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JWTとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

近年、デジタル技術の進化に伴い、オンラインでのアクセス制御や情報の安全性確保はより重要な課題となっています。本記事では、この課題解決の一助となる技術である「JWT(JSON Web Token)」についてわかりやすくご紹介します。

JWTとは

JWTとは、JSON Web Tokenの略で、情報を安全に送受信するためのオープンスタンダード(RFC 7519)です。短くてコンパクトなJWTは、HTTPヘッダーやクエリストリングで確実に情報を送ったり、受け取ったりすることが可能です。主にユーザー認証や情報交換のために使われます。JWTは「ヘッダー」「ペイロード」「シグネチャー」の3部分で構成されており、それぞれがBase64Urlでエンコードされています。

JWTの必要性と利点

それでは、ここでJWTがなぜ必要で、どんな利点があるのかについて見ていきましょう。JWTの最大の利点はその「状態を持たない」性質にあります。すなわち、JWTは情報自体をトークン内に保有しており、サーバー側でセッションを維持する必要がありません。したがって、トークンさえあれば、サーバーはいつでもユーザーを認証することが可能で、これによりスケーラビリティ(拡張性)とパフォーマンスが向上します。

さらに、JWTは軽量であるため、ネットワーク上の負荷を軽減し、リクエスト回数を削減することも可能です。セキュリティ面でも、HTTPSを介して安全にデータを転送することが可能で、シグネチャーによりデータが改ざんされていないことを確認できます。以上の特性により、JWTは現代のウェブアプリケーション開発において非常に有用な技術とされています。

JWTの基本的な構造

今回のテーマであるJWT(JSON Web Token)について、その基本的な構造について詳しく説明していきましょう。JWTは主に3つの部分から構成されています。それが、「Header(ヘッダー)」「Payload(ペイロード)」「Signature(シグネチャー)」です。これら3つの部分はそれぞれ特定の役割を持ち、JWTがどのように動作し、情報を保持するのかを理解するためにはこの3つの部分の理解が不可欠です。

JWTの3つの部分

まず、最初の部分である「Header」について解説します。Headerは、JWTのどの形式を使用してトークンをエンコードするかを指定する部分です。一般には「JWT」自体と、署名または暗号化に使用するアルゴリズムを指定します。これは、通常「alg」という属性で指定されます。

次に「Payload」です。Payloadは"荷物"を意味しますが、この部分にはJWTに含まれる主要な情報、つまり「主張」(Claims)が格納されます。これらのClaimsは三つの部分、「登録済みClaims」「公開Claims」「プライベートClaims」に分かれています。具体的に何が格納されるのか、詳しくは次のセクションで解説します。

最後に「Signature」です。この部分はJWTが二つの主要な安全性を確保するために使用されます。「整合性の確認」及び「認証」です。シグネチャーはヘッダーデータとペイロードデータを結合し、密秘鍵もしくは公開鍵を用いてハッシュを生成します。

各部分の目的と役割

それぞれの部分の目的と役割を具体的に見てみましょう。まず、「Header」は、認証と署名の方法を決定します。この部分には「alg」と「typ」という二つのフィールドが含まれます。「alg」フィールドは、JWT署名に使用するアルゴリズムを指定します。一方、「typ」フィールドはトークンのタイプを示し、この場合は「JWT」であることを示します。

次に「Payload」は、実際に伝えたい主要な情報を保持します。特に主要な情報は「claim」と呼ばれ、そこにはユーザーのプロパティやロール、有効期限などの情報が格納されます。

最後に「Signature」は、ヘッダーとペイロードのデータが改ざんされていないことを確認するために使用されます。シグネチャーが正しい限り、JWTが改ざんから保護され、信頼性が確保されることになります。

このように、それぞれの部分が連携し合うことでJWTはその役割を果たし、安全な認証を可能にします。

JWTの使い方

このセクションでは、JWTの使い方について詳しく説明します。ここで、最も重要なのはJWTの生成JWTの検証の2つのプロセスです。これらを理解することで、認証認可を含むさまざまなJWTの応用例が可能となります。

JWTの生成: ライブラリの利用

JWTは複数の部分から成り立っていますが、その生成は各プログラミング言語向けのライブラリを活用することで、容易に行うことができます。「jsonwebtoken」(JavaScript向け)や「jwt-go」(Go言語向け)などがその代表例です。

JWTの検証方法

次に、生成したJWTの検証方法について見ていきましょう。この検証プロセスは、主にJWTを受け取ったサーバー側で発生します。

サーバーは、JWTが正当であることを確認するため、フォーマットが正しいか、署名が正しいか、そして期限切れではないかを検証します。

このプロセスも、「jsonwebtoken」のようなライブラリを利用することで、比較的簡単に行えます。

JWTの利用例: 認証と認可

JWTは認証と認可において幅広く活用されます。認証では、ユーザーが誰であるかを確認し、その結果をJWTとしてエンコードします。一方、認可では、このJWTをデコードし、それに基づいてユーザーがリソースに対する適切なアクセス権を持っているかを決定します。

また、JWTはクライアント-サーバー間の絶え間ないやり取りの中でのセッション管理にも有効活用されています。ウェブアプリケーションやモバイルアプリでのログインセッション維持や、API要求ごとのユーザー識別などにも利用されます。

このようにJWTは多岐に渡るシーンで活躍し、微調整やカスタマイズによってさまざまな要件のソリューションとして機能します。

JWTを安全に使うためのベストプラクティス

ここでは、JWTを安全に使うために心掛けるべきベストプラクティスを紹介します。これから挙げる3つのポイントはJWTのセキュリティを高める基本的な手順であり、これらを適切に管理することが重要です。

パスワードのハッシュ化

パスワードのハッシュ化は、セキュリティを確保する上で非常に重要な手段の一つです。JWTのSignature部分は、HeaderPayloadから計算されますが、この計算には秘密鍵が使用され、これが一種のパスワードです。このパスワード(秘密鍵)が他者に知られてしまうと、偽造されたトークンが登場する可能性があるため、極力安全に管理することが求められます。

パスワードのハッシュ化により、秘密鍵を安全に管理することが可能となります。ハッシュ化とは、あるデータから一定の長さの値を算出する処理のことで、元のデータからハッシュ値を逆算することは非常に困難です。この特性を活用して秘密鍵をハッシュ化することで、秘密鍵の安全性を高めることができます。

トークンの有効期限設定

次に、トークンの有効期限設定について説明します。JWTには有効期限が設定できる特性があります。この有効期限を適切に設定することで、もしトークンが他者に漏れてもその被害を最小限に抑えることが可能です。

有効期限が切れたトークンは認証に失敗するため、不正に利用されることがありません。それゆえ、トークンの有効期限は短い方が安全といえますが、一方でユーザーが頻繁に認証を行う手間を考慮すると、ある程度の長さが必要です。このバランスを適切に考慮し、有効期限を設定することが必要です。

HTTPS上でのトークン送信

最後に、HTTPS上でのトークン送信について説明します。HTTPSはHTTPに対して、通信内容の暗号化を追加したものです。そのため、通信経路上でデータが盗まれても、解読することは非常に困難です。

JWTは認証情報を含むため、これが盗まれてしまうと悪用される可能性があります。そのため、JWTを送受信する際は常にHTTPSを使用することが求められます。これにより、通信経路上でのデータ漏洩リスクを低減することが可能となります。

以上が、JWTを安全に扱うための基本的なベストプラクティスです。これらを意識し、セキュリティを確保することが重要です。

JWTの解析

JSON Web Token(JWT)は役立つツールですが扱いが難しいため、正しい解析方法を身につけることは非常に重要です。今回は、トークンのデコード方法と「なりすまし」攻撃対策についてご紹介します。

トークンのデコード方法

JWTはBase64Urlエンコーディングを使用して情報をペイロードで保持しています。ただし、この情報は暗号化されているわけではなく、いつでもデコードすることが可能です。デコードには、オンラインのJWTデコーダーや専用ライブラリを使用することができます。

ただし、セキュリティ上の理由から、デコードした情報を慎重に扱う必要があります。デコード自体は簡単ですが、その内容を信頼するかどうかは別問題です。署名を正しく検証することで、情報の信憑性を確認できます。

「なりすまし」攻撃対策

「なりすまし」攻撃は、不正なユーザーが正当なユーザーとして振る舞うというセキュリティ脅威です。JWTは署名を用いて情報の信憑性を保証しますが、その署名がないJWTには注意が必要です。「none」アルゴリズムが使われた場合、「なりすまし」攻撃への扉が開くこととなります。

‘none’アルゴリズムを防ぐ策として、JWTライブラリを実装した時点でアルゴリズムを固定するべきです。アルゴリズムを動的に分析しないことで、攻撃者がアルゴリズムを変える余地を狭めます。また、強力な署名アルゴリズムを使用することでセキュリティをさらに高めることが可能です。よく使用されるのはHS256やRS256などのアルゴリズムです。

あくまでもJWTは有用なツールの一つです。適切な知識と理解と共に使用することで、より安全かつ効率的なシステムを構築することができます。

JWTの応用

このセクションでは、JWTをどのように活用できるか、その具体的な用途をいくつか見ていきましょう。

多要素認証における利用

最近では、一部のサイトではユーザーの安全性を確保するために多要素認証(MFA)が用いられています。 MFAは、ユーザーが誰であるかを確認するために複数の手段を組み合わせた認証方法であり、パスワードの他にも、SMSコード・バイオメトリクス(指紋や顔認識など)・物理的なトークン(銀行のキーカードなど)などを使います。

たとえば、ユーザーが初めてログインするときに、JWTは通常の認証情報と一緒にSMSで送信された一時的なコードを要求することができます。このコードが正しい場合、一時的なJWTが生成され、その後のリクエストにはこの一時的なJWTが使用されます。

たとえば、次回のログイン時に、一時的なJWTが再び要求された場合、ユーザーは新しい一時的なコードを入力する必要があります。これにより、自分が本当にユーザーであることを証明することができます。

マイクロサービス間の情報共有

マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なアプリケーションを分割し、各サービスが独立して動作することで、拡大化・更新・修正が容易になります。しかし、これらのサービス間での認証と認可は難しく、JWTはここで役立ちます。

各マイクロサービスがJWTを持っていれば、それらはセキュリティを維持しつつ他のマイクロサービスとシームレスに通信することができます。例えば、一つのマイクロサービスが他のマイクロサービスへリクエストを送る際、JWTはヘッダーに含まれ、受け取る側のマイクロサービスがそのJWTを検証することで、信頼性のあるリクエストであると確認できます。

また、JWTはクライアントからサーバーサイドに送信されることで、状態を保持することなく認証情報を転送することも可能です。これにより、スケーリングとフォールトトレランスが向上し、システム全体のセキュリティと信頼性が高まります。

JWTの限界と注意点

JWT(JSON Web Tokens)技術はその簡易性と拡張性のために多くのブラウザベースのアプリケーションで使われていますが、それ自体が全ての課題を解決するわけではなく、一部制限と注意点が存在します。

JWTの誤用におけるリスク

誤った管理または誤用によるJWTのリスクは高まる可能性があります。JWTはクライアント側で保存されるため、トークンが盗まれた場合、攻撃者はそのトークンを使用してユーザーを模倣することが可能となり、これは深刻なセキュリティ上の問題となります。

さらに、JWTは一旦発行されると、有効期限が来るまで無効化することはできません。これは、万が一トークンが盗まれた場合などの緊急時に対応するのが困難であることを意味します。

また、適切な暗号化方式を使用しない場合も問題を引き起こす可能性があります。JWTは脆弱なアルゴリズムを使って署名されることがありますが、その場合攻撃者によって署名が改ざんされる可能性があります。

JWTとセッション比較: 各々のメリットとデメリット

JWTとセッションはそれぞれ異なる目的と要件を持っています。JWTでは、ユーザーの情報がトークン自体に保存されるので、状態を保持する必要がないというメリットがあります。これにより、サーバーのリソースを節約することが可能です。

さらに、クロスオリジンの認証が容易になるという点もメリットと言えるでしょう。

一方で、上記で述べたように、JWTは一度発行されると有効期限まで無効化することは難しく、セキュリティ上の懸念を引き起こす可能性があります。

一方、セッションを使用すれば、サーバ側でセッションを管理し、必要に応じてセッションを無効化することが可能です。しかし、その一方でセッションは状態を保持する必要があり、大量のユーザーを扱う際にはサーバリソースを大量に消費する可能性があります。

また、セッション情報はクロスオリジンでは共有されないため、マイクロサービスアーキテクチャなどの環境ではJWTが適しています。

まとめ

これまでの解説を通じて、JWTの基本的な概念とその具体的な使い方について学んできました。さらには、安全にJWTを使用するための注意点やベストプラクティスなども詳しく説明してきました。それではここで、まとめとしてJWTの優れたポイントと詳しい活用方法、安全性を高めるための使用方法について再度確認し、そしてJWTに関するよくある誤解とその真実を解明しましょう。

JWTの優れたポイントと活用方法

JWTの主な利点は、その自己完結性にあります。つまり、JWTはその中にすべて必要な情報を持っているため、独立した情報として各々のシステムで使用することが可能です。またこの性質から、分散マイクロサービスやステートレスなシステムとの相性も非常に良いです。さらに、JWTはJSONフォーマットを用いることから、JavaScriptなど多くのプログラミング言語で容易に扱うことができます。このように、JWTはその優れた汎用性から多くの場面で活用することができます。

安全性を高めるためのJWTの使い方

しかしながら、JWTを扱う際にはその安全性に十分な注意を払うことが必要です。特に重要なのが、パスワードのハッシュ化、トークンの有効期限設定、そしてHTTPS上でのトークン送信といった基本的なセキュリティ対策です。加えて、JWTの「なりすまし」攻撃対策として、トークンのデコード方法について理解することも重要です。これらのセキュリティ対策を行うことで、JWTのもたらす利便性を最大限に活用しつつ、システムの安全性も保つことが可能となります。

JWTに関するよくある誤解

最後に、JWTに関する誤解をいくつか紹介しておきましょう。よくある誤解の一つに、JWTがセッション管理を全く必要としないというものがありますが、これは全くの誤りで、JWTとセッション管理は異なる目的で設計されたものであり、適切に組み合わせて使うことでその価値を最大化することができます。また、JWTが不可逆的に安全であるという誤解も存在しますが、これも誤りで、JWTのセキュリティはその使用方法に大きく左右されます。これらの誤解を解明し、正しい知識を持つことで、より適切にJWTを活用することができます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム