割、データレイクがもたらす企業価値、データレイクのビジネスへの応用、データレイクによるデータ分析のメリットについて詳しく解説していきます。
ビッグデータ時代におけるデータレイクの役割
データレイクはビッグデータ時代の重要なコンセプトであり、様々な形式のデータを高速に保存し、取得することが可能です。この能力は非常に柔軟性が高いため、多種多様なビジネスニーズに応えられる利点があります。
ビッグデータに適したデータレイクの設計と構造があります。これにより、データ抽出によるタイムラグを最小限に抑えつつ、多大な量のデータを即座に処理することが可能です。
また、データレイクはデータの原資になりえます。データはそのままの形で保存されるので、新たな帰結や知見を導き出すための原石となり得ます。
データレイクがもたらす価値
データレイクが企業にもたらす価値は、以下の3つが主に挙げられます。
1つ目は、データの一元管理です。複数のデータソースが存在する企業において、データの一元管理は重要な課題です。データレイクはその課題を解決し、データソースを一元化することで、情報の共有や管理を効率化します。
2つ目は、リアルタイムなデータ分析です。データレイクは即座にデータを取り込み、分析に進めることができます。
3つ目は、データの保全です。データマイニングやビッグデータ解析を行うためには、データの原形が保存されていることが重要です。
データレイクのビジネスへの応用
データレイクの適用分野は非常に広範囲にわたっています。
一例として、医療業界では構造化データと非構造化データに対応したデータレイクが活用され、高度な医療サービスや病気の予防に役立てられます。
また、教育業界では、現場での教育活動をサポートし、子供たちの学習環境を最適化するためのデータの分析や利用が行われています。
運輸業界では、さまざまな形式のデータからの分析、洞察、予測を通じて、交通運行の効率化や安全性の向上、燃料消費の削減などに利用されています。
データレイクによるデータ分析のメリット
データレイクを利用することで、ビジネスに多くのメリットがもたらされます。
まず、高速なデータ取得と存続が可能になります。原形のデータを保存しておくことで、そのデータを何度でも使用し、再分析することが可能です。
次に、様々な種類のデータに対応しているため、企業は自由な形でデータを保存し、分析することができます。
また、コストを抑えつつ大規模なデータの保管や分析が可能になります。これにより、企業はより広範囲なデータ分析を行うことができ、競争力を高めることが可能です。
データレイクと他のデータ管理手法との違い
データの管理といえば、データレイク、データウェアハウス、データマート、データベースなどがありますが、それぞれ何が違うのでしょうか?まずは、それぞれの定義から理解しましょう。
それぞれのデータ管理手法は、組織のニーズ、使用するデータタイプ、目的によって使い分けることが一般的です。
以下では、それぞれのデータ管理手法の違いを紹介し、適用ケースについても解説します。
データウェアハウスの違い
データレイクは、形式を問わず多様なデータを原形のまま保存することが特徴です。一方、データウェアハウスは、あらかじめ定義されたスキーマ(データ構造)にフィットする形で、構造化データのみを保存します。
つまり、データウェアハウスはある程度整備されたデータを保管し、分析できますが、データレイクは原始的なデータを保存し、その後で分析や加工が必要なものです。
また、データウェアハウスは歴史的なデータを保存し、組織全体で共有するための場所であり、大規模なレポートや分析を行うために使用されます。
データマートの違い
データマートは、特定の用途や部門向けに最適化されたデータを保管するデータウェアハウスの一部です。一方、データレイクは組織全体で利用するためのデータ集積場所です。
データマートは特定の問題を解決したり、特定の部門の業務をサポートしたりします。一方、データレイクは幅広いデータソースから入手した生データを保管します。
つまり、データマートとデータレイクの主な違いは、データの「範囲」と「粒度」です。
データベースの違い
データベースは、構造化されたデータを保管し、管理し、取り出すためのソフトウェアシステムです。一方、データレイクは構造化、半構造化、非構造化データを一元管理するためのストレージシステムです。
データベースは事前に定義されたスキーマに沿ってデータを保存しますが、データレイクはスキーマレスで、保存するデータの形式を問いません。
つまり、データレイクは、データの種類や量が巨大で予測できない状況で有効であり、データベースは一貫性と効率性が求められる用途で使用されます。
各データ管理手法の適用ケース
データレイクは、IoTデータやソーシャルメディアデータなど、構造化・非構造化を問わず大量のデータの長期保存や、フレキシブルなデータ分析に適しています。
データウェアハウスは、各種ビジネスレポートの作成や経営者が戦略的な意思決定をする際にベースとなる情報を提供する場合に適しています。
データマートは、特定の部門やビジネスユニット向けの独自のレポーティングや分析を行うときに、データの分離と集中を行うために使用されます。
データレイクの留意点
ビジネスにおけるデータ利用の潮流が高まる中、企業がデータレイクを構築・活用する際に考慮すべき留意点が存在します。これらの留意点を理解し、適切に対応することで、データレイクから最大限の価値を引き出すことができます。
データの「底なし沼」問題
データの「底なし沼」とは、データが蓄積されすぎて管理や活用が困難になる状態を指します。データレイクは元々が数多くのソースから収集したデータを保存するため、明確な目的がなければその保管データが膨大になり、「沼」になるリスクがあります。
この問題への対策としては、データガバナンスが重要です。データガバナンスとは、データの品質、保護、利用などを管理するための総合的なプロセスやフレームワークです。これによりデータの起源や内容、アクセス権限などを一元管理し、「底なし沼」を防ぐことが可能となります。
利用者のリテラシー
データレイクが保管するデータは多様かつ大量であるため、これを効率よく活用するためには利用者のリテラシーが必要となります。専門的な知識や技術を持つデータサイエンティストやデータエンジニアの存在が欠かせません。
しかし、企業全体でデータを意識的に活用するには、一部の専門スタッフだけでなく全員がある程度のデータリテラシーを持つことが求められます。そのため、継続的な教育やトレーニングが必要となります。
データの保管方法
データレイクに保存されたデータの品質は、後の分析や活用の成果に直結します。しかし、データの正確さや整合性、一貫性を保つための品質管理の難しさは、データレイクの問題点の一つです。
データは、重複や誤り、不足などに注意しなければならず、その管理は大変な労力を必要とします。こうした課題への対応として、AIや機械学習を活用した品質チェックやデータハンドリングの自動化を進める企業が増えています。
データセキュリティとプライバシー
データレイクには個人情報を始めとする様々なデータが格納されます。したがって、データセキュリティとプライバシーの確保は非常に重要なポイントとなります。
具体的には、法令遵守や情報セキュリティ対策、身元確認などの各種プロトコルを設け、厳格かつ適切な管理・運用を行う必要があります。一方で、個々のデータのプライバシーに配慮しながら、ビジネスに活かすためのバランスを取ることが求められます。
データレイクの構築
このセクションでは、データレイクを構築する方法を詳細に解説します。特に、オンプレミス型データレイクとクラウド型データレイクに焦点を当て、それぞれの特徴と利点、欠点を比較します。さらに、データレイクの構築ステップとROI(投資対効果)の計算方法についても触れていきます。
オンプレミス型データレイク
オンプレミス型のデータレイクは自社のデータセンターにデータレイクを設置する形態です。データセキュリティが非常に重要な会社や、特定の業界規制によりデータを内部に保管しなければならない企業に有用です。
オンプレミス型は、制御やセキュリティを自社で厳密に管理できるメリットがありますが、初期設定コストやメンテナンスなどの手間が必要となります。また、ストレージの拡張性に限りがあるため、急速なデータ量の増加に対応するのが難しい場合があります。
しかし、プライバシーやセキュリティに関する法規制を遵守する必要がある場合や、システムの完全なコントロールを保つ必要がある場合は、オンプレミス型データレイクが有用です。
クラウド型データレイク
一方、クラウド型のデータレイクは、データストレージと処理能力をクラウドサービスプロバイダから提供される形態です。
クラウド型のデータレイクは初期コストが低く、迅速にデプロイできるという特徴があります。また、クラウドサービスの利用料は利用した分だけ支払うため、コスト効率が良いと評価されています。さらに、クラウドの柔軟性によりデータの量が増えても簡単にスケールアップできます。
ただし、データセキュリティやプライバシーに関する懸念があります。また、インターネットが必要な分、ネットワーク接続の問題があると、データにアクセスできない可能性があります。
データレイクの構築
データレイクの構築は、大まかに3つのステップに分けられます。まずはデータ収集、さまざまなソースから非構造化データや構造化データを集めるプロセスです。
次にデータを保存するプロセスであるデータストレージのステップに移ります。ここで、データの量や種類に応じて最適なデータストレージの選択が必要となります。
最後に、分析人材がデータにアクセスしやすいようにするデータの統合が求められます。ここでは、データのカタログ作成やメタデータの管理などが必要となります。
データレイク導入のROI
データレイク導入のROI(投資対効果)を計算するためには、導入コストと取得可能なデータの価値を比較する必要があります。
導入コストには、ハードウェアやソフトウェアの購入、データ移行のための労力、人材教育などが含まれます。反対に、取得可能なデータの価値は、データを活用して実現できるビジネス改善や収益増加の見込みで評価します。
導入後の結果を予測してROIを計算し、データレイク導入の費用対効果を評価することで、適切なデータレイク戦略を作ることができます。
データレイクが向く業種
データレイクはその扱うデータの豊富さと柔軟性から、様々な業種でその利用が考えられます。特に今回は、医療業界、教育業界、そして運輸業界におけるデータレイクの活用について詳しく見ていきましょう。これらの業界では、大量のデータを高速に処理し、意思決定に役立てることが重要となっています。
医療業界
医療業界では、様々な疾患や患者の状況を理解し、適切な治療法を提供するために、多種多様なデータを扱う必要があります。これには電子カルテからの情報、患者の遺伝情報、薬品の効果と副作用情報などが含まれます。これら構造化データと非構造化データを、データレイクに保存、分析すれば、より的確な患者サービスを提供することが可能となります。
また、AIや機械学習による予測診断にもデータレイクは不可欠です。大量のデータをもとに患者の将来的な健康リスクを予測し、早期の介入を行うことで、よりよい医療結果を得ることが可能となります。
教育業界
教育業界においても、データレイクの活用は非常に意義があります。学生の個々の学習進行度、学習スタイル、結果のパターンなど、大量のデータを把握しつつ柔軟に学習支援を行うことが求められています。これらのデータをデータレイクに集約することで、個々の学生に最適な学習プランを提供することも可能になります。
また、教職員の仕事効率化も見逃せません。大量の業務データをデータレイクに蓄積・管理することで、効率的なデータ分析・活用が可能となり、業務時間の削減や生産性向上を実現できます。
運輸業界
運輸業界では、ロジスティクス最適化が求められています。これは車両の現在位置、予定路線、交通情報といった様々なデータを迅速に収集・分析し、最適な運行を行うことを意味します。このような大量データは、データレイクで的確に管理することが可能となります。
また、運輸業界では、車両の故障を未然に防ぐための予測保全が非常に重要です。これは車両から得られる様々なセンサーデータをデータレイクに集約し、大規模なデータ分析を行うことで達成可能です。
ビジネスでのデータレイクの活用例
ビジネス全般において、データレイクはお客様の行動分析や市場動向の把握等、様々な意思決定の基盤となります。例えば、Webサイトのユーザー行動データやSNSの投稿データ、販売データ等をデータレイクに集約し、これらを分析することで、顧客のニーズや新たな市場トレンドを把握することが可能となります。
また、製造業においては、生産工程で得られる大量のデータをデータレイクに蓄積します。これらのデータから生産効率の向上や品質改善の可能性を見つけ出すことが可能です。
これらの例からも分かるように、データレイクは企業が保有するデータを最大限に活用し、ビジネスの成長を促進するための強力なツールとなり得ます。
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