オーケストレーションとは? わかりやすく10分で解説
オーケストレーションとは
オーケストレーションとは、大規模なITシステムやアカウントの管理をソフトウェアによって自動化する機能のことです。頻繁に発生するタスクや反復可能なタスクを自動化し、IT運用を効率化します。また、オーケストレーションは単一のタスクの自動化ではなく、複数のシステムにまたがる多数のステップを自動化します。
この豊富な機能特性のおかげで、オーケストレーションはIT環境の効率化に大いに貢献します。大量の作業を減らすことで、コスト削減や作業時間の節約につながり、ITスタッフがより重要な問題に対処する時間を確保することが可能です。
具体的な使用例としては、ユーザープロビジョニング/プロビジョニング解除、ユーザーライセンスの割り当て/変更/取り消し、AWS、Azure、Google Cloudでの仮想マシンのプロビジョニング/プロビジョニング解除、メーリングリスト管理やパスワードのリセットなどが挙げられます。
オートメーションとの違い
オーケストレーションとオートメーションは似ているようで異なる概念です。オートメーションは一つのタスクを自動化するのに対し、オーケストレーションは複数のタスクを連続的に自動化する機能を持っています。
例えば、システムの再起動を自動化するのはオートメーションの一例です。一方、システムの異常検知から通知、再起動、その後のログ解析といった一連のタスクを自動化するのがオーケストレーションです。
簡単に言えば、オーケストレーションは複数のオートメーションタスクを全体的に管理することで、システム全体の効率性、信頼性、速度などを向上させる手段となります。
ITにおけるオーケストレーションの重要度
近年、ITインフラの規模と複雑性が増すにつれ、オーケストレーションの重要性はますます高まっています。多くの企業がクラウドサービスやマイクロサービスアーキテクチャを採用し、その管理が複雑になったためです。
オーケストレーションツールを使用することで、複雑なITプロセスをシンプルに自動化し、一貫性を保つことが可能です。これにより企業は、ヒューマンエラーの減少、効率的なリソース使用、業務パフォーマンスの向上などのメリットを享受することができます。
また、オーケストレーションはITチームがより戦略的な業務に集中するための手段でもあります。日常的なルーチンタスクの自動化により、より優先度の高いプロジェクトや創造的な活動に時間を確保することができるからです。
オーケストレーションの技術
オーケストレーションについて理解を深めるため、その背景にある技術についても解説します。
クラウド技術とオーケストレーション
オーケストレーションは、クラウドコンピューティングの登場とともに注目を集め始めました。クラウド技術は、インフラのプロビジョニングやメンテナンスが容易となり、大規模なITシステムの管理がソフトウェアによって自動化する可能性を示しました。
また、クラウドサービスの特性上、リソースは仮想的かつスケーラブルであるため、オーケストレーションにとって理想的な環境と言えます。システムのスケールアウトやイン、複雑なタスク管理など、クラウドの柔軟性がオーケストレーションと相性が良いからです。
それゆえ、AWSやAzure、Google Cloudといったクラウドプロバイダーは、それぞれ独自のオーケストレーションツールを提供し、自社のクラウド環境でのシステム管理を担当しているエンジニアに対するリソースのデプロイや管理を容易にしています。
CI/CDと関連の深いオーケストレーション
オーケストレーションはCI/CD(Continuous Integration / Continuous Deployment)と関連性が深いです。CI/CDはアプリケーションのビルドとデプロイを自動化する考え方であり、これらのプロセスもしっかりとしたオーケストレーションを必要とします。
実際、大規模なシステムでは、さまざまな環境へのデプロイ、依存関係の管理、複雑なワークフローの設定といった多くのステップが必要になります。これらを手作業で行うには時間とエネルギーがかかります。
これに対して、CI/CDツールはデプロイの自動化をサポートし、またCI/CDパイプラインの設定や更新をオーケストレーションツールを使用し自動化することが可能です。これにより、組織は迅速に品質の高いソフトウェアをリリースし続けることが可能になります。
【参考】CI/CDとは?わかりやすく10分で解説
オーケストレーション導入のメリットとデメリット
オーケストレーションの導入を検討する際には、そのメリットとデメリットを理解することが重要です。それらを踏まえた上で、自組織のビジネス環境や要件に照らし合わせながら、最適な方策を選ぶと良いでしょう。
IT運用の効率化とコスト削減
オーケストレーションの最大のメリットの一つはIT運用の効率化です。反復的なタスクを自動化することで、ヒューマンエラーを減らし、作業の精度と速度を向上させることが可能です。
また、この自動化によりITスタッフはハイレベルなタスクに集中できるようになり、生産性が大幅に向上します。さらに、効率的な運用によってIT運用のコスト削減も期待できます。
オーケストレーションのもう一つのメリットは、作業の標準化です。作業手順が一貫性を持つことで、エラーの原因を特定しやすくなり、問題解決も迅速に行えます。
ヒューマンエラーの軽減とセキュリティ向上
オーケストレーションによる自動化は、ヒューマンエラーの軽減にも繋がります。誤った手順や人的ミスで発生する問題を防ぐことが可能です。
また、セキュリティも向上します。タスクの自動化によりセキュリティ対策の実施漏れや遅延を防ぐことが可能で、結果的に守りを固くすることができます。
セキュリティの強化はビジネスへの信頼を向上させるだけでなく、データ漏洩やサイバー攻撃からの損失を防ぐことにも繋がります。
オーケストレーションの陥りやすい罠
一方で、オーケストレーションの導入や運用に際し、注意しなければならない点も存在します。まず一つ目は過度な自動化です。全てを自動化しようとすると、障害発生時の対処が困難になることがあります。
二つ目は、導入したシステムの仕様や機能を十分に理解していないと、想定外の動作やエラーが発生する可能性があります。
最後に、既存のシステムとの互換性や連携がスムーズにいかない場合、新たな問題を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
オーケストレーション導入時の検討点と注意事項
オーケストレーションを導入する際には、以下の点を注意深く検討する必要があります。1つ目は、自組織のIT環境に適合するかどうかです。全てのシステムやアプリケーションとの連携が可能か、事前に確認することが重要です。
次に、ワークフロー設定の容易さも検討点となります。複雑な操作を必要とするツールは、運用負荷が増えるだけでなく、エラーの原因にもなりうるからです。
最後に、支援体制も考慮するべきです。オーケストレーション工程は複雑であり、必要に応じたヘルプデスクや教育プログラムが提供されているかどうかを確認しましょう。
オーケストレーション活用のポイント
オーケストレーションをうまく活用するためには、さまざまなポイントがあります。本章では、そのうちの4つをピックアップし、それぞれの詳細な説明を行います。
クリアなビジョンと強固な組織のコミットメント
クリアなビジョンとは、先を見据えた明確な目標や計画を意味し、これがオーケストレーションの成功を重要なものにします。これにより、適切なリソースの配分や戦略的な方向性が明確になります。また、組織全体の強固なコミットメントは、オーケストレーションプロジェクトが進行する上で必要不可欠です。各部門がこのプロジェクトに対して関与し、貢献する意欲があることが成功への道筋を形成します。
定期的なスキルトレーニングと言語の統一
オーケストレーションは、新しい技術の導入や複雑なシステムの管理を必要とするため、定期的なスキルトレーニングが求められます。十分な訓練を受けたスタッフがプロジェクトに関与することで、オーケストレーションの効果が最大化され、問題のトラブルシューティングに迅速に対応できます。また、組織内の意思疎通を円滑に行うためには、言語の統一が不可欠です。一貫した言葉遣いにより、混乱を避け、作業効率を向上させることができます。
安全性と透明性の両立
オーケストレーションの実施に当たっては、セキュリティの確保と透明性の維持が大切です。効果的なオーケストレーションは、データの安全性を保ちつつ、全てのプロセスをモニタリングし、その結果を明確にすることで、透明性を実現します。この二つがバランス良く達成されることで、オーケストレーションの信頼性と効果が向上します。
障害時の状況に対応するためのプロセス
システム障害や予期しない問題が発生した場合でも、迅速かつ適切に対応するためのプロセスが確立されていることもオーケストレーションの成功には欠かせません。具体的なプロセスについては、問題が発生した際のエスカレーションの流れ、状況の評価方法、再発防止策の策定などが含まれます。これらのプロセスがあらかじめ整備されていることで、突然の問題にも迅速かつ適切に対応することが可能となります。
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