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働き方改革関連法とは?企業の課題や必要な対策などを徹底解説

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働き方改革関連法は、日本企業が抱えるさまざまな課題を解決するための法律として2019年4月に施行されました。中小企業における法定割増賃金率の引き上げなどは、2023年まで猶予期間が設けられていましたが、2023年以降は対応する必要があります。働き方改革関連法により、企業は労働時間の管理・把握や残業の削減、生産性向上などの課題に取り組まなければなりません。

 この記事では、働き方改革関連法の概要や目的、内容と併せて、2023年以降に気をつけるべきポイント、必要な対応などについて解説します。

 

 働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」という名前の法律で、労働者が働きやすい環境を整備することを目的としています。日本企業が抱えるさまざまな課題に対応するため、労働基準法、労働者派遣法、労働契約法などが改正されました。

働き方改革関連法は2019年から段階的に施行されており、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得促進、多様な働き方の推進など、労働者の健康と働きやすさを重視した内容となっています。

 法改正の背景・目的

働き方改革関連法による法改正の目的は、すべての人が活躍できる社会(一億総活躍社会)を作ることです。日本は少子高齢化が進み続けており、労働者人口も減少傾向にあります。そんななかで、従来どおりの働き方では企業は成長することができず、日本経済の衰退にもつながると考えられています。

また、労働者の長時間労働や雇用形態による待遇の差なども問題視されるようになり、ワーク・ライフ・バランスを重視して多様で柔軟な働き方を実現するために施行されました。


 法改正による2023年以降のポイント

働き方改革関連法は2019年に施行されましたが、一部猶予期間が設けられていました。そして、猶予期間が2023年・2024年以降に終了となるものがあります。ここでは、2023年以降に気をつけるべきポイントを解説します。

中小企業における『法定割増賃金率引上げ』

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く場合、法定割増賃金率が適用されます。法定割増賃金率は、大企業の場合は時間外労働が60時間以下で25%以上、60時間超では50%以上です。対して、中小企業は60時間超でも25%以上でしたが、2023年4月1日以降は大企業と同じく50%以上になります。

深夜手当

月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯で行った場合、企業は労働者に対して深夜割増賃金率を加えた割増賃金を支払う必要があります。深夜手当は深夜割増賃金率(25%)+時間外割増賃金率(50%)=75%で計算した割増賃金になります。

休日手当

法定休日労働の割増賃金率は35%です。月60時間超の法定休日に行った労働時間には、割増賃金率が適用されます。割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することも可能です。

一部業種・業務の猶予期限は2024年3月まで

働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制も行われています。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されていますが、一部業種・業務に該当する場合は2024年3月31日まで適用が除外されます。該当するのは、建設事業、自動車運転の業務、医師などです。2024年4月1日以降は、一部特例つきで適用されることとなります。

 

働き方改革関連法の具体的な内容

働き方改革関連法は「長時間労働の是正」「有給休暇取得促進」「多様な働き方の推進」の3つの課題を解決するために制定されました。これらの課題に対して、次のような内容となっています。

時間外労働(残業)の上限規制

働き方改革関連法が施行される以前は、法律上は残業時間の上限がありませんでした。施行後は原則として月45時間・年360時間とし、特別の事情がなければこれを超えることができません。「臨時的な特別の事情」であれば、以下の時間までの残業は許可されています。

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働含む)
  • 月100時間未満(休日労働含む)
  • 原則の月45時間を超えることができるのは年間6ヵ月のみ(臨時的)

有給休暇取得の義務化・時季指定

働き方改革関連法の施行後は、企業側は労働者の希望を踏まえて時季を指定し、年5日の取得が義務付けられています。施行前は労働者自らが申し出なければならず、年休取得率が51.5%にとどまっていたため、このような施策が実施されました。

フレックスタイム制の拡充

これまで1ヵ月単位で精算していた労働時間の精算期間が3ヶ月に拡大されました。従来は1ヶ月で時間外労働が発生した場合はその分の割増賃金を支払う必要があり、所定労働時間に満たない月は欠勤扱いとされていました。フレックスタイム制の拡充により、3ヶ月の平均で法定労働時間内にすれば割増賃金の支払いは必要なくなり、所定労働時間に満たない場合でも欠勤扱いとならなくなっています。

勤務間インターバル制度の普及促進

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務が終了してから翌日出社するまでの間に一定時間以上の休息時間を確保する仕組みです。例えば、深夜まで残業した場合に翌日の始業時間をずらして休息時間を確保します。勤務間インターバル制度は企業の努力義務となっており、労働者の生活時間や睡眠時間の確保に役立ちます。

 高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度は、一定のスキルや専門性を持つ労働者に対して、働き方の自由度を高めて特別な待遇を提供することで、その分野における競争力を高めることを目的としています。具体的には、年間104日以上の休日確保措置や、健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置などが該当します。

 高度プロフェッショナル制度の対象となる場合は、労働基準法に定められた労働時間、休息、休日、深夜の割増賃金に関する規定が適用されません。特定の専門職における労働条件の柔軟性を高め、高度なスキルを持つ労働者の活躍を促進するための制度です。

同一労働・同一賃金

同一労働・同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容、配置の変更範囲が同じ場合の差別的取扱いの禁止、不合理な待遇差の禁止を表します。これは正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目的としており、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保が定められています。

 割増賃金率の引き上げ

月60時間を超える残業に対する割増賃金率が引き上げられました。60時間以下の残業時間に対しての割増賃金率は25%ですが、60時間を超える場合は50%になります。大企業では一足先に実施されていましたが、2023年4月1日からは中小企業も対象となりました。

産業医・保険の機能強化

「産業医の活動環境の整備」「労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールの推進」が該当します。事業者は労働者の業務状況など、産業医が健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供する義務を負います。また、産業医などが労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めるなど、労働者の健康維持や労働災害の予防などに寄与する措置が定められました。


働き方改革関連法による企業の課題や必要な対応

最後に、働き方関連法による企業の課題や必要な対応について、項目を分けて簡単に解説します。

労働時間の管理・把握

働き方改革関連法が施行されたことで、企業は労働時間を効果的に管理・把握しなければならなくなりました。労働時間の上限や残業時間の割増賃金率の変動などにより、これらに対応するためには労働時間を正確に記録し、管理しなければならないからです。勤怠管理システムの導入など、労働時間の把握を容易に行えるような仕組み作りが必要になります。

残業の削減

企業は残業時間を削減し、労働者の健康とワーク・ライフ・バランスを改善する必要があります。過度な残業は労働者の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、残業時間の上限が規定されていることからも残業時間の削減は欠かせません。そのための対策としては、業務プロセスの見直しや業務効率化の取り組みが必要です。

生産性向上

残業時間の削減と併せて、生産性の向上も欠かせません。労働環境の改善や効率的な業務プロセスの整備、トレーニングの提供も生産性を向上させるために重要です。例えば、業務の自動化やデジタルツールの活用により、業務の効率化を図りましょう。コロナ禍でテレワークを急遽導入した企業も多いと思いますが、従来のオフィスワークと組み合わせた「ハイブリッドワーク」も働き方の多様化に対応するとともに、業務の効率化や生産性の向上に役立てられます。

労働契約の見直し

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保のために、労働契約を見直して柔軟な雇用形態を導入する必要があります。新たな雇用形態の導入や労働契約の見直しは、多様な働き方をサポートして労働者にとって多くの選択肢を提供できるからです。例えば、プロジェクトベースの雇用やフリーランス契約の導入なども考えられるでしょう。

まずは、どのような待遇差が不合理にあたるかを明確化するために、以下のガイドラインを参照することを推奨します。

同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省)

就業規則の変更

働き方改革関連法に適合するため、就業規則を変更して法令を遵守する必要があります。労働時間の管理や休暇制度の見直しが就業規則の変更に関連します。就業規則を見直すためにも労働時間の管理・把握は重要になるため、勤怠管理システムの導入などと併せて検討を進めるとよいでしょう。

 

まとめ

働き方改革関連法は、労働環境の改善と従業員の働き方に対する配慮を企業に求める重要な法律です。2019年4月に施行され、2023年には中小企業における法定割増賃金率の引き上げや深夜手当・休日手当の改正などが行われました。これらの改正により多くの企業で労働時間の管理・把握や残業削減、生産性向上等の課題に取り組む必要があります。

働き方改革関連法は企業に大きな変化をもたらすため、早めに対策を検討して自社に最適な取り組みを行い、一人一人がより良い働き方ができるようにすることが重要です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム