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IaC(Infrastructure as Code)とは? 10分でわかりやすく解説

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目次

IaC(Infrastructure as Code)とは、インフラストラクチャの構成をコードで定義し、管理するアプローチです。従来の手動によるインフラ管理では、設定ミスや構成の不整合が発生しやすく、作業効率も低くなりがちでした。IaCでは、インフラの構成をコードとして記述し、バージョン管理システムで一元管理することで、構築作業の自動化や環境の標準化を実現します。コードベースでインフラを管理することで、再現性の向上、変更履歴の追跡、コラボレーションの促進などのメリットが得られます。本記事では、IaCの基本概念から、具体的な実現方法、ベストプラクティスまで、体系的に解説します。

IaCとは何か?

IaC(Infrastructure as Code)とは、インフラストラクチャをコードで管理するアプローチのことを指します。従来のインフラ管理では、手動での設定や構成が主流でしたが、IaCではインフラの構成をコードとして定義し、バージョン管理システムで管理します。これにより、インフラの構築や変更を自動化し、効率的かつ安定的なインフラ運用を実現することができます。

IaCの定義と目的

IaCの主な目的は以下の通りです。

  1. インフラ構成の標準化と再現性の向上
  2. インフラ変更のバージョン管理と追跡
  3. インフラ構築と変更の自動化
  4. 人的ミスの削減とインフラ運用の効率化

IaCでは、インフラの構成をコードで記述し、そのコードをバージョン管理システムで管理します。これにより、インフラの構成が標準化され、再現性が向上します。また、インフラの変更履歴を追跡できるため、問題が発生した場合にも原因の特定が容易になります。

従来のインフラ管理との違い

従来のインフラ管理では、以下のような課題がありました。

  • 手動での設定と構成が主流で、人的ミスが発生しやすい
  • インフラの構成が標準化されておらず、再現性が低い
  • インフラの変更履歴が管理されていないため、問題の原因特定が困難
  • インフラの構築や変更に時間がかかり、運用効率が低い

IaCでは、これらの課題を解決し、インフラ管理を効率化することができます。コードによるインフラ管理により、手動での作業を減らし、人的ミスを最小限に抑えることができます。また、インフラの構成が標準化され、再現性が向上するため、問題の原因特定も容易になります。

IaCがもたらすメリット

IaCを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

メリット 説明
効率的なインフラ運用 コードによるインフラ管理により、手動での作業が減り、運用効率が向上します。
インフラの標準化と再現性 インフラの構成がコードで定義されるため、標準化され、再現性が向上します。
変更履歴の管理 インフラの変更がバージョン管理されるため、変更履歴の追跡が可能になります。
コラボレーションの促進 インフラのコードをチームで共有することで、コラボレーションが促進されます。

IaCを導入することで、インフラ運用の効率化、標準化、変更管理の向上など、多くのメリットを得ることができます。

IaCを導入する際の注意点

IaCを導入する際は、以下の点に注意が必要です。

  • コードの品質管理と保守性の確保
  • チームメンバーのスキルセットとトレーニング
  • 既存のインフラとの統合と移行計画
  • 適切なツールとプラットフォームの選択

IaCを成功させるためには、コードの品質管理と保守性の確保が重要です。また、チームメンバーがIaCの概念を理解し、必要なスキルを身につけることが求められます。既存のインフラとの統合や移行計画も綿密に立てる必要があります。さらに、IaCを実践するための適切なツールとプラットフォームを選択することも重要です。

IaCの仕組みと実現方法

IaCの基本的な仕組み

IaCの基本的な仕組みは、インフラストラクチャの構成をコードで定義し、そのコードをバージョン管理システムで管理することです。インフラの構成をコードで表現することで、インフラの構築や変更を自動化し、再現性と一貫性を確保することができます。コードはプログラミング言語やドメイン特化言語(DSL)を用いて記述され、インフラのあるべき状態を宣言的に定義します。

コードによるインフラ定義の方法

インフラの定義には、以下のような方法が用いられます。

  1. 設定ファイルの記述:YAMLやJSONなどの構造化されたファイル形式を用いて、インフラの構成を定義します。
  2. プログラミング言語の利用:Python、Ruby、Goなどのプログラミング言語を用いて、インフラの構成をコードで記述します。
  3. ドメイン特化言語(DSL)の活用:Terraform、AWS CloudFormationなどのDSLを用いて、インフラの構成を宣言的に定義します。

これらの方法を用いて、インフラの構成をコードで表現することで、インフラの構築や変更を自動化し、再現性と一貫性を確保することができます。また、コードによるインフラ定義は、バージョン管理システムを用いて管理されるため、変更履歴の追跡やコラボレーションが容易になります。

バージョン管理とコードレビュー

IaCでは、インフラのコードをバージョン管理システムで管理することが重要です。バージョン管理システムを用いることで、以下のようなメリットが得られます。

  • インフラの変更履歴の追跡と管理
  • 変更の差分の確認と比較
  • コードの共有とコラボレーション
  • 問題発生時の原因特定と復旧

また、インフラのコードに対してコードレビューを実施することも推奨されます。コードレビューでは、複数の担当者がコードの品質、セキュリティ、パフォーマンスなどをチェックし、改善点を指摘します。コードレビューを行うことで、コードの品質向上とミスの早期発見が期待できます。

CI/CDパイプラインとの連携

IaCは、継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)のパイプラインと連携することで、さらなる自動化と効率化が可能になります。CI/CDパイプラインでは、以下のような流れでインフラの構築や変更を自動化します。

ステップ 説明
コードの変更 インフラのコードを変更し、バージョン管理システムにコミットします。
CIの実行 コードの変更をトリガーとして、CIツールがコードの品質チェックやテストを自動実行します。
インフラの構築・変更 CIの実行が成功した場合、CDツールがインフラの構築や変更を自動的に実行します。
テストとデプロイ インフラの変更後、自動テストを実行し、問題がなければ本番環境へのデプロイを行います。

CI/CDパイプラインとIaCを連携させることで、インフラの構築や変更を自動化し、リードタイムの短縮とデプロイの信頼性向上が期待できます。また、インフラの変更が自動的にテストされるため、問題の早期発見と品質の向上にもつながります。

IaCを支える技術とベストプラクティス

宣言型と命令型のアプローチ

IaCを実践する上で、宣言型と命令型の2つのアプローチがあります。宣言型アプローチでは、インフラのあるべき状態を定義し、その状態に到達するためのステップは抽象化されます。一方、命令型アプローチでは、インフラの構築や変更のための一連のステップを明示的に記述します。宣言型アプローチは、インフラの構成を簡潔に表現でき、状態の一貫性を維持しやすいというメリットがあります。命令型アプローチは、より細かな制御が可能ですが、コードの複雑性が増す傾向にあります。プロジェクトの要件に応じて、適切なアプローチを選択することが重要です。

コードの再利用とモジュール化

IaCにおいて、コードの再利用とモジュール化は重要な概念です。よく使われるインフラ構成をモジュール化し、再利用可能な形で管理することで、コードの保守性と生産性を向上させることができます。モジュール化されたコードは、異なるプロジェクトや環境間で共有でき、コードの重複を避けることができます。また、モジュールのバージョン管理を適切に行うことで、変更の影響範囲を最小限に抑えることができます。IaCツールの多くは、モジュールの作成と管理をサポートしており、コミュニティによって提供される再利用可能なモジュールも利用できます。

セキュリティとコンプライアンスの確保

IaCを導入する際は、セキュリティとコンプライアンスの確保に十分な注意を払う必要があります。インフラのコードにはセンシティブな情報が含まれる可能性があるため、適切なアクセス制御と暗号化が不可欠です。また、コードの脆弱性を定期的にスキャンし、セキュリティベストプラクティスに準拠していることを確認することが推奨されます。コンプライアンスの観点からは、業界標準や規制要件に沿ったインフラ構成を定義し、監査の際に証跡を提供できるようにしておくことが重要です。IaCツールの多くは、セキュリティとコンプライアンスのための機能や統合を提供しており、それらを活用することで、リスクの低減とガバナンスの強化が可能になります。

モニタリングと監査の自動化

IaCを活用することで、インフラのモニタリングと監査の自動化が可能になります。インフラの構成がコードで定義されているため、実際のインフラ状態とコードの整合性を自動的に検証できます。モニタリングツールと連携することで、インフラのパフォーマンスや異常動作を検知し、アラートを発することができます。また、監査の観点からは、インフラの変更履歴や承認プロセスをコードとして記録することで、コンプライアンス要件への対応が容易になります。IaCツールの多くは、モニタリングや監査のための機能を提供しており、それらを活用することで、インフラの可視性と制御性を高めることができます。

以上が、IaCを支える技術とベストプラクティスの概要です。IaCを成功裏に導入するためには、これらの要素を適切に組み合わせ、組織のニーズに合わせて最適化していくことが求められます。IaCは継続的な改善のプロセスであり、定期的な見直しと改善を通じて、より効率的で信頼性の高いインフラ運用を実現することができるでしょう。

IaCの導入プロセスと運用

IaC導入の計画と準備

IaCを導入する際は、まず明確な目的と目標を定義することが重要です。IaCを導入する目的は、インフラ運用の効率化、標準化、再現性の向上などが挙げられます。これらの目的を達成するために、現状のインフラ管理の課題を分析し、IaCによってどのように解決できるかを検討します。また、IaC導入に必要なツールやプラットフォームの選定、チームメンバーのスキルセット評価と教育計画の策定も必要です。IaC導入のロードマップを作成し、段階的に実施していくことが推奨されます。

既存インフラのコード化

IaC導入の次のステップは、既存のインフラをコードで表現することです。既存インフラの構成を分析し、それをコードに落とし込む作業が必要になります。この際、インフラの構成要素を適切に抽象化し、再利用可能なモジュールとして設計することが重要です。既存インフラのコード化には、選定したIaCツールやプログラミング言語を使用します。コード化の過程では、十分なテストとドキュメンテーションを行い、コードの品質と保守性を確保することが求められます。また、既存インフラとのデータ移行やカットオーバーの計画も綿密に立てる必要があります。

IaCの運用体制と役割分担

IaCを導入した後は、適切な運用体制の確立が重要です。IaCの運用には、インフラのコード化、レビュー、テスト、デプロイ、モニタリングなど、様々な工程が含まれます。これらの工程を効率的に遂行するために、チーム内の役割分担を明確にし、それぞれの担当者が必要なスキルを身につけることが求められます。また、IaCの運用プロセスを標準化し、手順書やガイドラインを整備することも重要です。運用体制の確立には、チームメンバー間のコミュニケーションとコラボレーションが欠かせません。定期的なミーティングやレビューを通じて、課題の共有と改善策の検討を行うことが推奨されます。

継続的な改善とアップデート

IaCは継続的な改善のプロセスであり、一度導入したら終わりではありません。インフラのコードは、継続的にメンテナンスとアップデートを行う必要があります。新しい機能やセキュリティパッチへの対応、パフォーマンスの最適化などが継続的に求められます。また、ビジネス要件の変化に応じて、インフラの構成を柔軟に変更できるようにしておくことも重要です。継続的な改善には、モニタリングと監査のデータを活用し、改善点を特定することが有効です。また、コミュニティから提供される最新のベストプラクティスや、IaCツールのアップデートを積極的に取り入れることも推奨されます。

IaCの導入と運用は、組織の規模やニーズに応じて柔軟に対応する必要があります。IaCのメリットを最大限に活かすためには、適切な計画、準備、運用体制の確立、継続的な改善が不可欠です。

まとめ

IaC(Infrastructure as Code)とは、インフラの構成をコードで定義し、管理する手法です。従来の手動によるインフラ管理と比べ、IaCではインフラの構築や変更を自動化し、再現性や一貫性を確保することが可能です。また、コードによる管理によって、インフラの変更履歴の追跡やコラボレーションが容易になります。IaCの導入により、効率的なインフラ運用、標準化、変更管理の向上などのメリットが得られます。

参考文献

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム