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エキスパートシステムとは? 10分でわかりやすく解説

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UnsplashVitaly Garievが撮影した写真  

近年、企業がシステムをより良いものにするために注目しているのが、エキスパートシステムです。エキスパートシステムとは、特定分野の専門家の知識や経験、問題解決能力をコンピュータシステムに移植し、専門家と同等の判断を下すことができるシステムのことを指します。つまり、人工知能の一種であり、専門家の知的活動をコンピュータ上で再現することを目的としたシステムだと言えます。本記事では、エキスパートシステムの定義や特徴、仕組み、活用分野、導入方法などについて、10分で分かりやすく解説します。自社のシステム開発や業務効率化に役立てていただければ幸いです。

エキスパートシステムとは何か

エキスパートシステムとは、特定分野の専門家の知識や経験、問題解決能力をコンピュータシステムに移植し、専門家と同等の判断を下すことができるシステムのことを指します。IT初心者の方にもわかりやすく説明しますと、 人工知能の一種であり、専門家の知識を基にして構築された知的なシステム といえるでしょう。

エキスパートシステムの定義

エキスパートシステムは、以下のような特徴を持つシステムとして定義されています。

  • 特定の専門分野に特化している
  • 専門家の知識や経験を知識ベースとして蓄積している
  • 蓄積された知識を基に推論を行い、専門家と同等の判断を下すことができる
  • 説明機能を備えており、導き出した結論の根拠を示すことができる

つまり、エキスパートシステムは 専門家の知的活動をコンピュータ上で再現することを目的としたシステム だと言えます。

エキスパートシステムの特徴

エキスパートシステムには、以下のような特徴があります。

  1. 特定分野に特化している
  2. 知識ベースと推論エンジンから構成される
  3. 専門家の知識や経験則を利用する
  4. 不確実な情報も扱うことができる
  5. 説明機能を備えている

これらの特徴により、エキスパートシステムは専門家不足の解消や意思決定支援などに役立てられています。

エキスパートシステムの歴史

エキスパートシステムの歴史は、1960年代後半に遡ります。当時、スタンフォード大学でDENDRALというシステムが開発されました。これは、質量分析スペクトルのデータを分析し、未知の有機化合物の構造を推定するシステムでした。

その後、1970年代にはMYCINというシステムが開発されました。これは、感染症の診断と治療方針の決定を支援するシステムで、エキスパートシステムの代表例の一つとされています。

1980年代には、エキスパートシステムの商用化が進み、様々な分野で活用されるようになりました。しかし、知識獲得のコストや維持管理の難しさなどの課題も明らかになってきました。

現在では、ディープラーニングなどの新しい人工知能技術の発展に伴い、エキスパートシステムは従来とは異なる形で進化を遂げつつあります。

エキスパートシステムの構成要素

エキスパートシステムは、主に以下の4つの要素から構成されています。

構成要素 説明
知識ベース 専門家の知識や経験則を蓄積したデータベース
推論エンジン 知識ベースの知識を使って推論を行う機構
ユーザーインターフェース ユーザーとシステムのやり取りを仲介する部分
説明機構 システムが導き出した結論の根拠を説明する部分

これらの要素が連携することで、エキスパートシステムは専門家の意思決定を支援することができるのです。 知識ベースと推論エンジンが特に重要な役割を果たしている と言えるでしょう。

以上が、エキスパートシステムの概要となります。自社のシステム開発や業務効率化に役立てていただければ幸いです。エキスパートシステムの導入については、専門家へのご相談をおすすめいたします。

エキスパートシステムの仕組み

エキスパートシステムは、専門家の知識や経験を活用して問題解決を行うシステムです。その仕組みは主に、知識ベースと推論エンジンの2つの要素から成り立っています。ここでは、それぞれの役割と動作プロセスについて解説します。

知識ベースとは

知識ベースは、 専門家の知識や経験則を蓄積したデータベース のことを指します。この知識は、IF-THENルールや事例ベースなどの形式で表現され、推論エンジンが利用できるように整理されています。知識ベースの質と量が、エキスパートシステムの性能を大きく左右すると言えるでしょう。

推論エンジンの役割

推論エンジンは、知識ベースに蓄積された知識を使って問題解決を行う機構です。ユーザーから入力された情報と知識ベースの知識を組み合わせ、 専門家と同等の判断を下すことができます 。推論方式には、前向き推論と後ろ向き推論の2種類があり、目的に応じて使い分けられています。

エキスパートシステムの動作プロセス

エキスパートシステムの動作プロセスは、以下のようになっています。

  1. ユーザーがシステムに問題や情報を入力する
  2. 推論エンジンが知識ベースの知識を使って推論を行う
  3. システムが推論結果を導き出す
  4. 説明機構が推論結果の根拠を説明する
  5. ユーザーが推論結果を評価し、必要に応じて追加情報を入力する

このプロセスを繰り返すことで、エキスパートシステムは専門家の意思決定を支援することができるのです。

エキスパートシステムの利点と欠点

エキスパートシステムには、以下のような利点があります。

  • 専門家の知識を多くの人が共有できる
  • 人的ミスを減らすことができる
  • 専門家不足を補うことができる
  • 意思決定の一貫性を保つことができる

一方、欠点としては以下のような点が挙げられます。

  • 知識獲得のコストが高い
  • 知識ベースのメンテナンスが難しい
  • 常識的な判断ができない場合がある
  • 責任の所在が曖昧になる可能性がある

これらの利点と欠点を理解した上で、 エキスパートシステムを適切に活用することが重要 だと言えるでしょう。

以上が、エキスパートシステムの仕組みに関する解説となります。知識ベースと推論エンジンが連携することで、専門家の意思決定を支援するシステムが実現されているのです。エキスパートシステムの導入を検討される際は、その利点と欠点を十分に吟味し、自社のニーズに合ったシステムを構築していくことをおすすめいたします。

エキスパートシステムの活用分野

エキスパートシステムは、専門家の知識や経験を活用して問題解決を行うシステムであり、様々な分野で応用されています。ここでは、エキスパートシステムが活躍している主な分野について解説いたします。

医療分野でのエキスパートシステム

医療分野は、エキスパートシステムの代表的な応用分野の一つです。医療診断支援システムは、医師の診断を支援するためのシステムで、患者の症状や検査結果などの情報を基に、 可能性のある疾患を推定し、適切な治療方針を提示 します。これにより、医師の診断精度の向上や業務効率化に寄与しています。

また、医薬品の処方支援システムも存在します。これは、患者の状態や他の薬剤との相互作用などを考慮して、適切な薬剤と用量を推奨するシステムです。医療現場における安全性の向上に役立てられています。

製造業界でのエキスパートシステム

製造業界では、製品の設計や不良品の診断などにエキスパートシステムが活用されています。設計支援システムは、設計者の知識や経験則を知識ベースに蓄積し、最適な設計案を提示します。これにより、設計の効率化と品質向上が期待できます。

不良品診断システムは、製品の不具合の原因を特定し、適切な対策を提案するシステムです。熟練の技術者の知見を活用することで、 トラブルシューティングの時間短縮と品質管理の強化 につながります。

金融分野でのエキスパートシステム

金融分野では、与信審査や資産運用などにエキスパートシステムが導入されています。与信審査システムは、借り手の信用度を評価し、貸付の可否や条件を判断するシステムです。専門家の審査ノウハウを知識ベース化することで、審査の精度向上と効率化が図れます。

資産運用支援システムは、投資家の目的やリスク許容度に応じて、最適な投資先や運用戦略を提案するシステムです。ファンドマネージャーの知識や経験を活用し、投資判断をサポートします。

その他の分野でのエキスパートシステム

上記以外にも、エキスパートシステムは多岐にわたる分野で応用されています。例えば、法律分野では判例検索や契約書作成支援、農業分野では作物の生育管理や病害虫診断、教育分野では学習者の理解度に応じた学習支援など、 様々な場面で専門家の知識を活用したシステム が開発されています。

ITの進歩に伴い、エキスパートシステムの応用範囲はさらに広がりを見せています。自社のビジネスにおいても、専門家の知見を活用したシステム導入を検討することで、業務の効率化や意思決定の支援につなげることができるでしょう。エキスパートシステムの活用により、組織の問題解決力の向上が期待できます。

エキスパートシステムの導入方法

エキスパートシステム導入の目的設定

エキスパートシステムを導入する際は、まず明確な目的を設定することが重要です。 自社のどのような業務や意思決定を支援するためにエキスパートシステムを活用するのか を明らかにし、達成すべき目標を定義します。この目的設定が、システム開発の指針となります。

導入目的の例としては、業務の効率化、専門家不足の解消、意思決定の品質向上などが挙げられます。自社の課題や強化したい点を踏まえ、エキスパートシステムに期待する役割を明確化しましょう。

知識獲得とナレッジベースの構築

エキスパートシステムの中核となるのが、専門家の知識や経験則を蓄積したナレッジベース(知識ベース)です。ナレッジベースを構築するためには、専門家から知識を獲得する必要があります。知識獲得の方法としては、インタビューやアンケート、文献調査などがあります。

獲得した知識は、ルールベースや事例ベースなどの形式で整理し、コンピュータが処理しやすいように形式化します。この作業には、知識工学者と呼ばれる専門家が関与します。 ナレッジベースの品質が、エキスパートシステムの性能を大きく左右する ため、知識獲得とナレッジベースの構築には十分な時間と労力を投じる必要があります。

エキスパートシステムの設計と開発

ナレッジベースが整備されたら、次はエキスパートシステムの設計と開発を行います。推論エンジンやユーザーインターフェース、説明機構などの要素を設計し、システムとして統合します。開発には、AI技術や情報工学の専門知識が必要とされます。

システム開発では、導入目的に合致した機能や性能を実現することが求められます。また、ユーザーにとって使いやすく、分かりやすいインターフェースの設計も重要です。必要に応じて、プロトタイプを作成し、実際のユーザーに試用してもらうことで、改善点を洗い出すことも有効でしょう。

エキスパートシステムの運用と保守

開発されたエキスパートシステムは、実際の業務に導入し、運用を開始します。運用開始後は、システムの性能や効果を定期的にモニタリングし、必要に応じて改善を加えていくことが重要です。また、ナレッジベースのメンテナンスも欠かせません。 新しい知識や事例の追加、古くなった知識の更新などを継続的に行うことで、システムの性能を維持・向上 させることができます。

エキスパートシステムの運用と保守には、専門家とシステム開発者、そしてユーザーの緊密な連携が不可欠です。運用上の課題や改善要望を適切に吸い上げ、システムに反映させていくことが、エキスパートシステムの成功につながるでしょう。

以上が、エキスパートシステム導入の一般的な流れとなります。自社の目的や課題に合わせて、最適な導入方法を検討することをおすすめいたします。専門家やコンサルタントのアドバイスを参考にしながら、エキスパートシステムを有効に活用できるよう、計画的に進めていくことが肝要です。

まとめ

エキスパートシステムとは、特定分野の専門家の知識や経験をコンピュータに移植し、その知識を活用して問題解決を行うシステムです。知識ベースと推論エンジンを核とし、専門家の知的活動を再現します。医療、製造、金融など様々な分野で応用され、業務の効率化や意思決定の支援に役立てられています。導入には目的設定、知識獲得、システム開発、運用・保守といった流れがあり、専門家との連携が欠かせません。自社の課題解決にエキスパートシステムを活用することで、生産性の向上と競争力強化が期待できるでしょう。

参考文献

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム