モニタリングとは? わかりやすく10分で解説
モニタリングとは
モニタリングとは、ITの世界では、コンピューターシステムやネットワークの稼働状態を継続的に監視し、その性能や稼働の正常性、障害の有無、セキュリティー状態などをチェックする行為を指します。
モニタリングはリアルタイムでシステムの状態を確認し、必要に応じてアラートを発生させることなど、システム運用における重要な役割を果たします。
さらに、モニタリングの活動は、収集したデータ分析により変動や動向を予測し、将来的な問題を未然に防ぐという側面もあります。
モニタリングと監視の違い
IT分野において、「モニタリング」と「監視」は似たような意味を持つように思われがちですが、実際には異なる意味を持ちます。
'監視'は、システムやネットワークの動作状況を視覚的に確認し、異常があればそれを把握することを主に指します。一方、'モニタリング'は監視を通じて集められたデータを分析し、システムの動きを理解し、必要に応じて対応策を練ることまで含まれます。
つまり、モニタリングは、対象システムのパフォーマンスを継続的に追跡し、評価し、最適化するための具体的な手段を提供します。
常に必要なモニタリングの重要性
モニタリングはシステム運用において常に必要であり、その重要性は非常に高いです。
例えば、広告配信システムがプライムタイム中にダウンしたり、オンラインショッピングサイトがセール中にアクセス障害が起きたりすると、ビジネスに大きな損害をもたらします。そのような深刻な事態を防ぐためには、モニタリングが不可欠です。
また、モニタリングは情報セキュリティの観点からも重要であり、潜在的なセキュリティ脅威や障害を早期に検知し、対策を講じるためにも不可欠です。
モニタリングの具体的な目的
IT分野でのモニタリングの目的は大きく分けて三つで、それらは動作監視、性能監視、セキュリティ監視といった要素になります。それぞれの監視がシステム全体を正常に保つ上で非常に挑戦的なタスクを持っています。詳しく見ていきましょう。
こうした監視は、システムの健全性を維持するために不可欠なプロセスで、障害や予期しない動作が発生したときに迅速に対応し、ユーザーへの影響を最小限に抑える役割を担っています。
この節では、これらの主要なモニタリングタスクの具体的な目的とその役割について解説します。
モニタリングの主なタスク
モニタリングの主なタスクは、システムの動作、性能、セキュリティの監視です。これによって、システムが正常に動作しているか、性能に問題がないか、セキュリティに対する脅威が存在しないかを定期的に確認することができます。
具体的には、ネットワークの帯域幅、CPUの使用率、メモリの利用状況、ディスク空間の量などを監視します。これらの情報をもとに、システムの現状の把握や問題の早期発見、必要な対策の立案が可能となります。
これらの監視が一部でも欠けると、システムの問題を適切に検知できない可能性があり、その結果として重大な障害につながる可能性があります。
モニタリングにおける動作監視の役割
動作監視は、システムが意図したとおりに機能しているかどうかを確認するためのモニタリングタスクです。このタスクには、アプリケーションやサーバーが正常に稼働しているか、ネットワークが問題なく通信できているか、といった点を調べる役割が含まれます。
動作監視を通じて異常な状況を早期に検知することは、ユーザーに対するサービス品質を保つために不可欠です。また、動作監視の結果を通じて、システムの設定変更やアップデートが正常に反映されていることも確認できます。
特に、システム障害や異常が起きた時間、及びその原因となる具体的な事象を特定することで、問題への迅速な対応や再発防止策を立てることができます。
性能監視とは何か
性能監視は、システムの効率と速度を最適化するための重要なタスクです。サーバのCPU使用率やメモリ使用量、ディスクI/O、ネットワーク帯域幅などのリソースの使用状況を監視し、システムが持つ能力を最大限に引き出すための最適化を行います。
また、性能監視によってデータトラフィックのパターンを理解したり、ネットワークリソースの適切な配分を図ることが可能です。これにより、リソースの消費率を予測し、余剰・不足を未然に避けることが可能となり、システムのパフォーマンスを向上させることができます。
性能監視は、思わぬリソース枯渇によるシステムダウンを予防し、必要なリソースを確保するために適切な計画を立てるのです。
セキュリティ監視の重要性
セキュリティ監視は、システムに対する内外からの脅威を防ぐための重要な役割を果たしています。この監視には、ネットワークトラフィックの解析、不正アクセスの検出、マルウェアのスキャン、侵入防止システム(IPS)の管理などが含まれます。
セキュリティ監視を通じてリスクを早期に特定し、必要なセキュリティ措置を講じることで、企業の重要な情報資源を保護します。これは、ビジネス継続性を確保し、企業の信頼性を保つために必要不可欠な作業です。
セキュリティ監視は、企業のビジネスをサイバー攻撃やデータ漏洩といったリスクから守るために、絶えず行うべき重要なタスクと言えます。
モニタリングの方法と手順
一見複雑に思われるかもしれませんが、モニタリングの実施は非常に簡潔かつ効果的な方法で進行します。まずはモニタリングの準備段階から見ていきましょう。
モニタリングを行う前の準備
モニタリングを効果的に行うためには、まず明確な目標を設定することが重要です。これには、どの部分を監視するのか、どのような情報を知りたいのか、どのような問題に対処するのかなどが含まれます。
次に、モニタリングツールを選択します。選択肢としては、オンプレミス型とクラウド型が挙げられます。目的によって最適なツールを選ぶことが大切です。
最後に、監視間隔を設定します。これは通信量によって最適化することが求められます。頻繁に監視を行いすぎると、システムに負荷をかける可能性があるため注意が必要です。
モニタリングの基本的な手順
モニタリングの基本的な手順には、動作監視と性能監視があります。動作監視では、システムに信号やデータを送信して動作をチェックします。
一方、性能監視では、CPUやメモリなどのリソースデータを収集・分析します。これにより、将来的な障害を予測し、対策することが可能となります。
これらの手順が実行されることで、システムの安定性を維持し、ユーザーに最高のサービスを提供できる環境が形成されます。
効果的なモニタリング方法
効果的なモニタリングを行うためには、リアルタイムでシステムの状態を監視することが重要です。これにより、問題が発生した場合にすぐに対処することができます。
また、モニタリングは単発の作業ではなく、継続的なプロセスであることを理解することも大切です。モニタリングの結果を定期的にレビューし、必要な改善点を見つけ出すことで、より効果的な監視体制を形成できます。
推奨されるモニタリングの間隔は状況によりますが、最低でも一日に一回は全システムのチェックを行うことが推奨されます。
障害発生時の対処法
万が一、モニタリングの結果、障害が発見された場合でも冷静に対処することが必要です。まずは、障害の原因を特定し、適切な対策を講じます。
障害が起きた場合、すぐに修復するだけでなく、その原因が再発しないよう対策を立てることが重要です。 これには、システムの設計や運用、保守体制に問題がないかを見直すことも含まれます。
また、モニタリングの結果に基づいて、システムの改修やアップグレードを行うことも適切な対処法となります。
モニタリングにおける知識と技術
さて、モニタリングの手法はさまざまですが、それを支えているのは基本的なITの知識と最新の技術です。システムの正常稼働を得るため、それぞれにどういった知識と技術が必要なのかを詳しく見ていきましょう。
コンピューターネットワークとプロトコル
モニタリングに欠かせないのが、コンピューターネットワークとプロトコルについての知識です。ネットワークはコンピューター同士をつなぐための基本的な環境になりますし、プロトコルはそれらが通信を行うための取り決めです。これらの仕組みを理解していることが、効率的なモニタリングの基盤となります。
特に、TCP/IPプロトコルについての理解は欠かせません。これはインターネットで普遍的に使われている通信のルールで、モニタリングの対象となるサーバーやデバイスとの通信に不可欠です。利用する監視ツールでもこのTCP/IPを基軸とした動作が多く、その理解はモニタリングの効率化に繋がります。
また、ネットワークのトポロジー、つまりネットワークの形状や配置についても理解しておくことが望ましいです。これがモニタリングの計画を立てる際に必要となります。
収集データの解析と予測
モニタリングに役立つ技術の一つは、収集データの解析と予測です。これは「データのモニタリングは行っているけど、何を基にアラートを出せばいいのか分からない」といった問題に対する解決策となります。テクノロジーの進歩により、収集データをAIで分析し、将来的なリソース滞留や障害の予測が可能になりました。
特に、機械学習を用いて長期的なトレンドを捉えることで、将来発生する可能性が高い問題点を早期に見つけ出すことが可能です。これにより、予防措置を講じる時間を確保できます。
また、過去のデータを学習することで日々の運用パターンを理解し、異常な動きをすぐに捉えられるようになります。通常運用と比較した際の異常値を検知し、異常時のみアラートを出すような運用も可能となります。
監視ツールの選択
モニタリングを行う上で重要なのが、監視ツールの選択です。監視ツールには、オンプレミス型とクラウド型が存在し、どちらを選ぶべきかは状況によります。ツール選択は企業のリソースや運用の柔軟性、コストなどを考慮することが必要です。
オンプレミス型は自社内でハードウェアとソフトウェアを管理し、監視するタイプです。セキュリティや高度なカスタマイズが求められる場合に有効ですが、管理や運用には人手と時間が必要で、コストも掛かります。
一方、クラウド型はソフトウェアをクラウド上で運用し、導入や管理が容易です。また、コストも使用した分だけの課金となるため、短期間での規模変更にも対応しやすいといえます。ただし、インターネット接続が必須であるため、通信環境や安全性が課題となることもあります。
モニタリングを支える新たな技術
最後に、モニタリングを支える新たな技術について触れておきます。
まず、AI(人工知能)と機械学習の活用が進んでおります。これらの技術を使用することで、大量のログやメトリクスをリアルタイムに自動的に分析し、異常値検知やトレンド分析を進化させることが可能です。これにより、人的リソースを最小限に抑えつつ、高精度なモニタリングが可能となります。
その他にも、コンテナ監視やサーバレス監視など、新しいアプリケーションやインフラストラクチャの形態に対応した監視ツールの開発も進んでいます。これにより、より柔軟なシステム運用と精緻なモニタリングの実現が図れます。
いずれの新技術も、これからもモニタリングの効率化と高度化に大いに寄与しうるでしょう。これらの技術進歩に目を向けつつ、最適なモニタリング体制を築き上げていくことが求められます。
モニタリングの設定と運用
モニタリングは簡単に言うと、システムの健全性をチェックする行為を指します。これは一見簡単そうに見えますが、その設定や運用にはいくつかのポイントがあります。ここではそれらを具体的に解説します。
モニタリングを始める前に
モニタリングを始める前に最初に行うことは、どの部分を監視するかの決定です。監視対象によって必要なツールや設定が変わるため、その周知と確認が不可欠です。また、システムの現状を理解することも大切です。現状を把握しておけば、異常が生じた際に原因を追求する助けになるからです。
次に考えるべきは、ハードウェアやOSの性能です。使用するモニタリングツールによっては、リソースを大量に消費するものもあります。そのため、適切なリソースが確保できるかを計画段階で確認することが望ましいです。
モニタリングツールの選定も重要です。ツールの中にはオンプレミス型とクラウド型があり、どちらを採用するかでシステムの監視方法が変わります。そのため、ツールの特性を理解し、システムに最適なツールを選択することが求められます。
モニタリングの設定方法
モニタリングの設定方法は大きく分けて、動作監視と性能監視に分けられます。動作監視では信号やデータを送信してシステムの応答をチェックし、性能監視ではリソースの使用状況を収集・分析して将来的な問題を予測します。
また、モニタリングの設定では監視間隔の決定も重要です。監視間隔が短すぎるとリソースの無駄遣いになり、長すぎると問題に気付かない可能性があります。そのため、適切な監視間隔を設定することが必要となります。
監視対象や監視項目、それぞれの監視間隔を設定したら、モニタリングの実行を開始します。そして、収集されたデータは必要に応じて解析され、異常が検出された場合は通知が行われます。
モニタリングでの一例:CPU使用率の監視
具体的なモニタリングの一例として、CPU使用率の監視を挙げます。これはシステムの性能を保つために重要な監視項目で、CPU使用率が高いとシステムのレスポンスが遅くなり、ユーザー体験が悪化する可能性があります。
CPU使用率の監視では、一定の閾値を超えた場合に警告を出すことが一般的です。この警告を受けて、必要に応じてリソースの追加や調整を行うことで、システムの健全性を保ちます。
また、モニタリングツールを使用すれば、CPU使用率だけでなく、メモリ使用率やディスク使用率など、さまざまなリソースの使用状況を一元的に監視することが可能です。
モニタリングの運用とメンテナンス
モニタリングシステムを設定したら、その後の運用とメンテナンスも忘れてはなりません。まずは、定期的にシステムの動作を確認し、必要に応じて設定を調整することが大切です。
また、新たな要素がシステムに追加された場合、その都度モニタリングの設定を見直し、適切な監視が行えるようにする必要があります。そのためには、変更管理が重要となります。
モニタリングはただ稼働させるだけではなく、それを適切に運用・メンテナンスすることで、システムの安全性と信頼性を保つことが可能になります。従って、モニタリングの設定と運用は、IT分野でのシステム運用に欠かせない要素となるのです。
モニタリングの将来展望と挑戦
この章では、IT分野でのモニタリングの将来展望と、それに伴う挑戦について詳しく解説していきます。システム運用の中心的役割を果たすモニタリングですが、その重要性とともに、技術の進歩やニーズの変化による課題が増えてきています。
その課題を適切に解決していくためには、現状の理解はもちろん、新たな技術の活用や先見的な視点が必要となります。ここでは、その一部をご紹介します。
それではまず、現在のモニタリング状況と課題について見ていきましょう。
現在のモニタリング状況と課題
現在のモニタリングでは、先進的な監視システムやツールを用いて、システムの状況をリアルタイムで捉え、またそれをもとに予防的な対策を取ることが一般的になっています。しかし、依然として対応力の未熟さや、監視環境の整備不足などが問題となっています。
手動での監視作業の負担軽減や信頼性の確保のため、自動化の導入が進んでいる一方で、システムの複雑性や規模の拡大に伴い、それだけでなく適切なスキルや理解を持つ人材の育成と確保も課題となっています。
また、リモートワークの普及により、システムの利用環境やパターンが多様化し、その対応により高度なモニタリングが求められています。
AIとモニタリングの新たな関係
AI(人工知能)はモニタリング分野でも大きな変革をもたらしています。予測分析や異常検知、自動化など、AIの活用により、より高度かつ効率的なモニタリングが可能となりつつあります。
結果の解釈や対策の提案など、これまで人間が行っていた作業をAIが担うことで、より迅速かつ精密な対応が可能となります。しかし、AIを活用したモニタリングは、その導入や運用における課題も伴います。
特に、AI技術そのものの理解や結果の評価方法、データの取り扱いなどについての適切な知識と対策が求められています。
これからのモニタリングの可能性
AIの導入が進む一方で、エッジコンピューティングのような新たな技術の発展により、モニタリングの可能性も広がっています。これにより、より柔軟で効率的な運用や、高度な分析・対応が可能となります。
また、モニタリングツールの進化により、様々なデバイスやネットワークを一元的に監視・制御することが可能となりつつあります。これにより、システム全体の最適化やリソースの効率的な活用が期待できます。
しかしこれらの可能性を最大限に引き出すためには、技術的な理解はもちろん、それに伴う適切な戦略や組織運営のあり方も重要となります。
ノンストップサービス時代のモニタリング
今日のデジタル化された社会では、さまざまなサービスが24時間365日、ノンストップで提供されています。これに対応するためのノンストップ型モニタリングは必須となっています。
しかし、無停止での運用は人間の能力を超えており、その対応のために高度な自動化やAI技術の活用が必要となります。そのためには、新たなスキルや組織のアジャイルな運営が求められます。
ノンストップサービス時代のモニタリングでは、技術の進化や新たな要求に継続的に対応するための戦略と準備が必要となります。
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