SaaSとは? わかりやすく10分で解説
SaaS(Software as a Service)とは
現代のビジネスは多くの面でICT(情報通信技術)に依存しています。その一環として、さまざまな業務を効率化し、ビジネス成果を最大化するための新しい形態のサービスであるSaaS(Software as a Service)が注目されています。
定義と概要
SaaSとは、インターネットを通じて提供されるソフトウェアのことです。具体的には、ユーザーが自社でソフトウェアをインストール・メンテナンスするのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態を指します。
一般的にSaaSは、クラウドによりホストされ、ブラウザや専用のアプリケーションを通じてユーザーがアクセスします。また、料金は利用した分だけを支払うサブスクリプション(定額制)方式が一般的です。
SaaSの歴史
SaaSの原型は、20世紀末のアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)という形態にさかのぼります。しかし、インターネットの普及と技術の進歩に伴い、本格的なSaaSの普及は21世紀の2000年代に入ってからです。
2000年代に入ると、ベンチャー企業が次々とSaaSサービスを立ち上げ、特にCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)やERP(経営資源計画)といったビジネス関連のソフトウェアにおいてその効果を発揮しました。
また、従来のオンプレミス(自社内にソフトウェアを設置する方式)からクラウドへの移行が進んだことで企業のIT負担が軽減され、今日ではビジネスでSaaSを使わない企業はほとんどないといっても過言ではありません。
主なSaaSの例
SaaSの代表例として、多くの人が触れているソフトウェアには、GoogleのG Suite(現Google Workspace)・マイクロソフトのOffice 365・セールスフォースのCRM・Slackなどがあります。
これらのソフトウェアは、社内コミュニケーション・文書作成・顧客管理など、ビジネスに欠かせない機能をネットワーク経由で提供し、企業の業務効率化に大いに貢献しています。
SaaSの種類とその特徴
近年、多くの企業が情報システムの構築や管理にSaaSを使用しています。その中で、SaaSには主に「パブリッククラウド型」・「プライベートクラウド型」・「ハイブリッドクラウド型」の3種類が存在します。それぞれの特徴や適したシチュエーションについてチェックしましょう。
パブリッククラウド型SaaS
「パブリッククラウド型SaaS」は、サービス提供者がインターネット上に提供する共有資源を使用する形態のSaaSです。使用費用は利用時間や規模に応じて計算されるため、初期投資を抑えつつ、必要な時に必要なだけサーバーやストレージを利用可能です。また、サービス提供者側にてシステムのメンテナンスやアップデートが行われるため、ユーザー側での管理負荷が軽減されます。
ただし、パブリッククラウド型SaaSは強力なネットワーク接続が必須であり、サーバー資源を他のユーザーと共有するため、最高レベルのセキュリティやパフォーマンスを求められる場合には不適切な選択となることがあります。
プライベートクラウド型SaaS
一方、「プライベートクラウド型SaaS」は、特定の組織専用に構築されたクラウド環境で提供されるSaaSです。他の組織とは無関係に運用できるため、セキュリティの高い環境を求められる企業に向いています。自社専用の環境なので、自由なシステム構成や細かい設定が可能です。
しかし、その分、システムの設計や運用には専門的な知識が必要となるため、ITリソーシズが不足している企業には負担が大きいかもしれません。
ハイブリッドクラウド型SaaS
最後に、「ハイブリッドクラウド型SaaS」は、パブリッククラウド型とプライベートクラウド型の特長を融合させた方法で、各業務や用途に応じて最適なクラウド環境を選択できます。たとえば、業務の一部をパブリッククラウドで、情報保護が必要なデータのみをプライベートクラウドで管理するといった使い分けが可能です。
このように災害対策や可用性確保の観点から最適なサービスを選択できることが、ハイブリッドクラウド型SaaSの最大のメリットです。
各組織のニーズに応じて、これら3つのSaaSの形態を理解し選択することが、効率的なビジネス運営につながります。
SaaSのメリットとデメリット
どんなものにも長所と短所が存在しますが、SaaSも例外ではありません。ここでSaaSの主要なメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット・利点
SaaSの最大の利点の一つ目は、初期費用の削減です。
初期費用の削減
従来のソフトウェアはパソコンに直接インストールする必要があり、ライセンス費用や、ハードウェアの購入、設置、操作等の費用がかかりますが、SaaSはウェブ経由で提供されるため、これらのコストを大幅に削減できます。初期投資が少なければ、新しいビジネスを始めるハードルも低くなるでしょう。
柔軟性とスケーラビリティ
二つ目のメリットは柔軟性とスケーラビリティです。SaaSはクラウド上に存在するため、必要な時にすぐにアクセス可能です。また、ユーザーの増減に合わせてサービスをスケールアップまたはダウンができるため、各種ビジネスの需給変動に柔軟に対応できます。
メンテナンスとアップデートの手間の軽減
そして三つ目の利点は、メンテナンスとアップデートの手間の軽減です。従来のソフトウェアは、新機能の追加やバグ修正のために手動でアップデートする必要がありました。しかし、SaaSでは、ベンダー側で全てのメンテナンスやアップデートが行われるため、ユーザー企業はこれらの手間を削減し重要な業務に集中できます。
デメリット・欠点
一方で、SaaSにはいくつかのデメリットも存在します。一つ目はセキュリティの問題です。
セキュリティの問題
通常、クラウド上でデータを一元管理することは、データ漏洩の危険を増加させます。特に機密情報や個人情報の取り扱いが必要な企業にとって重要です。したがって、利用するSaaSのセキュリティ対策を十分に理解し、データを安全に管理することが必要です。
データ移行の難しさ
二つ目のデメリットはデータ移行の難しさです。異なるSaaS間でデータを移行する際には、データ形式の互換性やシステム間連携の問題等、多くの課題が存在します。そのため、SaaSを選択する際には、データの出入力が可能か、あるいは他のシステムと連携が可能か等の確認が重要です。
カスタマイズの限界
最後に、三つ目のデメリットはカスタマイズの限界です。SaaSは多くの企業や組織に対して同一のサービスを提供しています。そのため、特定のニーズに対して細かいカスタマイズを行うことが難しい場合があります。しかし、最近では一部のSaaSプロバイダーがカスタマイズオプションを提供し始めています。その為、自社の需要に合わせたカスタマイズが可能かどうかの確認も重要です。
SaaSを選定する際のポイント
ソフトウェアを選ぶ際には、さまざまな要素に注意を払いたいところですが、SaaSを選ぶ場合には特に重視すべきポイントがいくつかあります。それらのポイントを理解し、自社のニーズに最も適したSaaSを見つけることで、ビジネスの生産性や効率性を大いに高めることができるでしょう。
ビジネス要件の整理
SaaSを選定する最初のステップは、自社のビジネス要件を整理することです。具体的には、自社がどのような目的でSaaSを導入したいのか、どの業務を効率化または自動化したいのか、どの程度の規模でシステムを使用するのか、などの点をしっかりと見極める必要があります。これにより、必要な機能と予算を明確にして、多種多様なSaaSの中から最適なものを選び出せます。
サービスの信頼性
次に重要なポイントは、サービスの信頼性です。システムのダウンタイムやセキュリティーの脆弱性、サービスプロバイダーの財政状況などは、サービスの信頼性を左右する大きな要素となります。そのため、実績のあるプロバイダーを選び、サービスレベル契約(SLA)を確認し、十分なサポート体制が整っているかを検討することが重要です。
簡便さとサポート体制
また、各利用者にとっての簡便さも大きな鍵を握っています。SaaSの大きな利点の1つは、インストールなしで即時に利用できることですが、その恩恵を十分に受けるためには、利用者が直感的に操作できるユーザーインターフェースや、必要な機能へのアクセスが容易であることが必要です。さらに、障害が発生した場合や操作に困った場合には、迅速かつ的確なサポート体制が必要となります。具体的には、サポートのレスポンス時間や問題解決までの時間、サポートの種類(電話、メール、チャット等)などを確認し、自社のニーズに合ったサポートが提供されているかを見極めておきましょう。
SaaSの今後
IT技術の進化に伴い、SaaSの未来も大きく変わりつつあります。このセクションでは、SaaSの未来と展望についてみていきましょう。
AIとの融合
一つ目の大きな変化は、AI(Artificial Intelligence)との融合です。AI技術の発展は飛躍的でその応用範囲も日々広がっており、SaaSもその例外ではありません。
今後、SaaSプロバイダは更に高度なAI機能を統合し、自動化、予測分析、パーソナライズなどの機能を提供することでしょう。これにより、ビジネスの効率性や生産性が大きく向上し、ユーザ体験も飛躍的に改善されることが予想されます。
セキュリティの強化
次に、SaaSの安全性とセキュリティの強化も重要な展望です。今日、データ優位のビジネス環境ではデータの保護が今まで以上に重要となっています。
そのため、SaaSプロバイダは端末からクラウドまで全体を通してセキュリティを強化し、ユーザの信頼を得ることが必須となるでしょう。強固なエンドツーエンドの暗号化、高度なセキュリティプロトコルの導入、リアルタイムのセキュリティ監視の提供などが予想されます。
ビジネスへの浸透
さらに、SaaSはビジネスへのより深い浸透が見込まれます。これまでのビジネスツールを超えて、各種業務プロセスや組織全体の運営を支援する役割を果たしてくれることが期待されています。
企業のビジネスモデルや業界特性に合わせて柔軟にカスタマイズ可能なSaaSソリューションが増え、ビジネスにおけるSaaSの活用範囲が広がりつつあります。これにより、効率性や生産性などの向上だけでなく、ビジネスの競争力向上にも寄与するものと期待されています。
まとめ
ここまで、SaaS(Software as a Service)はクラウド時代のビジネスツールとしての確固たる地位を築いていることを説明してきました。
初めに引き合いに出した定義や概要、各種特性を見てきたとおり、SaaSは、その優れた利便性と経済性によって、ビジネス環境における様々な課題に対抗するための強力なツールです。
また、SaaSが持っているメリットとデメリットを考察した上で、選定のポイントについても検討してきました。ここで注目すべきは、SaaSが提供する利益を最大限に引き出すためには、自身のビジネス要件を細かく整理し、信頼性とユーザビリティを含む各種要素を把握することが不可欠であるという点です。
SaaSの未来展望を見てみると、更なる進化が予測されます。AIとの統合、安全性・セキュリティの強化、ビジネスへのより深い浸透と、新たな技術の開花とその適用により、SaaSは今後も考えられる限りのビジネスシーンで、より強力な解決策として活躍し続けるでしょう。
まだまだ進化し続けるSaaSは、ITの力を十分に活用して戦略を進めることが求められる現代ビジネスにおいて、欠かすことのできない存在になりつつあります。
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