負荷分散装置(ロードバランサー)とは? わかりやすく10分で解説
負荷分散装置(ロードバランサー)の基本
このセクションでは、負荷分散装置(ロードバランサー)の基本的な役割と特徴について詳しく説明します。
ロードバランサーとは?
ロードバランサーは、サーバーやネットワークの負荷を平等に割り振る大切な装置です。これにより、特定のサーバーへの負荷を適切に軽減し、サービスが停止することを効果的に防ぐことが可能になります。
サーバーは、例えばユーザーからのウェブページのリクエストを受け取り、データベースから情報を取得し、それをユーザーに返すといった作業を行います。これらの作業はサーバーのリソース(CPU、メモリなど)を消費します。
しかし、大量のリクエストが同時にある場合、サーバーの負荷が増え、サーバーの応答速度が遅くなる可能性があります。こうした問題を解決するためにロードバランサーが使用されます。
ロードバランサーが行う負荷分散とは?
ロードバランサーが行う負荷分散は、入ってくるネットワークトラフィックを複数のサーバーに均等に分配することを指します。これにより、全てのリクエストが同じサーバーに集中することを避け、全体のパフォーマンスと可用性を改善します。
この負荷分散メカニズムにより、単一のサーバーに過大な負荷がかかることを防ぎ、ウェブサイトやアプリケーションの動作が遅くなったり、完全に停止したりするのを防ぐことができます。
さらに、ロードバランサーはうまく配置されたサーバーのうちの1つが故障した場合でも、他のサーバーにトラフィックを自動的にルーティングし、サービスが中断することなく、ユーザーに一貫したエクスペリエンスを提供する能力も持っています。
ロードバランサーの種類と特徴
ロードバランサーには主にTwo-Arm (inline)とOne-Armと呼ばれる2つのタイプがあります。これらは、主にロードバランサーを配置する位置により異なります。
Two-Arm型では、インターネットとサーバーの間にロードバランサーを配置します。そして、仮想IPアドレスを設定して、入ってくるトラフィックを適切なサーバーに割り振ります。
一方、One-Arm型のロードバランサーは、ネットワーク内の任意の位置に配置し、ネットワークトラフィックを監視して負荷分散を行います。各ロードバランサーのタイプは、特定のネットワーク環境や要件に最適な選択を提供します。
ロードバランサーの重要な役割
ロードバランサーには、サービスの速度を改善し、安定性を維持し、ダウンタイムを防ぐといった重要な役割があります。これらは、ユーザーに良い体験を提供するために必要なものです。
加えて、ロードバランサーは特定のユーザーのアクセスを同じサーバーにルーティングする「セッションアフィニティ」の概念をサポートしています。これは、ユーザーが同じセッション中で一貫したエクスペリエンスを得ることを確保し、あるトランザクションを扱うサーバーが交互に変わることを防ぐ役割も果たします。
また、ロードバランサーはサーバーメンテナンスをスムーズに行うためのもう1つのツールとなります。メンテナンス中または故障時でも、ロードバランサーは他のサーバーにトラフィックを切り替え、サービス提供を継続することができます。
負荷分散装置(ロードバランサー)の活用例
負荷分散装置(ロードバランサー)は、レスポンス速度の向上やサーバー故障時の安定した運用、メンテナンス作業の効率化等に活用される重要な装置です。さらに、データの整合性を保つための重要な機能も提供します。
Webサイトのスムーズな運営
ロードバランサーは、一つのサーバーに集中する通信負荷を複数のサーバーに均等に振り分け、Webサイトのスムーズな運営を支えます。これによりサイトの表示速度が維持され、ユーザー体験が向上します。
サーバーに予想以上のアクセスが集中した際も、ロードバランサーが各サーバーへ適切にアクセスを分散し、ブラウザやアプリ等からのリクエストを迅速に処理します。
これは只単にユーザー体験を向上させるだけでなく、SEO(検索エンジン最適化)にも寄与します。ページの表示速度は検索エンジンのランキング要因の一つで、高速なレスポンスは検索結果の上位表示につながる可能性があります。
サーバー故障時のリカバリー
サーバー故障時のリカバリーにもロードバランサーは欠かせません。サーバーがダウンした場合でも、ロードバランサーが他の健康なサーバーに自動で切り替えることで、サービスの運営を継続できます。
これは、オンラインサービスが24時間365日スムーズに提供されなければならない現代において、特に重要な機能です。
サーバーダウンがユーザーに影響を及ぼさないように、ロードバランサーはサーバー間の負荷分散だけでなく、サーバーの健康状態をモニタリングする役割も果たします。
サーバーのメンテナンス作業
また、ロードバランサーはサーバーのメンテナンス作業を容易にします。メンテナンス中のサーバーへのアクセスを他のサーバーに自動的に切り替えることで、サービスを停止することなくメンテナンスを行えます。
これはサーバーのパフォーマンスを維持する上で重要で、さらに長時間のダウンタイムを防ぎ、サービスの信頼性を維持します。
ロードバランサーなしでは、サーバーのメンテナンスは大幅なサービス停止を伴う可能性があり、これはビジネス上の大きな損失を引き起こす可能性があります。それを防ぐのがロードバランサーの役割です。
トランザクションの整合性維持
ロードバランサーはトランザクションの整合性維持にも重要な貢献をします。同一ユーザーからの連続したリクエストを同一サーバーに振り分けることで、トランザクションの整合性(一貫性)が保たれます。
例えば、オンラインショッピングサイトにおいて、カートに商品を追加した後に決済へ進むといった一連の流れを、同一のサーバーが処理することで、ユーザーの購入処理を途中で失われることなく、スムーズに行うことが可能になります。
このような機能を提供することで、ロードバランサーはユーザー体験の向上だけでなく、サービスの信頼性の維持にも直結します。
DNSラウンドロビンの特徴と仕組み
DNSラウンドロビンはロードバランシングの一つの方法で、複数のサーバーに均等にアクセス負荷を分散することが可能です。しかし、ロードバランサーや他の負荷分散手法と比較してその特徴や有効性が異なります。
DNSラウンドロビンとは?
DNSラウンドロビン(Domain Name System Round Robin)は、一つのドメイン名に対し複数のIPアドレスを割り当て、順番にアクセスを割り振る方法を指します。これにより、シンプルで安価にロードバランシングを実現できます。
特に、特別なハードウェアを必要としないため、導入の敷居が低いといった利点があります。
しかし、一方で柔軟性に欠け、均等な負荷分散が難しいといった欠点もあります。
DNSラウンドロビンのロードバランシング
通常のDNSと違い、DNSラウンドロビンは複数のIPアドレスを持つことができます。これによりクライアントが同じアドレスに連続でアクセスを行なっても、順番に異なるサーバーに負荷を分散できます。
これにより、アクセスの分散が可能となるため、負荷が集中しないような処理を行います。
一方、各サーバーのCPU使用率やレスポンスタイムに基づいて負荷を割り振ることはできないため、完全な負荷分散は難しいという欠点があります。
DNSラウンドロビンの劣る点
DNSラウンドロビンは、そのシンプルさとコスト効率から、初期のインターネット環境における負荷分散手段として広く採用されました。
しかし、一部のクライアントが常に同一のサーバーに接続されてしまう場合や、サーバーの故障検知といった点では取り扱いが難しく、ロードバランサーなどの他の手法と比較して劣る点があります。
特に、負荷の高い状況では純粋なランダム性ではなく、負荷の少ないサーバーに適切に負荷を振り分けることが求められるため、障害発生時の対応や負荷分散率の改善が必要です。
DNSラウンドロビンの活用例
DNSラウンドロビンは、シンプルさと低コスト、導入の容易さから、小規模なWebサイトや非常時のエラー対策として利用されることがあります。
また、負荷分散と負荷の予測が難しい状況では、DNSラウンドロビンと他の手法を組み合わせることで、より高度な負荷分散戦略を構築することも可能です。
しかし、大規模なサイトやサービスでは、より柔軟で高度なロードバランシングが求められるため、そのためにロードバランサーなどの他の手法が主に採用されます。
ロードバランサーとDNSラウンドロビンの比較
サーバーの負荷分散にはさまざまな手法が存在しますが、中でも代表的なものが、ロードバランサーとDNSラウンドロビンです。ここでは、これら2つの技術の違いやそれぞれのユースケースについて解説します。
両者の利点・欠点の比較
ロードバランサーの利点としては、サーバー障害の自動検知や通信の継続性が保証されることがあげられます。また、負荷分散の効率化のために様々なアルゴリズムが適用可能で、自由度が高いのも特長です。一方、高価であるという欠点もあります。
一方で、DNSラウンドロビンは比較的低コストでロードバランシングが可能となる利点があります。しかし、障害検知/自動回避機能がないため、一部のサーバーが落ちた場合でもその情報が即時に反映されないという欠点があります。
価格面の比較
ロードバランサーはハードウェアまたはソフトウェアの形で提供され、高機能なものほど価格が高くなります。一方で、その機能・性能はサーバー負荷を効率良く分散させるため、大規模サイトでのコストパフォーマンスは高いと言えます。
それに対し、DNSラウンドロビンは、DNSサーバーの設定変更だけで実現できるため、導入コストはほとんどかからないと言えます。
機能面の比較
ロードバランサーは、サーバーの負荷状況や通信の状態をリアルタイムに監視し、その結果に基づいて最適なサーバーへのアクセス分散を行います。これにより、高い利用者体験(UX)を維持しつつ、サーバーリソースを効果的に利用することが可能です。
それに対し、DNSラウンドロビンは、アクセスを順番にサーバーに割り振るという単純な負荷分散手法です。負荷の大きさやサーバーの状態に関係なく、静的にアクセスを振り分けるため、一部のサーバーに負荷が集中する可能性があります。
ケースによる適用の違い
ロードバランサーは、大規模なトラフィックや多機能性が求められる場合に適しています。複雑なトラフィックルールを設定し、さまざまなシナリオに対応することが可能です。
一方、DNSラウンドロビンは、小規模なシステムや短期間のイベントなど、低コストで簡易的なロードバランシングを実現したい場合に適しています。
これらの違いを理解し、システムの規模や要件に応じて適切な手段を選択することがサーバー負荷分散の成功に繋がります。
ロードバランサー選定のポイント
ロードバランサーは、ウェブサイトのアクセス負荷分散に必要不可欠な装置です。しかし選定時には複数のポイントに注意する必要があります。以下に、その重要なポイントを詳細に解説します。
アクセス量の見積もり
最初に考慮すべきはアクセス量の見積もりです。どの程度のアクセスに耐えられるか、という観点からロードバランサーを選定することが重要です。
ピーク時と通常時のアクセス数を見積もり、適切な容量のロードバランサーを選ぶことで、サイトの安定動作やパフォーマンスに直結します。
また、アクセス数が予想以上に増加した場合に備えて、余裕を持った性能のロードバランサーを選ぶことも重要です。
サーバー障害対策の有無
次に考慮すべきはサーバー障害対策の有無です。サーバーが停止した場合でも他のサーバーに自動切替する機能があるかどうかは、サービスの継続性を保つ上で重要な要素となります。
ロードバランサーがこの自動切替機能を持つことで、ユーザーに対するサービス停止のリスクを最小限に抑えることができます。
特に、商用サイト運営など、ダウンタイムが許されない場合には、この機能が強く求められます。
メンテナンス性の考慮
次にメンテナンス性を考慮します。ロードバランサーのメンテナンスや更新は、サービス運用における重要な要素の一つです。
メンテナンス性の高いロードバランサーによって、長期的な運用の効率化やコスト削減を実現することが可能です。
適切なロードバランサー選定により、サービスの停止なしにメンテナンスやパッチの適用が行えるため、運用における柔軟性を確保することができます。
トランザクション整合性の重視度
最後に、トランザクション整合性の重視度を判断します。特定のユーザーのアクセスを同じサーバーへ送る機能があるかどうか、これがトランザクション整合性です。
eコマースサイトや金融系ウェブサイトなど、同一セッション内でのデータ連続性が求められる場面では、特にこの機能が重要となります。
一貫性を保つためには、このような機能を持つロードバランサーを選定することが不可欠となります。
まとめ
ロードバランサーとDNSラウンドロビンの違いを理解し、それぞれの特性を利用することで、サーバーのパフォーマンスを向上させることができます。アクセス数の増加に対応しながら、アクセス速度を高速化し、ダウンタイムを防止するための重要な装置・手法だという認識が必要です。
ロードバランサーとDNSラウンドロビンの役割の理解
ロードバランサーは、アクセスを複数のサーバーに分散することで、高負荷状態を防止します。一方、DNSラウンドロビンは、DNSの設定を変更し、アクセスを複数のサーバーに分散することで同様の効果をもたらします。しかし、以上のような機能性の差から、それぞれに微妙な使い分けが必要となります。
状況に応じた適切な選択が重要
一般的に、通信の継続性が必要な場合や、負荷分散によってサーバーの停止を防ぎたい状況では、ロードバランサーの活用が有効です。一方、DNSラウンドロビンは、設定が容易である点や、低コストで負荷分散を行うことができるという特性から、小規模なネットワークには有効です。
負荷分散装置の重要性
負荷分散装置は、システムの可用性を高める重要な装置です。ハードウェアやソフトウェアが高負荷になると、システム全体のパフォーマンスが下がる可能性があります。これを防ぐために、負荷分散装置を使用することで、サーバの負荷を均等に分散させ、全体のパフォーマンスを維持することが可能となります。
ロードバランサー選定のヒント
ロードバランサーを選定する際には、まず負荷の性質やネットワーク環境を考慮する必要があります。また、費用対効果も重要な判断材料となります。DNSラウンドロビンのような低コストの負荷分散手法が適切な場合もありますので、一概に高価なロードバランサーを選択するより、具体的な要件に基づいて選択することが重要です。
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