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レジリエンスとは? 10分でわかりやすく解説

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自社のシステムが障害や攻撃に遭遇した際、サービスへの影響を最小限に抑えつつ、迅速な復旧を実現できていますか?この記事では、レジリエンスの基本的な概念から、それを高めるためのポイントやアーキテクチャ、企業としての取り組み方までを10分でわかりやすく解説します。企業にとって、レジリエンスの確保は重要な課題と言えるでしょう。

レジリエンスとはどんな概念?

レジリエンスとは、システムやネットワークが障害や攻撃に遭遇した際に、その影響を最小限に抑え、迅速に復旧できる能力を指す概念です。近年、ITシステムの重要性が高まる中、レジリエンスへの注目が集まっています。

レジリエンスの定義と由来

レジリエンスという言葉は、ラテン語の「resilire」に由来し、「跳ね返る」「立ち直る」という意味を持ちます。ITの分野では、システムやネットワークが障害や攻撃に遭っても、速やかに復旧し、サービスを継続できる能力を指します。

レジリエンスが注目される背景

現代社会において、ITシステムは企業活動や日常生活に欠かせない存在となっています。システムの停止や機能低下は、大きな経済的損失や社会的混乱を引き起こす可能性があります。また、サイバー攻撃の脅威が高まる中、システムの脆弱性を突いた攻撃から守ることも重要な課題となっています。こうした背景から、レジリエンスの確保が注目を集めているのです。

レジリエンスに求められる要件

レジリエンスを実現するためには、以下のような要件が求められます。

  1. 冗長化:システムの重要な部分を複数用意し、一部に障害が発生しても他の部分で機能を維持できるようにする。
  2. フェールオーバー:障害が発生した際に、速やかに予備のシステムに切り替える。
  3. バックアップ:定期的にデータをバックアップし、障害時にデータを復旧できるようにする。
  4. モニタリング:システムの状態を常に監視し、異常を早期に検知する。
  5. インシデント対応:障害発生時に迅速に対応できる体制を整える。

これらの要件を満たすことで、システムは障害や攻撃に対する耐性を高め、迅速な復旧を可能にします。

レジリエンスとセキュリティの違い

レジリエンスとセキュリティは密接に関連していますが、異なる概念です。セキュリティは、システムへの不正アクセスや攻撃を防ぐことを目的としています。一方、レジリエンスは、セキュリティ対策を施してもなお発生し得る障害や攻撃に対して、システムが機能を維持し、速やかに復旧できる能力を指します。両者は補完的な関係にあり、セキュリティとレジリエンスを両立させることが、安定したシステム運用につながります。

以上、レジリエンスについて簡単に解説しました。レジリエンスの実現には、適切な設計と運用体制が求められます。専門家のアドバイスを参考に、システムのレジリエンス強化に取り組むことが大切です。

レジリエンスを高めるためのポイント

ここでは、レジリエンスを高めるためのポイントを4つ紹介します。

冗長化と分散化の実現

レジリエンスを高めるためには、システムの冗長化と分散化が欠かせません。冗長化とは、システムの重要な部分を複数用意し、一部に障害が発生しても他の部分で機能を維持できるようにすることです。また、分散化とは、システムの機能を複数のサーバーやデータセンターに分散させ、単一障害点を減らすことを指します。これらの施策により、障害発生時の影響を最小限に抑えることができます。

サービス継続のための準備

レジリエンスを確保するには、障害発生時にもサービスを継続できる体制を整えることが重要です。そのためには、以下のような準備が必要です。

  • バックアップの取得と定期的な検証
  • フェールオーバーの設定と動作確認
  • 代替機能の用意と切り替え手順の整備
  • 関係者への連絡体制の確立

これらの準備を事前に行うことで、障害発生時の混乱を最小限に抑え、速やかにサービスを復旧できます。

迅速な復旧のための仕組み作り

障害発生時には、迅速な復旧が求められます。そのためには、以下のような仕組み作りが有効です。

仕組み内容
モニタリングシステムの状態を常に監視し、異常を早期に検知する
自動化復旧作業の一部を自動化し、人的ミスを減らす
ドキュメント整備復旧手順を文書化し、担当者の不在時にも対応できるようにする
訓練の実施定期的に障害対応の訓練を行い、スキルや連携を向上させる

これらの仕組みを整えることで、障害発生時に迅速かつ的確な復旧が可能になります。

定期的な脆弱性診断とリスク評価

レジリエンスを維持するには、定期的にシステムの脆弱性を診断し、リスクを評価することが重要です。脆弱性診断では、システムの弱点を洗い出し、適切な対策を講じます。リスク評価では、想定される障害や攻撃のシナリオを分析し、影響度や発生確率を見積もります。これらの活動を通じて、レジリエンスに関する課題を早期に発見し、継続的に改善することができます。

レジリエンスを実現するアーキテクチャ

ここでは、レジリエンスを高めるための4つのアーキテクチャについて紹介します。

マイクロサービスアーキテクチャ

マイクロサービスアーキテクチャは、システムを小さな独立したサービスに分割し、それぞれのサービスが独自のプロセスで動作するアプローチです。各サービスは、API を通じて相互に通信します。このアーキテクチャの利点は、一部のサービスに障害が発生しても、他のサービスへの影響を最小限に抑えられることです。また、サービスごとにスケーリングや更新が可能なため、柔軟性や拡張性に優れています。

イミュータブルインフラストラクチャ

イミュータブルインフラストラクチャは、一度デプロイしたインフラストラクチャを変更せず、更新が必要な場合は新しいインフラストラクチャを構築する手法です。この手法では、構成ドリフトやヒューマンエラーによる障害リスクを減らすことができるでしょう。また、インフラストラクチャのバージョン管理が容易になり、迅速なロールバックが可能となります。

カオスエンジニアリング

カオスエンジニアリングは、本番環境で意図的に障害を発生させ、システムのレジリエンスを検証する手法です。障害シナリオを事前に準備し、制御された方法でシステムに障害を引き起こします。これにより、システムの弱点を発見し、改善につなげることができます。また、障害対応に関するチームの習熟度を高めることにもつながります。

ゼロトラストセキュリティモデル

ゼロトラストセキュリティモデルは、ネットワーク内外を問わず、すべてのアクセスを信頼せずに検証するセキュリティアプローチです。ユーザーやデバイスのアイデンティティを確認し、リスクに応じてアクセス制御を行います。このモデルを採用することで、内部脅威や侵害経路の拡大を防ぐことができます。また、クラウドサービスの利用にも適しており、ゼロトラストに基づいたアクセス管理を実現できます。

企業はどうレジリエンスに取り組むべきか

ここでは、企業がレジリエンスを高めるために推奨される4つの取り組みについて紹介します。

レジリエンスの全社的な意識改革

レジリエンスを実現するためには、全社的な意識改革が不可欠です。経営層から現場の担当者まで、レジリエンスの重要性を理解し、自らの役割を認識することが求められます。定期的な教育や啓発活動を通じて、レジリエンスに対する意識を高めていくことが推奨されます。

レジリエンス対策のガイドライン策定

レジリエンス対策を効果的に進めるためには、ガイドラインの策定が有効です。ガイドラインでは、レジリエンスに関する基本方針や目標、具体的な対策項目などを定めます。各部門や担当者は、ガイドラインに沿って対策を実施することで、一貫性のあるレジリエンス強化が可能になります。

インシデント対応体制の整備

障害や攻撃が発生した際には、迅速かつ適切なインシデント対応が求められます。そのためには、以下のような体制整備が推奨されます。

  • インシデント対応チームの編成と役割分担の明確化
  • インシデント対応手順の文書化と定期的な見直し
  • インシデント対応訓練の実施による対応力の向上
  • 外部専門家との連携体制の確立

これらの体制を整えることで、インシデント発生時の混乱を最小限に抑え、速やかな復旧が可能になります。

サービス監視と分析の自動化

レジリエンスを高めるためには、サービスの稼働状況を常に監視し、異常を早期に検知することが重要です。また、監視データを分析することで、潜在的な問題を発見し、予防的な対策を講じることができます。これらの監視と分析を自動化することで、人的な工数を削減しつつ、高い精度での異常検知と対処が可能になります。適切なツールの選定と運用ルールの整備を推奨します。

以上、企業がレジリエンスに取り組むための4つのポイントを紹介しました。レジリエンスの実現には、全社的な協力体制と継続的な改善が欠かせません。

まとめ

自社のシステムを障害や攻撃から守り、万一の際も迅速に復旧できるよう、レジリエンスの確保が重要です。レジリエンスを高めるためには、冗長化や分散化の実現、サービス継続のための準備、迅速な復旧体制の整備、定期的な脆弱性診断とリスク評価が欠かせません。さらに、マイクロサービスアーキテクチャやイミュータブルインフラストラクチャ、カオスエンジニアリング、ゼロトラストセキュリティモデルなどの導入も有効です。企業としては、全社的な意識改革、ガイドラインの策定、インシデント対応体制の整備、監視と分析の自動化に取り組むことが推奨されます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム