RAIDとは? わかりやすく10分で解説
はじめに
RAIDとは?
RAIDとは、Redundant Array of Independent Disksの略称で、情報を複数のディスクに分散させる技術のことです。これは、1つの大容量で高価なディスクと比較して複数の小容量のディスクを使用することで冗長性とパフォーマンスのバランスを達成します。
この技術では、データは複数の独立したディスクに分散され、単一の論理ストレージとしてシステムに表示されます。これにより、ディスク障害に対する冗長性を確保しながら、データアクセスのパフォーマンスを改善することが可能となります。
以下に、RAIDの背景、目的、技術的背景、そしてその重要性について深く探ることで、RAIDの全貌を理解できるように説明します。
RAIDの背景
RAIDの背景には、小容量で手頃な価格のディスクドライブを複数使用して、大容量で高価なドライブ相当のパフォーマンスとディスク容量を確保するという目的がありました。これにより、高パフォーマンスなストレージシステムのコストを抑えつつ、十分なデータ保護を実現できます。
そのそもそもの背景には、情報化社会の進展に伴う、データ量の増大とその保護の重要性があげられます。データ障害による損失を回避し、安全に情報を保管・管理する必要があったのです。
このような問題への対応策として、RAIDという技術が登場しました。ストレージのパフォーマンスと耐障害性を両立させつつ、コストを抑えるという効果が期待できるため、多くのデータセンターや企業で利用されています。
RAIDの目的
RAIDの基本的な目的は、ストレージシステムのパフォーマンス向上とデータの保護です。複数のディスクドライブを一つの論理的なユニットとして組み合わせることにより、大容量データの保存とデータアクセスの速度を向上させることができます。
さらに、RAIDはハードウェアの障害に対する冗長性を確保することが可能です。これにはディスクのミラーリング(RAID1)やストライピング(RAID0)、パリティ(RAID5)等の方法が用いられます。
その結果、RAIDはハードウェア障害時にもデータを失うことなく稼働を続けることが可能です。更に、RAIDを用いると、データのリカバリーやシステムの再起動などの運用的な手間も低減することができます。
RAIDのベース技術
RAIDのベースとなる技術には主に、ストライピング、ミラーリング、パリティ計算などがあります。これらの技術は、それぞれ異なる特性を持ち、その組み合わせによって様々なRAIDレベル(RAID0、RAID1、RAID5など)が実現されています。
ストライピングはデータを一定の大きさ(チャンク)に分割し、それぞれを複数のディスクに均等に分散して書き込む方法で、データの読み書き速度を向上させます。一方、ミラーリングは2台のディスクで同じデータを保持することで冗長性を確保します。
加えて、パリティ計算を利用することで、ディスクの一部が故障したときに元のデータを復元可能にします。これにより、冗長性と高速性を両立でき、データを安全に保護しながらも高パフォーマンスな読み書きを実現することができます。
RAIDの重要性
RAIDの重要性は、ストレージのパフォーマンスの向上とデータ保護の二点に尽きます。高価なディスクを用いずに、複数の低価格ディスクを組み合わせることでコストパフォーマンスを向上させることは、多くの企業や組織にとって重要です。
また、データ量の増大やIoTデバイスの普及に伴うデータのインフラ需要の高まりに対し、高パフォーマンスなストレージシステムを効率的に構築する必要があります。RAIDは、その要請に対する有効な解答の一つと言えるでしょう。
さらに、予期せぬディスク障害から重要なデータを守るデータ保護機能もRAIDの重要性を高めています。ビジネスにおいては、データの損失は直接的なビジネスの機会損失を生じさせるため、RAIDの活用はデータ保護のマストとも言えます。
RAIDの特徴
RAIDには、特徴的な要素がいくつかあります。それらを理解することで、その機能やパフォーマンス、冗長性やストレージ容量の最適化のメリットを深く認識できます。次に、これらの要素を詳しく解説していきます。
データの冗長性確保
RAIDが提供する冗長性の利点は、データの安全性を高めることにあります。RAIDでは、複数のディスクに同じデータを保存することで、1つのディスクが故障しても他のディスクからデータを取り出せるようにします。この冗長性により、データの損失リスクが大幅に低減されます。
冗長性を確保する方法は、RAIDの種類によって異なります。たとえば、RAID1のミラーリングでは、2台のディスクに同じデータを書き込むことで冗長性を確保します。
また、RAID5やRAID6では、パリティデータ(エラーチェック用の確認データ)を各ディスクに分散記録することで、1台または2台のディスクが故障してもデータを復元可能です。
パフォーマンスの向上
RAIDのもう1つの特徴的な要素は、パフォーマンスの向上能力です。RAIDでは、複数のディスクが並列にデータを読み書きするため、単一のディスクと比べてパフォーマンスが向上します。これは、特にデータ読み取り時に効果を発揮します。
パフォーマンス向上の具体的な方法もRAIDの種類によります。例えば、RAID0はストライピング(データを複数のディスクに分散して保存する技術)により、高速なデータアクセスを可能にします。
さらに、RAID 1+0は、RAID1のデータ二重化とRAID0の高速化を組み合わせることで、冗長性とパフォーマンスの両方を実現します。
データの保護
RAIDが提供するデータ保護のメリットは、データの損失を防ぐことにあります。これは、例えばディスク故障発生時に、冗長性によりデータを保護します。つまり、RAIDはディスクの故障耐性を向上させ、信頼性の高いストレージシステムを実現します。
なお、データ保護の範囲はRAIDの種類によります。たとえば、RAID1やRAID5は、1台のディスク故障まで対応します。
一方、RAID6やRAID-DPは、2台のディスク故障まで対応可能なダブルパリティを利用します。これにより、より高い故障耐性とデータ保護を提供します。
ストレージ容量の最適化
RAIDが提供するストレージ容量の最適化の利点は効率的なディスクスペース利用です。RAIDでは、取り付けられた全ディスク容量がストレージとして利用できます。ただし、パリティを使うRAIDではその限りではありません。
ストレージ容量の最適化は、特に大量のデータを保存する必要がある環境や、ストレージ容量のスケーリングを考慮するシステム設計において重要です。
ストレージ容量の最適化手法もRAIDの種類によって異なります。例えば、RAID0ではディスクすべての容量を使用できます。一方、RAID1ではデータのミラーリングのため、全体の半分の容量しか利用できません。
RAIDの主要な種類
RAIDは様々な種類が存在し、その要件や目的によって適した方式が異なります。メジャーなRAIDとしては「ファームウェアRAID」「ハードウェアRAID」「ソフトウェアRAID」があります。それぞれの特徴や利点、欠点を理解することで、最適なRAIDの形を選ぶことができます。
ファームウェアRAIDとは?
ファームウェアRAIDは、ハードウェアとソフトウェアの中間的な存在です。母艦に組み込まれたチップがRAIDの制御を行い、設定はBIOSやUEFIから行います。例えばIntelのマザーボードなどでは、ファームウェアとしてMatrix RAIDが提供されています。
この方式はハードウェアRAIDと比較してコストパフォーマンスに優れ、一定のパフォーマンスを確保することが可能です。しかし、使用できるRAIDレベルは限られており、高度な機能を求める企業環境などでは適していない場合もあります。
また、他のRAID形式に比べて設定が難しく故障時の対応もハードルが高いという欠点もあります。
ハードウェアRAIDとは?
ハードウェアRAIDは、専用のRAIDカード(コントローラカード)を使用して構築されます。RAIDカードはディスクを制御し、ホスト(CPU)へは単一のディスクとして見せることで、ホストの負荷を軽減します。
ハードウェアRAIDは高パフォーマンスかつ高信頼性を誇り、RAID0からRAID6までの多様なRAIDレベルをサポートしています。また、ホットスワップ(稼働中のドライブの交換)やキャッシュ機能、バッテリーバックアップなどの高度な機能を持つ製品も存在します。
しかし、専用のRAIDカードが必要であるため初期投資が高く、また専門的な知識が必要となるため設定や管理が複雑であることが欠点です。
ソフトウェアRAIDとは?
ソフトウェアRAIDは、ホストのCPUがディスクの制御を行い、ソフトウェアレベルでRAID機能を実現します。特別なハードウェアは必要なく、任意のディスクを使用してRAIDを構築できます。
ソフトウェアRAIDの最大の利点は、ハードウェアに依存しないため柔軟性が高いことです。また、特別なRAIDカードを必要としないため、初期費用を抑えることが可能です。
一方で、全ての処理をホストのCPUが担当するため、CPUの負荷が増大します。そのため、パフォーマンスや信頼性はハードウェアRAIDに劣ります。
それぞれのRAIDの利点と欠点
これら3つのRAIDにはそれぞれ利点と欠点が存在します。一般的に、ソフトウェアRAIDは初期費用を抑えられる反面、パフォーマンスや信頼性では劣ります。一方、ハードウェアRAIDは高いパフォーマンスと信頼性を誇りますが、専用のRAIDカードと専門的な知識が必要となります。
その中間的存在としてファームウェアRAIDがあり、一定のパフォーマンスと信頼性を確保しつつも、コストパフォーマンスを優先する組織に適しています。しかし、使用できるRAIDレベルが限られています。
結局のところ、どのRAIDを選択すべきかは、その組織の要件やリソース、技術力によります。適切な選択をするためには、それぞれの特性を理解し、組織のニーズに照らして判断することが重要です。
RAIDの影響
RAIDは過去数十年間にわたり、データセンター、エンタープライズ環境、そして個人のデスクトップまで、広範にわたり影響を与えてきました。それがもたらす高い信頼性とパフォーマンスは、データ管理に無くてはならないものになっています。
各RAIDレベルが提供する冗長性と可用性は、一部が故障してもシステム全体が稼働し続けることを可能にし、これがビジネスや個人のパフォーマンスに大きな影響を与えています。
RAIDのビジネス影響
ビジネスの視点から見ると、RAIDはその冗長性と信頼性により、データ損失のリスクを軽減し、ビジネスの運営における信頼性を高める役割を果たします。
従業員がアクセスするデータの稼働時間と可用性は、ビジネスの成功に直結しています。RAIDテクノロジーによって得られるこの高い信頼性と可用性は、意思決定からデイリー・オペレーションまでビジネスのあらゆる側面に影響を与えます。
ハードウェアの故障から早期に回復できることが必要なビジネスにとって、RAIDはその目的を達成するための舞台裏のヒーローともいえるでしょう。
RAIDとクラウドストレージ
近年、クラウドストレージの利用が増えてきており、従来のRAID技術がクラウド環境とどのように関わるかということが注目されています。RAID自体はデータセンターのストレージシステムの一部として引き続き用いられています。
RAIDが提供する信頼性とデータ保護は、クラウドプロバイダがお客様に提供するサービスレベルを支える基盤となっています。このことが、日々の業務でクラウドストレージを利用するユーザーの生産性を向上させています。
データの冗長性を確保するためのクラウドストレージの裏側でのRAIDの利用は、データセンターのオペレーションにおいて重要な役割を果たし続けています。
RAIDの展望
ストレージテクノロジーが進化し続ける中で、今後もRAIDはその重要性を保ち続けるでしょう。特に大量のデータを管理しなければならないビッグデータの分野や、更なる信頼性が求められる医療業界などでは、RAIDの活用が見込まれます。
RAIDの冗長性と可用性が提供する高度な保護により、これらの業界はデータ運用の効率を向上させ、リスクを最小限に抑えることが可能となります。
また、AIやIoTなど新たな領域の発展につれて、データの生成と利用が増大し続ける今日、RAIDの役割は今後も増え続けることが予想されます。
RAIDにおける具体的なレベル
RAIDは、その構成や冗長性の度合い、パフォーマンス等により様々なレベルに細分化されます。主に均一なハードウェアによって構成されるRAID0、RAID1、RAID5、RAID6について詳しく説明します。
RAID0
RAID0は、ストライピングという手法を利用し、データを複数のディスクに分散して記録します。それぞれのディスクが一部のデータのみを持つため、全体の読み書き速度は高まります。
しかし、RAID0は冗長性を持たず、任意のディスクが故障した場合、全体のデータの可用性が損なわれます。そのため、高速な読み書きが求められ、一方でデータの安全性がそれほど重要でない場合に用いられます。RAID0は容量効率が良好であり、すべてのディスク容量が使用可能です。しかし、ディスクの故障に対する耐性が全くないので、データの重要性に従って、バックアップ対策を考慮する必要があります。
RAID1
RAID1は、ミラーリングと呼ばれる手法を使用し、2台のディスクに同時に同じデータを書き込みます。これにより、一台のディスクが故障しても他のディスクからデータを取得できる冗長性を確保します。
RAID1は、読み込み速度が大幅に向上します。また、ディスクの故障に対して非常に強い冗長性を持つため、データの安全性が重視される用途に適しています。しかし、その反面、全体のディスク容量の半分のみが実効的な容量となり、書き込み速度はそれほど改善されません。そのため、ストレージコストが増大するという欠点があります。
RAID5
RAID5は、パリティ情報を各ディスクに均等に分散させる技術を使用します。一部のディスクが故障した場合でも、残存するディスクからパリティ情報を利用してデータの再生が可能です。
RAID5は、読み書きのパフォーマンスが高く、容量効率も良好なため、一般的なサーバや企業のストレージシステムでよく使われます。しかし、パリティ情報の計算にはCPUリソースが必要なため、CPUの負荷が増加する欠点があります。また、RAID5は一台のディスク故障までデータを保護できますが、2台以上のディスクが同時に故障するとデータの復元が不可能となります。
RAID6
RAID6は、どの2台のディスクが故障してもデータの再生が可能な冗長性を持ったシステムです。これは、2つのパリティ情報が各ディスクにストライピングされることで達成されます。
RAID6は、極めて高いデータ保護能力を持つ一方で、書き込みパフォーマンスがRAID5に比べて低下します。なぜならパリティ情報の計算と書き込みが2倍必要になるからです。そのため、RAID6はデータの安全性が非常に求められ、かつ、書き込み速度の低下が許容範囲内である場合に適しています。特に大容量ディスクを使用するストレージシステムでは、ディスクの再構築時間を考慮するとRAID6が推奨されることが多いです。
RAIDの実用的な考察
RAIDには多くの利点がありますが、合わせていくつかのポイントに留意すべきです。適切なRAIDレベルの選択、実行障壁への対応、障害時の対処と復旧策を以下で詳しく解説します。
RAIDの選択方法
RAIDを導入する際は、利用環境や要件から最適なRAIDレベルを選択することが大切です。高速なパフォーマンスが求められる場合や、データのセキュリティが重視される場合によって、選択すべきRAIDレベルが変わるからです。
また、RAIDの種類によっても、その運用・労力が変わります。ハードウェアRAIDは比較的設定が容易で、高いパフォーマンスが期待できますが、高価です。この点、ソフトウェアRAIDは低コストで導入できる反面、設定や運用に専門知識が必要です。
したがって、RAIDの採用に際しては、システムの要件、予算、運用容易性などを総合的に考慮することが求められます。
RAIDの課題
RAIDの導入・運用にはいくつかの課題があります。初期導入のコスト、運用中の管理コストがその一例です。特にハードウェアRAIDの場合、専用のコントローラや専用のドライブが必要となり、初期投資が重くなる可能性があります。
また、ディスクの障害発生時には、データの復旧や再構築に時間と労力がかかることもあります。これらを最小限にするためには、定期的なデータバックアップが必須です。
さらに、RAID導入には、設定や運用に関する専門知識が求められます。RAIDの種類やレベルにより、その難易度は変わりますが、基本的にIT専門家の知識が必要となるでしょう。
RAID障害への対処
RAIDは高い冗長性を持つ方策でありながら、障害発生時の対処法を理解しておかねばなりません。RAID1やRAID5などは、ドライブの故障に対して一定の対応ができますが、全ての障害を防ぐわけではありません。
例えば、二重のドライブ故障が起きると、RAID1やRAID5ではデータの一部が失われる可能性があります。このような場合に備えて、データの定期的なバックアップを行う必要があります。
また、RAIDシステム自体の障害やフェイルオーバーも検討に入れるべきです。障害が起きた場合に備えて、障害時の復旧手順を事前に細かく設計しておくことが求められます。
RAIDによるデータリカバリー
RAIDを通じたデータリカバリーは、多くの場合、RAIDの構成要素である各ドライブからデータを再構築するプロセスを指します。ハードウェアRAIDの場合、コントローラが自動的にこれを行いますが、ソフトウェアRAIDの場合は人手が介入する場合が多いです。
また、RAIDの冗長性により、故障ドライブの交換やデータ再構築は比較的スムーズに行うことが可能です。しかし、状況により、時間と手間がかかることもあります。このような際には、事前にバックアップを取っておくことが極めて重要です。
このようにRAIDによるデータリカバリーは、RAIDの設計、運用から障害対処までを総合的に考慮した上で理解・運用することが大切です。
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