ファイルサーバーとは? ~ 企業で導入するファイルサーバーの選び方 ~
ファイルサーバーとは?企業が 導入するメリット・デメリット
ファイルサーバーを活用すれば業務の効率化が進み、生産性の向上を図ることができます。しかし、計画性もなく安易にファイルサーバーを立ち上げてもうまく活用することはできないでしょう。ファイルサーバーを導入するメリットとデメリットにはどのようなことがあるのか、まずはそのことから理解していきましょう。
ファイルサーバーとは
ファイルサーバーとは、OSのファイル共有機能などを用いてネットワーク上でデータの共有や交換を行うことのできるコンピューターのことです。Windows Serverのファイル共有機能や、LinuxにSambaなどのソフトウェアを追加して利用する方法がよく知られています。
ファイルサーバーにはネットワークに接続した複数のパソコンからアクセスすることができます。そして、それぞれのクライアントPCでファイルサーバーに構築されたフォルダを共有し、フォルダ内のファイルの閲覧・変更・コピー・移動・削除などの操作を行うことができます。また、特定のフォルダにアクセス権限を設定することで、許可された人間しかフォルダ内の情報を閲覧(または変更)できないようアクセス制御することも可能です。さらに、パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレットなどからもファイルサーバーにアクセスすることができます。
もう一つ、ファイルサーバーはバックアップの保存先としてもよく利用されます。業務で日常的に使用するデータに加えて、重要なデータに関しても、ファイルサーバー内の厳格なアクセス制限を設けたフォルダに格納しておくことができます。
企業がファイルサーバーを導入するメリット
ファイルサーバーは企業内でよく利用されています。
業務で複数の人間が同じファイルを編集する場合、もしもそれぞれ個々のPCで操作を行って保存するとなると、ファイルを編集してUSBメモリやメールで次の人に受け渡し、新たに編集をして前の人に戻してチェックを受け、OKが出たら3人目の人に受け渡すという煩雑なやり取りを繰り返さなければならなくなります。
しかしファイルサーバーを利用してファイルを共有すれば、アクセス権限を持つ誰もがいつでも個々のPCを使ってファイルを編集し、常に最新の状態のファイルにアクセスすることができるようになります。また、必要ならば編集前のファイルを残して更新管理をすることも可能です。このことにより業務の効率化が進んで、例えば顧客などからの問い合わせなどにもスピーディーな対応ができるようになるでしょう。
また、ファイルを集中して管理できるため、安全にデータを保存できるのもファイルサーバーのメリットです。データを個々のPCに分散してデータを置いておけば、そのデータの管理は結局、社員それぞれに委ねる形になってしまいます。それに対し、ファイルサーバーに保存されたデータは一元管理をすることが可能です。アクセス権限設定、グループ設定、ファイルのバックアップ、アクセスログ監視、ウイルス対策などを行うことで、データの流出や消失を防ぐこともできます。
企業がファイルサーバーを導入するデメリット
ファイルサーバーを導入するデメリットはコストがかかることです。ハードウェア、OSのライセンス、専用ソフトウェア、バックアップ、セキュリティ対策などにも費用がかかります。データ量が多くなっていけば容量増加も避けられません。
また、ファイルサーバーが故障するリスク、大規模な災害や停電に遭うリスクもあります。機器の経年劣化もやがて問題になってくるため、データの損失が起こらないよう適切な対応をしていかなければなりません。
ファイルサーバーを活用しよう
ファイルサーバーの利便性を最大限に活用するには、自社にとって最適な運用方法を見つけることが重要です。そのためにまず必要なのは運用ルールです。運用ルールの作成はファイルサーバーを立ち上げる前に行うのが理想です。
運用ルールは、例えばフォルダ構造とそれぞれのフォルダの役割、ファイル名の付け方、定期的に行う不要ファイルの削除基準、ファイルの保存期間とアーカイブ化の手順、個人のファイルは保存しないといった禁止事項などを決めていきます。
これらは運用していく上で不都合があれば随時変更していくこともOKですが、最初にある程度しっかりとしたルールを決めておかないと、必要なデータをなかなか探し出せない、似た内容のファイルがいくつものフォルダに存在する、重要データが安全性の低いフォルダに放置されるという事態に陥ってしまいかねません。ファイルサーバーは最初にルールありきで使い始めた方がスムーズに運用できるはずです。
もう一つ、ファイルサーバー内のデータの消失・流出、漏えいを守るためのセキュリティ対策を講じることも欠かせません。データを集中して管理できるのはファイルサーバーのメリットですが、そのファイルサーバーに不正なアクセスや攻撃をされると、会社にとって大きな損失につながるおそれがあるということも自覚しておきましょう。
ファイルサーバーを導入する際には、ファイルサーバーにどのようなメリットとデメリットがあるのかを理解し、自社の業務に当てはめて必要なサーバの性能や機能、メリットをどう活かしデメリットをどれだけ抑えられるかなどを考える必要があります。活用ビジョンと計画性を持ってファイルサーバーを導入・運用していきましょう。
タイミングや注意点は? サーバーリプレイスの考え方
ファイルサーバーやWebサーバーを運用している企業にとって、サーバーのリプレイスは避けて通ることができない課題です。いつ、どのようにしてサーバーリプレイスを行えばよいのか、基本的な考え方などをご紹介します。
サーバーリプレイスの考え方
サーバーを使用していると、やがてリプレイスするタイミングがやってきます。
ストレージの容量逼迫、ハードウェアのスペック不足、老朽化などが進めば、不便や不具合が生じやすくなります。それを補おうとハードディスクを増設したり、部品を交換したり、運用方法を見直したりして状況をしのいだとしても、根本的な解決に至るのは難しいでしょう。また、ハードウェアやOSのサポートが終了した場合もリプレイスを考えなければなりません。
しかし、リプレイスには難しさもあります。データを漏れなく移行することはもちろん、365日24時間稼働しているサーバーであれば、サーバーの稼働を停止する時間を最小限に抑えることが重要なミッションとなります。また新しいハードウェアに移行した後は問題なく業務が再開できる状態になっていることも求められます。
それでも不便や不具合を放置するリスクを考えれば、ギリギリではなく、ある程度余裕を持ったタイミングでリプレイスを行うべきです。そのためにしっかりとした計画を立て、滞りなく安全にリプレイス作業をやり遂げる必要があります。
目安はどのくらい? サーバーのリプレイスのタイミング
サーバーを使い始めてからリプレイスするまでの期間は、一般的には5年が一つの目安といわれます。その根拠は税法上の電子機器の耐用年数(減価償却期間)が5年だからです。実際に5年が経てばビジネスの状況も変わって、時代のニーズに即した、より高性能なサーバーが必要になってきます。5年前の仕様のままのレガシー化した環境では効率的な活用・運用ができないというケースも出てくるでしょう。
とくに近年は業務で扱うデータ量が急増しています。ファイルサーバーなどは2~3年で容量不足となり、そのタイミングでリプレイスに踏み切る企業も多くなっています。リプレイスのタイミングは「長く持たせたとしても5年」と考えた方がよいかもしれません。
サーバーリプレイスを行わないとどうなるのか
サーバーリプレイスを行わないリスクについて考えてみましょう。
まず挙げられるのがサーバーの処理能力の低下による生産性の減退です。残容量の逼迫や長期間連続使用による劣化などでサーバーの処理能力が低下すると、徐々に業務に支障をきたすようになります。そのまま使い続けていると故障が起きる確率も高くなるでしょう。無理に使い続けた結果、突然故障して業務が止まる、さらにはサーバーがダウンした際に重要なデータが破損してしまうなどの事態も考えられます。
また、前述したように最新の製品と比べた場合の相対的な性能ダウンも問題となります。ハードウェア側が最新のOSやソフトウェアの要求するスペックを満たすことができず、十分なパフォーマンスが発揮できなくなるケースは珍しくありません。あるいは業務が拡大し、より多くの複雑な作業をこなさなくてはならなくなったとき、古いサーバーでは性能が追いつかないということも考えられます。その場合、他社との競争力が低下することにもつながるでしょう。
加えて、最新のOSが使用できず、サポートが終了してしまった場合には大きなセキュリティリスクを抱えることにもなります。脆弱性を突く新たなサイバー攻撃に対する防御が手薄になれば、ファイルサーバー内の重要なデータ、機密情報などが漏えい・消失する危険性も増します。
リプレイスの時期が遅れれば遅れるほど、サーバーを運用していく上での快適さと安全性が低下してきます。適切なタイミングで最新のシステムを導入してリプレイスを実施すれば、再び快適さと安全性を確保することができます。
サーバーリプレイス時の注意点
サーバーをリプレイスする際にはまず、どのようなハードウェアとソフトウェアを用意すべきかを探るために、要件を洗い出すことが先決です。現状の運用での問題点はないか、要望はあるかなど実作業スタッフへのヒアリングを実施して、購入する機器のスペックなどを決めていきましょう。
予算の関係上、すべて理想どおりとはいかないにしても、新たに用意するサーバーは今後少なくとも2~3年使い続けることを前提として、余裕を持った構成にしたいところです。今後2~3年でどれくらいサーバーの運用負荷が増すかを算定し、それに見合ったスペック、形態、台数を選定してください。物理サーバーを複数台用意する以外に仮想サーバーを使うという選択肢もあり、さらにクラウドサーバーを利用または併用する方法も考えられます。
また、リプレイスを無事成功させるための手順を十分に確認し、万一の場合に備えてバックアップを取っておくことも欠かせません。スケジュールを実作業スタッフや関係者とも共有し、計画的に新しいサーバーへの移行を進めていきましょう。
サーバーリプレイスを成功させるポイントは、自社のニーズや要件をしっかりと踏まえ、数年先を見越して行うことにあります。まずは現在稼働中のサーバーについて現状を把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。
企業で導入するファイルサーバーの選び方
企業がファイルサーバーを導入するときにチェックしておきたいポイントをまとめました。何を、どのように選定していけばよいのか、基本的なことを知っておきましょう。
企業におけるファイルサーバーの導入効果
ファイルサーバーを導入することで得られる最も大きな効果は、データの共有の簡便化です。簡単にデータを受け渡すことができ、一つのファイルを複数の人間がそれぞれのクライアントPCを使って同時に閲覧したり、各々で編集・保存したりすることもできます。
次に、セキュリティを強化できるという効果も得られます。USBメモリやメールを使ってデータを受け渡す必要がなくなるのでセキュリティリスクが軽減されます。またファイルサーバー内のフォルダにアクセス権を設定することで特定の人間しかデータにアクセスできないという環境を簡単に作ることができます。またアクセスログの監視をすることで不正アクセスなどからデータを守ることも可能です。
ファイルサーバーを導入する際のポイント
ファイルサーバーを導入するための選定ポイントやチェックポイントを見ていきましょう。
サーバーOS
サーバーOSは有料のWindowsか、無料のLinuxのどちらかを選ぶのが一般的です。WindowsはクライアントPCがWindowsであれば親和性が高く、GUI操作に慣れている人も多いため、管理運用もそれほど難しくありません。一方、Linuxは需要に合わせて自由にカスタマイズできるのが特徴です。ただし、管理運用は専門知識を持った人でなければ難しい面があります。
なお、ファイルサーバーとして使うには、Windowsの場合は「Windows Server 2016」などサーバーOSのファイルサーバー機能を利用し、Linuxの場合はファイル共有サーバーソフトの「Samba」を用いることが多いでしょう。
WindowsもLinuxも、ハードウェアにプリインストールして販売されている製品があるので、初期設定の作業時間を短縮したいならそれらを利用するのも一つの方法です。
接続ユーザー数
サーバーOSによって接続ユーザー数が異なることにも注意が必要です。例えば、同じWindows Server 2016でも複数のエディションがあります。Essentialsエディションは価格が安い分、接続ユーザー数は25人、デバイスは50までという制限があります。Standardエディションであれば接続ユーザー数が無制限ですが、クライアントがサーバーに接続して機能を利用するためのライセンス(CAL)が必要です。
ハードウェア
サーバーはパソコンを使って構築することもできます。しかし、業務用サーバーとして使用するにはPCではスペックが足りないと感じることが多いでしょう。とくに多数のクライアントPCを接続し連続稼働させつつ速く安定した動作を求めるなら、信頼度の高いサーバー専用マシンを使用するのが一般的です。
現在、サーバーマシンのCPUはインテルの「Xeon」が主流です。少人数での運用の場合は、CPUやメモリ容量はそれほど重視しなくても良いですが、500名を超えるような場合は、それなりの性能が必要となります。
ファイルサーバーで十分な容量とスピードが求められるのはストレージです。規模や用途にもよっても違いますが、ハードディスクはPCでもよく使用されるSATAか、より高性能な規格であるSAS型のディスクが選択肢になるでしょう。HDDよりも高速なストレージが必要なら、SAS型のSSDを用意する方法もあります。
設置スペース
サーバーは通常のPCと比べると基本的に大型ですが、設置スペースによってタワー型、省スペース型、ラックマウント型などから選ぶことができます。
その他
メーカーやベンダーのサポート体制もチェックポイントです。特に初めての導入であれば、ファイルサーバー用のハードウェア、OS、ソフトウェアの選定からアフターフォローまでしっかりサポートしてくれる業者が安心です。ハードウェアの保証期間も確認しておきましょう。
導入したファイルサーバーを安全に運用するために
HDDは「RAID」を構築するのが一般的です。RAIDは複数のHDDを一つのドライブのように認識・表示させる技術で、容量拡大、冗長性の確保、処理速度の向上を実現することができます。とくにファイルサーバーでは冗長性・容量効率が高い「RAID5」モードを採用することが推奨されています。
さらに、ファイルサーバーを運用する上で高いセキュリティ環境を維持していくには、アクセス権限の設定、アクセスログの監視、メンテナンス対応、バックアップ作業などを行う専門知識を持つ人材を配置することも欠かせません。
また、オンプレミスだけではなく、クラウド型のファイルサーバーの活用を選択肢に入れるのもよいでしょう。クラウドサービスは導入コストが安価で難しい設定などが必要なく、BCP対策やモバイルデバイスによる外部からのデータへのアクセスに有効という特徴があります。社内ファイルサーバーと併用することでより便利に、安全にファイルサーバーを活用できるでしょう。
ファイルサーバーを導入する際は、目的をある程度絞り、予算を決め、それにマッチしたハードウェアやOSを選ぶことになるでしょう。記事を参考に、自社に最適なサーバーを選んでください。
どちらを導入すればいい? ファイルサーバーとNASの違い
ファイルサーバーもNASもファイルを共有するための機能を持っています。そしてさまざまな種類のファイルを複数の社員で共有し必要に応じて編集するために、多くの企業がいずれかを活用しています。これから両者のうちのどちらかを導入するのであれば、自社に合った方を選ばなければなりません。自社にマッチしたファイル共有の方法を知るために、ファイルサーバーとNASの違いについて解説していきます。
ファイルサーバーとNAS
ファイルサーバーとNASはファイルを共有する機能を持つという点でよく似ています。NASはファイルサーバーの一種と見なすこともできます。まずはそれぞれがどのような機器なのか、概要から説明します。
ファイルサーバー
ファイルサーバーはネットワーク上のPCやスマートフォンなどの端末からアクセスしてファイルの共有や交換を行うことのできるコンピューター(サーバー専用機)です。OSを備えたコンピューターを使用し、ファイル管理用のソフトウェアなどをインストールすることで、ファイル共有やデータをより安全に運用するための機能を実現します。
ビジネス向けのファイルサーバーは、これまでは社内にコンピューターを設置し、社内LANに接続して使用するオンプレミス型の社内ファイルサーバーが一般的でした。しかし現在ではこれに加えてインターネット回線に接続して使用するクラウド型のファイルサーバーも登場し、徐々にシェアを広げています。
NAS
NASはNetwork-Attached Storageの略で、ネットワーク対応ハードディスクと呼ばれることもあります。社内LANに接続すると、ファイルサーバーと同じように複数の端末でアクセスできるようになり、ファイルの共有などを行うことができます。簡単にいえば、複数のPCによって共同で使える外付けHDDのようなイメージです。
ファイルサーバーとNASの違い
NASと比べた場合のファイルサーバーの特徴としては、まず柔軟なユーザー管理ができることが挙げられます。フォルダにアクセス権を設定し、許可されたユーザーのみフォルダ内のファイルを閲覧または変更できるようにするなどのアクセス制御することが可能です。またグループ設定をし、グループごとにアクセス権限を与えることもできます。
ファイルサーバーではこのようなユーザー管理によって、日常的な業務で頻繁に使用するデータ、あまり使用しないデータ、機密性の高いデータなどに対し、それぞれユーザーやグループごとにすべての操作ができるのか、閲覧だけができるのか、どのような操作もできないようにするのかなどの細かい条件を設定できます。また、ストレージの変更や増設が簡単なのもファイルサーバーの特徴です。また、アクセスログの取得・管理、セキュリティ対策なども、ソフトウェアやハードウェアを加えることで実現可能です。総じていえば、ファイルサーバーは利用者のさまざまなニーズにカスタマイズ性の高さで応えることができます。
一方、NASに備わっている機能はそれほど多くありません。アクセス権を設定できる製品もありますが、特定のフォルダにアクセス権を付与するとその下層フォルダも自動的に同じ設定になってしまうなど、機能が限られている製品が少なくありません。また、あくまで外部ストレージとして利用するものなので、保存されたフォルダやファイルをNAS本体で操作することはできません。ファイルサーバーに比べれば、柔軟性や拡張性は見劣りがするといえるでしょう。
ただし、NASは機能がシンプルな分、あまり知識のないユーザーでも分かりやすく、管理の負担もそれほどかかりません(一方で、ユーザー管理の設定などは面倒な場合もあります)。ファイルサーバーの場合はハードウェアやソフトウェア、OSのライセンスなどを用意するために費用がかかりますが、それと比べてNASはNAS本体とハードディスクを用意すれば事足りるため、費用も安く抑えられます。
ファイルサーバーとNASはどちらを選ぶべきか
では、ファイルサーバーとNASはどちらを選ぶべきかを考えていきましょう。
選択においては、状況や使い方、必要とする機能が判断基準となります。シンプルにファイル共有機能のみを求めるならNASの方が向いているでしょう。とにかく共有したファイルを複数人で閲覧したい、編集したいという場合は、NASを使えば十分にニーズを満たせるでしょう。
しかし、実はNASには接続数が増えるとそれだけ速度が落ちるという傾向もあります。接続する人数が多く、さらに扱うファイルも日常的なものから機密性の高いものまでさまざまで、部門や部署ごとに使用するフォルダやファイルを分けたい、セキュリティも重視したいといった要望があるのなら、ファイルサーバーの方が適しているでしょう。
ファイルサーバーとNASは似ているけれども、違う部分もいろいろあります。今後、両者の機能はもっと近いものになっていくかもしれませんが、少なくとも現状では違いを把握しておくことが必要です。ファイルサーバーとNAS、それぞれを使ってできることを理解した上で、どちらを導入するか決めてください。
ファイルサーバーを仮想化とは? メリット・デメリットも解説
ファイルサーバーの利用頻度が高くなり、サーバーの台数が増えてきたときに選択肢に入ってくるのが「ファイルサーバーの仮想化」です。仮想化とはどのような方法なのか、そのメリットとデメリットにもスポットを当てて解説します。
「ファイルサーバーを仮想化する」とは
ファイルサーバーはOSのファイル共有機能などを用いて、ネットワーク上でデータの共有や交換を行うなど、ファイル管理の役割を与えられたサーバーです。ネットワークに接続された複数のクライアントPCからのリクエストによって、ファイルサーバー内のファイルを編集・更新したり、ファイルを移動・コピー・削除したり、フォルダを作成して管理したりすることができます。
通常、ファイルサーバーの機能は1台のサーバー用のマシン上で実現されています。新しいファイルサーバーが必要になったときは、別のサーバーを用意してネットワークに接続します。これがサーバーの従来の運用方法でした。これに対して「ファイルサーバーを仮想化する」と、一台のサーバーマシンで複数のファイルサーバー機能を使えるようになります。
ファイルサーバーの仮想化の方法は大きく分けて2つあります。
まず、一台のサーバー上に複数のOSを起動させる「ハイパーバイザー型」と呼ばれる方法です。同じサーバー内に複数の仮想サーバーを作り、各仮想サーバーをファイルサーバーとして使用するというイメージです。
もう一つはホストとなるOS上で、別のゲストOSを運用する「ホスト型」と呼ばれる方法です。ホスト型なら、すでにファイルサーバーとして使用しているサーバーがあったとしても、仮想化ソフトウェアをインストールすることで利用することが可能です。
現在は、ハードウェアを直接制御して処理速度を向上させられるハイパーバイザー型が主流となっています。
ファイルサーバーを仮想化するメリット
ファイルサーバーを仮想化して活用すると、複数の物理サーバーを用意する必要がなくなる、あるいは少なくともその台数を減らせるというメリットが得られます。例えばファイルサーバー、メールサーバー、Webサーバーなどを別々のマシンで運用している場合、サーバーを仮想化することでそれらを一台のマシン内に統合することができます。
そのため、仮想化することで新しいハードの購入費用やハード保守費を抑えることができます。加えてオフィスの省スペース化や省エネ化にも役立つでしょう。
また一台のサーバーに複数のサーバーを構築することで、サーバーリソースを有効活用できるようになります。現在の高性能化しているサーバーマシンは、単機能のサーバーとして使用するだけではCPUの使用率が4分の1程度以下にしかならないといわれています。ファイルサーバーのみであればCPUへの負担はさらに少ないでしょう。仮想化すれば、その剰余リソースをフル活用し、無駄を排除できます。
さらに、バックアップ作業の負担を軽減できるのもファイルサーバーを仮想化するメリットです。通常、ファイルサーバーのバックアップは物理サーバーごとに行う必要があります。しかし、仮想化されていれば一台のサーバーのバックアップを行うだけで数台分のファイルサーバー内のデータをバックアップできることになります。
さらなるメリットとして、環境を別の物理サーバーに移行したいとき、仮想サーバー内の情報をまるごとファイルのように扱うことができる点が挙げられます。通常の物理サーバーの移行であれば、まずOSをインストールしてからアプリケーションをインストールするなどの手順を踏まなくてはなりませんが、仮想サーバーではその必要はありません。これにより仮想サーバーのバックアップを遠隔地に置いておくなどしてBCP(事業継続計画)の実現に役立てることも可能になります。
ファイルサーバーを仮想化するデメリット
ファイルサーバーの仮想化について多くのメリットを紹介しましたが、デメリットも存在します。まずファイルサーバーの仮想化は、もともとサーバーの稼働台数が少ない小規模環境ではメリットを十分に活かしきれないことがあります。具体的には2、3台程度の物理サーバーを統合するために仮想化ソフトウェアやハードディスクを用意した場合、かえってコストがかさんでしまうこともあるということです。
サーバーのCPU使用率を上げることができるのもメリットですが、これもバランスを考える必要があります。ファイルサーバーを仮想化すると、仮想化したサーバー間の通信は通信回線ではなくプログラムによって実現されます。そのためサーバー間のトラフィック量が増加すればするほどCPUへの負荷が増します。仮想化したサーバーの使い方によってはサーバーのパフォーマンスが低下する可能性もあります。
また、仮想化した環境下だと、不具合が発生したときに原因が特定しづらくなることがあります。物理サーバーではハードウェア、ソフトウェア、通信回線などが別々に存在していますが、仮想化されたファイルサーバーではそれらがソフトウェアで実現されており、どこで何が起きているのかという切り分けが難しくなるためです。
仮想化するときの注意点
サーバーに仮想化ソフトウェアをインストールすれば、一つのマシンに異なるOSをインストールして利用することができます。そのため、例えば古いOSとその上で使うアプリケーションを新しいマシン上で動作させることも可能です。これをメリットと捉えることもできるでしょう。
しかし、古いOSやアプリケーションは新たに見つかった脆弱性への対策が更新されない危険性があります。特にファイルサーバーとして運用する場合は重要なデータを保存する可能性も考慮し、セキュリティに関するリスクはできるだけ排除しておいた方がよいでしょう。
ファイルサーバーの仮想化には多くのメリットがあります。しかし、同時にデメリットや注意点もあることを理解し、十分に検討してから導入することをおすすめします。
社内ファイルサーバーとクラウドサーバーのメリット・デメリット
ファイルサーバーとして社内ファイルサーバーだけではなく、クラウドサーバーを導入し運用する企業が増えています。2つのファイルサーバーはどのように違い、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのか、両者の選び方も含めて解説します。
社内ファイルサーバーとは
社内ファイルサーバーとは、社内のネットワークに接続し、ファイルの共有や交換のために使用する、社内に設置したコンピューターのことです。オンプレミス型のファイルサーバーという言い方もされます。従来はファイルサーバーといえばこのような社内ファイルサーバーを使用するのが一般的でした。
では社内ファイルサーバーの特徴を知るために、社内ファイルサーバーのメリットとデメリットを挙げてみましょう。
メリット
社内ファイルサーバーはクローズドなネットワーク環境で使用することができます。そのため安全性が高く、データが社内のファイルサーバー内に保存されているという安心感も得られます。また、ウイルス対策ソフト、アクセスログ監視など、セキュリティ対策についても自由に必要だと思うソフトウェアやハードウェアを使用することができます。
カスタマイズ性の高さはセキュリティ面以外でも活かすことができます。OSやファイル管理ソフトの機能を選択して、詳細なユーザー管理やその他の機能を利用するのも自由自在です。ハードディスクの増設なども必要に応じて行うことが可能です。
デメリット
自社内でのメンテナンスやリプレースが必要な点はデメリットといえるでしょう。多くの社員が使用する場合、運用に際しては細かいルールを決める必要があるのも負担となる可能性があります。メンテナンス、セキュリティのアクセスログ監視、運用ルールの徹底などを行うには管理者を任命し、運用していかなくてはなりません。このことも負担となるかもしれません。
また、社内ファイルサーバーはファイルを集中的に一元管理できますが、反面、故障や災害による被害などが発生すると業務が止まる恐れがあります。とくに大きな地震などが起きると、社内にサーバーを設置している場合は通常業務と併せてファイルサーバーも大きな損害を受けるリスクがあります。
クラウドサーバー(クラウド型ファイルサーバー)とは
クラウドサーバーとは、クラウド環境に構築されたファイルサーバー、あるいはファイル共有や交換ができるオンラインストレージサービスを利用するものです。最近になってさまざまなサービスが提供されるようになり、導入する企業の数も増えています。
では、クラウドサーバーのメリットとデメリットも見てみましょう。
メリット
社内ファイルサーバーに比べて導入コストが安価なことがまず挙げられるメリットです。利用するサービスのパッケージ内容が決まれば、料金も毎月一定の金額を支払うことになるのが一般的です。ただし、中にはデータの出し入れに対して課金するクラウドベンダーやサービスもあります。その場合データの運用方法によっては運用コストがかさむ可能性もあるため注意が必要です。
また、クラウドサーバーでは基本的に提供されるサービスを利用するだけなので、ファイルサーバーの管理運用のために設定やメンテナンスをするようなことがありません。万一、障害が起きたときも同様で、復旧作業はベンダーに任せることになります。
セキュリティに関しては、インターネット回線を使用するため不安に思う人もいますが、万全のセキュリティ対策が講じられているサービスが大半です。少なくとも、ファイルの保存先が遠隔地のデータセンターなどになるため、災害発生時のBCP対策という面では社内ファイルサーバーよりもアドバンテージがあるでしょう。
さらに細かい点ですが、スマートフォンなどのモバイルデバイスを使った社外や出先からのアクセスも、クラウドサーバーは得意とするところです。社内ファイルサーバーの場合も社外から利用できないわけではありませんが、安全な通信を確立するためには設定や環境構築が複雑になることが多いでしょう。
デメリット
デメリットとしてはインターネット回線に障害が出るとサービスを利用できなくなることが挙げられます。また障害からの復旧はベンダーに任せておけばよいとはいうものの、その間、業務はストップすることになり、しっかりと元どおりに戻るまで待つしかないという側面もあります。
また、クラウドサーバーのカスタマイズ性には限界があります。ニーズに合わせてカスタマイズするというよりは、いかに自社の業務にマッチしたサービスを選ぶかが問題となってきます。パッケージ化されたサービスに対して、使う側が合わせなければならないという部分も出てきます。この選択を大きく誤れば、また新しくサービスを選び直さなくてはならないでしょう。
社内ファイルサーバーとクラウドサーバーはどちらを導入すべきか
社内ファイルサーバーとクラウドサーバーのどちらを選ぶかは、それぞれのメリットとデメリットをしっかりと把握し、自社の業務や状況に合っているのはどちらかを考えて決めることになります。
例えば、社内ファイルサーバーのカスタマイズ性の柔軟性を大いに活用したいけれども、クラウドサーバーでの外部からのモバイルデバイスによるアクセスも利用したいという場合は、両方を併用するという選択肢も考えられます。クラウドサーバーの中には特定のユニークな機能が充実しているなど特徴のあるサービスを打ち出しているケースもあるので、まずはそうした特定機能から利用を始めてみるというのもよいのではないでしょうか。
社内ファイルサーバーとクラウドサーバー、そのどちらのメリット・デメリットも把握しておけば、業務に活用する際の選択肢が広がります。現在すでに社内ファイルサーバーを利用しているという場合も、クラウドサーバーを併用することでビジネスチャンスが広がるということもあるでしょう。自社の業務に何が最も適しているか今一度検討してみましょう。
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