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EMV3-Dセキュアとは? 10分でわかりやすく解説

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目次

オンライン決済における不正利用が深刻化する中、カード情報の安全性確保がますます重要になってきています。こうした課題に対応するために開発されたのが、最新の認証方式「EMV3-Dセキュア」です。EMV3-Dセキュアは、多要素認証とリスクベース認証を組み合わせることで、高度なセキュリティを実現します。その一方で、取引のリスクに応じて最適な認証方式を選択することで、ユーザーの利便性も維持します。本記事では、EMV3-Dセキュアの概要や特徴、仕組み、導入効果、具体的な導入方法などについて、体系的に解説します。

EMV3-Dセキュアとは何か

EMV3-Dセキュアとは、オンライン決済における不正利用を防止するための最新の認証方式です。近年、インターネットを介したオンラインショッピングが急速に普及する中、クレジットカード情報の不正利用などのセキュリティ問題が深刻化しています。こうした課題に対応するために開発されたのがEMV3-Dセキュアです。

EMV3-Dセキュアの定義と概要

EMV3-Dセキュアは、オンライン決済におけるセキュリティ強化を目的とした国際的な認証規格です。  カード会員の本人確認を多要素認証で行うことで、不正利用のリスクを大幅に低減することができます。 この認証方式は、カード発行会社、加盟店、決済代行会社などが連携して実現されます。

EMV3-Dセキュアが生まれた背景

オンライン決済の普及に伴い、クレジットカード情報の流出や不正利用といったセキュリティ問題が深刻化しています。従来の認証方式では、こうしたリスクに十分に対応できないことが明らかになってきました。  EMV3-Dセキュアは、これらの課題を解決するために開発された最新の認証方式です。 カード業界全体で取り組むことで、オンライン決済のセキュリティ向上を目指しています。

EMV3-Dセキュアの主な特徴

EMV3-Dセキュアには、以下のような特徴があります。

  1. 多要素認証による高度なセキュリティ
  2. リスクベース認証による柔軟な対応
  3. 国際的な標準規格への準拠
  4. ユーザーエクスペリエンスの向上

 特に、多要素認証とリスクベース認証の組み合わせにより、セキュリティと利便性のバランスを取ることが可能です。 これにより、安全性の高いオンライン決済環境を実現しつつ、ユーザーにとっても使いやすいシステムを提供することができます。

EMV3-Dセキュアが対象とする決済

EMV3-Dセキュアは、主に以下のようなオンライン決済に適用されます。

決済種別概要
クレジットカード決済オンラインショップなどでのクレジットカード決済
デビットカード決済銀行口座と連動したデビットカードによる決済
プリペイドカード決済あらかじめチャージしたプリペイドカードでの決済

 今後、オンライン決済のセキュリティ強化が求められる中、EMV3-Dセキュアの適用範囲は更に拡大していくことが予想されます。 企業においては、自社のシステムがEMV3-Dセキュアに対応しているかを確認し、必要に応じて導入を検討することが推奨されます。

EMV3-Dセキュアの仕組みと流れ

EMV3-Dセキュアの認証プロセス

EMV3-Dセキュアの認証プロセスは、以下のような流れで行われます。

  1. カード会員がオンラインショップなどで商品を購入し、決済を行う。
  2. 加盟店システムが、決済代行会社を通じてカード発行会社に認証要求を送信する。
  3. カード発行会社は、  取引情報やカード会員の過去の行動履歴などをもとに、リスク評価を行う。 
  4. リスク評価の結果に基づき、適切な認証方式(パスワード、指紋認証、ワンタイムパスワードなど)が選択される。
  5. カード会員は、指定された認証方式で本人確認を行う。
  6. 認証が完了すると、取引が承認され、決済処理が完了する。

この一連の流れにより、カード会員の本人確認が確実に行われ、不正利用のリスクが大幅に低減されます。

リスクベース認証の仕組み

EMV3-Dセキュアの特徴の一つが、リスクベース認証の採用です。  これは、取引ごとのリスク評価に基づいて、最適な認証方式を選択する仕組みです。 リスク評価には、以下のような要素が考慮されます。

  • 取引金額
  • 取引の種類(物理商品の購入、デジタルコンテンツの購入など)
  • カード会員の過去の取引履歴
  • アクセス端末の種類(PCやスマートフォンなど)
  • アクセス元のIPアドレスやロケーション

これらの情報を総合的に分析することで、不正利用の可能性を判定します。リスクが低いと判断された場合は、シンプルな認証方式(パスワードのみなど)が選択される一方、  リスクが高い場合は、多要素認証(指紋認証+ワンタイムパスワードなど)が要求されます。 こうしたリスクベース認証により、セキュリティと利便性のバランスを最適化することが可能となります。

EMV3-Dセキュアで用いられる技術

EMV3-Dセキュアでは、以下のような技術が用いられています。

技術概要
トークン化カード情報を一意の識別子(トークン)に置き換える技術。カード情報の流出リスクを低減する。
暗号化データを第三者に解読されないよう、暗号化して通信を行う技術。
生体認証指紋や顔認証などの生体情報を用いる認証技術。なりすましのリスクを低減する。
AI・機械学習過去の取引データなどを分析し、不正検知の精度を高める技術。

これらの技術を組み合わせることで、高度なセキュリティを実現しつつ、ユーザーにとっても使いやすいシステムを構築することが可能です。

EMV3-Dセキュア対応の要件

EMV3-Dセキュアに対応するためには、以下のような要件を満たす必要があります。

  • 3DS2.0プロトコルに準拠したシステム開発・改修
  • カード会員認証に必要なデータの収集・管理体制の整備
  • 不正検知システムの導入・運用
  • カスタマーサポート体制の強化

 特に、3DS2.0プロトコルへの対応は必須です。 これは、EMV3-Dセキュアの国際的な標準規格であり、これに準拠することで、グローバルな相互運用性を確保することができます。

EMV3-Dセキュアへの対応には、一定のシステム開発・改修コストが発生しますが、  中長期的に見れば、不正利用の防止による損失削減効果は大きいと言えるでしょう。 加えて、セキュリティ対策の強化は、顧客の信頼獲得にもつながります。自社のシステムのEMV3-Dセキュア対応を検討する際は、これらのメリットを十分に考慮することが大切です。

EMV3-Dセキュアの導入効果

不正取引防止による被害の低減

EMV3-Dセキュアを導入することで、オンライン決済における不正利用のリスクを大幅に低減することができます。  多要素認証とリスクベース認証を組み合わせることで、なりすましや不正アクセスを防ぎ、カード情報の不正利用を抑止します。 これにより、不正取引による金銭的な被害を最小限に抑えることが可能となります。

オンライン決済の利便性向上

EMV3-Dセキュアは、セキュリティ強化と同時に、ユーザーの利便性も向上させます。リスクベース認証により、取引のリスクに応じて最適な認証方式が選択されるため、  ユーザーは状況に応じて、シンプルな認証から厳格な認証まで、スムーズに決済を完了させることができます。 これにより、オンライン決済のユーザーエクスペリエンスが改善され、利用者の満足度向上につながります。

ユーザーの安心感の醸成

EMV3-Dセキュアを導入することで、オンライン決済における安全性が高まります。これにより、ユーザーのセキュリティに対する懸念が解消され、安心してオンライン決済を利用できるようになります。  安心感の醸成は、ユーザーの購買意欲を高め、オンライン取引の活性化にもつながります。 企業にとっては、顧客の信頼を獲得し、ブランドイメージを向上させる効果も期待できます。

グローバルスタンダードへの対応

EMV3-Dセキュアは、国際的な標準規格である3DS2.0プロトコルに準拠しています。  これにより、グローバルな相互運用性が確保され、国内外のカード会社や決済代行会社との連携がスムーズに行えます。 特に、海外との取引を行う企業にとっては、EMV3-Dセキュアへの対応が不可欠と言えるでしょう。グローバルスタンダードへの対応は、企業の国際競争力強化にも資するものです。

以上のように、EMV3-Dセキュアの導入は、不正取引防止、利便性向上、安心感の醸成、グローバル対応など、様々な効果をもたらします。オンライン決済のセキュリティ強化が求められる中、  EMV3-Dセキュアへの対応は、企業にとって重要な戦略的課題と言えるでしょう。 自社のシステムがEMV3-Dセキュアに対応しているかを確認し、必要に応じて導入を検討することが推奨されます。

EMV3-Dセキュアの導入方法

EMV3-Dセキュアへの対応の流れ

EMV3-Dセキュアに対応するためには、以下のような流れで進めていくことが推奨されます。

  1. 自社システムの現状分析と課題の抽出
  2. EMV3-Dセキュア対応に必要な要件の整理
  3. システム開発・改修計画の策定
  4. 体制の整備(人員配置、教育など)
  5. 開発・改修の実施
  6. テスト・検証の実施
  7. 本番環境への移行
  8. 運用・保守体制の確立

これらのステップを着実に進めていくことで、円滑なEMV3-Dセキュア対応が可能となります。特に、  要件定義と計画策定のフェーズは重要です。 自社のシステムの特性を踏まえつつ、EMV3-Dセキュアの要件を正確に把握し、適切な対応方針を定めることが求められます。

EMV3-Dセキュア対応に必要な準備

EMV3-Dセキュアに対応するためには、以下のような準備が必要です。

  • 3DS2.0プロトコルに関する知識の習得
  • 自社システムのセキュリティ診断の実施
  • カード会員認証に必要なデータの収集・管理方法の検討
  • 不正検知ルールの設計
  • カスタマーサポート要員の教育・訓練

これらの準備を事前に進めておくことで、スムーズなEMV3-Dセキュア対応が可能となります。特に、  3DS2.0プロトコルに関する知識の習得は必須です。 社内の技術者を対象とした勉強会の開催や、外部セミナーへの参加などを通じて、必要な知識を身につけておくことが推奨されます。

EMV3-Dセキュアの導入時の留意点

EMV3-Dセキュアの導入時には、以下のような点に留意が必要です。

  • 自社システムとEMV3-Dセキュアとの連携方法の検討
  • 既存の認証システムとの共存・統合方法の検討
  • パフォーマンスへの影響の評価と対策
  • セキュリティ対策の徹底(暗号化、アクセス制御など)
  • ユーザビリティへの配慮(認証プロセスの最適化など)

これらの点を十分に検討し、適切な対策を講じることが重要です。特に、  自社システムとEMV3-Dセキュアとの連携方法の設計は慎重に行う必要があります。 両者の連携が適切でない場合、セキュリティ面や性能面での問題が生じる可能性があります。連携方式の選定に際しては、専門家の助言を仰ぐことも検討すべきでしょう。

継続的な運用とメンテナンス

EMV3-Dセキュアの導入後は、継続的な運用とメンテナンスが重要です。具体的には、以下のような取り組みが求められます。

  • 定期的なセキュリティ監査の実施
  • 不正検知ルールの定期的な見直しと更新
  • システムの定期的な更新とパッチ適用
  • カスタマーサポート要員のスキル維持・向上
  • 関連する法規制や業界ガイドラインの変更への対応

これらの取り組みを通じて、EMV3-Dセキュアの有効性を継続的に維持・向上させることが可能となります。特に、  不正検知ルールの見直しと更新は重要な課題です。 日々巧妙化する不正手口に対抗するためには、最新の脅威情報を踏まえたルールの最適化が欠かせません。セキュリティ動向の定点観測と、それに基づくルールの改善が求められると言えるでしょう。

以上が、EMV3-Dセキュアの導入方法に関する概要です。EMV3-Dセキュアへの対応は、一朝一夕では実現できませんが、  適切な計画と準備、そして継続的な取り組みを通じて、着実に進めていくことが可能です。 自社のオンライン決済システムの安全性と信頼性を高めるために、EMV3-Dセキュアの導入を前向きに検討していくことが推奨されます。

まとめ

EMV3-Dセキュアは、オンライン決済における最新の認証方式です。多要素認証とリスクベース認証を組み合わせることで、高度なセキュリティを実現しつつ、ユーザーの利便性も維持します。EMV3-Dセキュアの導入により、不正取引防止による被害の低減、決済の利便性向上、ユーザーの安心感醸成、グローバルスタンダードへの対応などの効果が期待できます。自社のシステムのセキュリティと信頼性を高めるために、EMV3-Dセキュアへの対応を検討してみてはいかがでしょうか。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム