スマートグリッドとは? わかりやすく10分で解説
スマートグリッドとは?
スマートグリッドとは、新たな電力供給システムの一種であり、情報技術(IT)を駆使し、電力供給と消費を最適化することを目指しています。近年の環境問題の厳しさやエネルギー効率の改善への要求に対応するために開発が進められています。
スマートグリッドの定義と特徴
スマートグリッドは"smart"(賢い)と"grid"(電力網)を組み合わせた造語で、大量の情報をリアルタイムで分析・制御することにより、電力供給を効率化し、電力需要と供給をバランス良く運用することを可能にします。特徴としては、電力供給の効率化、供給安定化、省エネルギー、CO2排出量削減、再生可能エネルギーの活用などが挙げられます。
スマートグリッドの働き
スマートグリッドは、電力供給と電力需要のバランスをとることで電力の安定供給を可能にするとともに、エネルギーの最適な利用を促進します。スマートメーターと呼ばれる装置を各家庭や施設に設置することで、実際の電力使用状況のデータをリアルタイムで取得、分析します。これにより、電力消費量が少ない時間帯に電力を使うように誘導したり、電力不足時の節電を促したりすることが可能となります。
スマートグリッドの必要性と期待される影響
近年、全世界で大きな課題となっているのが、地球温暖化に伴う環境変動です。これに対抗するための一つの解決策として、スマートグリッドが注目されています。スマートグリッドの導入により、再生可能エネルギーの有効利用が促進され、CO2排出の削減が期待されます。また、電力の供給・消費を効率的にコントロールすることで、エネルギーコストの削減、電力供給の安定化、さらには地域格差の解消などの社会的な影響も期待されるところです。
日本の送電網と現状の課題
まずは、日本の送電網がどのようなものなのかについて簡単に解説しましょう。送電網とは、発電所で作られた電力を消費地へと運ぶための電力線のことを指します。これは、都市のライフラインであり、私たちの生活を支える基盤となるインフラです。
日本の送電網の概要
日本の送電網は、特別高圧と呼ばれる送電線と、それに連なる送電線から構成されています。この送電線を通じて、全国の発電所から発電された電力が、消費地である各地の変電所へと送られます。変電所では、送電されてきた電力をより低い電圧に変換し、各家庭や企業へ供給します。
日本の現行送電インフラの課題点
しかし、現在の日本の送電網にはいくつかの課題があります。一つ目は、電力の供給と需要の調整が難しい点です。電力は一度発電されると保存がきかないため、いつでも供給と需要が一致するように調整する必要があります。しかし、再生可能エネルギーの導入の拡大に伴い、電力供給が不安定になる傾向にあります。
二つ目は、災害時の弱点です。日本は地震や台風などの自然災害が多い国であり、送電線が被災することによる停電に対する対策が求められています。
大規模な停電事故とその反省
2011年の東日本大震災時には、原発事故による電力供給量の大幅な減少と、送電線の被災による送電機能の停止が重なり、大規模な計画停電が発生しました。これにより、多くの人々が生活に影響を受け、甚大な被害を受けました。また、2018年の北海道胆振東部地震の際にも、火力発電所の停止と送電線の被災により、全道が停電状態となる事態が発生しました。これらの停電事故からは、送電網の弱点とリスクが明らかになりました。
その反省を元に、日本の電力業界では現在、災害時にも電力供給を維持するために、送電線の地下化の推進や、再生可能エネルギーの導入拡大とともにスマートグリッドの普及などが進められています。
スマートグリッド導入に向けた取り組み
日本は、少しずつですがスマートグリッドへの導入を進めています。その実情を詳しく見ていくと共に、導入に至るまでの技術開発や既に導入されている地域の実績についても取り上げていきます。
日本でのスマートグリッド導入の状況
多くの先進国がスマートグリッドの導入に力を入れている中で、日本も後を追う形で進歩しています。一部のプロジェクトでは、既にスマートグリッドの導入を行っており、その結果を収集・分析して次の展開に繋げています。
スマートグリッド導入に必要な技術開発
スマートグリッドの導入には高度な技術が必要となります。その一つが、電力供給の最適化を図るデマンドレスポンスという技術です。これは消費者の電力使用状況をリアルタイムで把握し、供給量を調整することで電力の無駄を減らす仕組みです。また、電力を効率良く送電するための高効率のパワーコンディショナーの開発や、安定した電力供給を実現するためのバッテリーの開発も進められています。
導入実績と評価
では、具体的にスマートグリッドが導入されている地域ではどのような効果があらわれているのでしょうか。例えば、あるプロジェクトでは、全家庭がスマートメーターを使用することで、電力使用状況を見える化し、節電への意識改革が進みました。結果として、電力使用量が約10%減少し、CO2排出量の削減にも寄与しています。スマートグリッドが電力供給の安定化や情報ひとつひとつの価値を高める新たな可能性を示していると言えます。
スマートグリッドと再生可能エネルギー
近年、再生可能エネルギーの需要が高まっている中、スマートグリッドとの関連性が注目されています。再生可能エネルギーの拡大とスマートグリッドは、エネルギー供給の多様性と持続性を可能にし、電力システムの柔軟性と安定化に大きく寄与します。
再生可能エネルギーの拡大とスマートグリッド
再生可能エネルギーは、太陽光や風力、地熱など、自然の力によって生み出される網羅性のエネルギーです。これらは自然環境への影響が少ないだけでなく、使い続けても枯渇の懸念が薄いというメリットがあります。
しかし、再生可能エネルギーは天候や時間帯などの条件により発電量が変動するため、電力供給の安定化が課題となっていました。それを解決するのがスマートグリッドです。スマートグリッドは電力需要と供給を最適化することで電力供給を安定化し、電力の有効利用を支援します。
スマートグリッドと太陽光発電
太陽光発電は再生可能エネルギーの中でも特に生産性が高く、モジュール性があるため個別の家庭やビルでも導入することが可能です。しかし、昼夜や天候により発電量が変化するため、供給量を安定させることが課題となっていました。
これに対してスマートグリッドは実際の電力需要と供給をリアルタイムで把握し、必要に応じて他の電源から電力を補完することが可能です。これにより、太陽光発電のような不安定な電源でも確実に電力を供給し続けることが可能になります。
スマートグリッドと風力発電
風力発電もまた、再生可能エネルギーの一つです。それは風の流れを利用して電力を生み出す方法で、空気汚染を引き起こさず、静かな作業環境を維持しながらも高い電力を生産することが可能です。
しかしながら、風の強さや方向により発電量が変動します。そのため、風力発電だけに頼った電力供給は非常に不安定となります。しかし、スマートグリッドの導入により、風力発電の発電量が下がった時に他の電源から電力を補完することで、安定した電力供給が可能となります。
以上のように、スマートグリッドは、再生可能エネルギーの中でも大きなポテンシャルを持つ太陽光発電や風力発電の有効活用を実現する重要な役割を果たしています。
スマートグリッドと消費者
スマートグリッドは従来の送電網から大きく進化したものであり、その恩恵は消費者にも及びます。スマートメーター、消費者参加型の電力供給、電力使用状況の可視化など、新しい技術が私たちの日常生活をどのように変えるのかを詳しく見ていきましょう。
スマートメーターとは?
スマートメーターとは通信機能を備えた電力計であり、消費電力をリアルタイムで管理することができます。さらに、電力会社との間で電力のやり取りを行うため、消費者は自宅の電力使用状況に応じて、電力供給の調整や節電、最適な契約プランの選択などが可能です。
消費者参加型の電力供給
スマートグリッドの進化により、私たち消費者も電力供給者として参加が可能となります。自宅で発電した電力を送電網に供給することで、余剰電力を売電することができるのです。これは私たちが太陽光パネルや風力発電などの再生可能エネルギーを自宅で利用すると、発電した電力を自分たちで利用するだけでなく、余ったものを電力会社に売ることが可能になるということです。
電力使用状況の可視化
また、スマートグリッドは電力使用状況を可視化し、電力の節約や効率的な利用を実現します。スマートメーターから得られるデータは、電力会社や消費者がどの電化製品が多くの電力を消費しているのか、また電力消費が多い時間帯はいつなのかなど、電力使用状況を詳しく把握することを可能にします。これにより、電力の無駄を省き、電力使用効率を向上させることが可能となります。
スマートグリッドの導入がもたらす未来
スマートグリッドの導入が進むことで、未来に大きな変化が起こります。その中でも特に注目すべきなのが、レジリエントな社会の実現、地域創生とスマートシティ、そして持続可能なエネルギー社会の形成です。
6.1 レジリエントな社会の実現へ
スマートグリッドは、災害などの予期せぬ事態にも柔軟に対応できる「レジリエントな社会」を実現します。レジリエンスとは、突発的な問題に対して、組織や個人が迅速かつ効果的に対応し、復興・再建を行う能力のことを指します。スマートグリッドを導入すれば、一部が停止しても他の部分がそれを補い、送電網全体が機能を続ける構造を実現することができます。このような強靭な電力供給システムは、災害時のリスクを軽減し、安定した社会の運営を支えます。
地域創生とスマートシティ
スマートグリッドの導入は、地域創生とスマートシティ構想にも大きな役割を果たします。地域ごとに発電所を設け、余った電力を共有することで地域エネルギーの自給自足を可能にし、地域の活性化につながります。また、これは都市計画や地域開発の一環として取り入れられ、スマートシティの構想通り高効率でエコロジーな社会を形成する一助となります。スマートグリッドの優れた管理機能が、地域のエネルギー問題を解決し、新たな地域価値を創造する可能性を秘めています。
持続可能なエネルギー社会の形成
スマートグリッドは、再生可能エネルギーの導入を促進し、その結果として持続可能なエネルギー社会を形成します。伝統的な電力供給体制は、大規模な火力や原子力発電所が中心であり、その分布や稼働状態が一定であることが前提でした。しかし、風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、その発電量が気象条件等によって変動します。このような変動を吸収し、安定した電力供給を実現するためには、スマートグリッドのような先進的な送電網が必要不可欠です。スマートグリッドによる電力の需給調整機能は、再生可能エネルギーの利用拡大を実現し、そこから生まれる電力を効果的かつ効率的に供給することで、持続可能なエネルギー社会を形成します。
まとめ
この記事では、スマートグリッドという新しい送電システムについて、その定義、特徴、日本での取組み、再生可能エネルギーとの関連性等について詳しく解説しました。まずスマートグリッドの重要性を、日本の現行の送電インフラが抱える課題や大規模停電事故を通して解説しました。
その上で、この新たな送電システムの導入により課題がどのように解消し、日本の送電網がどのように進化するかを見てきました。これにより、スマートグリッドがエネルギー供給の安定性や消費者の利便性を高めるという点を明らかにしました。
また、スマートグリッドと再生可能エネルギーとの関連性を深堀りし、再生可能エネルギーの拡大がスマートグリッドの導入を促進し、その結果再生可能エネルギーの効率的な活用が可能になるという有益な相互作用も解説しました。
最後に、スマートグリッドによって電力使用状況が可視化され、消費者参加型の電力供給が実現することによる、持続可能でレジリエントな社会形成と地域創生への期待を語りました。
スマートグリッドはまだ完全には実現していないものの、次世代の送電網としてその導入が期待されています。現在進行中の技術開発や導入実績を踏まえ、今後の取組みと発展に注目していきましょう。
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