IaaSとは? わかりやすく10分で解説
はじめに
情報技術の進化により、私たちはデータの処理方法から保存場所まで、多くの選択肢を持つようになりました。考えられる選択肢の一つは、自社でのハードウェアの保有、もしくはIaaSと呼ばれるサービスの利用です。本記事では、IaaSとは何かについて説明します。
IaaS(Infrastructure as a Service)とは
IaaS(Infrastructure as a Service) は、インターネットを通じて提供されるクラウドベースのサービスの一つです。ユーザーは、物理的なインフラストラクチャ(サーバー・ネットワーク機器・ストレージなど)を自社で運用・管理することなく、必要なリソースをオンデマンドで利用できます。IaaSのプロバイダーは、必要なインフラストラクチャの設計・導入・管理を担当し、ユーザーはその上でソフトウェアを動作させるだけです。IaaSは、ITリソースを必要に応じてスケールアップ・ダウンできる電気サービスのようなものであり、ビジネスオペレーションの効率性を高めるのに役立ちます。
IaaSのメリット・デメリット
IaaSの最大のメリットは、その柔軟性と拡張性です。企業が必要とするリソースが変わるとき、自社内でハードウェアを購入・管理する必要がなく、手間なくリソースの追加や削除ができます。また、データセンターの運用やメンテナンスのためにIT専門家を雇う必要がなく、コストを削減できるのもIaaSの魅力です。
しかし、IaaSのデメリットとして、ベンダーロックイン(特定のサービスプロバイダーからの移行が難しい状況)のリスクがあります。また、インフラの運用管理がプロバイダーの責任となるため、プロバイダーが運用管理に失敗した場合は企業に大きなダメージを与える可能性があります。そして、重要なデータが外部のサービスプロバイダーによって管理されるため、セキュリティ上のリスクも考慮する必要があります。
IaaSの基本的な概念
IaaS(Infrastructure as a Service)の基本的な概念の理解のためには、まずはIaaSがどのような背景から生まれたのかを知ることが肝心です。IaaSが生まれた背景には、何もかもがデジタル化された現代社会において、「クラウドコンピューティング」が重要な役割を果たしているという事実があります。
クラウドコンピューティングとの関連
クラウドコンピューティングは、インターネットを通じてコンピューターリソースやITサービスを提供する技術のことを指します。この中にはさまざまな形態が存在し、IaaSはその一つです。IaaSは、物理的なインフラストラクチャ(サーバー・ストレージ・ネットワーク等)をインターネット上から利用できるサービスで、企業は物理的な設備を自社に設置することなく、必要なリソースをクラウドから取り入れられます。
IaaSの主要な機能
IaaSの主要な機能は、ハードウェアリソースの提供・ストレージ領域の提供・仮想ネットワーキングの提供・オペレーティングシステムやアプリケーションを実行するための環境の提供です。これらの機能のおかげで、IaaS利用者は、使用分だけの料金で必要なインフラを必要な時間だけ利用できます。
オンプレミスとクラウドの違い
IaaSを理解するためには、「オンプレミス」と「クラウド」の違いの理解が重要です。「オンプレミス」は、自社内にITインフラを所有・運用する方式を指します。これに対して「クラウド」は、インターネット上に存在するITリソースを利用する方式で、その中にIaaSが含まれます。二つの違いは、物理的な資産の所有と運用管理の有無にあり、IaaSの活用により企業は自社でのインフラ管理コストや人的リソースを削減し、より重要なビジネスに注力できます。
IaaSの具体的な使用例
IaaSはその利便性から、さまざまな業界で活用され始めています。ここでは、特に多くの事例が見られるスタートアップ企業での利用やデータベースの運用・管理、大規模なシステム開発について詳しく解説します。
スタートアップ企業での利用
近年スタートアップ企業ではIaaSの活用が急速に進んでいます。なぜなら、IaaSを利用することで初期費用を抑えられ、即座にサーバー環境を整えられるためです。企業の成長に応じたリソースのスケーリングも簡単で、業界変動にも即座に対応できます。また、システムの保守や運用にかかる費用も削減でき、特に技術者が少ないスタートアップ企業にとってはそのメリットは大きいといえるでしょう。
データベースの運用・管理
IaaSはデータベースの運用・管理にも優れたパフォーマンスを発揮します。大量のデータを扱う場合、専用のハードウェアとそれを管理運用する技術者が必要ですが、IaaSの利用によりそのコストを大幅に削減できます。さらに、データベースのバックアップやリカバリーも簡単で、重要なデータを安全に管理可能です。
大規模なシステム開発
大規模なシステムの開発もIaaSの活用事例として挙げられます。従来の方法ではハードウェア購入からサーバー設定まで多大な時間とコストがかかりますが、IaaSなら即座に必要な環境を用意し、開発に集中できます。また、開発環境のスケーリングやテスト環境の準備も柔軟に行えるため、開発の効率を大きく高められます。
IaaSの種類と主要な提供企業
IaaS(Infrastructure as a Service)は、クラウドサービスの一つであり、主に3つのタイプがあります。
公開クラウドIaaS
公開クラウドIaaSとは、データセンターに設置された仮想マシンやストレージをインターネット経由で提供するサービスのことです。ユーザーは必要に応じてリソースを追加または削除でき、料金は利用したリソースに対してのみ課金されます。公開クラウドIaaSは、拡張性やコスト効率性が求められる場合に特に適しています。
プライベートクラウドIaaS
一方、プライベートクラウドIaaSとは、特定の組織が専有するクラウド環境を用いて提供するサービスのことです。データのプライバシーや制御が重視される場合、企業の内部にプライベートクラウドの環境を構築すれば、より高いセキュリティを確保できます。
ハイブリッドクラウドIaaS
ハイブリッドクラウドIaaSは、公開クラウドとプライベートクラウドの利点を組み合わせた形のクラウドコンピューティングモデルです。特定のアプリケーションやデータはプライベートクラウドで保管し、一方で他のリソースは公開クラウドで利用するといった方法が一般的です。これにより、セキュリティとフレキシビリティの両方を達成できます。
主要なIaaS提供企業
現在、評価が高く、広く利用されているIaaSの提供企業は主に次の4社になります。 Amazon Web Services (AWS)は、豊富なサービスラインアップと優れた拡張性を誇ります。 Microsoft Azureは、Microsoft製品との親和性の高さが特徴で、企業向けに多くのサービスを提供しています。 Google Cloud Platform (GCP)は、Googleの先進的な技術を幅広く活用できることが特長です。 そして、IBM Cloudは、AIやデータ分析の専門知識を活かした独自のサービスを提供しています。
これらの企業それぞれが、独自の特性や特徴を活かし、IaaS市場で競争を繰り広げています。
IaaSの選び方
次に、IaaSの選び方について説明します。求める機能や運用のスタイル、予算に応じて適切なIaaSの選択が重要です。ここで考慮すべき基準について詳しく見ていきましょう。
選び方の基準
まず、IaaSの選び方の基準を理解しておきましょう。IaaS選びの一つ目のキーポイントは必要な機能です。IaaSプロバイダは、コンピューティングリソースだけでなく、ストレージ・ネットワーキング・アプリケーションプラットフォームなど、多くの追加機能を提供しています。
さらに、サポート体制も選択基準の一つです。障害が発生した時に迅速に対応してくれるか、カスタマーサポートの対応が良いか、24時間365日体制でサポートが提供されているかなどを確認しましょう。
また、コストも重要な選択基準の一つです。要求される機能を満たしながら、予算内で利用できるサービスを見つけることが必要です。
費用とパフォーマンスのバランス
次に、費用とパフォーマンスのバランスについて考察します。IaaSは、ハードウェアの設置や管理を必要とせず、ユーザのニーズに合わせてサービスをリアルタイムでスケールできます。一方これは、使用した分だけコストがかかることを意味しています。
したがって、利用したサービスの量によって料金が変動するため、必要なサービスを適切な範囲で利用し、そのパフォーマンスとコストのバランスをとることが必要です。長期契約を結ぶことで割引を受けられる場合もあるので、利用状況を見極めて適切なプランを選びましょう。
セキュリティ対策
最後に、セキュリティ対策について説明します。クラウドサービスにデータを保存する際、企業はデータ漏洩やサイバー攻撃のリスクを予防するために、適切なセキュリティ対策が施されているプロバイダを選ぶ必要があります。
セキュリティ対策には、物理的なセキュリティ・ネットワークセキュリティ・データ保護・ユーザーアクセス管理など、さまざまな要素が含まれます。特に一部の規制に従っている企業の場合、特定のセキュリティ要件を満たすプロバイダの選択が必要です。
例えば、セキュリティ認証を取得しているプロバイダを選択する、データ暗号化の仕組みを持つプロバイダを選ぶなど、イメージに合ったセキュリティ対策を施しているプロバイダを選びましょう。
IaaSの将来性
近年、IaaSは急速に普及し、その重要度が増しています。このトレンドは今後も続き、さまざまな利用分野が開拓されると予想されます。今後のIaaS市場と新たな利用分野の可能性について詳しく見ていきましょう。
市場の成長予測
IaaS市場は急速な成長を遂げています。 一部の調査では、今後数年間で数十億ドル規模の市場規模まで拡大すると予測されています。その理由は、企業がITインフラストラクチャのコストを削減し、運用の効率化を図りたいというニーズが高まっていることにあります。さらに、ディジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、ITインフラの柔軟性や拡張性が求められるようになっており、そのニーズを満たす最適な解としてIaaSが注目を浴びています。
新たな利用分野の開拓
現在、IaaSは主に企業のITインフラ管理やアプリケーション開発などに利用されていますが、その活用範囲はさらに広がると考えられています。
一つの可能性として、ビッグデータ分析があります。高度な分析を行うためには巨大な処理能力とストレージが必要で、IaaSはこれらを低コストで提供できるため、ビッグデータ分析に対する需要の増加とともにIaaSの利用も増えると予想されています。
また、人工知能(AI)や機械学習(ML)といった先端技術の分野でも、IaaSの利用が期待されています。AI/MLの技術開発は大量のデータと高度な計算能力を必要としますが、これらを柔軟に、かつコスト効率良く提供できるのがIaaSの強みです。
さらに、IaaSはITインフラの運用管理を容易にし、スケーラビリティを提供するため、大企業だけでなく、小規模ビジネスやスタートアップにも適用できるとされています。これにより、新たなビジネス分野でのIaaSの利用が進むと予想されています。
まとめ
この記事を通じて、IaaS(Infrastructure as a Service)の概要から使用例、種類、選び方、そして将来性まで、詳しく解説してきました。
IaaSを理解することの重要性
IaaSは、その柔軟性と拡張性から多様なビジネスニーズを満たすための強力なツールです。今日、企業はデジタル変革を追求しており、これには大量のデータとコンピューティングリソースが必要です。そして、IaaSはその両方を提供する最適なソリューションであり、IaaSの導入により企業は専門的なITリソースを内部に確保することなく、自社のビジネスに集中できます。
また、大企業だけでなく、中小企業やスタートアップでも同様の利点を享受できます。特にベンチャー企業では設備投資を抑えつつ、急速にビジネスを拡大するためのインフラストラクチャを構築可能です。これは、ビジネスの成長とスピードを最大化するための重要な要素といえます。
更に、ユーザーにとっては技術的な知識を必要とせずに、自分たちが必要とするサービスを自由に選択し、利用できる点もIaaSの大きなメリットです。これにより、ユーザーは自身のビジネスに必要な部分だけに集中できます。
次世代のクラウドサービスの一つであるIaaS。その理解を深めることで、より効果的なビジネス運営が可能となるでしょう。
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