中小企業に必要な情報セキュリティ対策とは
セキュリティ事故のニュースなどでは大手企業の名前が挙げられることが多く、あたかも中小企業は被害に遭っていないかのように思うかもしれません。しかし、実際には多くの中小企業が狙われているのです。企業規模や業種に関わらず、企業活動を安全かつ円滑に進めるためにセキュリティ対策は欠かせません。
この記事では、中小企業の情報セキュリティ対策が重要な理由とあわせて、対策の課題と具体的な対策方法について解説します。
中小企業の情報セキュリティ対策が重要な理由
中小企業は大手企業に比べて従業員数も少なく、保有する情報量も少ないことから狙われにくいと考える方も多いでしょう。しかし、実際には中小企業を狙ったサイバー攻撃は多く報告されています。中小企業だから『わざわざ自分たちを狙う “物好き”はいないだろう』と考えるは危険です。
一般に、中小企業ではセキュリティ対策が十分に行えていない場合もあり、むしろ攻撃者にとっては狙いやすい標的として見られている可能性もあります。大手企業と取引する中小企業を足がかりにして、最終標的の大手企業を攻撃する「サプライチェーン攻撃」というものが、大きな問題としてテレビ・新聞のニュースでも取り上げられるようになりました。
セキュリティインシデントが発生すると金銭面での損害だけでなく社会的信用を失うことになります。企業規模の大小にかかわらず、その後の企業活動に大きな支障がでてしまいます。
「中小企業だからセキュリティ対策は不要」または「最低限の対策で良い」ということはありません。企業のIT化が進む昨今では、情報セキュリティ対策はすべての企業に等しく必要なものとなっています。
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインとは
日本の情報処理技術者の育成・セキュリティの研究、情報公開を行う独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)では、中小企業向けの情報セキュリティ対策ガイドラインを公開しています。
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインは、経営者が認識し実施すべき指針や情報セキュリティ対策の手順・手法をまとめたガイドラインです。2009年に初版が公開され、2019年に最新版となる第3版が公開されています。
コロナ禍でテレワークが普及し、クラウドサービスを業務利用する例も増えてきたことから、クラウドサービスを安全に利用するための手引きも用意されました。中小企業が実施するべき情報セキュリティ対策を網羅的に学べるガイドブックであるため、この機会に一読することをおすすめします。
中小企業の情報セキュリティ対策の課題
中小企業が情報セキュリティ対策を実施するにあたり、課題は大きく次の2点が考えられます。
- コストの課題
- 対策内容の課題
セキュリティ対策を実施するためには、社内システムの変更やセキュリティ対策製品の導入、社内教育の実施などさまざまなコストが発生します。それらのコストに対して、費用対効果が感じられず、セキュリティ対策の優先度を低く設定してしまう場合もあるかもしれません。
しかし、一度セキュリティインシデントが発生してしまうと、企業活動に多大な影響をおよぼすため、セキュリティ対策にかかるコストは必要経費と考えるべきです。
また、ITセキュリティは専門的で変化の激しい分野でもあります。「そもそも具体的に何をすればよいかわからない」という課題を抱える中小企業も多いでしょう。対策内容についても、前項のIPAが公開するガイドラインが参考になるため、こちらをもとに進めてみてはいかがでしょうか。
中小企業に必要な情報セキュリティ対策
具体的な対策内容としては、次のようなものが挙げられます。
情報収集と現状の把握
セキュリティ情報は日々更新されており、サイバー攻撃の手法も常に新しいものが発見されています。どのような攻撃手法が存在するのか、その対策方法がどのようなものか、いま自社で対策できているか、などを明確にするために情報収集と現状の把握からはじめましょう。
情報セキュリティポリシーの策定
情報セキュリティポリシーは、組織における情報セキュリティ対策を体系的かつ具体的にまとめたものです。自社でどのようなセキュリティ対策を実施するのかを文書化することで、セキュリティ対策の方向性が明確になります。
社員のセキュリティ教育
従業員のITリテラシー向上も含め、社員教育を実施することはセキュリティ対策の一環となります。遵守すべきルールを従業員一人ひとりに周知徹底することが重要です。
セキュリティ対策製品の導入
情報セキュリティポリシーを従業員に周知徹底することは重要ですが「人はミスをするもの」であり、セキュリティ対策をすべて人の手で完結することは難しいでしょう。万一の備えにセキュリティ対策製品を導入し、サイバー攻撃への防御を固めます。
特に大規模な情報漏えい事故に直結する不正アクセスやマルウェア感染などは優先度の高い対策です。ファイアウォールやIDS/IPS、WAFなどのネットワークセキュリティ、従業員のPCに常駐するウイルス・マルウェア対策ソフトウェアなどの導入が有効です。
近年ではテレワークが普及しているため、社外から社内ネットワークに接続する環境を構築している中小企業も多いでしょう。社内ネットワークに対する不正侵入は特に警戒すべき項目の1つであるため、二段階認証や電子証明書などを利用した高度な認証システムの導入もおすすめです。
中小企業はサイバー攻撃の標的となりづらいと考える方も少なくありませんが、中小企業を踏み台として大手企業に攻撃を仕掛けるサプライチェーン攻撃が行われることもあり、実際には企業規模に関わらず標的として見られていると考えるべきです。いまいちど自社のセキュリティ対策について見直してみてはいかがでしょうか。
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