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ファイルレスマルウェアとは? 10分でわかりやすく解説

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ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェアとは異なり、ファイルを使用せずにシステムに感染し、攻撃を行うマルウェアです。近年、サイバー攻撃の手法が高度化・巧妙化する中で、ファイルレスマルウェアによる脅威が増大しています。ファイルレスマルウェアは、メモリ上で直接実行されるため、従来の検知手法では発見が困難であり、企業や組織にとって大きな脅威となっています。本記事では、ファイルレスマルウェアの定義や特徴、感染経路、対策方法、課題などについて詳しく解説します。

ファイルレスマルウェアとは

ファイルレスマルウェアとは、従来のマルウェアとは異なり、ファイルを使用せずにシステムに感染し、攻撃を行うマルウェアのことを指します。近年、サイバー攻撃の手法が高度化・巧妙化する中で、ファイルレスマルウェアによる脅威が増大しています。

ファイルレスマルウェアの定義

ファイルレスマルウェアは、 ファイルを使用せずに、システムのメモリ上で直接実行されるマルウェア と定義されます。従来のマルウェアは、悪意のあるファイルをダウンロードし、実行することでシステムに感染しますが、ファイルレスマルウェアは、ファイルを必要とせずに感染・実行が可能です。

従来のマルウェアとの違い

ファイルレスマルウェアと従来のマルウェアの主な違いは以下の通りです。

ファイルレスマルウェア 従来のマルウェア
ファイルを使用しない 悪意のあるファイルを使用
メモリ上で直接実行 ファイルを実行することで感染
検知が困難 ファイルベースの検知が可能

ファイルレス攻撃の特徴

ファイルレス攻撃には以下のような特徴があります。

  1. 正規のシステムツールやプロセスを悪用
  2. メモリ上で直接実行されるため、ファイルベースの検知を回避
  3. 感染後は痕跡を残さず、フォレンジック調査が困難
  4. 高度な技術を駆使した攻撃が可能

ファイルレスマルウェアの脅威

ファイルレスマルウェアは、 従来の検知手法では発見が困難であるため、企業や組織にとって大きな脅威となっています。 ファイルレスマルウェアに感染した場合、機密情報の漏洩や、システムの破壊、ランサムウェア攻撃などの被害が想定されます。また、感染の発見が遅れた場合、被害が拡大する可能性もあります。

ファイルレスマルウェアに対抗するためには、従来のアンチウイルスソフトだけでなく、メモリ上の不審な動作を検知・防御する高度なセキュリティ対策が必要不可欠です。企業や組織は、ファイルレスマルウェアの脅威を認識し、適切なセキュリティ対策を講じる行うことが重要です。

ファイルレスマルウェアの感染経路

ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェアとは異なる感染経路を持っています。以下に、代表的なファイルレスマルウェアの感染経路について説明します。

正規のソフトウェアの脆弱性を利用

ファイルレスマルウェアは、正規のソフトウェアに存在する脆弱性を悪用して、システムに侵入することがあります。攻撃者は、脆弱性を突いてメモリ上で直接マルウェアを実行し、感染を拡大させます。 脆弱性を放置することは、ファイルレスマルウェアの感染リスクを高めることになるため、定期的なソフトウェアのアップデートが重要です。

メモリ上で直接実行

ファイルレスマルウェアの大きな特徴は、ファイルを使用せずにメモリ上で直接実行されることです。攻撃者は、システムのメモリ領域に直接マルウェアのコードを注入し、実行します。この手法により、ファイルベースのマルウェア検知を回避し、感染を拡大させることができます。

PowerShellやWMIの悪用

ファイルレスマルウェアは、正規のシステム管理ツールを悪用することがあります。攻撃者は、これらのツールを利用してマルウェアを実行し、感染を拡大させます。 PowerShellやWMIの不正な使用を監視・制御することが、ファイルレスマルウェア対策として重要です。

ソーシャルエンジニアリング手法

ファイルレスマルウェアは、ソーシャルエンジニアリング手法を用いて感染を拡大させることもあります。攻撃者は、悪意のあるリンクや添付ファイルを含むメールを送信し、ユーザーを騙してマルウェアに感染させます。感染後は、メモリ上で直接マルウェアが実行されるため、ファイルベースの検知を回避します。 ユーザーへのセキュリティ教育と注意喚起が、ソーシャルエンジニアリング攻撃対策として重要です。

ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェアとは異なる感染経路を持つため、対策には新たなアプローチが必要です。企業や組織は、ファイルレスマルウェアの脅威を理解し、適切なセキュリティ対策を講じることが求められます。これには、ソフトウェアの脆弱性管理、メモリ上の不審な動作の検知、システム管理ツールの適切な管理、ユーザーへのセキュリティ教育などが含まれます。総合的なセキュリティ対策により、ファイルレスマルウェアのリスクを最小限に抑えることが可能になります。

ファイルレスマルウェアへの対策

ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェア対策では防ぐことが難しい脅威です。しかし、適切なセキュリティ対策を講じることで、ファイルレスマルウェアのリスクを最小限に抑えることが可能です。ここでは、ファイルレスマルウェアへの効果的な対策について説明します。

OSやソフトウェアの更新

ファイルレスマルウェアは、OSやソフトウェアの脆弱性を悪用して感染を拡大させることがあります。 定期的にOSやソフトウェアのアップデートを行い、既知の脆弱性を修正することが重要です。 アップデートを怠ると、ファイルレスマルウェアに感染するリスクが高まります。自動アップデート機能を有効にするなど、確実にアップデートを適用できる体制を整えることをお勧めします。

不要なサービスの無効化

ファイルレスマルウェアは、正規のシステム管理ツールを悪用することがあります。 不要なサービスや機能を無効化することで、攻撃者によるこれらのツールの悪用を防ぐことができます。 システム管理者は、組織内のシステムを精査し、業務に必要のないサービスや機能を特定して無効化することを検討してください。これにより、ファイルレスマルウェアの感染リスクを減らすことが可能です。

EDRソリューションの導入

EDR(Endpoint Detection and Response)ソリューションは、エンドポイント端末(使用者端末)における脅威の検知と対応に特化したセキュリティ対策です。 EDRソリューションは、メモリ上の不審な動作を検知し、ファイルレスマルウェアの感染を早期に発見することができます。 また、脅威の調査や封じ込めにも効果的です。企業や組織は、ファイルレスマルウェア対策の一環として、EDRソリューションの導入を検討することをお勧めします。

セキュリティ教育の徹底

ファイルレスマルウェアは、ソーシャルエンジニアリング手法を用いて感染を拡大させることがあります。 従業員に対するセキュリティ教育を徹底し、フィッシングメールなどの脅威に対する意識を高めることが重要です。 定期的なセキュリティトレーニングや、注意喚起のためのメール配信などを行い、従業員のセキュリティ意識を向上させることをお勧めします。セキュリティ教育は、ファイルレスマルウェア対策だけでなく、組織全体のサイバーセキュリティ強化にも寄与します。

ファイルレスマルウェアは、巧妙化・高度化する脅威ですが、適切なセキュリティ対策を講じることで、そのリスクを最小限に抑えることが可能です。OSやソフトウェアの更新、不要なサービスの無効化、EDRソリューションの導入、セキュリティ教育の徹底など、多層的なアプローチが求められます。企業や組織は、自社のシステムやビジネス要件に合わせて、最適なファイルレスマルウェア対策を検討・実施することが重要です。

ファイルレスマルウェア対策の課題

ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェアとは異なる特性を持つため、対策にも様々な課題があります。ここでは、ファイルレスマルウェア対策における主な課題について説明します。

検知の難しさ

ファイルレスマルウェアは、 ファイルを使用せずにメモリ上で直接実行されるため、従来のファイルベースのマルウェア検知手法では発見が困難です。 アンチウイルスソフトなどの従来のセキュリティ対策では、ファイルレスマルウェアの検知に限界があります。メモリ上の不審な動作を監視・検知する高度な技術が必要とされます。

攻撃手法の巧妙化

ファイルレスマルウェアの攻撃手法は、年々巧妙化しています。攻撃者は、正規のシステムツールやプロセスを悪用し、感染を拡大させます。 PowerShellやWMIなどの管理ツールが悪用されることも多く、これらの不正な使用を検知・制御することが重要な課題となっています。 攻撃手法の進化に合わせて、セキュリティ対策も常に更新・強化していく必要があります。

未知の脅威への対応

ファイルレスマルウェアは、未知の脅威である場合が多く、既存のセキュリティ対策では対応が難しいことがあります。 ゼロデイ脆弱性を突いた攻撃や、新たな手法を用いたファイルレス攻撃に対しては、迅速な検知と対応が求められます。 未知の脅威に対応するためには、脅威インテリジェンスの活用や、機械学習などの先進的な技術の導入が必要とされています。

包括的なセキュリティ対策の必要性

ファイルレスマルウェア対策には、単一の製品やソリューションだけでは不十分であり、包括的なセキュリティ対策が必要です。ネットワークレベルでの監視、エンドポイントでの防御、ユーザー教育など、多層的なアプローチが求められます。 組織全体でセキュリティ対策を推進し、各層での防御を強化することが重要な課題となっています。 セキュリティ製品の導入だけでなく、セキュリティポリシーの整備やインシデント対応体制の構築なども含めた、総合的なセキュリティ強化が必要です。

ファイルレスマルウェア対策には様々な課題がありますが、これらの課題に適切に対処することが、組織のセキュリティ向上につながります。高度な検知技術の導入、攻撃手法の分析と対策の更新、未知の脅威への迅速な対応、包括的なセキュリティ対策の推進など、多角的なアプローチが求められます。ファイルレスマルウェアの脅威は今後も拡大することが予想されるため、組織はこれらの課題を認識し、積極的にセキュリティ対策に取り組むことが重要です。

まとめ

ファイルレスマルウェアは、従来のマルウェアとは異なり、ファイルを使用せずにシステムに感染し、メモリ上で直接実行されるため、検知が非常に困難です。正規のソフトウェアの脆弱性やシステム管理ツールを悪用して感染を拡大させるため、OSやソフトウェアの更新、不要なサービスの無効化、EDRソリューションの導入、セキュリティ教育の徹底が重要な対策となります。また、攻撃手法の巧妙化や未知の脅威への対応など、ファイルレスマルウェア対策には様々な課題があるため、包括的なセキュリティ対策が必要不可欠です。企業や組織は、ファイルレスマルウェアの脅威を認識し、自社のシステムに合わせた適切な対策を講じることが求められます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム