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ソサエティ5.0とは? わかりやすく10分で解説

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ソサエティ5.0とは

この記事では、「ソサエティ5.0」について解説していきます。今後、私たちが直面する社会問題に対する新たな解決策として、その重要性がますます高まっています。

ソサエティ5.0の定義

ソサエティ5.0とは、ヒューマンセントリック(人間中心)な社会を目指す新たな概念です。新しい技術、特に情報技術とAI(人工知能)を活用し、個々の人々が豊かで快適な生活を送ることができる世界を目指します。情報管理、資源管理、そして人々の理解と協力を中心に据えた社会がソサエティ5.0の基本的な考え方となります。

ソサエティ5.0の由来と歴史

ソサエティ5.0という考え方は、日本政府が提唱した概念です。狩猟社会(ソサエティ1.0)、農耕社会(ソサエティ2.0)、工業社会(ソサエティ3.0)そして情報社会(ソサエティ4.0)と進化してきた社会が、次のステージ『超スマート社会』(ソサエティ5.0)へと移行することを描いています。

ソサエティ5.0と他の「社会」

ソサエティ5.0は、先述のように人間中心の社会の実現を目指す概念であり、その特徴は他の「社会」モデルとは一線を画します。ソサエティ4.0の情報社会は、情報が人々の日常生活に不可欠となった社会を指します。それに対し、ソサエティ5.0では、情報技術とAIの進歩を最大限に活用し、誰もがその利益を享受し、持続可能で包括的な成長を可能にする社会を目指します。

そのため、ソサエティ5.0においては、技術の進歩だけでなく、その適切かつ公平な利用も同時に求められます。これは、人々が幸せに生きるために、テクノロジーと社会の両方が調和することを目指しています。

日本のソサエティ5.0に向けた戦略

私たちが次に目指すべき社会、それが「ソサエティ5.0」です。ソサエティ5.0は、日本がグローバルリーダーシップをとるための根幹的な戦略です。では、この戦略は具体的にどのように進められているのでしょうか。

日本政府の推進策と政策

日本政府は力強くソサエティ5.0を推進しています。ソサエティ5.0のビジョンを具現化するために、情報化社会基本法を改正し、生活のあらゆる面でICTを活用する新たな社会ビジョン「Connected Industries」を提唱しています。

また、2020年にデータ、AI、IoTの飛躍的な進展を前提とした「デジタルガバナンス・コード」を制定しました。全産業、全社会を対象に、適正かつ効果的なデータ利活用を図るための指針を明確にすると共に、個々のデータ利活用により新たに生まれる社会価値の創出を目指しています。

ソサエティ5.0と持続可能性

ソサエティ5.0のビジョンは、経済成長と持続可能性の両方を追求します。環境配慮、社会的公正、経済的な成熟を一体として進めることを目指しており、SDGs(持続可能な開発目標)と深く結びついています。

これは、「経済の拡大」だけを目指すのではなく、「良質な生活」を追求するという、これまでの経済発展の枠組みを根底から見直すことを意味します。そのため、ソサエティ5.0は、社会全体が持続可能性を追求する一方で、新しい価値を創造し、新しいビジネスチャンスを生むことも期待されています。

人とAIの共生を目指すソサエティ5.0

AI(人工知能)との共生は、ソサエティ5.0の重要なテーマです。AIは、私たちの生活を劇的に変える力を持っていますが、その一方で、プライバシー侵害などの懸念もあります。

ソサエティ5.0では、AIと人間が共存し、私たちの生活を豊かにすることを目指しています。人間がAIをコントロールし、AIが人間を支える。これは、ソサエティ5.0が目指す全く新しい社会の姿です。

このように、日本のソサエティ5.0戦略は、持続可能性を追求しつつ、データとAIを活用した新たな価値創造を実現することを目指しています。デジタル革命を通じて、更なる経済発展と社会進化を達成するための道筋を示しているのです。

ソサエティ5.0の重要な技術

ソサエティ5.0が提唱する社会の在り方は、いつくかの革新的な技術を利活用して実現されます。まずは、その中心に位置する技術を見ていきましょう。

AI (人工知能) とその役割

ソサエティ5.0における最も基盤的な技術と言えるのがAIです。AIは人間が持つ認知能力を模倣し、自ら学習・判断・行動できる能力を持つことで、複雑な問題解決や効率的な業務処理が可能になります。また、大量のデータを処理する能力もあるため、予測分析や意思決定をサポートするという重要な役割を担います。

IoT 

日常生活の中のあらゆるモノをインターネットにつなげるIoTが登場しました。IoTを通じてデバイス同士がデータをやり取りし、自由にコントロールできる環境を作り出すことで、生活の質の向上や業務効率化を実現します。例えば、自動運転車が道路や交通状況をリアルタイムで把握し、安全かつスムーズな移動をサポートする様子は、まさにソサエティ5.0の象徴と言えるでしょう。

ビッグデータとその活用

AIとIoTがもたらす大量のデータの処理とその活用がなければ、ソサエティ5.0は成り立ちません。そこでビッグデータの活用が重要になります。ビッグデータには、その規模、多様性、速度など従来のデータ処理では対応しきれない特性を持つデータがあります。これを解析することで、相関関係の発見などが可能になり、社会やビジネスの現象をより深く理解することができます。

ロボット技術と自動化

そして、ソサエティ5.0が提唱する社会の在り方を実現する最後のピースがロボット技術と自動化です。これは、単純作業から高度な専門作業まで、人間が行っていた多くの作業をロボットが行い、さらにその作業を自動で行うことができるようにすることです。これにより、より高度な労働生産性の向上が可能になり、人間はより創造的かつ充実した働き方・生活を送ることができるようになります。ソサエティ5.0の未来図を踏まえると、これらの技術は人々に多大な恩恵を与える可能性を秘めていると言えるでしょう。

ソサエティ5.0の具体的な取り組み事例

ソサエティ5.0は、ただの理念ではなく、具体的な取り組みが日本国内外で展開されています。その中心として、人間とAIの共生を適応させるための新たな社会システムの構築を目指しています。以下では、具体的な取り組み事例を紹介していきます。

スマートシティの実現

まずスマートシティの実現に向けた取り組みを挙げてみましょう。都市の機能とデジタル技術を組み合わせ、都市機能の最適化と持続可能性を追求することが、スマートシティの目指すところです。福岡市は、2020年から「Fukuoka Smart EAST」を進めています。このプロジェクトでは、都市の開発とICT、エネルギー、交通、保健医療などを融合した新たなまちづくりが試行されています。

医療分野での取り組み

次に、医療分野の取り組みをみてみましょう。AIを活用した一例では、疾患の早期発見や病状の予測などを行うためのAI開発が進められており、現場の医療に直結した社会貢献を目指しているプロジェクトがあります。

畜産・農産業での取り組み

畜産・農産業でもソサエティ5.0が活用されています。例えば、イメージセンサーを活用した自動野菜収穫ロボットが農業生産の効率化に貢献しています。収穫量の予測や適切な収穫タイミングの判断などもAIが行い、より精緻な作物管理を可能にしています。

教育分野での実施例

教育分野でもソサエティ5.0の取り組みが行われています。AIを教材に用いたAI学習や、各学生の学習状況に応じた個別対応が可能な個別学習支援システムなどが開発・実施され、これまでにない、個々の学生に最適化した教育を目指しています。

ソサエティ5.0に向けた課題と解決策

ソサエティ5.0を追求する上では、必ずしも全てがスムーズに進むわけではありません。むしろ、この技術的な進歩と社会的変革には深刻な課題が付随しています。

セキュリティ問題とプライバシー保護

広範かつ連続したデータのネットワーク接続と集積が可能となることは、同時にセキュリティとプライバシーのリスクを増大させる可能性があることを意味します。特に、脆弱性があるセキュリティシステムまたは不十分なセキュリティ対策が、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを増大させ、個人情報の不正利用を許してしまう可能性があります。

解決策としては、先進的な暗号化技術、身元確認システム、そしてプライバシー設定の向上などが考えられます。また、ユーザーが自身のデータについての管理、利用、そして共有に関してコントロールすることが重要です。

デジタルデバイドの問題

次に、すべての人々が同等にテクノロジーにアクセスし利益を享受できるとは限らない問題、これがデジタルデバイドです。例えば、地域、年齢、教育レベルによっては、テクノロジーへのアクセスや利用可能性が制限されてしまう場合があります。

この問題を解決するためには、高速インターネットへの公平なアクセスを確保する政策などが必要です。また、テクノロジーを使う能力を向上させるためのスキルを教えることも重要です。

雇用への影響

さらに、AIやロボット化が進むことによる雇用への影響も深刻な問題です。特に、自動化される可能性の高い単純作業の仕事を持つ人々は、職を失うリスクに直面しています。

これを解決するためには、継続的なスキルアップと教育が必要です。また、新たな技術によって生まれる新しい職業につながるスキルを学ぶのはひとつの手段です。要するに、新しいテクノロジーに遅れず、自己の知識や技能をアップデートし続けることが求められます。

ソサエティ5.0を見据えた日本の将来展望

ソサエティ5.0が未来の日本社会をどのように変えるのか、その可能性と具体的な影響、そしてその実現に向けた今後のアクションについて考察します。

社会の大変革を巻き起こす可能性

ソサエティ5.0は、人工知能やIoT、ビッグデータ、ロボット技術等の先進的な技術の組み合わせにより、私たちの働き方や生活スタイル、産業構造や社会システム全体を根本から変革する可能性を秘めています。教育から医療、農業から製造業に至るまで、全ての分野で効率化と自動化が向上し、これまでの常識や制約を取り払い、新たな価値を創出する新社会が広がります。

日本社会への影響

ソサエティ5.0が実現すれば、高齢者が自立した生活を送ることが容易になるだけでなく、医療の質も向上し、働く人々のライフスタイルも大きく変わるでしょう。また、都市のコンパクト化やビジネスのグローバル化が進み、社会全体のエネルギー効率も向上するでしょう。これにより、日本の持続可能性と国際競争力が一段と強化され、気候変動への対策や地域間の格差解消にも貢献します。

ソサエティ5.0実現のための今後のアクション

ソサエティ5.0の実現には、さまざまな課題が伴います。技術的要因だけでなく、法制度、教育、セキュリティ等、多面的な視点から考える必要があります。また、全ての市民がソサエティ5.0の恩恵を受けるためには、普及・教育が重要となります。多様性のある社会を実現するためには、全ての人々が情報を的確に得られる環境を整備し、デジタルリテラシーを向上させることが求められます。さらに、企業も新技術への取り組みを加速させ、前向きなイノベーションを推し進める必要があります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム