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公開鍵暗号とは? わかりやすく10分で解説

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公開鍵暗号とは

公開鍵暗号は、情報通信を安全に行うための暗号化技術のひとつであり、公開鍵と秘密鍵の組合せによる暗号化・復号の仕組みを指します。これにより通信内容の秘匿性が高まり、情報漏洩リスクの軽減となります。

この公開鍵暗号方式は、データを暗号化する際、誰でも利用可能な公開鍵を使用し、秘密鍵を用いて暗号化データを元に戻すという手法を用います。

このプロセスを理解するためには、公開鍵と秘密鍵の特性とそれらがどのように機能するかを把握することが重要です。

公開鍵の特性と利用例

公開鍵はその名の通り、公に公開されている鍵です。誰でもこの鍵を利用して情報を暗号化することができます。電子メールの送信やデータの保管などに利用されます。

公開鍵は非常に強い秘匿性を持つため、秘密の情報を安全に送信する際にも使用されます。さらに、公開鍵は電子署名作成にも使用できます。

ただし、この公開鍵だけでは暗号化された情報を元に戻すことはできません。そのため、情報を復号するためには秘密鍵が必要となります。

秘密鍵の特性とその役割

秘密鍵は特定のユーザーのみが保有する鍵で、この秘密鍵こそが公開鍵で暗号化された情報を復号する役割を果たします。

秘密鍵から公開鍵を生成することは可能ですが、公開鍵から秘密鍵を特定することは現実的には不可能です。これにより情報の安全性が保護されています。

秘密鍵は、公開鍵が誰でも見ることができる情報であるのに対して、特定のユーザーだけが保有し、取り扱いを厳重に管理する必要があります。

公開鍵と秘密鍵の関係

公開鍵と秘密鍵はペアとなっており、共に暗号化と復号(解読)プロセスに重要な役割を果たします。この2つの鍵を組み合わせて用いることによって、情報通信の安全性が保たれます。

特に重要なのは、公開鍵で暗号化されたデータは対応する秘密鍵でしか復号できないという性質です。これにより、データの保護と情報漏洩の防止が可能となります。

したがって、公開鍵と秘密鍵という2つの異なる鍵の組み合わせを用いることで、情報の秘匿性および完全性を保障することが可能となるのです。

公開鍵暗号の暗号化・復号のプロセス

公開鍵暗号方式における暗号化と復号のプロセスは次のように行われます。

まず、情報を暗号化する際には公開鍵が使われます。この公開鍵は誰でも利用することができるため、これにより情報が安全に暗号化されます。

次に、この暗号化された情報を元に戻すためには秘密鍵が必要となります。この秘密鍵は特定のユーザーだけが保有し、公開されていないため、情報の安全性が保たれ、信頼性が確保されます。

情報セキュリティと公開鍵暗号

情報セキュリティと公開鍵暗号は、現代の企業や個々のユーザーが持つ情報資産を保護するための重要な要素です。インターネットが普及し、大量の情報がデジタル化される現代において、これらの知識は不可欠です。

公開鍵暗号とは、通信内容の秘密性を高める仕組みの一つです。この仕組みを理解し、正しく利用することで第三者からの情報の窃取を防ぐことが可能となります。

それでは、情報セキュリティの基本から、公開鍵暗号化の貢献や情報漏洩防止策までアプローチしていきましょう。

情報セキュリティの基本

情報セキュリティとは、企業や個々のユーザーが保有する情報資産を保護するための体系です。情報セキュリティの目的は三つあり、機密性完全性可用性といいます。

機密性は、権限を持つ者だけが情報にアクセスできる状態を保つことです。完全性は、誤った操作や不正な手段によってデータが改ざんされないことを保証します。そして可用性とは、情報資産を必要なときに迅速に利用できることを保証するものです。

これらの3つの要素は、情報セキュリティの基本を形成し、公開鍵暗号は特に「機密性」に大きく貢献しています。

公開鍵暗号のセキュリティへの貢献

公開鍵暗号システムは、自由に公開された公開鍵と秘密鍵を利用し、通信の安全性を保証します。公開鍵で暗号化されたメッセージは、秘密鍵でしか解読することはできません。

このシステムの重要な利点は、秘密鍵が安全に保管されている限り、通信内容の秘密性が確保されるという点です。つまり、公開鍵暗号は「機密性」を確保するための強力なツールとなります。

また、公開鍵暗号はデジタル署名の実現にも利用されます。デジタル署名は、メッセージの完全性と送信者の認証を保証するためのもので、情報セキュリティの「完全性」に寄与します。

情報漏洩防止への対策

情報漏漏洩は、情報セキュリティの大きな問題であり、公開鍵暗号はその対策として有効です。公開鍵暗号を用いることで通信情報が暗号化され、特筆された秘密鍵を持つ者以外には解読することができません。

特に、公開鍵暗号は機密性の高いデータを保護するための手段として広く使用されています。つまり情報漏洩の防止が可能になるのです。

公開鍵暗号に熟知したIT専門家の存在は、情報漏洩の防止策の一部として非常に重要です。

内部不正の抑止

情報セキュリティの視点から見ると、内部からの不正行為は避けるべきリスクの一つです。公開鍵暗号を用いることで、内部不正の抑止が可能となります。

具体的には、社内で取り扱われるデータが不正に改ざんされた場合、デジタル署名が無効となり、それが明らかになります。また、暗号化されたデータは、適切な鍵がなければ解読することができません。

このように、公開鍵暗号は「完全性」と「機密性」を保つための重要なセキュリティ機能を提供し、情報セキュリティ全体の強化に大いに寄与しています。

公開鍵暗号の具体的な適用分野

情報セキュリティに欠かせない要素である公開鍵暗号ですが、具体的にはどのような分野で使用されているのでしょうか?今回は公開鍵暗号の適用分野について、以下の4点にわけて考察します。それぞれが情報セキュリティの観点から何故重要であり、どのように利用されているのかを具体的に解説してまいります。

デジタル署名

公開鍵暗号の最も一般的な適用分野はデジタル署名です。これは電子情報の正当性を確認する一種の証明制度の役割を果たします。公開鍵で加えられた署名は、秘密鍵を持つ人間しか作成できないため、署名した本人であることの証明となります。

また、デジタル署名は送信された情報が途中で改ざんされていないかをチェックする機能も持っています。なにしろ公開鍵では復号ができませんので、結果として情報の改ざんを判明することが可能です。

これらの性質から、デジタル署名は電子政府や電子商取引、電子証明書など、さまざまなサービスで活用されています。

SSL/TLSとの関係

Web通信のセキュリティプロトコルといえばSSL(Secure Sockets Layer)またはTLS(Transport Layer Security)が利用されます。このSSL/TLSでは公開鍵暗号がキーエクスチェンジのプロトコルに用いられます。

公開鍵暗号は鍵の交換に使用され、その後の通信に用いるセッションキーの交換を安全に行います。これによって通信の秘匿性が確保されます。

秘密鍵で暗号化されたデータは公開鍵でもあるユーザーしか復号できませんので、第三者の傍受を防御することができる点が大きな特徴です。

電子マネーと公開鍵暗号

電子マネーシステムにおいても公開鍵暗号が活用されています。お金のトランザクションを行う上で、その正確性や信頼性を証明する為にデジタル署名が用いられます。

やはり公開鍵暗号はその利用者だけが秘密鍵を持つため、特定のユーザーによる適切なトランザクションであることを確認することができます。

また、これにより不正利用やハッキングによる攻撃を防ぐことができ、電子マネーの安全性を高めます。

クラウドサービスと公開鍵暗号

クラウドサービスでのデータ保存において、公開鍵暗号は不可欠な存在です。この理由は、公開鍵暗号を使用することによってデータの保護と同時に、その暗号のやりとりを安全に行うことができるからです。

クラウドサービスでは情報がネットワークを通じて送受信されます。これらの情報を第三者に傍受されること無く、安全にやりとりするために、公開鍵と秘密鍵を用いた暗号が現実的に利用されています。

例えば、クラウドサービスの顧客は自身の公開鍵で暗号化したデータをクラウドにアップロードします。クラウドは許可されたユーザーに対してのみ秘密鍵を配布し、これを用いてデータを復号します。これにより、データの安全性が確保されるのです。

公開鍵暗号の主要なアルゴリズム

公開鍵暗号には多くのアルゴリズムが存在しますが、その中でも重要な位置を占めるのがRSA暗号DSA署名方式、そしてECDSA署名方式です。それぞれの特徴や使い道、評価などについて詳しく見ていきましょう。

RSA暗号の概要と特徴

RSA暗号は、公開鍵暗号の代表的な存在で、データの暗号化とともに、電子署名の作成にも使用されます。これは、それぞれ異なる公開鍵と秘密鍵を用いて行われるため、セキュリティの高さが特徴です。

RSA暗号は、大きな素数の積を用いた暗号化の高難度により、鍵が公開されていても秘密鍵を推測することは現実的に不可能です。従って、非常に信頼性が高い暗号方式です。

RSA暗号の課題は、コンピュータの計算能力が進歩した現在でも、その計算コストが高いことです。このため、大量のデータを扱う場合や低スペックのデバイスには適していません。

DSA署名方式の概要と特徴

DSA署名方式は、デジタル署名専用の暗号化方式です。通常、公開鍵で署名を作成し、秘密鍵で署名を確認するため、情報が改ざんされていないことを確認するのに適しています。

DSA署名方式のメリットは、署名の作成と確認が高速で行えるため、大量のデータに対する電子署名に適しているところです。その一方で、RSA暗号と比べると、そのセキュリティ強度は若干劣るとされています。

DSA署名方式の欠点は、通常のデータの暗号化には利用できないことです。そのため、使い道が限られていると言えます。

ECDSA署名方式の概要と特徴

ECDSA(Elliptic Curve Digital Signature Algorithm)署名方式は、楕円曲線暗号を利用したデジタル署名方式です。特徴的なのは、短い鍵長でも高い安全性を確保できることです。

ECDSA署名方式の特徴は、その処理速度とセキュリティの高さです。鍵長が短いため、計算量が少なく、低性能なデバイスでも高速に処理できます。また、攻撃者に鍵を推測されるのは困難であるため、セキュリティも高いと言われています。

しかし、ECDSA署名方式は、楕円曲線暗号を理解する必要があるため、その理論的な理解が難しいというハードルがあります。

各アルゴリズムの比較と評価

これまで見てきたように、暗号化アルゴリズムにはそれぞれ特性とメリット、デメリットがあります。その利用状況や目的、環境によって最適な選択は変わってきます。

RSAは、計算コストは高めですが、一般的な暗号化とデジタル署名の両方に利用でき、セキュリティ強度が高いという特性を持っています。DSAは、署名の生成と検証が高速に行えるため、大量のデータに対する電子署名に最適な選択肢です。

最後にECDSAは、短い鍵長で高いセキュリティを確保できるため、計算能力の低いデバイスや通信帯域が狭い環境に適しています。

いずれのアルゴリズムも公開鍵暗号方式に必要不可欠であり、それぞれの特性を理解し使い分けることが重要です。

公開鍵暗号とブロックチェーン

公開鍵暗号技術は、現代の情報セキュリティ技術を根底から支えています。その代表的な応用例として「ブロックチェーン」を取り上げます。ブロックチェーンは、分散型台帳としてネットワーク全体で情報を共有し、更新します。この分散管理は公開鍵暗号技術を基盤に構成されており、そのセキュリティや信頼性を助長し、さまざまな領域での応用を促進させています。

この章では、ブロックチェーンの基本概念から暗号通貨、スマートコントラクト、ブロックチェーンセキュリティと公開鍵暗号との関連まで、公開鍵暗号がブロックチェーン技術をどのようにサポートし、どのように情報セキュリティを強化しているのかを考察します。

最初に、公開鍵暗号とブロックチェーンの基本的な関係性とその作用を理解することから始めましょう。

ブロックチェーンの基本概念と公開鍵暗号

ブロックチェーンは、データブロックの鎖として情報を連続的に保存する分散型データベースです。公開鍵暗号は、情報の一貫性、不変性、真正性を確保し、分散ネットワーク内での信頼を生成します。

各ブロックはすべての参加者に公開され、公開鍵暗号方式を使い、チェーン全体が連結されています。これを分散型台帳と呼びます。公開鍵暗号は、この分散型台帳の一貫性と真正性を保証し、各ブロックが変更や改ざんから保護されることを確保します。

次に、公開鍵暗号のビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨への適用について探ります。

暗号通貨と公開鍵暗号

暗号通貨はブロックチェーン技術をベースにしたデジタル通貨であり、公開鍵暗号はその根本的な部分に存在します。公開鍵はそれぞれのユーザーに関連付けられ、取引を暗号化し、ユーザー間の送金を可能にします。

また、公開鍵はトランザクションの送信者を特定し、秘密鍵は送金の承認を行います。これら2つのキーが相互に作用することで、取引のセキュリティと認証性が確保されます。

最後に、スマートコントラクトと公開鍵暗号の関係について見ていきましょう。

スマートコントラクトと公開鍵暗号

スマートコントラクトは、契約条件が満たされた時に自動的に実行されるプログラムです。公開鍵暗号では、スマートコントラクトの承認と実行を安全に行います。

公開鍵を使用してスマートコントラクトを作成し、秘密鍵を使用して契約を認証し、結果的に取引を完了させます。その結果、取引の効率性、信頼性、透明性が大幅に向上します。

次に、ブロックチェーンのセキュリティと公開鍵暗号の関連性について分析します。

ブロックチェーンセキュリティと公開鍵暗号

ブロックチェーンのセキュリティはその設計の根幹をなし、公開鍵暗号はその要素として非常に重要な役割を果たしています。公開鍵と秘密鍵のペアは、ブロックチェーンネットワーク内の全てのトランザクションと参加者を保護します。

公開鍵暗号は、ネットワーク内でのプライバシーを保持し、同時にデータの真正性と完全性を確保します。これにより、ブロックチェーンは高度な信頼性、透明性、セキュリティを持つことができます。

以上が公開鍵暗号とブロックチェーンの間の基本的な関連性とその重要性です。これらの原理を理解することは情報セキュリティを理解し、強化するためには不可欠です。

公開鍵暗号の今後の展望と課題

情報セキュリティの世界は常に変化し、成長を続けています。特に、公開鍵暗号のジャンルでは、新しいテクノロジートレンドや将来の展望に注目が集まっています。以下では、量子コンピュータとの関係、新たな公開鍵暗号の開発、公開鍵基盤 (PKI) の課題、情報セキュリティ対策の将来像などについて検討します。

量子コンピュータとの関係

量子コンピュータは、そのポテンシャルから公開鍵暗号にとって重大な脅威と見なされています。なぜなら、量子コンピュータの力を借りれば、公開鍵暗号のセキュリティを侵害する可能性があるからです。しかし、実用レベルの量子コンピュータ開発はまだ難航しており、これらの脅威が現実となる日はまだ未来の話ともされています。 それに対して、公開鍵暗号のセキュリティを量子コンピュータの脅威から守るために、「ポスト量子暗号」と呼ばれる新しい種類の暗号が開発されています。このポスト量子暗号は、量子コンピュータでも解読することが困難とされています。

新たな公開鍵暗号の開発

現代の暗号は、その安全性を高めるために絶えず革新が続けられています。その中で、公開鍵暗号もまた新たな開発が行われており、その一つがすでに触れたポスト量子暗号です。 とはいえ、暗号技術の進化は、それが確立され利用が始まるまでに時間を要します。特に、新しい公開鍵暗号の開発には数学的な証明が必須となり、そのハードルは極めて高いです。 それでも、多くの研究者が挑戦し続けることで、我々の情報セキュリティを保護する新たな暗号技術が次々と生まれてきており、その進歩は注目すべきものとなっています。

公開鍵基盤 (PKI) とその課題

公開鍵基盤(PKI)は、公開鍵暗号及びデジタル証明書の管理・配布・保存を行うための仕組みです。このPKIの利用は極めて重要ですが、一方でその運用には課題を抱えています。 一つ目の課題は、PKIを運用するためには高レベルの専門知識と熟練したスキルが必要であるということです。さらに、誤った運用により、暗号キーが第三者に漏れる可能性もあります。 二つ目の課題は、公開鍵暗号の一般的な課題とも重なる部分ですが、新たな暗号技術の出現により既存のPKIシステムも進化しなければならないという点です。

情報セキュリティ対策の将来像

最後に、情報セキュリティ対策の将来像について考察します。公開鍵暗号を含む今日のセキュリティ技術は、着実に進化し続けています。特に量子コンピュータの出現により、暗号化技術の変革が求められており、その中で新たな公開鍵暗号の開発が進んでいます。 また、情報漏洩のリスクを抑えるための対策もますます重要となってきています。これには、専門的知識を持った人材の育成といった人的な対策から、暗号技術の活用まで広範囲にわたります。 公開鍵暗号は個々のセキュリティ対策だけでなく、あらゆる分野、例えばIoTデバイスのセキュリティ強化やブロックチェーン技術などにも応用され、情報セキュリティ全体を高めていくでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム