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製品やサービスの品質をそろえ、取引をスムーズにし、社内の作業手順を標準化する――こうした取り組みの土台として活用されているのがJISです。本記事では、JIS(日本産業規格)の基本から、企業にとってのメリット、JISマーク制度の考え方、さらに「自社の業務・システムにどう取り入れるか」までを整理します。読み終えるころには、「自社で参照すべき規格の探し方」と「認証取得を検討すべき場面」が判断できるようになります。
JISは日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称で、日本国内の標準(国家規格)として、製品・用語・試験方法・手順などの共通ルールを定めたものです。以前は「日本工業規格」と呼ばれていましたが、2019年7月1日の法改正により名称が「日本産業規格」に改められ、対象も工業分野に限らず、データやサービスなどへ拡大しました。
JISは、法律(産業標準化法)に基づいて整備され、国の制度として運用されています。制度の全体像は経済産業省の解説や、日本産業標準調査会(JISC)で整理されています。名称変更(日本工業規格→日本産業規格)と、対象分野拡大(データ・サービス等を含む)は、この法改正のポイントです。
JISが目指すのは、同じものを同じ基準で扱える状態をつくることです。代表的には次のような狙いがあります。
なお、JISは「万能の品質保証」ではありません。JISはあくまで“規格で定めた条件を満たしていること”を示すためのものです。製品の実力は、規格の設計(要求が適切か)と、運用(工程・検査・教育)が揃ってはじめて上がります。
JISは分野別に分類記号が付いています。たとえば、情報処理・IT領域は「X」から始まるJIS(例:JIS X 25000シリーズ)として整備されています。規格番号は「分野(分類記号)+番号」で表され、目的(用語、試験方法、要求事項など)によって内容も大きく変わります。
| 分類記号 | 対象分野(例) |
|---|---|
| A | 土木・建築 |
| B | 一般機械 |
| C | 電気・電子 |
| D | 自動車 |
| K | 化学 |
| X | 情報処理(IT) |
| Z | その他 |
JISを参照すると、品質を語るための「言葉」と「測り方」を揃えられます。たとえば、試験方法や用語が規格で定義されていれば、部門・拠点・取引先が違っても同じ前提で議論しやすくなります。結果として、手戻り削減や教育コストの低減につながります。
取引で揉めやすいのは、要求の言い回しが曖昧なときです。「どの条件で合格か」「検査は何をどう測るか」をJISで共通化できれば、発注側・受注側の齟齬を減らせます。特に、受入検査や品質保証の説明資料において、規格参照は説得力を持ちます。
JISは、ISO/IECなど国際規格との整合を意識して改定されることがあります。国内仕様の“独自ルール”で閉じない設計は、海外顧客・海外サプライヤーとやり取りする際の摩擦を減らします。
JISへの適合や、JISマークの表示は、顧客にとって理解しやすい「一定基準を満たしている」サインになり得ます。一方で、表示の前提(認証対象、範囲、条件)を説明せずに使うと誤解も生みます。社内では「何を根拠に、どこまで言えるのか」を整理したうえで活用するのが安全です。
JISマーク表示制度は、登録認証機関(国に登録された第三者機関)から認証を受けた事業者が、認証対象にJISマークを表示できる制度です。制度上、鉱工業品、その加工技術、形状等のみについて定めたJISへの適合など、用途に応じたマークが整理されています。
JISマークは「何に対する適合を示すのか」で区分されます。代表例は次のとおりです。
また、2019年の法改正により、電磁的記録(データ)や役務(サービス)なども制度の対象として扱える整理が進んでいます。自社の対象が「製品」なのか「加工技術」なのか、あるいは「データ/サービス」なのかで、検討すべき制度・審査の考え方が変わります。
実務上は、次の順で検討すると迷いが減ります。
認証は「取ったら終わり」ではなく、維持が前提です。製造条件の変更、サプライヤ変更、設計変更などが起きる現場ほど、変更管理(いつ・何が・なぜ変わったか)を運用として回す必要があります。
「JISを入れる」自体を目的にすると失敗しがちです。まずは、どの課題を減らしたいのかを言語化します(例:手戻りが多い/検査基準が属人化している/取引先との仕様すり合わせが重い/品質説明が弱い)。目的が定まると、参照すべき規格も絞りやすくなります。
対象(製品・工程・文書・ソフトウェア開発プロセスなど)を決めたら、JISCや規格提供サイトで規格番号・名称・改定年を確認します。規格本文の入手は有償の場合が多いため、「まず要約・目次で当たりを付け、必要なら購入する」という進め方が現実的です。
規格はそのままだと抽象度が高いことがあります。現場で使うには、次のように落とし込みます。
この変換を丁寧にやるほど、監査対応や引き継ぎが楽になります。
自社システム(業務システム、ソフトウェア、運用)にJISを取り入れる場合、製品規格だけでなく、開発・運用のプロセス規格が役立ちます。たとえば、ソフトウェアのライフサイクルを共通言語で扱う枠組みとして、JIS X 0160(ソフトウェアライフサイクルプロセス)が参照されます。また、品質要求と評価の整理ではJIS X 25000シリーズ(SQuaRE)がよく使われます。
導入後は、運用データで効果を確認します。たとえば、障害件数、手戻り工数、検査不合格の要因、問い合わせの種類などです。「規格に合わせた」は手段であり、狙い(品質・効率・取引円滑化)に効いているかで評価しましょう。
JISは、日本の国家規格として、品質・取引・互換性・安全性を支える“共通ルール”です。2019年の法改正により「日本産業規格」となり、データやサービスなども標準化の対象として位置づけられました。企業にとっては、品質の土台づくり、取引の円滑化、国際規格との整合による競争力強化などのメリットがあります。JISマーク認証を検討する場合は、対象範囲と適用規格を明確にし、取得後の維持まで含めて計画することが重要です。自社業務や自社システムへ取り入れる際は、目的→対象→規格→手順化→運用改善の順で進めると、形だけに終わりにくくなります。
現在の正式名称は「日本産業規格(JIS)」で、2019年7月1日に名称が改められました。
JISは産業標準化法に基づいて整備・運用される国家規格です。
JISが定める条件を満たすことは示せますが、製品品質のすべてを自動的に保証するものではありません。
登録認証機関の認証により、対象が該当するJISに適合していることを示す表示だと分かります。
あります。鉱工業品、加工技術、形状等のみについて定めたJISへの適合など、対象に応じて区分されています。
いいえ。2019年の法改正でデータやサービスなども標準化の対象に位置づけられています。
対象(製品・工程・業務)を決めたうえで、規格番号・名称・改定年をJISCなどで確認し、必要な規格を絞り込みます。
適用規格の特定、品質管理体制と記録の整備、登録認証機関による審査への対応が必要です。
役立ちます。ソフトウェアのライフサイクルや品質要求・評価を整理する規格などが参照できます。
目的が業務課題に落ちているか、要求事項が手順・チェック項目に変換できているか、運用データで効果を見ているかを見直します。