ウェブアイソレーションとは? 10分でわかりやすく解説
インターネット上の脅威が高度化・巧妙化する中、企業のセキュリティ対策の重要性が高まっています。特にウェブブラウザを介した攻撃は大きなリスクであり、従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれない状況です。そこで注目されているのが、ウェブアクセスのリスクを低減するために、ブラウザとインターネットの間に隔離環境を設ける『ウェブアイソレーション』という技術です。本記事では、ウェブアイソレーションの概要や仕組み、導入効果、技術的な側面、導入時の留意点などを解説し、サイバー脅威への対策を検討する上での参考情報をわかりやすくお伝えします。
ウェブアイソレーションとは?
ウェブアイソレーションとは、インターネット上の脅威からユーザーやシステムを保護するためのセキュリティ対策の一つです。ウェブブラウザとインターネットの間に隔離された環境を作り、 ウェブアクセスに起因するリスクを低減させる技術 と言えます。
ウェブアイソレーションの定義
ウェブアイソレーションは、ユーザーがウェブサイトにアクセスする際、 ローカル環境とは分離された安全な仮想環境内でウェブコンテンツをレンダリングし、画面転送技術を用いてユーザーに表示する セキュリティ対策です。これにより、悪意のあるコードやマルウェアがユーザーのデバイスに直接到達することを防ぎます。
ウェブアイソレーションの仕組み
ウェブアイソレーションは以下のような仕組みで動作します。
- ユーザーがウェブサイトにアクセスすると、リクエストはウェブアイソレーションシステムに送信されます。
- ウェブアイソレーションシステムは、 隔離された仮想環境内でウェブコンテンツをレンダリングします。
- レンダリングされた画面情報は、画面転送技術を用いてユーザーのデバイスに送信され、ブラウザに表示されます。
- ユーザーの操作は、仮想環境内のブラウザに伝えられ、処理されます。
ウェブアイソレーションの必要性
近年、ウェブを介したサイバー攻撃は増加傾向にあり、従来のセキュリティ対策だけでは対応が難しくなっています。以下のような理由から、ウェブアイソレーションの必要性が高まっています。
- ゼロデイ脆弱性を利用した攻撃の増加
- ソーシャルエンジニアリングを用いたフィッシング攻撃の巧妙化
- 標的型攻撃の増加
- クラウドサービスの普及によるセキュリティ境界の曖昧化
ウェブアイソレーションの導入効果
ウェブアイソレーションを導入することで、以下のような効果が期待できます。
効果 | 説明 |
---|---|
マルウェア感染リスクの低減 | 隔離環境内でウェブコンテンツが実行されるため、 ユーザーのデバイスへのマルウェア感染リスクを大幅に減らすことができます。 |
情報漏洩の防止 | ウェブアイソレーションシステムとユーザーデバイス間では画面情報のみがやり取りされるため、 機密情報の流出を防ぐことができます。 |
ウェブフィルタリングの強化 | カテゴリベースのウェブフィルタリングと組み合わせることで、 より細かいアクセス制御が可能になります。 |
インシデント対応コストの削減 | マルウェア感染や情報漏洩のリスクが低減されるため、 インシデント対応にかかる時間と費用を大幅に削減できます。 |
以上のように、ウェブアイソレーションは高度化するサイバー脅威に対抗し、安全なウェブアクセス環境を提供するための有効な手段の一つと言えるでしょう。ただし、導入にあたっては自社のセキュリティ要件や既存システムとの統合性を十分に検討する必要があります。
ウェブアイソレーションの技術
ウェブアイソレーションを実現するためには、様々な技術が用いられています。ここでは、ウェブアイソレーションを支える主要な技術について解説します。
ブラウザ分離技術
ブラウザ分離技術は、 ユーザーのローカル環境から隔離された仮想環境内でウェブブラウザを実行する技術です。 これにより、ウェブブラウザがマルウェアに感染したり、脆弱性を突かれたりしても、ユーザーのデバイスへの影響を最小限に抑えることができます。
ブラウザ分離技術には、以下のような方式があります。
- 仮想マシン方式:専用の仮想マシン内でブラウザを実行する方式
- コンテナ方式:軽量な仮想化環境であるコンテナ内でブラウザを実行する方式
- リモートブラウザ方式:クラウド上のリモート環境でブラウザを実行し、画面情報のみをユーザーに転送する方式
仮想化技術
仮想化技術は、 物理的なハードウェアを論理的に分割し、複数の仮想環境を作成する技術です。 ウェブアイソレーションでは、仮想化技術を用いて、ユーザーごとに独立した仮想環境を提供します。
仮想化技術には、以下のような種類があります。
- フルバーチャライゼーション:ハードウェアを完全に仮想化し、ゲストOSを実行する方式
- パラバーチャライゼーション:ゲストOSを修正することで、仮想化のオーバーヘッドを削減する方式
- コンテナ型仮想化:OSカーネルを共有し、アプリケーション実行環境を分離する方式
レンダリング技術
レンダリング技術は、 ウェブコンテンツをユーザーのデバイスに表示するための技術です。 ウェブアイソレーションでは、隔離された仮想環境内でレンダリングされた画面情報を、ユーザーのデバイスに転送する必要があります。
レンダリング技術には、以下のような方式があります。
- ピクセルベース方式:仮想環境内で描画された画面をピクセル単位で転送する方式
- HTMLベース方式:仮想環境内でレンダリングされたHTMLコンテンツを転送する方式
- ベクターベース方式:仮想環境内で生成されたベクター画像を転送する方式
ネットワーク分離技術
ネットワーク分離技術は、 ウェブアイソレーションシステムとユーザーのローカル環境との間のネットワークを分離する技術です。 これにより、仮想環境内で発生した脅威がユーザーのネットワークに影響を与えることを防ぎます。
ネットワーク分離技術には、以下のような方式があります。
- プロキシ方式:ウェブアイソレーションシステムがプロキシサーバーとして機能し、ユーザーのリクエストを仮想環境に転送する方式
- VPN方式:ウェブアイソレーションシステムとユーザー間をVPNで接続し、暗号化された通信を行う方式
- ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)方式:ネットワークをソフトウェアで制御し、動的にセグメンテーションを行う方式
これらの技術を組み合わせることで、ウェブアイソレーションシステムは高度なセキュリティを実現しています。ただし、技術選定にあたっては、 パフォーマンスやスケーラビリティ、運用管理の容易さなども考慮する必要があります。
ウェブアイソレーションの導入方法
ウェブアイソレーションを導入する際には、自社のセキュリティ要件や既存システムとの整合性を考慮しながら、適切な製品やサービスを選定することが重要です。ここでは、ウェブアイソレーションの導入方法について解説いたします。
ウェブアイソレーションの選定ポイント
ウェブアイソレーションの製品やサービスを選定する際は、以下のような点に注意しましょう。
- セキュリティ要件の充足度:自社のセキュリティポリシーや規制要件に適合しているか
- パフォーマンスとユーザーエクスペリエンス:ユーザーの利便性を損なわない程度のレスポンスタイムと操作性が確保されているか
- スケーラビリティと可用性:ユーザー数の増加や システム障害時にも安定して動作するか
- 運用管理の容易さ:管理インターフェースが intuitive(直感的) で、運用負荷が少ないか
- 既存システムとの統合性:認証基盤やウェブフィルタリングなどの既存セキュリティ システムと連携できるか
オンプレミス型とクラウド型の比較
ウェブアイソレーションは、オンプレミス型とクラウド型の2つの導入形態があります。それぞれの特徴を理解して、自社に適した方式を選択することが大切です。
導入形態 | メリット | デメリット |
---|---|---|
オンプレミス型 |
|
|
クラウド型 |
|
|
導入時の注意点
ウェブアイソレーションを導入する際は、以下のような点に注意が必要です。
- 全社的なセキュリティ方針との整合性を確認する
- パイロット導入で課題を洗い出し、運用ルールを策定する
- エンドユーザーへの説明と教育を十分に行う
- ウェブ以外の攻撃経路への対策も併せて検討する
運用・管理の重要性
ウェブアイソレーションを導入しても、適切な運用・管理を行わなければ、十分なセキュリティ効果を発揮することができません。運用・管理の重要ポイントは以下の通りです。
- 定期的にシステムの監視とログ分析を行う
- セキュリティインシデントの検知と対応手順を確立する
- パッチ適用や設定変更など、適切な保守作業を行う
- 新しい脅威動向を把握し、システムの最適化を図る
以上のように、ウェブアイソレーションの導入にあたっては、自社の要件に合わせた慎重な検討と計画的な実施が求められます。また、導入後も継続的な運用・管理に努めることで、高度化するウェブ脅威に対して、持続的にセキュリティを担保していくことが可能となるでしょう。
まとめ
ウェブアイソレーションは、高度化するサイバー脅威からユーザーとシステムを守るための有効なセキュリティ対策です。ブラウザとインターネットの間に隔離環境を設け、マルウェア感染や情報漏洩のリスクを大幅に低減します。仮想化技術やレンダリング技術、ネットワーク分離技術などを組み合わせることで実現される本手法は、ゼロトラストセキュリティモデルとも親和性が高いとされています。導入にあたっては、自社の要件に合わせた慎重な製品選定と段階的な運用が肝要です。パフォーマンスやユーザビリティの課題はあるものの、AI活用やSASEとの連携など今後の展望が期待される技術であり、ウェブ脅威対策の切り札として注目度が高まっています。
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