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PCI Expressとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

PCI Expressとは?

PCI Express、略してPCIeあるいはPCI-Eとも呼ばれる、マザーボードの拡張スロットの接続規格のことを指します。この規格はPCI(Peripheral Component Interconnect)と呼ばれる拡張カードの規格を基盤として進化させたものです。

PCI Expressは、その名の通りPCIの「Express」版ということができます。つまり、「急行」や「直行」といった意味があります。

PCI Expressは、各種拡張カードをマザーボードに接続する際の規格となっており、現在のところ最も一般的なものです。

PCI Expressの役割

PCI Expressの主な役割は、マザーボードと拡張カードとの間でデータを高速にやり取りすることです。この規格を採用することで、デバイス間の通信速度が大幅に向上し、より高性能なコンピューティングが可能となります。

また、PCI Expressの特徴的な点は「レーン」の存在です。これはデータ転送路の数を示しており、x1、x4、x8、x16といった種類があります。レーンの数が多いほど、データ転送速度も向上します。

特にx16のレーンは、最も高速なデータ転送が要求されるグラフィックボードなどに多く利用されています。

PCI Expressが持つ利点

PCI Expressが持つ高速なデータ転送速度の最大の利点は、ゲームや高解像度の映像処理など、大量のデータを短時間で処理する必要がある場面でのパフォーマンスの向上です。

また、PCI Expressを活用することで、拡張カードとマザーボードとの間のデータ伝送の遅延を大幅に削減することができます。これにより、リアルタイムでのデータ処理が可能となり、ゲームや映像処理、音声処理などでのパフォーマンスが大幅に向上します。

さらに、高速なデータ転送速度を持つPCI Expressは、現在の高性能なデバイスが要求するデータ転送量を十分に満たすことができます。これにより、これらのデバイスのパフォーマンスを最大限に引き出すことが可能です。

PCI Express を採用するデバイス

PCI Expressは、多くのグラフィックボードやサウンドカード、ネットワークカードなどの拡張カードに採用されています。これらのデバイスは、PCI Expressの高速なデータ転送速度を活用し、高性能な処理を行っています。

また、NVMe(Non-Volatile Memory express)と呼ばれるSSDもPCI Expressを使用しています。これらのデバイスは、M.2スロットに接続され、PCI Expressの高速なデータ転送速度を利用して高速なデータアクセスを実現しています。

これらの事例からも、PCI Expressがコンピュータの性能向上に大いに貢献していることがわかります。

PCI Expressの歴史

先駆けとなるAGP (Accelerated Graphics Port) 

まずは、PCI Expressに先駆けて使用されていたAGPの歴史を見ていきましょう。AGPは、Accelerated Graphics Portの略で、一時期グラフィックスカードの接続規格として主流だったものです。

AGPは、従来のPCI (Peripheral Component Interconnect) を改良して、より高速なデータ転送を可能にしたものでした。しかし、その後にPCI Expressが登場し、その高速化と拡張性の高さから、AGPは急速に市場から消えていきました。

AGPは現在では旧規格となっており、新たなハードウェアやソフトウェアではサポートが終了しています。

AGPの限界とPCI Expressの登場

AGPが主流だった時代、AGPの限界が明らかとなりました。その最大の問題点は、バスの幅が広がるにつれ、パワー消費と発熱が増大するという点でした。

そこで新たな接続規格としてPCI Expressが登場しました。PCI Expressは、高いデータ転送速度を実現しつつ、パワー効率も向上させることができました。

PCI Expressの登場により、グラフィックボードだけでなく、ネットワークカードやサウンドカードなど、さまざまな拡張カードの高速化が実現しました。

AGPからPCI Expressへの移行のメリット

AGPからPCI Expressへの移行は、多くのアドバンテージをもたらしました。その最大の特長は、各デバイスが独立した帯域を持つことができるという点です。

また、PCI Expressは、データ転送速度が向上するだけでなく、パワー効率とスケーラビリティも優れているため、現在ではハードウェアの接続規格として主流となっています。

さらに、PCI Expressは、下位互換性を持つため、古いバージョンのスロットに新しいバージョンのカードを挿すことができます。

PCI Expressの各バージョンの進化

PCI Expressは、時間と共に進化を遂げ、現在までに複数のバージョンが存在します。その各バージョンでは、それぞれ異なったデータ転送速度が特徴となっています。

例えば、初代のPCI Express 1.0は2.5GT/sの転送速度でしたが、PCI Express 2.0では5GT/s、PCI Express 3.0では8GT/sと、バージョンアップするごとに大幅に転送速度が向上しています。

各バージョンは互換性を持っており、たとえばPCI Express 3.0のグラフィックボードは2.0のスロットでも使用可能です。この互換性のおかげで、ユーザーは自身のシステムを柔軟にアップグレードすることが可能となりました。

PCI Express各種規格の特徴

一般的なコンピュータ内部のデバイス接続の主流となっているPCI Expressには、その活用方法や通信速度に応じてさまざまな規格やバージョンが存在します。これらはx1, x4, x8, x16といった形で表現され、これらの数値はレーン数を示しています。

これらのレーン数や規格によって、データ転送速度や対応するデバイスが変わります。また、それぞれの規格は互換性が保たれているため、新しいバージョンのPCI Expressに古いバージョンのデバイスを接続することも可能です。

今回は、これらの規格や特性、その違いについて解説していきます。

PCI Express x1, x4, x8, x16とは?

PCI Expressの規格はx1, x4, x8, x16などと表されます。このxという記号は「レーン」という単位を意味し、数値はその数を示しています。例として、x1は1レーンを、x16は16レーンを意味しています。

このレーンの数が多いほど、一度に送られるデータの量が増え、結果的にデータ転送速度が向上します。つまり、x1よりもx16の方が高速なデータ転送が可能ということになります。

このため、大量のデータ転送が必要となるグラフィックボードなどは、x16などの高レーン数の規格を使用します。

レーンについて

レーンとは、単純に言ってしまえばデータの「通信路」のことを指します。レーンが増えれば増えるほど、同時に伝送できるデータが増えます。

PCI Expressのレーンはバス接続の仕組みとは異なり、それぞれレーンが独立した通信を行うため、1つのレーンで発生した問題が他のレーンに影響を及ぼすことはありません。このため、レーン数の多いPCI Expressは、より多くのデータを安定して高速に送受信することができます。

また、レーン数が多ければ多いほど、接続できるデバイスの種類も増えます。例えば、x16のスロットではx16, x8, x4, x1のデバイスを接続することが可能です。このように柔軟性もPCI Expressの大きな特性の一つと言えます。

PCI Express x16

レーン数が最も多いPCI Express x16は主にハイエンドのグラフィックスカードで利用されています。これは、グラフィックスカードが必要とするデータ転送量が非常に大きいため、より速度の早いx16を使用することにより、パフォーマンスを最大限に引き出すことが可能だからです。

x16の特性としては、最も高速な転送速度が出せるだけでなく、より高度な電力管理や信号整合性の保持が可能という点が挙げられます。

また、仮にx16対応のスロットが空いていない場合でも、x8やx4のスロットに挿すことは可能ですが、その分転送速度は半減します。

PCI Expressのボトルネック

PCI Expressの規格には、x1からx16までの種類が存在しますが、それぞれの速度には大きな差があります。このため、規格を適切に選ぶことがパフォーマンスを最大限に引き出すためには重要となります。

たとえば、x1の規格を使用した場合、x16の規格を使用した場合と比較してデータ転送速度が大幅に低下するため、必要な処理を行うのに時間がかかる可能性があります。これがいわゆる「ボトルネック」の課題となります。

また、PCI Expressの各規格は前方後方互換性を持っていますーつまり、新しいバージョンのスロットに古いバージョンのカードを挿すことが可能です。しかし、その場合もカードかスロットのいずれかの低い規格に合わせた速度になるため、必要なパフォーマンスを得るためには適切な規格選択が求められます。

NVMe SSDとPCI Express

次に解説するのは、近年のストレージデバイスにおける主流であるNVMe SSDと、PCI Expressとの関連性です。

上述の通り、PCI Expressは高性能なデバイスを接続するための業界標準の接続規格であり、NVMe SSD もその一例と言えます。

ここでは、その関係性とNVMe SSDの特徴を詳しく解説していきます。

NVMe SSDの概要

NVMe SSDは、Non-Volatile Memory Expressの略で、非揮発性フラッシュメモリーに最適化された新しいストレージデバイスです。

従来のHDDやSATA SSDに比べ、転送速度が圧倒的に速く、リード/ライト速度も大幅に向上しています。

その秘密はPCI Express接続で、理論上の最大転送速度が遥かに高速な点にあります。

NVMe SSDとM.2スロット

NVMe SSDはPCI Expressのスロットを直接使用するのではなく、M.2スロットという特別なスロットを介してPCと接続します。

これは主にノートPCなどコンパクトなPCでの利用を可能にするための工夫で、高速転送が可能なPCI Expressと組み合わせることで、大きさとパフォーマンスのバランスを保っています。

M.2スロットはその小型性から多種多様なデバイス接続に対応でき、NVMe SSDの普及に大いに寄与しています。

NVMe SSDとPCI Express転送モード

NVMe SSDでも最も一般的な動作転送モードはPCI Express x4です。

これは4つのレーンを使用することを意味し、それによりPCI Expressの高速な転送能力を最大限に引き出します。

その結果、従来のSATA SSDやHDDに比べて多数のリクエストを同時に処理することや、一度に大量のデータを読み書きすることが可能となりました。

NVMe SSDにおけるPCI Expressの影響

PCI ExpressがNVMe SSDの性能を大いに引き立てていることは間違いありません。

特にストレージデバイスにとって重要な高速データ転送や低遅延は、PCI Expressの多レーンと高速転送能力に依存しています。

つまり、NVMe SSDの性能や存在は、PCI Expressなしには語れないと言えるでしょう。

PCI Expressの各世代解説

この章では、PCI Expressの各世代について詳しく解説します。レーン数だけでなく、使用するPCI Expressの世代によってもデータ転送速度は大きく変わります。初代から4.0までの各世代の特性や転送速度、それぞれの比較や両者の互換性について考察します。

PCI Expressの世代とその特徴

PCI Expressには、1.0から4.0までの複数の世代が存在します。それぞれの世代は、転送速度、帯域幅、電力効率などに違いがあります。通常、数字が大きいほど、その世代のPCI Expressは高速な性能を持っています。

初代PCI Express 1.0は最初のスタンダードであり、オフィスワーク程度の処理能力ですでに満足できるものでした。しかし、現代のハイエンドゲームや3Dグラフィックなど、より高性能のハードウェアを必要とする用途には不十分です。

このため新たな世代が生み出され、2.0、次に3.0と進化が続けられてきました。新しい4.0では、さらにデータ転送速度が向上し、一部のスロットでは二倍近い性能向上が実現されています。

PCI Express 2.0、3.0、4.0の比較

各世代のPCI Expressを比較する時に注目すべきは、データ転送速度です。2.0は前世代の1.0と比べて転送速度が倍増し、5Gbpsに達しました。この負荷により、大容量データを処理することが可能になりました。

その後、3.0では更に転送速度が向上し、8Gbpsに到達しました。これにより、高解像度のビデオストリーミングやVR(仮想現実)、ゲームなどの高性能な用途が可能になりました。

そして現在の新しい世代である4.0では、理論上の最大転送速度が前世代の2倍の16Gbpsに到達します。これにより大量のデータを短時間で処理でき、次世代の高負荷アプリケーションにも対応可能となりました。

世代間の転送速度

前章で示したように、PCI Express 1.0から4.0までの世代間で転送速度は大きく変わります。おおまかに言うと、世代が一つ上がるごとに転送速度が約2倍になるのが一般的です。

この差は、データ重視の作業を行う場合や、ハイエンドのゲームをプレイする場合、4Kや8Kの映像を扱う場合など、大量のデータが動く場面では非常に大きい影響を与えます。

したがって、現在では転送速度が必要な用途、特にゲームや高解像度映像処理などでは、少なくともPCI Express 3.0以上のスロットが推奨されるようになっています。

世代間の互換性

PCI Expressの世代間には互換性があります。つまり、新しい世代のデバイスを古い世代のスロットに挿入することが可能な場合があります。しかし、その場合、古い世代のスロットに合わせて動作速度が下がるのが一般的です。

これは、各世代のスロットがそれぞれの規格に合った最適な電流やデータ転送速度を提供できるためです。

したがって、例えば、PCI Express 4.0のグラフィックカードを2.0のスロットに接続すると、そのカードは2.0の速度でしか動作しない可能性が高いでしょう。逆に、古い世代のカードを新しい世代のスロットに挿せると、可能な限りそのカードの最高速度で動作します。

PCI Expressの今後

これからどのようにPCI Expressが進化していくかを考察してみましょう。

先端の技術が進化し続ける中で、PCI Expressの存在はますます重要性を増していきます。

この章では、PCI Expressの技術進化の予想、次世代PCI Expressに期待する機能、市場への影響等について考察します。

PCI Expressの未来予想

これまでの転送速度の向上という成功の歴史を踏まえて、今後もPCI Expressの技術進化は続いていくことでしょう。

転送速度の更なる向上はもちろんのこと、エネルギー効率の改善や機能強化が予想されます。また、より小型化されたデバイスへの対応や安全性への配慮も求められてくるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム