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セキュリティバイデザインとは? 10分でわかりやすく解説

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企業のシステムをサイバー攻撃から守るには、従来の対処療法的なセキュリティ対策では限界があります。そこで注目されているのが、システムの企画・設計段階からセキュリティを組み込む「セキュリティバイデザイン」という考え方です。本記事では、セキュリティバイデザインの概要や導入方法、期待される効果などについて、10分で分かりやすく解説します。

セキュリティバイデザインとは

近年、サイバー攻撃の脅威が高まる中、企業はより高度なセキュリティ対策を講じる必要に迫られています。そこで注目されているのが、 システムの企画・設計段階からセキュリティを考慮する「セキュリティバイデザイン」という考え方 です。本記事では、セキュリティバイデザインの概要について、わかりやすく解説します。

セキュリティバイデザインの定義

セキュリティバイデザインとは、情報システムの開発プロセスにおいて、 企画・設計段階からセキュリティ対策を組み込むことで、システム全体のセキュリティ品質を向上させるアプローチ を指します。従来の開発手法では、セキュリティ対策は開発の後半や運用段階で行われることが多く、根本的な脆弱性への対処が困難でした。一方、セキュリティバイデザインでは、開発の初期段階からセキュリティを考慮することで、より効果的かつ効率的なセキュリティ対策が可能となります。

セキュリティバイデザインの必要性

セキュリティバイデザインが必要とされる理由は、以下のようなものが挙げられます。

  1. サイバー攻撃の高度化・巧妙化に伴い、従来の対症療法的なセキュリティ対策では不十分
  2. セキュリティ対策の後付けでは、コストと時間がかかり、十分な効果が得られない
  3. 法規制の強化により、企業はより高いレベルのセキュリティ対策が求められている

これらの課題に対応するためには、 開発の上流工程からセキュリティを組み込むセキュリティバイデザインが不可欠 です。

セキュリティバイデザインの目的

セキュリティバイデザインの主な目的は、以下の通りです。

  1. システムの機密性、完全性、可用性を確保し、ビジネスリスクを最小化する
  2. セキュリティ対策にかかるコストと時間を最適化し、効率的な開発を実現する
  3. セキュリティ品質を向上させ、ユーザーからの信頼を獲得する

これらの目的を達成することで、企業は安全で信頼性の高いシステムを構築し、ビジネスの継続性を確保することができます。

セキュリティバイデザインの基本原則

セキュリティバイデザインを実践する上での基本原則は、以下のようなものが挙げられます。

原則 説明
最小権限の原則 ユーザーやプロセスに対して、必要最小限の権限のみを与える
多層防御の原則 単一の防御策ではなく、複数のセキュリティ対策を組み合わせる
デフォルトでの安全性 システムのデフォルト設定を安全側に倒し、脆弱性を最小化する
脅威モデリング 考えられる脅威を洗い出し、適切な対策を講じる

これらの原則に基づいてセキュリティバイデザインを実践することで、 システムの企画・設計段階からセキュリティを確保し、高品質なシステムを構築する ことが可能となります。

セキュリティバイデザインは、企業のシステムをより安全で信頼性の高いものにするための重要なアプローチです。自社のシステムをより良くしたいと考えている企業様は、ぜひセキュリティバイデザインの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

セキュリティバイデザインの導入方法

セキュリティバイデザインを効果的に導入するためには、以下のようなステップを踏むことが推奨されます。

セキュリティ要件の明確化

セキュリティバイデザインの第一歩は、システムに求められるセキュリティ要件を明確にすることです。これには、以下のような活動が含まれます。

  • ビジネス上のリスクと影響度の評価
  • 法規制や業界標準への適合性の確認
  • ユーザーのセキュリティに対する期待の把握

これらの要件を明文化し、関係者間で共有することで、 システム開発の全工程を通じてセキュリティ要件を満たすことができます。

セキュアなアーキテクチャの設計

次に、セキュリティ要件に基づいて、セキュアなシステムアーキテクチャを設計します。この段階では、以下のような点に留意する必要があります。

  • 最小権限の原則に基づいたアクセス制御の設計
  • 暗号化など、適切なセキュリティ機能の選定
  • 単一障害点の排除と冗長性の確保

安全な構成を設計することで、システムの堅牢性を高め、攻撃者の侵入を防ぐことができます。

危険のないコーディングの実践

システムの実装段階では、危険のないコーディングを実践することが重要です。具体的には、以下のような点に注意が必要です。

  • バッファオーバーフローやSQLインジェクションなどの脆弱性の排除
  • 入力データの検証とサニタイズの徹底
  • エラー処理とログ出力の適切な実装

危険のないコーディングのガイドラインを策定し、開発者への教育を行うことで、 実装段階でのセキュリティ品質を確保することができます。

継続的なセキュリティテストの実施

システムのリリース前および運用中は、継続的にセキュリティテストを実施することが推奨されます。これには、以下のような活動が含まれます。

  • 脆弱性スキャンと侵入テストの実施
  • ユーザー認証とアクセス制御のテスト
  • セキュリティパッチの適用状況の確認

定期的なセキュリティテストを行うことで、 新たな脅威や脆弱性を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。

以上のようなステップを踏むことで、セキュリティバイデザインを効果的に導入し、自社のシステムのセキュリティ品質を向上させることができます。ただし、セキュリティバイデザインは一朝一夕に実現できるものではありません。企業の規模や業種、システムの特性に応じて、適切なアプローチを選択し、地道に取り組んでいくことが肝要です。

セキュリティバイデザインの導入には一定のコストと労力が必要ですが、 サイバー攻撃のリスクを最小化し、ビジネスの継続性を確保する上で、必要不可欠な投資と言えるでしょう。

セキュリティバイデザインの効果

セキュリティバイデザインを導入することにより、以下のような効果が期待できます。

脆弱性の早期発見と対処

セキュリティバイデザインでは、システムの設計段階から脆弱性を洗い出し、適切な対策を講じます。これにより、 脆弱性を早期に発見し、対処することができ、システムの安全性を高めることができます。 従来の開発手法では、脆弱性が後になって発覚することが多く、対処に時間とコストがかかっていましたが、セキュリティバイデザインではそのようなリスクを軽減できます。

セキュリティインシデントの防止

脆弱性を排除し、安全なシステムを構築することで、 サイバー攻撃によるセキュリティインシデントを未然に防ぐことができます。 情報漏洩や不正アクセス、システム停止などのインシデントは、企業の信頼を損ない、ビジネスに大きな影響を与えます。セキュリティバイデザインを導入することで、そのようなリスクを最小限に抑えることが可能となります。

企業の信頼性向上

セキュリティバイデザインを実践している企業は、顧客やパートナー企業から高い信頼を得ることができます。昨今、サイバー攻撃への対策は企業の選定基準の一つとなっており、 セキュリティへの取り組みが企業の評価に直結するようになってきています。 セキュリティバイデザインを導入し、安全で信頼できるシステムを構築することで、企業のブランドイメージを向上させることができるでしょう。

コスト削減と生産性向上

セキュリティバイデザインを導入することで、長期的なコスト削減と生産性の向上が期待できます。従来の開発手法では、セキュリティ対策を後付けで行うため、手戻りが発生しやすく、コストと時間がかかっていました。一方、セキュリティバイデザインでは、 開発の初期段階からセキュリティを組み込むことで、手戻りを減らし、効率的な開発が可能となります。 また、セキュリティインシデントによる損失を防ぐことで、ビジネスの継続性を確保し、生産性を向上させることができます。

以上のように、セキュリティバイデザインにはさまざまな効果があります。サイバー攻撃のリスクが高まる中、企業はセキュリティバイデザインの導入を検討し、自社のシステムをより安全で信頼性の高いものにしていく必要があるでしょう。セキュリティバイデザインへの投資は、企業の競争力を高め、ビジネスの成功に寄与するものと期待されます。

セキュリティバイデザイン導入のポイント

セキュリティバイデザインを効果的に導入するには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、セキュリティバイデザイン導入の鍵となる4つのポイントを解説します。

経営層の理解と支援

セキュリティバイデザインの導入には、経営層の理解と支援が不可欠です。 経営層がセキュリティの重要性を認識し、積極的に資源を投入することで、組織全体でセキュリティバイデザインに取り組む体制を整えることができます。 経営層は、セキュリティ対策の必要性を従業員に伝え、意識向上を図ることも重要です。

セキュリティ専門家の関与

セキュリティバイデザインの実践には、セキュリティ専門家の知見が欠かせません。 セキュリティ専門家が開発プロセスに早期から関与することで、適切なセキュリティ要件の設定や脅威モデリング、安全な構成の設計が可能となります。 社内にセキュリティ専門家がいない場合は、外部の専門家に協力を仰ぐことも検討すべきでしょう。

開発プロセスへの組み込み

セキュリティバイデザインを効果的に機能させるには、開発プロセスへの組み込みが重要です。 セキュリティ要件の定義、設計、実装、テストなど、開発の各段階でセキュリティを考慮する仕組みを整える必要があります。 例えば、セキュアなコーディングのガイドラインを策定し、コードレビューを徹底するなどの施策が考えられます。

教育とトレーニングの実施

セキュリティバイデザインを組織に定着させるには、従業員への教育とトレーニングが欠かせません。 開発者だけでなく、企画や営業など、関連部署の従業員もセキュリティの基礎知識を身につける必要があります。 定期的なセキュリティ教育やハンズオントレーニングを実施し、従業員のスキルアップを図ることが推奨されます。

セキュリティバイデザインの導入には、組織を挙げての取り組みが求められます。上記の4つのポイントを踏まえ、自社の状況に合わせたアプローチで、段階的にセキュリティバイデザインを実践していくことが肝要です。セキュリティバイデザインの導入には一定の労力を要しますが、サイバー攻撃のリスクを最小限に抑え、ビジネスの継続性を確保する上で、必要不可欠な取り組みと言えるでしょう。

まとめ

セキュリティバイデザインは、システムの企画・設計段階からセキュリティを組み込むことで、脆弱性の早期発見と対処、セキュリティインシデントの防止、企業の信頼性向上、コスト削減と生産性向上などの効果が期待できる、注目のアプローチです。自社のシステムをより安全で信頼性の高いものにするためには、経営層の理解と支援、セキュリティ専門家の関与、開発プロセスへの組み込み、従業員への教育とトレーニングが鍵となります。サイバー攻撃のリスクが高まる中、セキュリティバイデザインへの投資は、企業の競争力を高め、ビジネスの成功に寄与する重要な取り組みと言えるで

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム